小川 洋平

個人事業主の社会保険って会社員と何が違うの??  ①老齢年金編

こんにちは(^^)

個人事業主と小規模法人経営者のお金のサポーター、ファイナンシャルプランナーの小川です。

「個人事業主だから年金が少ない・・・」

「病気して仕事休んだら収入の補填がない・・・」

このような話を聞くことがあるのではないでしょうか?

今回と次回でそんな個人事業主の方の社会保険についてお伝えしていきます。

それを知ることで適切な保険に加入したり、将来のためにお金を貯めたり、何歳まで仕事を続けるか計画を立てたりと弱点をカバーすることもできますし、仕組みを知ることで実はフリーの立場の方が上手にお金を残すことができるようにもなります。

今回はそんな社会保険の違いと、最後に私が実際にやっている社会保険料負担を減らしながら社会保障増やせる裏技的な方法についてお伝えしますので是非最後までご覧くださいね。

加入する社会保険の種類

会社員で加入する「社会保険」と呼ばれるものは①厚生年金保険と②健康保険③介護保険、この3つの総称を主に社会保険と呼んでいます。実際には労災保険や雇用保険も含み、それらを含んで呼ぶ場合もあります。

一方で個人事業主の場合は①厚生年金保険→国民年金保険 ②健康保険 → 国民健康保険 という違いがあり、労災保険や雇用保険には加入しません。(労災は任意加入も可)

今回は①の違いについて何があるのかを見てみましょう。

老後に受け取れる金額はいくら?

年金制度は2階建ての制度と呼ばれ、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金となり加入義務がある部分となります。

その上に企業年金制度、そして4階部分に保険会社の年金商品などがあるというイメージです。

自営業者の方は国民年金保険の第一号被保険者と呼ばれ、国民年金保険に加入します。

20歳~60歳の方に加入義務があり、65歳以降に老齢基礎年金を受け取ることができます。

未納、保険料納付猶予の期間が無い場合には満額で年間約78万円となり、その年の物価の変動等により支給額が変わります。

一方、会社員や法人の経営者、公務員の方は厚生年金保険は2階部分の制度で、厚生年金に加入していた人は65歳になると国民年金に上乗せして自身の加入実績に応じて年金を受け取ることができ、一階部分の基礎年金と厚生年金を両方受け取ることができます。

なので、厚生年金に加入できる会社員や会社役員の方が個人事業主よりも将来受け取れる年金額が多いということになります。

いくら差があるのか?

では、厚生年金で受け取れる金額はいくらなのでしょうか?

現在の老齢厚生年金の計算はこのように計算します。

平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数 ×1.002

(平成15年以降の加入分について)

と、細かく計算せずとも簡単に↓このように計算すればOKです。

賞与を含めた過去の給料の平均 × 0.0055 × 勤務していた月数

これで現行制度においての厚生年金額がざっくり計算できます。

例えば、平均年収が360万円で、20歳~60歳まで加入したとすると・・・

30万円 × 0.0055 × 480か月 =789264 ≒年間79万円

となり、老齢基礎年金78万円と老齢厚生年金79万円と合わせ157万円となります。

老齢基礎年金だけだと月割りすると6.5万円になりますが、老齢厚生年金を合わせると倍の約13万円となりますので老後はずっと楽になりますよね。

これが厚生年金加入のメリットですが、個人事業主の場合はこれまで加入していた分を受け取ることができ、仮に独立するまで会社員時代が10年間あった場合ですと年間26万円程度上乗せということになります。

支払う保険料を比較

「会社員よりそんな少ないのか・・・」

と思われるかもしれませんが、ご安心ください。

これは何も対策しなかった場合です。

受け取れる年金額は確かに多いのですが、支払う保険料はどの程度でしょうか?

厚生年金保険料は4~6の平均月収で決まる標準報酬月額 × 0.183で計算し、これを会社と従業員で折半します。

つまり、30万円の平均標準報酬月額だとしたら、30万円 × 0.183 =54,900円 これを会社と個人で折半し、27,450円ずつ負担することになります。

国民年金保険料が大体16,500円程度ですので、個人負担分だけでも毎月1万円以上負担が多いことになりますよね。

このケースでは個人事業主よりも会社員の方が社会保険料の負担が多いことになります。

そして、会社負担分と合計すれば3倍以上の保険料を払っていることになります。

会社員の立場だとその分余計に保険料を負担しているから将来多く受け取れるということになります。

個人事業主より3倍の保険料を負担しているのに、このケースでは給付は約2倍・・・。

個人負担分だけで考えればお得なように見えますが、会社負担と併せて考えると「う~ん」となってしまいます。

私なら「だったらその会社負担分お給料としてもらえるはずだったのでは・・・」と考えてしまいます。

こう考えると実は厚生年金保険ってそんなにお得なものではないのです。

もっと有利に自分年金を創る!

さて、厚生年金は会社員である以上は加入義務があります。

収入が増えればその分保険料は当然高くなり払わなければいけなくなります。

その分特典もありますが、個人事業主はその分自分の状況、考え方に合わせて自由に準備することができます。

そして、やり方次第で厚生年金保険よりも有利な自分年金を創ることも可能なのです。

その方法がiDeCo、付加年金、国民年金基金、小規模企業共済等といった制度です。

会社員よりも年金の受取額が少ない分、会社員よりも厚生年金保険料の負担が少ないのですからその分自分で積立すれば年金制度が今後改正されても関係ない、自分のための自分年金を準備できますよね。

法人化によって同じ負担でも将来の年金を増やす裏ワザ

これは私が自身の事業を法人化した理由なのですが、法人の代表者になることで厚生年金に加入し、今と同じ負担で将来の年金を増やす技を使いました。

ただし、役員報酬は月額88,000円です。

なぜ、役員報酬をそんなに低く設定したのか、その理由は社会保険料にあります。

厚生年金保険料は 標準報酬月額 × 0.183で計算します。

私の場合は法人の代表者ですので、会社負担分も個人負担分も自分で負担します。

すると、厚生年金保険料は 88,000円 × 0.183 =16,104円となります。

厚生年金に加入したのに国民年金保険料よりも少しだけ安くなります。

でも、仮に60歳まで加入した場合の老齢厚生年金は年間約14万円上乗せになります。

これが同じ社会保険料でも将来の年金受給額を増やせる、法人化の裏技です。

「それじゃ生活費足りない!」

と思われるかもしれませんが、ここで自分が使っている支出の内訳を考えてみます。

意外と多い、会社の経費にできるもの

支払っている経費をまず書き出してみると、案外会社の経費として計上できるものがたくさんあるんですよね。(※実際の税務上の処理については税理士、もしくは所轄の税務署に必ずご確認下さい)

通信費等も、携帯電話やインターネットをほとんど仕事で使っているという方も多いでしょう。

そして、生命保険料も一部会社契約にして会社負担で支払うことができますし、なんと今はiDeCoの掛け金も会社の経費で大部分を拠出することもできます。

そして、老後の資産形成は会社で退職金積立をすることもできます。退職金積立は損金にはなりませんが、社会保険料の負担を減らすという意味では会社の資産として積み立てておいて経営者の退職金として渡す戦略も有効です。

販路拡大を目的としたものであれば飲食代やゴルフのプレー代なども接待交際費にすることも可能です。

また、個人所有の車を仕事で使ったり、自宅の一部を事務所として使っている場合には認められる範囲内になりますが法人から賃料として支払うことで社会保険料の算定対象外で個人の収入を得ることも可能です。

など、このように毎月支払っているコストを書き出してみて、法人の支出と個人の支出に分けてみると案外経費にできたりするので役員報酬を抑えることも可能なのです。

仕組みを知れば弱点をカバー、裏技を活用できる

個人事業主と会社員の違いは何か、これを知ることで個人事業主の弱点をカバーすることもできますし、私のように法人化によってコストを下げながら社会保険を充実させるという裏技も使えます。

会社員と比べ社会保険が寂しいという反面、個人事業主は税金、社会保険のコントロールの自由度が高いということができます。

個人事業主は自分で制度の仕組みを利用し、自分に最適な形を作ることができるのです。

その人によって何が最適なのかは異なりますので、制度を知り、自分には何が合っているのかを知り、自分にとっての有利な形を作っていきましょう。

そして、次回は万が一があったときや、ケガや病気でお仕事を休まなければならないときの保障のことについてお伝えしていきます。

ここを拡充できるのも法人化することのメリットの一つです。