ご相談者様 DATA
【年齢】39歳
【職業】主婦
【性別】女性
【家族構成】内縁の夫(55歳)と子ども一人(15歳)
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
知人からお話しがありました。
お友達のお子さんの「ゆきちゃん(仮名)」は我が家の下の子どもと一つ違いですが、子どもが小さい頃から親子共々親しくさせてもらっています。中学校でも部活が同じになり、姉妹のように仲良しです。
昨年、ゆきちゃん(仮名)の受験の直前に、お母様から相談を受けました。
『○○さん(筆者の知人)、実は、お願いがあって。お姉ちゃん(知人の子)が使っていた中学校の名札残ってない?貸して貰える?』
?と思って聞くと、実は、ゆきちゃんのご両親は内縁関係にあり、ゆきちゃんとお母さんの戸籍上の名前は我が家と同じ名字なのです。学校の名簿などはお父さん側の名字で通しているため、名札もお父さんの名字になっています。しかし、入試等正式な書類は戸籍上の名字になります。すると、書類と名札が違うことになります。
これについては、入試の時は名札の必要は無かったことを使えると、ほっとされました。
しかし、いつも、ご自身や旦那さんに万が一のことがあったらどうしよう、ゆきちゃんの将来は大丈夫だろうか?と心配でならないそうです。
どうしたらいい?
本人抜きでは詳細が分からないので、ゆきちゃんのお母さんに「ねんきん定期便」をご持参いただき、相談に来ていただきました。
遺族基礎年金を受け取れるのは、「子のある配偶者」または「子」
ゆきちゃんのお父さんは自営業です。
国民年金 第1号被保険者になりますので、お父さんが万が一の場合は、遺族基礎年金をゆきちゃんが18歳到達年度の末日(3月31日)まで受け取れます。
ゆきちゃんのお母さんも第1号被保険者なので、お母さんに万が一があったときにも同様です。
遺族基礎年金は、
①国民年金の被保険者である間に死亡したとき。
②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき。
③平成29年までに老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき。
④保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき。
のいずれかの要件にあてはまる場合に、死亡した方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることが出来ます。子がいない場合は受給出来ません。子とは、18歳到達年度の末日を経過していない子(胎児であったも出生以降対象)、又は、20歳未満で障害年金の障害等級1級2級で婚姻をしていない子を言います。
保険料納付要件としては、上記①、②の場合、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合期間の合計が3分の2以上あることが必要です。
ねんきん定期便の下の図の赤い囲みで月数を確認出来ます。
なお、平成38年3月末までで、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいとなっています。
お誕生月の前の直近1年間は、下の図の赤い囲み(国民年金の場合)で確認できます。
また、「生計を維持されていた」とは、生計を一にしていて、かつ、受給者の年収が850万円未満であることが要件になります。
実は、ゆきちゃんのお父さんは本妻とは離婚していません。なかなか本妻が応じなかったので別居しました。別居から何年か経ってから、ゆきちゃんのお母さんと知り合います。その時は、既に本妻との間の子が20歳になっていました。本妻に連絡をする事も、生活費を出すことも無く、結婚生活が破綻していたのですが、本妻は何処からかゆきちゃんのお母さんの存在を知り、ガンとして離婚に応じようとしません。
ゆきちゃんについては認知届け提出済みで、ゆきちゃんは、お父さんとは法律上も親子関係にあります。
遺族年金が受給出来る『配偶者』は、国民年金被保険者が死亡したときに、その被保険者によって生計を維持していた場合です。
本妻であっても事実上の離婚状態である場合、何年も連絡もしていない、生活費の振り込みが無いなど、婚姻関係が継続しているとは考えにくい場合は、法律上本妻であっても生計を維持されていた配偶者とはなりません、
ただ、事実婚の場合は、生活を一にしていた生計同一関係・事実婚関係に関する申し立てをしなければなりません。
申し立て関連の書類は、日本年金機構のHPにあります。
遺族基礎年金額(平成30年度の金額)については、
・子のある配偶者が受け取るとき779,300円+子の加算
・子が受け取るとき 779,300円+(二人目以降の子の加算額)
であり、子の加算は第一子・第二子 各224,300円、第三子以降 各74,800円となります。
但し、子1人辺りの年金額は、上記の年金額を子どもの数で除した額になります。
ご相談者様ご自身、あるいはご主人のねんきん定期便を確認したところ、遺族年金の受給に必要な保険料納付済期間は十分満たしていましたので、ゆきちゃんのお父さん、あるいはお母さんの万が一の時には、18歳未満のゆきちゃんを養育する配偶者に対し、約100万円の遺族基礎年金が支払われることになります。(779,300円+224,300円)年間100万円の遺族年金だけで暮らしていくという訳にはいきませんが、ゆきちゃんの進学の際のお金の用立てには間に合いそうですね。なにかあっても、ゆきちゃんが希望すれば大学にも行かせてあげたいというご両親の希望はなんとかなりそうと笑顔になりました。
遺族厚生年金を受給するには優先順位があります。
ゆきちゃんのご両親は、二人とも国民年金加入者(第一号被保険者)で、過去にお勤めの経験もほとんどないため、もうひとつの遺族年金「遺族厚生年金」の受給権はありません。ここでは参考までに、遺族厚生年金についてもお伝えします。
遺族厚生年金は、
①厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき。
②厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき。
③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が、死亡したとき。
④平成29年7月までに老齢厚生年金の受給要件者であった方が死亡したとき。
⑤保険料納付期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき。
に、その遺族が受け取ることが出来ます。
「子がいる配偶者」や「子」が受け取る場合は、遺族基礎年金も受け取れます。
ただし、上記の①と②の場合は、死亡日が含まれ月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済み期間及び免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、】共済組合の組合期間の合計が3分の2以上あることが必要です。
下の図の囲みで確認できます。
ただし、平成38年3月末日までのときは、死亡した方が665歳未満であれば、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいとなっています。
下の図の囲みで確認できます。
遺族厚生年金を受け取れる遺族とは、亡くなられた方に生計を維持されていた
①子のある配偶者(夫は55歳以上)または子
②子のない妻、または55歳以上の夫
③55歳以上の父母
④孫
⑤55歳以上の祖父母
であり、この優先順位で受け取れます。
よって、①子のある妻、子のある55歳以上の夫 が受け取っている間は、子に遺族厚生年金は支給されません。
遺族厚生年金の受給金額は、老齢厚生年金の3/4です。
50歳以上の場合は、このままの報酬月額で支払っていくと65歳で給付予定の金額が表示されています。現時点の金額は、現時点から65歳到達までの平均標準報酬月額×5.481/1000×月数を差し引いて算出します。
(昭和36年4月1日以前に生まれた男性(女性は昭和41年4月1日以前)には、特別支給の老齢年金があります。その場合は、受給出来る年齢と金額が表示されます。)
ねんきん定期便は、50歳以上と50歳未満で様式が違います。
50歳未満の場合は、現時点の納付済み金額での老齢年金額が算出されています。
その老齢厚生年金の金額の約3/4が遺族年金受給額になります。
厚生年金の被保険者である間に死亡した場合、被保険者期間に初診日がある病気や怪我が原因で初診日から5年以内に死亡したときは、厚生年金の被保険者期間が300月未満の場合は300月とみなして遺族厚生年金額を計算します。
第1号被保険者に対する独自給付「寡婦年金」「死亡一時金」
ゆきちゃんのお母さんが受け取れる可能性がある万が一の保障としては、国民年金のみの独自給付として、「寡婦年金」「死亡一時金」があります。
寡婦年金は、10年以上保険料を納めた期間(免除期間を含む)がある夫が亡くなったときに、10年以上継続して婚姻関係(事実婚含む)に有り、生計維持された妻に支給される制度です。60歳から65歳まで、夫の老齢基礎年金の4分の3受け取れます。
ただし、夫が障害基礎年金の受給権を有していた場合、老齢基礎年金を受け取ったことがある場合、妻が自分の年金を繰り上げ受給している場合は、寡婦年金の受給を請求できません。
妻が他の年金を受け取っている場合は選択に、寡婦年金と死亡一時金はどちらか一方の選択になります。
死亡一時金は、国民年金の納付期間が36月以上ある方が死亡したときに遺族が受け取れます。遺族とは、配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹の順で、生計を同一にしていた方が対象です。
ただし、死亡した方が老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取っていた、遺族基礎年金を受け取れる遺族がいる場合は、死亡一時金は受け取れません。
(死亡の翌日から2年を経過した場合、請求することは出来ません。)
実は上記の国民年金独自給付は、金額にするとそれほど大きな保障ではありません。ご主人が亡くなった後、遺族の生活が落ち着くまでの一時金といった意味合いです。ゆきちゃんが高校を卒業するまでの国からの保障は確保されますが、それ以降お母さんの暮らしは遺族年金では賄うことができません。
~相談を終えて~
ゆきちゃんのお母さんは、夫が万が一の時に自分には相続権がないので、年金も本妻に持って行かれると思っていました。しかし、ゆきちゃんが高校卒業までは遺族基礎年金が貰えること、その他一時金等があることにゆきちゃんのお母さんは安心しました。ただ、それだけでは生活出来る十分な金額ではありません。また国民年金だけにしか加入していないので、老後のお金も十分な金額ではありません。次回は、国の遺族年金だけでは不足する万が一の備えを民間保険でカバーする方法と、ゆきちゃんのお母さんの資産形成についての面談をする事になりました。