
こんにちは、経営者のキャッシュを増やし、資産を増やす小さな会社の社外CFO、ファイナンシャルプランナーの小川です。
最近、ホリエモンと割烹を経営するこめおさんのYouTube内で化学調味料を巡っての論争が巻き起こりました。
化学調味料が身体に悪いというのも科学的根拠が乏しいもので悪者扱いする必要もありませんが、無化調が好きな人は一定数いらっしゃいますし、客単価の高い割烹などではやはりイメージ戦略というものも大事ですから、自分の顧客が誰なのかを明確にすると化学調味料を使っていないことをPRすることも大事なイメージ戦略の一部と思いますけどね。
と、そんな話題になっている化学調味料と言えばやはり「味の素」ですよね。
この味の素の創業の歴史って、聞いたことありますか?
そして、味の素が持つ技術をベースに、これからの味の素を支える技術があることをご存知でしたか?
今回はそんな味の素グループの創業の歴史と、今後の事業展開について解説していきます。
1.「大量の昆布を買って煮出す・・・」大企業の原点
今や世界中で親しまれている「味の素」ですが、その始まりは一人の研究者のクレイジーとも言える研究からでした。
時は明治時代、日本の科学者であり東京帝国大学(今の東京大学)の池田菊苗博士はドイツに留学した際にドイツ人の体格と栄養状態の良さを見て「日本人の栄養状態を改善したい」と思うようになり研究を始めました。
味の素グループの原点となる「おいしく食べて健康づくり」のきっかけとなりました。
そんなある日、池田教授は妻の作る昆布だしの味に注目します。「このうま味の正体は何なのか?」という疑問を持ち、研究を重ねた結果、昆布に含まれるグルタミン酸という成分が「うま味」を生み出していることを発見しました。
この発見をもとに、池田博士は「これを使えば、どんな料理ももっと美味しくなるはず!」と考え、1909年に「味の素」として商品化。その後、実業家の鈴木三郎助と手を組み、「鈴木商店(のちの味の素株式会社)」を設立し、日本全国に「うま味」の魅力を広めていきました。
これが我々に馴染みのある調味料「味の素」の原点となり、もう100年以上もの間親しまれています。
そして、同じく我々に馴染みのあるコンソメスープやほんだしの開発も行ってきました。
「グルタミン酸をはじめとするアミノ酸には、まだまだ活かせる可能性があるのでは?」という発想のもと、食品の枠を超えて、アミノ酸を使ったさまざまな研究が進められました。
たとえば、
スポーツ分野においてはアスリート向けのアミノ酸サプリメントを開発、医療・ヘルスケアの分野では高齢者や病気の人向けに栄養補助食品を提供し、化粧品・美容においてはアミノ酸由来の成分を使ったスキンケア商品の開発なども行い、「美味しさ」だけでなく、アミノ酸の技術を活かして事業を展開してきました。
2.味の素のこれからを支える驚きの技術
最近の味の素は、アミノ酸の技術を活かしてさらに幅広い分野へ進出しています。
ABF(Ajinomoto Build-Up Film)といった絶縁フィルムの開発まで手掛けています。ABFはパソコンやスマートフォン等のCPUに使われており、現在では世界の主要なパソコンにおいてほぼ100%ABFが使われています。
味の素グループは1970年代にアミノ酸に関するノウハウを応用した絶縁性をもつエポキシ樹脂に注目し研究を続け、1990年代にその技術をパソコン用半導体基板の絶縁材料に応用したのでした。
それにより、これまでインク形式であった絶縁材料をフィルム化し、高性能CPUの様々な課題をクリアすることができ、世界から求められていったのです。アミノ酸の研究を通じて味の素はこのような技術も開発してきたのでした。
すでにABF(Ajinomoto Build-up Film)を通じて半導体パッケージの絶縁材料市場で大きなシェアを持っていますが、バイオフィルム技術を応用することで、さらなる市場拡大が見込めます。半導体の高性能化が進む中、味の素の技術が業界の必須技術となれば、同社の収益基盤が一層強化されるでしょう。
3.決算短信から読み解く味の素の強さ
こちらは味の素の2024年3月期の決算短信の内容です。
こういった上場企業の決算書は誰でもHPから見ることができますので、上場企業の決算情報を見ながら決算書を読む目を養っていくのも良い練習になります。



では、ここから簡単に収益性や安全性を分析してみます。
・収益性について
2023年度の売上高は1兆3,859億円(前年比+1.4%)と堅調に推移。営業利益は2,240億円(前年比+13.2%)、営業利益率は16.2%と、前年の14.6%から向上しています。
決算短信の内容によると事業ポートフォリオの最適化とコスト管理の徹底によるものと考えられており、特に、主力の「食品事業」「ヘルスケア事業」「電子材料事業」が安定的に成長しているためとされています。
アミノ酸の技術を活かした半導体事業が味の素の利益を強くしてくれていたと言えますね。
・安全性について
財務の安全性を示す自己資本比率(自己資本(非支配株主持分)÷総資産)は44.5%(前年43.1%)と改善しており、更に強い財務になっていると言えます。これは、堅調な利益成長とバランスの取れた資本政策によるものと考えられています。
また、ROE(自己資本利益率)は15.4%となっています。この自己資本利益率は元手の資金を使ってどれだけ効率的に利益を生み出すことができているかという指標です。
自分で事業を始める時に、利益が100万円出ている場合でも元手資金が100万円で利益が100万円出ているのと、元手資金500万円で利益を出せているのでは投資額に対するリターンは大きく違いますよね?
業種によって差がはありますが、この自己資本利益率が高ければ高いほど効率的にリターンを得ることができていると言えます。
今後の見通しとして、味の素は、食品事業の収益性向上に加え、半導体材料であるABF(Ajinomoto Build-up Film)の需要拡大による成長が期待されます。また、財務健全性が高いため、今後も成長戦略に向けた投資を積極的に行いながら、安定した収益基盤を維持する可能性が期待できるのではないでしょうか。
中小企業経営者が学ぶべきこと
味の素の歩みを振り返ると、単なる調味料メーカーではなく、時代とともに進化し、新たな市場を開拓してきたことがわかります。
味の素は「美味しさ」だけでなく、創業の理念を100年経った今も尚継承し、「健康」や「環境」といった新しいニーズに目を向けてこれまで事業を広げてきました。自社の強みを生かしながら、社会の変化を読み取り、自社の強みを主軸にしながら新たなビジネスを展開して来ています。
自社のコアコンピタンス(強み)を見極め、それを応用できる新しい分野を探ることが成長の鍵となるでしょう。
中小企業経営者の中には一つの業種である程度軌道に乗せることができると全く違う業態を始めようとして大きな損失を出してしまう人も多いものです。
自社の産業が斜陽化し、先行きが不安になると判断を誤ってしまうことも多いものです。
しかし、改めて自社の強みを再発見してみると、それを主軸にした事業展開も考えることもできるのではないでしょうか。
時代の変化を読み、コア技術を活かし、新しい市場を開拓してきた味の素のこれまでの歴史は中小企業経営者にとって大きな学びとなることと思います。
「自社の強みを活かして、次のステージへ進む」
この視点を持ちながら、持続的に成長する企業を創ることを目指してみましょう。
そして、今や超優良企業の味の素も最初の一歩は大量の昆布を煮出すという研究から始まりました。
今は小さなことでも、壮大な夢を持って地道な努力を続けていくことが大切ですね。
ちなみに、今回のコラムは以前現代ビジネスさんに寄稿させていただいた記事をAIを用いてリライトしてもらっています。