ご覧の皆さま、こんにちは。
活動拠点は横浜。公的年金、若年層の金銭教育を得意分野とする、ハマのCFP®・社労士・1級DCプランナーの井内(いのうち)です。
8月12日の日本経済新聞14面「マネーのまなび」の特集「年金繰り下げ、条件を確認」にて取材協力し、コメントを掲載いただきました。
「65歳以降も働くので年金はまだいらない、繰下げしたい」
「長生きに備えて繰下げしたい」
という方はますます増えています。
しかし、この老齢年金の繰下げ受給は、障害年金や遺族年金の受給権があるとできなくなります。
①遺族厚生年金を受給してきて65歳を迎えた妻の場合、65歳から受け取る老齢基礎年金、老齢厚生年金、ともに繰下げできません。
②妻が死亡して遺族厚生年金の受給権がある夫が老齢年金の支給開始年齢を迎えた場合、老齢厚生年金が多いために遺族厚生年金が1円も支給されなかったとしても、老齢基礎年金だけでなく、老齢厚生年金も繰下げできません。
③3級の障害厚生年金を受給してきて65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金に受給方法を替える場合、やはり老齢基礎年金も老齢厚生年金も繰下げできません。
今回の記事では②のようなケースが取り上げられていますが、障害・遺族など他の年金の受給権そのものがあると、実際のそれらの支給額にかかわりなく、老齢基礎年金、老齢厚生年金は繰下げができなくなったり、66歳以降での他の年金の受給権発生時点までしか繰下げができなかったりします。
唯一の例外として、障害基礎年金のみの受給権がある場合に、老齢厚生年金のみ繰下げができます(老齢基礎年金は繰下げ不可)。
繰下げ受給については、
「70歳で42%増額」
「75歳で84%増額」
と増額率の数字が強調されがちですが、これら他の種類の年金の受給権が66歳までにあるとそもそも繰下げができず、増額率は0%ということになります。
繰下げするつもりだったのに、障害・遺族年金があるがために繰下げできないことが年金事務所で判明し、落胆したり、衝撃を受けるケースもあるでしょう。
「ねんきん定期便」で繰下げをした場合の年金見込額も表示されるようになっていますが、この種のトラブルが多い影響か、近年の定期便では、障害年金や遺族年金があると繰下げできないことについて触れられるようにもなっています。
65歳から受け取る年金は老齢年金が中心で、配偶者は早くに亡くなったとしても自身は長生きすることもあるでしょう。
当然、長生きに備えるべく繰下げをしたいと思うこともあるでしょう。
この繰下げができない点やその見直しについては、私自身、日本年金学会の研究発表・学会論文で取り上げてきました。
今回、新聞記事としても特集されましたが、今後、現行制度が改正されるかどうか、注目したいと思っています。
【これまでの実績】——————-●個別相談、金融機関の相談会等含め年金相談は合計5000件以上経験、●教育研修は地方自治体職員向け、年金事務担当者向け、社会保険労務士向け、FP向け、社会人1年生向けなど。㈱服部年金企画講師。●執筆は通算450本以上!『週刊社会保障』の「スキルアップ年金相談」「年金相談のトビラ」(法研様)、月刊『企業年金』の「知って得!公的年金&マネープラン」(企業年金連合会様)、「東洋経済オンライン」(東洋経済新報社様)、「MONEY PLUS」(マネーフォワード様)、「Finasee(フィナシー)」(想研様)、「現代ビジネス」(講談社様)、「あなたのお金と暮らしのそばに。ハマシェルジュ」(横浜銀行様)、「よるかぶラボ」(ジャパンネクスト証券様)、「ファイナンシャルフィールド」(ブレイクメディア様)。その他、FUSOSHA MOOK「定年前後に得するお金の手続き」(扶桑社様)共同監修。●調査研究活動は研究論文「老齢年金の繰下げ受給の在り方-遺族厚生年金の受給権がある場合-」(日本年金学会編『日本年金学会誌第39号』)など。●取材協力先として『SPA!』(扶桑社様)、『女性自身』(光文社様)、『プレジデント』(プレジデント社様)、『日本経済新聞』(日本経済新聞社様)、『読売新聞』(読売新聞東京本社様)。