公務員の年金が変わったと言いますが、どうなったんですか?

2020/1/18 更新

ご相談者 DATA

 

【年齢】   40代前半

【職業】   公務員

【性別】   男性

【家族構成】 配偶者 子供3人

 

相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)

公務員の年金制度が変わるときに職場の説明会で話を聞いたが、いまいち理解できなかった。友人の知り合いに年金関係に詳しいFP(岸田さん)がいるというので紹介をしてもらった。

 

ご相談内容

私は地方公務員で「地方公務員共済年金」に加入していました。平成27年10月に共済年金が厚生年金に一本化されたということですが、具体的に何がどう変わったのか教えて欲しいと思いました。また、それによって私たちの老後の生活にどのような影響があるのかお聞きし、将来にそなえたいと思っています。

 

ご相談でお話しした内容

 

ご指摘の通り、平成27年10月に国家公務員、地方公務員、私立学校教職員の方々が加入する共済年金は、厚生年金に一元化となったので、現在は公務員と私立の教職員の方々も厚生年金の加入者となっています。

もともと厚生年金と共済年金には制度的な違いがありましたので、一元化によってどう変化したのか、具体的にポイントを絞ってご説明いたします。

共済年金一元化

最大のポイントは、共済年金にあった3階部分の職域加算が廃止になったということです。

つまり共済年金加入者は、年金制度の一元化によって将来受け取る年金額が減額しているのです。

一元化にあたって、手続きに変化がなかったので、多くの共済年金加入者は将来受け取る年金が減少している事には気づいていません。

ただ、会社員が加入する厚生年金は、基本的に1階(国民年金)と2階(厚生年金)部分となっており、これまで保険料が厚生年金加入者より安くかつ3階部分があるという優遇を受けていたのは共済年金ですから、今の年金財政を考えると職域加算が廃止されたのもやむを得ないかもしれません。

一方、職域部分は廃止されましたが、新たな年金として「年金払い退職給付」が創設されています。

年金払い退職給付がどのような制度になっているか見ていきましょう。

 

年金払い退職給付

年金払い退職給付はモデルケースで年金月額約1.8万円となっており、職域加算の年金月額約2万円と比較して月々約2千円減額となっています。

受給期間に関して職域加算は終身年金でしたが、年金払い退職給付については、半分は有期年金(10年又は20年を選択)、半分は終身年金となっています。

支給開始は65歳になりますが60歳からの繰上げも可能、70歳までの繰り下げも可能になっています。

本人が死亡した場合、終身年金は終了し、有期年金の残余部分は遺族に一時金として支給されます。

2階部分の年金は厚生年金に統一となり保険料も厚生年金の保険料率に段階的に引き上げられます。(公務員は平成30年、私立学校教職員は平成39年に18.3%で統一)

また、共済年金と厚生年金には制度的な違いがあったのですが、今回の一本化で制度的な違いについては基本的に厚生年金に揃えて解消をしています。

制度的な差異についてはこのように解消しています。

地方職員共済組合のこちらの資料を使いご説明しました。

また退職する時期にもよりますが退職金カットも老後の生活に影響が出てくるでしょう。

このように年金制度の一元化によって公務員の方々が将来受け取る年金額は減少しますので、寿命が延びている今の時代、年金収入の多寡によって、退職後の生活に影響が出るのは必至ではないでしょうか。

これからは公務員の方々も自助努力の資産形成が必要な時代に変化しています。

そこで国の方も自助努力を支援する制度改正を行いました。

それが「節税しながら自分年金が作れる国の制度iDeCo(個人型確定拠出年金)」の加入対象者の拡大です。

これにより、今までiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入対象者ではなかった公務員の方々も平成29年1月からiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することが可能になりました。

では、iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度はどのようになっているでしょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?

iDeCo(個人型確定拠出年金)は公的年金制度の2階部分に上乗せする私的年金制度のひとつになります。

これまで(平成28年12月まで)の加入対象者は、自営業者などの国民年金の第1号被保険者、企業年金のない会社の従業員などの第2号被保険者となっていました。

つまり、会社にほかの企業年金がある従業員や専業主婦(夫)第3号被保険者や公務員等の共済年金加入者は加入することができませんでした。

それが平成29年1月からは原則すべての人が加入できることになりました。

また税制面で大きな優遇があるのもiDeCo(個人型確定拠出年金)の特徴です。

具体的には3段階で優遇があります。

まず、掛け金は全額所得から差し引かれるので、税金の対象になる所得を減らすことができます。

よって所得税と住民税が安くなり年末調整で税金が帰ってきます。

積み立てたお金は自分で定期預金や投資信託などで運用をしていき、それによりついた定期預金の利息や投資信託の運用で得た収益は通常20%の税金が引かれますが、このiDeCo(個人型確定拠出年金)では1円の税金も取られることはありません。

60歳以降に受け取るときには、税金が掛かりますが、そこでも一定の所得控除があるので支払う税金が安くなったり、場合によっては一切かからないケースもあります。

ただし、掛け金には上限が設定されていて、公務員は月額1.2円で年額14.4万円となっています。

例えば35歳、年収500万円(所得税・住民税10%の場合)の職員の方が掛け金満額の14.4万円でiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めた場合、どのぐらい節税できるかというと、60歳までの25年間で所得税・住民税あわせて72万円の節税効果があります。

共済年金の一元化により公務員の方々が受け取る年金額は以前に比べ減少しています。

年金が減るということは、老後の生活に影響するので、公務員の方々も今後は自助努力が必要になってきます。

老後の資産形成は早く始めるほど積み立てられる金額も大きくなり、運用による福利効果も積立開始が早いほど大きいです。

老後の資産形成においては、現在の制度のなかで最も有利な制度のひとつとなりますので、今後のライフプランの検討項目にされてみてはいかがでしょうか。

 

ご相談を終えて

上記ご説明により、ご相談者は年金減額分の積立について検討することとなりました。具体的に不足する老後資金を計算するには、ねんきん定期便が有効なので次回面談のときに持参いただくようお願いしました。いずれにしても、iDeCoは掛金に上限が設けられており、12,000円の積立だけでは十分な老後資金をつくることができない可能性もあります。それも踏まえ不足する資金を明確にしたうえで、今後のライフプランを立て実行に移していく予定となっています。

 

 

監修:FP相談ねっと 代表山中伸枝 2021/3/1追記

公務員の年金制度が変わりしばらく経ちますが、相変わらず変化の大きさを「自分事」ととらえていらっしゃらない方も少なくありません。職域加算は、万が一当事者の方が亡くなるとその額の75%を配偶者が終身で受け取れる「生命保険」としての機能もありましたが、それも今回の変更でなくなりました。それぞれの条件により受給が異なる場合もありますが、いずれにしても、内容としては減少と考えるべきです。

では、どうするか?

もちろんそれぞれですがiDeCoやNISAなどで、自助努力をするというのが正解なのではないでしょうか?FPはみなさんのこれからを支えるのが仕事です。

この記事を書いた人
FP相談ねっと

全国に確定拠出年金相談に強いFPが所属するネットワーク「FP相談ねっと」

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