ご相談者様DATA
【年齢】 60歳
【職業】 自営業
【性別】 男性
【家族構成】 妻と子ども二人
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
子どもが二人います。上の子ですが、35歳になるのに定職に就かずフリーターをしています。
大学4年時に教授と仲が悪くなってしまい就職を斡旋して貰えなかったことから、全く定職に就くことが出来ずにいます。本人は、大学の名前でいつでもどこかへ入れると思っていて、親類が会社を紹介してくれても気に入らず全部断ってしまいました。しかし、気に入る会社はなかなか入れて貰えず今に至ります。
他に、定職に就いたら社会保険料とられて給料が減ってしまうと、友達に聞いたとか。そして年金貰えれば良いけれど、自分たちの年では貰えないかもしれない、そんなものにお金を取られるのは嫌だと、なかなか定職に就きたがらないように思います。
あと25年このままでいたら、何の蓄えも無く年金生活になってしまいます。
そこで、親の方でiDeCoの掛金を出してあげて少しでも老後の足しにしてあげたいと思っているのですが、何か問題はあるのでしょうか?
というご質問です。
ご相談でお話しした内容
法的には、まず問題ありません
お子様の将来を心配されるお気持ち、よく分かります。
先ず、何か問題があるのかとのお訊ねですが、法的には問題はありません。
お子様の収入は月に7万から8万の時もあったり、10万を超えることもあったりとのことですが、フリーターの状態ですと、病気や怪我で休んでしまうと何の保障もありませんよね。
休むとその分だけ収入が無くなってしまいます。
お子様の国民年金の保険料も親御様の方で出されているとのことですので、親御様の口座から振り替えて支払われているかと思います。そして、お子様のために支払われた掛け金も、親御様の所得から社会保険料控除として課税所得から差し引いていらっしゃると思います。
しかし、iDeCoの掛金をお子様の代わりに支払ってあげる場合は、親御様の口座からの振り替えはできません。お子様名義の口座にお金を入れるか、生活費は親御様で賄って掛金はお子様の収入から出すか、いずれにしてもお子様名義の口座から振替します。
iDeCo掛金は社会保険料ではなく小規模企業共済等掛金として分類されるため、本人の口座からしか振り替えはできないためです。そして掛金は本人の所得からしか控除できませんので、親御様がいくら負担されても親御様の所得からは控除出来ません。
掛金分を渡すと使ってしまうことが心配なら、通常の口座とは別に振り替え専用の口座を作り、そこへ振り替え分を入金されると良いでしょう。
その場合、お子様への「贈与」となるのですが、掛金のみだと年間81万6千円≦110万円なので贈与税はかかりません。
もっとも、生活費は親御様が負担していても、掛金はお子様がご自分の収入から出している場合、何も問題はありません。
お子様が自活出来ないことの方がもっと心配なのではありませんか。
しかし、親御様がいつまででも掛金を支払えると言うわけでもありません。多少は余裕がおありとのことですが、親御様もご高齢になられてくると、いつ介護の必要が出てくるか分かりません。そのご準備はありますでしょうか。
例え、お子様の残りの人生を支えて上げられるだけの資金があったとしても、一度、お子様に働き方を考えてもらってはいかがでしょうか。
お話を伺うと、何か他に目的があって、その時間を作るためにフリーターを選ばれていると言うわけではなさそうです。もしそうであっても、30代半ばを過ぎているのに夢見る生活のままでいいのでしょうか。
やはり、この先自分はどのように生きていくのか、自分の将来を見つめ直してもらう、自分の生き方を考え直してもらうことが、まず必要なのではありませんか。
差し出がましいようですけれど、ご心配なのは分かりますが、いつまでも親御さんが救いの手を差し伸べることは控えられた方が良いかと思います。
仕事についてはお子様ご自身のご希望もおありでしょうけれど、そうそう世の中、自分の希望通りに行くことはありません。
生きるか死ぬかの状態で、選り好みしていられますか?
そんな中でも、少々の妥協をしながらも現実とすりあわせて、今できる仕事を選んで生活資金を稼ぐことを考えましょう。
そして、お子様ご自身が得られたお金でiDeCoに加入し、節税のメリットを受け、自分の力で自分年金を作りましょう。
iDeCoは運用の知識も必要になりますが、自分が稼いだお金である方が、より真剣に運用するものです。
(以下から※まで、2021年3月4日加筆 )
また、受取方によって税金が違ってきますが、自分で稼いだ大切なお金だからこそ、どのように受け取ると良いかを真剣に考えるものです。
iDeCoは受け取る時も税制優遇があり、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金控除」が適用されます。併用して受け取る事も出来ます。
特に、国民年金第一号被保険者の場合、月68,000円の掛金のみでも年間81.6万円≧40万(20年超は70万円)と退職所得控除を上回り、一時金で全額受け取ってしまうと課税されることが予想されるので、受取方を考えると良いでしょう。※
手厚い社会保険に加入することのメリット
フリーターであろうがなかろうが、社会保険料は払わなければならないお金です。
会社に就職すると、給料が社会保険料の分減ってしまうとのことですが、現在、お子様が払うべき年金保険料を親御様が払っていらっしゃるのです。そして、国民健康保険は世帯主が払いますが、家族の人数が増えるとその分割り増しになります。
会社にお勤めの方は、社会保険料は会社と折半で支払いますので、収入によっては、国民年金よりも少ない掛け金で多くの公的年金が貰えるのです。
iDeCoの掛金は、自営業68,000円、会社員23,000円と自営業の方がかけられる金額が多いのですが、自営業の年金は会社員の年金よりそもそも少ないので、それだけiDeCoで補わなくては足りないということです。
健康保険には、国民健康保険にない「傷病手当金」があります。病気や怪我で仕事が出来なくなった場合、連続して3日の待機期間(休んだ)後、最長1年6ヶ月間、標準報酬月額(給与)の2/3の手当金を受け取ることが出来ます。怪我で休んでいる間に鬱になってしまったなど、前の原因とは全く関係ない新たな病気が発症したら、それについては発症したところから最長1年6ヶ月の期限とされます。就業中の怪我や病気には労災による給付があります。
逆に、親御様が働けなくなった時のことを考えても、協会けんぽにお子様が加入されていれば、料金を追加すること無く、親御様がお子様の被扶養者として加入することが出来ます。
親御様と生活を共にされていらっしゃると、お子様は働けなくなった時のことをあまり考えていらっしゃいません。いざという時は、親御様が何とかしてくれるという考えがあるからです。
これから先、いつまでも親御様が元気で稼ぎ続けるのは不可能なことです。
心配されるお気持ちは分かりますが、いつまでもあれこれ先回りして手を掛けず、これを機にお子様に将来を考えていただきましょう。
「正しい知識を身につけ、自分のこれからを選択すること。自分の生き方を自分の責任において選択する事。」を見守っていただくことが、何よりも大切なことではありませんか。