こんにちは!小規模事業者のお金のサポーター、ファイナンシャルプランナーの小川です。
今回は先回に引き続き、個人事業主の社会保険についてお伝えします。
先回の記事をまだご覧になっていない方はこちらからご覧ください↓
国の生命保険=遺族年金、障害年金
先回の記事では老後に受け取れる年金について記載してきましたが、今回は「国の生命保険」についてお伝えしていきます。
私たちが将来受け取れる国民年金保険や厚生年金保険ですが、「でも、早死にしたら何にもならないじゃん・・・」って思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも、実は国民年金保険や厚生年金保険の機能は老齢年金だけではありません。
死亡時、所定の障害状態でも年金を受け取ることができる、言わば国の生命保険というような機能もあるのをご存じでしたか?
遺族年金とは、簡単にお伝えするとお子さんがいる働き盛りのお父さん、お母さんに万が一があった時の国の死亡保障、障害年金は所定の障害状態になり働けない場合の国の障害保障です。
あまりご存じない方も多いのですが、公的年金保険にはこんな保障の機能が備わっているのです。
そして、個人事業主の加入する国民年金、会社員や法人経営者の加入する厚生年金では制度が異なりますのでそれぞれ見ていきましょう。
個人事業主の遺族年金とは?
遺族年金とは、簡単にお伝えするとお子さんがいる働き盛りのお父さん、お母さんに万が一があった場合に受け取れる国の死亡保険のようなものです。
個人事業主の場合は国民年金の第一号被保険者となり、遺族基礎年金を受給することができます。
※厚生年金加入月数が300月以上ある場合には加入実績に応じて遺族厚生年金も受給可能
お子さんが18歳になる年度(高校を卒業する年度)まで、毎年約78万円+お子さんの数×約22.5万円が受け取れます。
※3人目以降は一人あたり75,000円になります
つまり、お子さんが二人いるお父さん、お母さんに万が一があると、78万円+22.5万円×2人=123万円≒月額にすると約10万円をご家族が受け取ることができるということになります。
お子さんが一人高校卒業を卒業したら子の加算が一人分になって、年間で約100.5万円となり、二人とも高校卒業の年度が終了すると遺族基礎年金の支給は停止となります。
会社員(厚生年金加入者)の遺族年金
さて、一方で会社員の場合の遺族年金はどうなるでしょうか?
遺族厚生年金は遺族基礎年金に上乗せして受け取ることができます。
そして、遺族厚生年金は老齢厚生年金と同様にその人の加入月数や報酬によって変わります。
先回の老齢厚生年金の計算と同様に、月収30万円の場合で計算してみます。
厚生年金加入月数25年以下の場合 30万円 × 0.0055 × 300月 ×3/4 = 37万1,250円 = 年間約37万円
※加入月数が300月(25年)未満の場合には300月で計算される
年間で約37万円ですので、月額に直すと3万円ちょっとプラスということになり、遺族基礎年金と合計すると月額13万円上乗せされることになります。
そして、遺族厚生年金に加入する最大のメリットは、お子さんが全員18歳になり、遺族基礎年金が支給停止になった後にあります。
お父さんが亡くなった場合とお母さんが亡くなった場合では大きく制度が異なるところではあるのですが、お父さんが亡くなった場合には遺族厚生年金は変わらずに支給され、そして遺族基礎年金に代わって中高齢寡婦加算が支給されます。
中高齢寡婦加算は年額58.5万円、遺族厚生年金が約37万円ですので、合計約95.5万円がお子さんが18歳到達後も奥様が65歳になりご自身の老齢年金受給の年まで支給されることになります。
そして、遺族厚生年金は奥様が65歳に到達した際に、ご自身が厚生年金の受給資格があればご自身の老齢厚生年金か遺族厚生年金かを選択することができます。
個人事業主の障害年金
遺族年金だけでなく、ケガや病気がきっかけで障害を負ってしまい、働けなくなってしまった場合にも同様に公的年金から保障を受けることができ、個人事業主の場合には障害基礎年金を受け取ることができます。
障害基礎年金は1級、2級の障害状態で受け取ることができ、配偶者、2人の子がいる場合には
2級の場合 約78万円 + 子の加算22.5万円 ×2人 = 約123万円
1級の場合 約78万円 × 1.25 +子の加算22.5万円 × 2人 = 約142.5万円
この金額が認定要件に該当している限り支給されます。
会社員の障害厚生年金
続いて、会社員が受け取れる障害厚生年金についてです。
月収30万円の人であれば
30万円 × 0.0055 × 300月 = 約49.5万円 が2級の障害厚生年金の金額となります。
※遺族厚生年金同様に加入月数が300月未満の場合は300月として計算される
そして、1級の場合にはその1.25倍、配偶者がいる場合には約22.5万円が上乗せされます。
2級の場合 約49.5万円 + 配偶者加算約22.5万円 = 約72万円
1級の場合 約61.25万円 + 配偶者加算22.5万円 = 約83.75万円
となります。
障害基礎年金と合計すると
2級の場合 約123万円 + 約72万円 =195万円
1級の場合 約142.5万円 + 約83.75万円 =約226.25万円
となり、お子さんが18歳になった後には約22.5万円ずつ減っていくことになります。
そして、障害厚生年金は障害基礎年金には無かった3級に該当した場合の保障もあります。
上記のように加入実績によって計算されますが、最低58万6,300円を受け取ることができます。
と、このように老齢年金のみでなく遺族年金、障害年金でも会社員と個人事業主では大きな差があります。
ケガや病気で仕事を休んだ時の収入の補填
次に健康保険の制度についてですが、個人事業主は原則として国民健康保険に加入し、会社員は健康保険、公務員であれば共済組合の共済制度に加入します。
組合の国民健康保険に加入する場合等例外はありますが、原則として個人事業主にはケガや病気で休んだ場合の収入を補填する制度はありません。
対して、会社員はケガや病気で休んだ場合には休業4日目から過去1年間の月収(平均標準報酬月額)の2/3を日割りした金額を受け取ることができます。
例えば、平均月収30万円の会社員であれば1日あたり約6667円を4日目から受け取ることができ、一か月あたりでは20万円を最長1年半まで受け取ることができます。
ここも個人事業主と会社員の大きな差と言えますね。
自分の身は自分で守る!
このように、老齢年金同様に会社員とは社会保障が異なります。
ですので、個人事業主の方は特に「自分の身は自分で守る!」ことが大事になりますね。
先回お伝えしたように、会社員に比べ保障が少ないのならばその分自分で対策すれば良いのです。
生命保険商品や損害保険の商品、共済などを活用し、死亡保障や障害状態の保障、休業時の収入の補填等、足りない分を補完することができます。
ただし、単に「社会保障が少ないから」という理由で保険を手厚くするのではなく、「現状でどんなときに、どの程度お金に困ることが予測されるか?」ということをしっかり考えていただいた上で、それに合った適切な保障を設計することが大切です。
法人化によって社会保障を手厚くすることができる
さて、ここまでお伝えしてきたように会社員が加入する厚生年金と健康保険、個人事業主が加入する国民年金と国民健康保険の保障には大きな差があることをお伝えしてきまいた。
生命保険で会社員よりも多く保障を設定するのも手段の一つなのですが、法人化することにより厚生年金、健康保険加入で社会保障を手厚くすることも検討していただいても良いでしょう。
先回私が自身の事業を法人化した理由をお伝えしましたが、その理由は勿論老齢年金の部分だけではありません。
厚生年金、健康保険に加入することにより上記のような保障を社会保険料負担を減らしながらも上乗せすることが可能なのです。
更に、私の場合は予想される所得で計算してみると法人化して健康保険に加入することによって毎月6000円以上のコストダウンまでできてしまいました。
制度と仕組みを知り、自分用にカスタマイズする
このように、制度を知って社会保険の内容や保険料がどのように決まるのかを知ることで自分の身を守るために自分でカスタマイズして制度を上手に使うことも可能です。
そうすることで社会保障を手厚くするだけでなく、毎月の税金、社会保険料の負担を減らす効果も得られる場合があります。
私のクライアントで旦那様が個人事業をされていて、奥様が経理や事務を担当していた方がいらっしゃいましたが、国民年金保険料は当然にお二人分支払っていましたが、法人化して社会保険に加入することにより奥様が旦那様の扶養に入ることで奥様の分の国民年金保険料が支支払い不要になった方もいらっしゃいます。
個人事業主だから社会保障が少ない・・・
だったら、制度を知って自分で自分にとって有利な制度にしてしまえばいいんです。
そして、iDeCoや小規模企業共済等の資産形成制度を活用したり、保険商品や共済を活用し足りない分をカバーすることを考えてみます。
まずは現状を知り、ご自身にとって最適な方法を考えていくことが大切ですね。