小川 洋平

お金をかけずに大企業に負けない福利厚生を準備するには・・・?

こんにちは(^^)

先日1級ファイナンシャル・プランニング技能士に合格しました、ファイナンシャルプランナーの小川です。

今から9年前、当時保険屋さんだった私はFPの知識の必要性を痛感して勉強を始め、2級に合格しました。

一発合格して調子に乗った私はそのまま1級に申し込みしてみましたが、手も足も出ずに惨敗してしまったのでした(^^;

あれから9年、やっと合格しました。今度は確定拠出年金や企業年金のスペシャリストであるDCプランナー1級を目指し勉強していきたいと思います。

さて、コロナ禍で有効求人倍率は落ち込んでいますが、建設、介護業界を中心に人手不足のお悩みの声はよく耳にします。

そういった業種、職種で採用を強化するにはやはりそれなりの待遇と、働きやすい環境というものが必要になってきますね。

お給料がそれなりにもらえるというのは勿論のことですが、昨今では福利厚生の充実が新卒者の企業選びの基準の第一位になっているようです。

ということで、今日は人が集まる、社員が定着する福利厚生についてお話します。

「従業員を守ります!」

このように掲げた建設業の求人の看板を以前見かけたことがあります

そこにはこのように書かれていました。

・中小企業退職金共済 月3万円

・特定企業退職金共済 月3万円

・労災での休業時 全額保証

なんと、この企業では中小企業退職金共済、特定企業退職金共済を合計して6万円も従業員さんのために退職金の積立をされているのです。

毎月6万円を退職金の積み立てを行う・・・

こんな企業はどんな大企業でも私の知る限りありません。

これくらい気合入れて福利厚生を充実させているとインパクトに残りますね。

ただ、「いや、うちの会社そんなの無理だよ!」など、思われる経営者さんも多いことと思いますが、ここでお伝えしたいのは「なぜこの会社はここまで福利厚生にお金を掛けているのか?」ということです。

これは建設業という職業上、就業中の従業員さんに万が一ケガをさせてしまった場合にも会社がしっかり従業員さんを守る、そして退職後の生活も大企業も真っ青なくらいの退職金制度を用意することで会社守るという意志をしっかり福利厚生という形で表現しているためです。

「従業員を守ります!」という言葉を具体的に会社の仕組みに採用し、採用と人材の定着に活用しているわけですよね。

たしかに、ここまで福利厚生を強化している企業は魅力的ですが、これをそのまま真似をする必要はありません。

それに、そこまで会社がお金を掛けなくても、もう少し効率的にお金を用意してあげることもできるはずなんですよね。

例えば、毎月たった1万円を会社が従業員さんに掛けるだけでも、定年退職する頃に1000万円程度の退職金代わりのお金をプレゼントしてあげることもできるのをご存じでしょうか?

自社で退職金を運用し、定年退職する頃に1,000万円をプレゼントするのは難しいことでしょう。

ましてや、中小企業退職金共済や特定企業退職金共済、その他の受取額が確定している企業年金制度では低利で増えないため、2倍の毎月2万円程度積立しなければ不可能な金額です。

しかし、それがたった1万円で可能になります。

それらの半分の負担で可能にするのが確定拠出年金(企業型確定拠出年金、iDeCoプラス)です。

確定拠出年金(企業型確定拠出年金、iDeCoプラス)の活用

確定拠出年金は企業年金制度の一部で、主に老後の資産形成を推奨するための制度です。

この制度は会社が毎月従業員さんに掛け金を拠出し、従業員さんは会社が出してくれた掛け金を自分で運用商品を指定し、受け取りまで運用していただきます。(iDeCoプラスの場合は従業員さんの掛け金に上乗せし会社が拠出)

会社にとっては掛け金は全額福利厚生費になるため節税しながら従業員さんの将来のお金を貯めることができ、従業員さんにとっても給与に上乗せされて税金や社会保険料の算定の対象にならずに将来のお金を積み立てることができます。

運用には投資信託等の商品を選ぶことができるため、従業員さんが自分の考え方、スタンスに合わせて運用商品を選ぶことができ、安定的な運用方針であっても20代~定年退職までの期間で掛け金の2倍~3倍程度のリターンを狙っていくことも十分に可能なのです。

例えば、こちらのカシオのサイトで運用利回りと積立年数を入力すると、自動的に将来の資産がいくらになっているかを計算することができます。

keisan.casio.jp/exec/system/1254841870

仮に新卒で22歳で入社し、65歳で退職するまでの43年間、1万円ずつ、3.5%を非課税(確定拠出年金での運用の利益は非課税であるため)で運用した場合を入力してみましょう。

すると、43年間の積立総額は516万円になりますが、利益はそれに対し685万円となり、合計で約1200万円もの金額になっているという結果になります。

投資はハイリスク??

と、このようなお話をすると・・・

「でも、投資ってハイリスクじゃないの??」

「そんなに増えるのって、怪しくない??」

と、このように思われる方も多いでしょう。

でも、ここで計算してみた3.5%程度の利回りならばさほどリスクを取らずとも実現できます。

例えば、過去20年間の実績ですと、株式を20%、債券を80%という、安定的な組み合わせでも平均リターンは4%を上回る実績となっています。

勿論、投資ですので確定ではありません。

しかし、過去20年間は平均的にこのリターンを実現しており、今後もこの数値を参考にリターンを狙っていくこともできると考えられます。

そして、1年単位では大きくてもごく稀に起きるリーマンショッククラスの金融危機が起きなければ1年単位でマイナス8%程度が想定されるくらいです。

(計算の仕組みはまたの機会に)

この組み合わせで数年保有していればこれだけマイナスしたとしても損失はほぼ発生していないでしょうし、新卒から定年退職まで勤め上げれば毎月1万円だけでも1000万円のお金を従業員さんに渡してあげることも高確率で可能なことです。

ですので、自分で運用スタンスを選ぶことができる確定拠出年金は低額で将来のお金を準備するために有利なのです。

「いや!でも僅かな確率とはいえ運用の実績がそれ以下だったら結局そんな利回りにならないじゃないか!」

と思われる方も多いかもしれません。

ただ、考えてみてください。

仮にそのような状況になると、その他の企業年金制度や中小企業退職金共済等も運用のマイナスの影響を受ける場合があり、その場合には給付額が減額される可能性も無い訳ではありません。

その場合、企業がその不足分を補わなければならない場合もあります。

その点、積極的にリターンを求めていくか、安定性重視でリターンもそこそこに抑えていくか、自分で自分に合った運用スタンスを見つけて運用できる制度ということは従業員さんの納得感も得ることができます。

そして、それを決めるには投資の基礎知識を知ることが大事です。

投資教育は福利厚生の一環

このように、確定拠出年金の制度を用いて従業員さんの将来の資金づくりを行うことで大企業にも負けない制度を導入することができます。

そして、この制度を活用するには従業員さんがしっかり投資のことを理解し、活用することができる「投資教育」が大変重要であり、加入時には何かしらの方法で伝えることが義務化されています。

ところが、この制度を導入した企業様からは「投資教育が負担」といった声をよく聞きますし、そもそも投資教育をプリントの配布等で済ませている企業さんも多いようです。

その結果、残念なことが多くの従業員さんが有利な制度を使いこなせていないということ。

たった毎月1万円でも大企業顔負けの退職金(の代わり)を準備してあげられるのに、それを投資教育が負担だからとやらないで、全部元本保証の預金になっていたり、自分で意味がわからずに変な商品を選んでしまっていてはせっかくの良い制度も台無しです。

そして、従業員さんのお金が育たないだけでなく、会社に対し従業員さんからはこのように思われることになります。

「こんなよくわからない制度を会社でやってるけど、何にも説明無くてわからない・・・」

確定拠出年金が導入されている企業にお勤めの社員さんから、90%くらいの確率でお聞きする言葉です。

この言葉が従業員さんから出ると、大体は会社が導入したこの制度に対する不満の声です。

どうしたら良いのかわからないことがストレスになるという方も少なくはありません。

せっかく会社がお金を掛けて従業員さんのために導入している制度なのに、逆にこのように思われてしまっては会社としてもとても残念なことですよね。

そうした相談者様には勤務先の制度を推奨し、投資のやり方を教え、そのシミュレーションをお見せすると「やっとわかった!」といった様子で積極的にご自分で運用する商品を見直す方が多くいらっしゃいます。

これまで誰も教えてくれなかったお金の知識を会社が教えることは、知識を教える機会を会社が設けること自体が従業員さんにとっては有益な福利厚生の一部と考えて良いでしょう。

「魚を獲ってあげるよりも魚の獲り方を教えること」これは有名な言葉ですよね。

将来のお金も、会社が従業員さんのために運用して、将来老後を迎える際にお金をあげるよりも、やり方を教えて、自分でやってできるようにしてあげた方が老後のお金だけでなく、人生のあらゆる場面で役に立つお金の知識を得ることができます。

確定拠出年金に加入する際の投資教育は「会社の義務」「負担になる」と捉えられがちですが、ここをしっかり時間を掛けて、我々プロのファイナンシャルプランナー等から講習を受けることは長い目で見て従業員さんへの福利厚生の一つです。

確定拠出年金を導入し、少しの掛け金でも従業員さんの将来のお金を準備する仕組みをつくり、お金の知識をプレゼントしてあげることで従業員さんの満足度アップにつなげ、採用強化と定着率アップにつなげてみてはいかがでしょうか?