小川 洋平

上場企業から学ぶ経営再生~赤字企業の改善計画~

こんにちは(^^)

中小企業経営者のキャッシュを増やし、資産を増やす資産形成のプロ、ファイナンシャルプランナーの小川です。

先日、お客様から保有されている株式についてのご相談をいただきました。

その中の一つで【6986 双葉電子工業(株)】についてのご相談をいただきました。

もう20年近く保有されているのですが、過去のこのような値動きをしてきました。

引用元:Yahoo!ファイナンス

一時期は株価は3,000円を超えたこともありますが、2018年頃から急降下をはじめ、今では500円前後で推移しています。

現在200万円程度の評価額で、購入した価格は1,000万円程度、損失額は約800万円となりますのでなかなかな損失ですね(^^;)

その理由は赤字続き

「手離した方がいいんですかね・・・」

ということでしたので、どうなのか簡単に分析してみたところ、経営再生計画が大変わかりやすく具体的でしたので、今回は双葉電子工業(株)の経営再生の資料を解説していきたいと思います。

尚、このコラムは当該銘柄の購入を推奨、今後の株価を予測するものではありません。

資料引用元:www.futaba.co.jp/

1.双葉電子工業(株)って?

双葉電子工業(株)は産業用、ホビー用のラジコン機器や、ドローン、金型用器材、有機ELディスプレイなどを首都高商品とし、世界的にも高いシェアを持つ会社です。

1948年に創業し、真空管の製造・販売会社としてスタートしました。

その後に真空管の技術を活用した有機ELディスプレイや等の開発、金型やラジコン送受信機の製造など、現在の基幹となる事業を開始し、ホビー用ラジコンで培った無線通信技術を活かした強みを持っています。

東証プライム市場に上場し、売上高は2024年3月期の実績においては563億6千万円、従業員数3,000人もの社員を持つ企業です。

2.これまでの業績は?

2015年度を境に業績が低迷し、2019年度以降赤字続きになっています。

営業利益とは、『本業の儲け』であり、借入の利息の収入、支出などを除いた利益のことを言います。

主力商品であったタッチパネルの需要減や、ホビー用ラジコン機器の航空法改正による規制強化の影響で需要の低迷などを受けて売上が減少したことが要因とされ、2019年度以降は米中貿易摩擦の影響による景気の減退、輸出の減少が大きく影響していると考えられます。

ただし、自己資本比率については非常に高く、業績低迷後も80%前後で推移し、高い安全性が健在しているのがわかります。

※自己資本比率=(純資産高ー非支配株主持ち分)/資産

また、豊富な現預金を持ち、現預金だけで負債を全額支払うことができるような、非常に強い財政基盤を持っていると言えます。

00.pdf (eir-parts.net) 2020年3月期決算短信より

自己資本比率が高く、豊富な現預金を持っていることは安全性としては非常に高い状態と言えるのですが、その反面新なイノベーションのための投資に消極的であったとも言えます。

企業の収益性を計る財務指標の一つに「自己資本利益率(以下ROE)」というものがありますが、これは自己資本に対しての利益率を表し、「いかに資本を有効活用して利益を得られているか?」を表しています。

自己資本比率が高く非常に高い安全性があっても、それに伴う利益が無いと収益性が弱いと判断されてしまいます。

企業は利益を再投資することで更なる事業拡大やイノベーションを起こし、成長を続けていく必要があります。

安全性が高いこと自体は良いことではありますが、商品のトレンドは時代の流れによって変わっていきますので、時代に合った社会に求められる商品の開発が常に求められています。

豊富な現預金と非常に高い安全性がありながらも、主力商品の需要減に対応できなかったのはイノベーションのための再投資が不足していたとも考えられます。

実際、転職サイトなどで同社を離職した技術職の方のコメントを読むとこのように考えられます。

3.どう収益を改善していく?

さて、上場企業である以上、このまま業績低迷、赤字のままでは株主は離れていってしまいますよね。

ですので、株主に対してどうやってこの状況を改善していくのか再建計画を示していかなければなりません。

それが記載されたのがこちらの中期経営計画書です。

medium-term_business-policy_fy2027.pdf (d21xsz2za2b5mz.cloudfront.net)

具体的にどのようなことを行っていくのか、こちらの資料には大変わかりやすく書かれています。

利益を向上するためにはコストの削減、それから売上の向上が必要です。

このようにして具体的にどのように固定費、変動費を削減し、どの程度を目指すのか目標値を設定し、期が終わった後には目標に対しての実績値を比較し提示しています。

また、自社の持つ技術や強みをどう活かしこれからの時代にアジャストしていくのか、いつ、何をするのかを具体的にこのように示しています。

そして、今後の売上高、営業利益はどの程度を目標にし、経営再建していくのかをしっかり明示していますね。

そして、現在の社会課題、ニーズに対して、このような事業の展開を考えています。

自社の持つ技術を活かし、人手不足や労働環境の改善といった建設業界の抱える課題の良きソリューションと言えますよね。

4.中小企業が見習うべきこと

上場企業にとって、業績は四半期毎に晒され、株主の厳しい目でチェックされており、業績低迷時にはこのようなわかりやすく、具体的な対策を明示し、その実現をコミットすることが必須です。

業績の低迷という問題を抱えた経営者様にとって、こういった資料は非常に参考になるものではないでしょうか。

上場企業は主に株主のためにこのような経営計画書を作成していますが、中小企業にとっては融資を受けている銀行に対して自社の計画を示すことが有効です。

銀行から決算書の提出を求められ、現状の報告と今後の見通しをお話しする場面もあることでしょう。

しかし、現在の業績になった理由が曖昧だったり、そもそも数字を経営者が理解していない、先の見通しも読めないといった状況ですと、そんな経営者さんに安心してお金を貸すことはできませんよね。

決算期が終わらないと自分の会社の利益の着地点が読めない、お金の流れをタイムリーに見える化できていないという状況でしたら、すぐに改善が必要と考えた方が良いでしょう。

仮に業績が悪かったとしても、現状を客観的に見ることができていて、現状の問題点と課題を明確に理解していて、具体的な目標値を設定し、いつ、どう改善していくのかをコミットできているのならば、現状が悪くても融資を受けられる可能性はアップします。

こういった資料を作成することや事業計画を作ることを面倒と感じてしまうこともあるでしょうが、資料を自分で作ってみることで社長や経営陣の頭の中で考えていることを見える化、整理してみることで新たな気付きや、どう対策していけばよいのかを考え易いものです。

業績が低迷している場合は勿論のこと、今は好調であっても、これから更に成長するためにも金融機関との付き合い方は重要になってきますし、場合によってはVC(ベンチャーキャピタル)の出資を受け入れた方が良い場合もあるでしょうから、そういった場面でも活用することができ更なる成長のためにも重要です。

ですので、今回ご紹介した双葉電子工業の中期経営計画書を参考に、これからの会社の経営計画を考えてみても良いのではないでしょうか?

また、株式投資を行う際には、決算短信のチェックは勿論、その会社の強み、これからの時代に成長が期待できる分野なのかなど、長期的な成長性を調査することが有効です。

上場企業の経営者がどう考え、現在の自社の市場環境や今後をどのように見通しているのかを知ることもでき、財務指標や決算報告を読むことになりますので、株式投資を行うことは経営者にとっては良き学び、良きトレーニングにもなります。

ただ単に自分の資産を増やすためでなく、学びのためにも株式投資を始めてみるとよいのではないでしょうか。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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