こんにちは(^^)
経営者の資産を最大化し、お金と時間のゆとりを創る資産形成のプロ、ファイナンシャルプランナーの小川です。
近年、人手不足が各業界で問題になっていますよね。
「求人広告を出しても人が集まらない・・・」
「稼ぎ時なのに休まなきゃいけない・・・」
そんな声もよく耳にしています。
そんな状況で、自社の求人に応募してもらうためには、自社が求める人財像が求めるニーズを満たす求人を出すことが大事です。
そんな中で、近年では一つの重要な要素になっているのが「福利厚生」で、2019年には新卒者が企業に求めるものの第一位になったのでした。
そんな福利厚生を、お金を掛けずに準備する方法があります。
しかも、従業員数300人以下の中小企業限定です。
そんな制度について、対話形式で解説します。
1.全額損金で役員と社員の将来の資金を創れる制度
売上も安定して、そろそろ福利厚生の制度を導入して社員を雇って行こうと思います。退職金みたいな制度を用意したいと思ってまして、税理士さんからは中退共(中小企業退職金共済)を勧められてるんですけど、他に何かありますか?
そうですね、中退共も全額損金で従業員さんの退職金を創れますし、国からの補助もありますのでアリだと思います。
後々トラブルになりそうなルールだったり、目的が従業員さんの老後の資金のためとかになると注意しなければならないこともあるんですけどね。
他には、生命保険を使って課税を繰り延べしながら退職金を自社で積立したりする制度もありますが、オススメとしてはiDeCoプラスを活用されると良いかと思いますよ。
iDeCoプラス・・・?
iDeCoはやってますけど、「プラス」って??
iDeCoプラスは、iDeCoに加入している人に、会社から上乗せで掛金を出せる制度です。
「イデコプラス・中小事業主掛金納付制度」というのが正式な名前です。
www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194195.html
iDeCoは通常、個人の口座から掛け金を支払って、掛け金は全額が所得控除となって税金の控除対象になりますよね?
iDeCoプラスの場合、個人の掛金は会社が給与天引きにして、そこにさらに会社の規程に合った金額を上乗せして国民年金基金連合会に支払います。
従業員さんの負担分は通常のiDeCoと同様に全額所得控除になりますが、この制度の美味しいところは会社から個人に支払う掛金も全額損金になるという点です。
会社の掛金で自分の将来の資金を創れるってことですね!
社長の私にも払えるんですか??
はい、社長や役員の方も大丈夫ですよ。
規程を作ることが必要なんですが、そこで加入する社員さんに勤続年数や役職によっていくら会社から支払うかを決めて支払うことができます。
例えば、社長は会社から2万円、専務は1.5万円、他役員は1.2万円・・・ とか
なので、社長にも従業員さんにもとっても美味しい制度なんですよ。
2.インフレリスクに対応できる
あと、私が中退共のデメリットとして考えているのが、「インフレリスク」です。
インフレリスクとは、世の中の物価が上がり、お金の価値が下がってしまういことを言います。
50代くらいの社員さんが多く、60歳~65歳で退職をお考えならばインフレリスクもあまり意識しなくても良いですが、30代~40代くらいまでの方の資産形成はインフレリスクを特に意識された方が良いです。
今の1万円と、将来の1万円の価値が違うってことですよね・・・・。
はい、運用期間が長いほどインフレによる資産価値の目減りは大きくなりますね。
政府の目標はインフレ率2%を目指していますし、アメリカやイギリスは2~3%で上昇し続けているんです。
だから、それ以上の利回りが無いと金額自体は増えていても、将来今と同じものが買えなくなってしまうんです。
それに対して、中退共の掛金に対しての受取額はこのようになってます。
毎月1万円の掛金なら、20年掛けて266.66万円ってところですね・・・。
毎月1万円を20年掛けると、合計で240万円ですから、+26.66万円ってところですね。
はい、そういうことですね。
ただ、中退共のメリットとして、1年間掛金の助成を受けることができますので、実際にはもうちょっとお得なのですけどね。
一方、iDeCoプラスで運用すると、積立額は一緒でもこんな数字も狙っていけます。
411万円・・・
中退共よりも140万円以上差が出るんですね・・・
勿論投資ですから変動はありますけど、このくらいの運用利率ならば安定的な運用でも狙っていくことができますよ。
過去の実績からだと、20年積み立てて中退共のリターンを下回ったケースの方がレアケースですね。
こうやって投資を活用して高い利回りを得ることでインフレリスクから将来の資産を守ることができるんです。
3.魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ
中退共などの会社の掛け金を増やして福利厚生を強化する方法もありますけど、資産形成の基本を教えて資産形成を始めることでインフレに対応することもできますし、同じ掛け金でも将来の資金が大きく増えてくれますよね。
そうですね。
20年でも140万円以上の差が出るのですから、30年、40年と続いたら更に大きな差になりますよね。
はい。
中退共で30年掛けると421万円ちょっとになりますが、積立投資で年利5%を実現できた場合には832万円程度にまでなります。
つまり、倍近くです。
倍ですか・・・
毎月1万円の支出でも、2万円を会社から支払ってると同じメリットを受けることができるってことですね・・・
そうですね。
なので、中退共で準備するのも良いのですけど、「魚を与えるのでなく、魚の釣り方を教えよ」という言葉の通り、会社がお金を増やしてあげるのではなく、iDeCoプラスでお金を出してあげて、自分で増やせる金融知識を提供してあげた方が結局は社員さんの資産を増やしてあげることができるんです。
なるほど・・・。
せっかく会社からお金出すわけですから、できるだけいっぱい受け取ってもらった方がこちらとしても支払う甲斐がありますよね。
そうですね。
それに、もっと効果が大きいのは将来資産を取り崩すときなんです。
例えば、65歳で2,000万円を用意できていたとしましょう。
その2,000万円を運用しながら取り崩すのと、何にも運用しないとではこんな差が出るんです。
こんなに違うんですね・・・
同じ2,000万円なのに、運用するかどうかでこんな差が出るんですね。
はい、投資の知識が本当に価値を発揮するのは取り崩すときとも言えるかもしれませんね。
でも、いざ大きなお金を運用しようとすると、やっぱり慣れてないと怖いですし、間違った判断をしてしまいがちなんです。
だから若い頃から、毎月少額でもいいからまず投資に慣れておいて、いざ大きなお金を運用しながら取り崩すときに適切な判断をできるように練習しておくことが大事なんですよね。
投資も車の運転と一緒で慣れが大事なんですよ。
ただ退職金を渡してあげただけじゃ運用の知識なんて育たないですし、今まで投資なんてしてこなかったのにいきなり大金渡されたら変なところに投資しちゃうこともありそうですしね・・・。
まさにそうなんです。
だからこそ下記の記事のようなことが起きてしまうんですよね。
せっかく退職金もらったのに、資産を守るどころか減らしてしまったり・・・。
金融知識を身に着けてもらうことで変な商品買ってお金を減らさないように、自分の資産を守ることにも繋がるわけなんです。
定年後に「老後資金2000万円」を銀行に預けた結果、まさかの「50万円の損」が出た「意外なワケ」(小川 洋平) | マネー現代 | 講談社 (gendai.media)
74歳男性が青ざめた…退職金600万円を「超優良企業」に投資した結果、訪れた「ヤバすぎる結末」(小川 洋平) | マネー現代 | 講談社 (gendai.media)
他にも、投資の知識を学んだことで来年から改正されるNISAを活用すれば、毎月2万円ずつの積立でも30年後には1660万円以上を狙っていくことができ、毎月5万円ずつ積立投資していれば4000万円超も狙えます。
毎月2万円を5%で積立投資した場合のシミュレーション
毎月5万円の場合
4.iDeCoプラスが最適な理由
投資ってこんな大きなメリットがあるんですね・・・
早く始めれば始めるほど将来に大きな差が出そうですよね。
そうなんですよ。
ただ、私ももう10年も前から投資の知識を伝えて続けてるんですが、実際に行動を起こす人ばかりではないんですよね。
大きな理由が、「頭でわかったけどイマイチ一歩を踏み出せない」っていうことです。
元々興味がある人ならば別ですけど、一度話を聴いただけで行動を起こせる人はごく一握りです。
たしかに、イマイチまだわからないこともたくさんあるので、どう行動したら良いかわからないかもしれませんね。
その行動を起こしてもらうきっかけとして、iDeCoプラスは有利です。
例えば、「iDeCoに加入した人は会社から報奨金として上乗せでMAX5,000円払うよ~」って言った場合、社員さんの立場としてはどう思いますか?
「せっかく会社がお金出してくれるならやってみよっかな~」
って思いますよね。
はい、そうなりますよね。
それに、そんなきっかけで一人がiDeCoに加入すると、人間は集団心理で生きる生き物ですから、「私も~」ってなって職場内でiDeCo加入の連鎖が起きるわけです。
その結果、自発的に投資を学ぶことになり、活用することができれば、会社が提供するのはiDeCoプラスで毎月数千円のお金と金融知識やサポート体制でも、一生で何千万円、億を超える経済的な差が生まれ、大企業の福利厚生を超えるメリットを従業員さんに与えることができるわけですね。
だから「魚を与えるより、釣り方を教えよ」ってことですね。
そうですね。
そんな制度を導入して、更にiDeCoやNISAをフル活用できるように、定期的に勉強会を開いて運用実績を見ながらアドバイスを受けられたりできるサポート体制を会社が用意してくれていれば、会社はお金をあまりかけずとも満足度が高く、「ここでしか得られない福利厚生」と思ってもらえて定着率アップ、採用の際に福利厚生として伝えることで採用率アップにも繋がりますね。
会社の掛金はいくらくらいから始められるんですか?
1,000円からでも大丈夫ですよ。
iDeCoの掛金が最低5,000円なので、会社が1,000円出して、従業員さんが4,000円でも大丈夫ですし、その逆で会社が4,000円払って従業員案が1,000円でも大丈夫です。
iDeCoの掛金は最大で23,000円までですので、会社と個人合わせてその範囲なら自由に設定できますよ。
ただし、規約を定めて厚労省に提出するので、金額を変えようと思っても変更にはちょっと手間と時間が掛かります。
なので、勤続年数や役職などでどの程度会社から支給するのか、最初にしっかり決めてから導入することが大事ですね。
5.まとめ
・iDeCoプラスはiDeCoに加入している役員、従業員の掛金に上乗せし、会社から全額損金で掛金を出すことができる
⇒経営者が節税、社会保険料を節約しながら自分の資産を創ることも可能
・自分で運用するため「インフレリスク」から資産を守り、資産を大きく増やすことも期待できる
・金融知識を身に着け、実践していくことで一生で大きなお金の差が生まれる
・iDeCoプラスは自発的にお金の知識を学ぶきっかけを創るのに最適
・会社はお金を掛けずとも従業員の経済的な豊かさに大きく影響する福利厚生を提供し、採用~定着率の向上に繋がる
iDeCoプラスは経営者が節税しながら自分の年金を創ることもでき、社員の満足度もアップし採用~定着にも活用できる制度です。
中小企業の退職金といったら、中小企業退職金共済が一般的ですし、候補として挙がってきますが、まだまだ老後まで先が長い40代くらいまでの人が多い職場にとっては現在のような低利な状態だとインフレに弱く、せっかく会社が掛け金を出しても将来受け取る時にその価値が失われてしまうこともあります。
政府の資産所得倍増の方針でNISAが大きく制度を改正しますので、有利な制度をフル活用する知識を得るきっかけとしてもiDeCoプラスを活用してみると良いでしょう。
「何も考えずとも会社から与えてもらえる」という福利厚生から「自分で学び、自分で将来の資金を創る」という制度に切り替えることで従業員さんの自主性の向上も期待できるでしょう。