ご相談者様 DATA
【年齢】 20代後半
【職業】 会社員
【性別】 男性
【家族構成】 配偶者
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
「年金制度が破綻する」「年金が将来もらえない」などとテレビや新聞、雑誌などでよく見かけます。実際のところ、どうなのか専門家に聞いてみようと思いました。
ご相談内容
ご相談者は、報道等より漠然と国の年金制度は破たんするのか?という疑問を持たれていましたので、まずは年金制度について詳しくお伝えしました。
また、確定拠出年金(iDeCo)が流行っているのは何故か?始めた方がいいのか教えて欲しいとのことでしたので、「損得」だけではなく、確定拠出年金(iDeCo)活用の本来の意味を踏まえてお伝えしました。
ご相談でお話しした内容
高齢化社会から高齢社会を迎え、多くの方が公的年金に関して「制度が破綻するんじゃないか?」「保険料を払っていても将来もらえなくて無駄になってしまうんじゃないか?」などと不安を感じていらっしゃいます。
新聞や雑誌で著名な方々が年金不安を煽る発言も多いですよね。
これでは多くの方々が不安を感じてしまうのもしょうがないです。
今回のご質問は、「国の年金制度は破綻するのか?」「確定拠出年金(iDeCo)を始めた方がいいのか?」の2点についてですが、結論から申し上げますと、私は年金制度が破綻することは無いと考えています。
ただ制度自体が破綻することはないですが、老後の生活を支えるには不十分ですので、確定拠出年金などの制度を活用して、老後の資産形成をしていく自助努力は必要になってくるでしょう。
では、なぜ「年金制度は破綻しない」だけど「自助努力が必要」と思うのかについて理由をお話しします。
老後に不安を感じる多くの方々は、国の年金制度がどのような仕組みで運営されているのかほとんどよく知りません。
そこで、まずは国の年金制度がどうなっているのかについてお話しします。
国の年金制度
国の年金の財源は、保険料と国庫負担が加わったものになっております。
財政方式は、賦課方式と積立方式の2つ。
賦課方式とは、その年に必要な年金給付費をその年の保険料で賄う方式で、積立方式は、自分が将来受け取る年金を保険料として積み立てていく方式です。
国の年金制度が始まった当初は積立方式をとっていたようですが、現在では、賦課方式を基本とした財政方式を採用しています。
賦課方式のメリットは、世代間扶養の仕組みで、その時の現役世代の保険料を原資としているのでインフレや給与水準の変化に対応しやすいところがあります。
デメリットは、現役世代が年金受給世代を支える仕組みとなっているので、今のような少子高齢社会で支える側の現役世代が減ると、保険料負担の増加や年金の削減が必要になります。
次に現在の年金給付の財源を説明すると、毎年度の年金給付費は、その年の保険料+国庫負担+積立金で賄っています。
少子化で保険料収入は減少傾向にありますが、税金(国庫負担)や約132兆円ある年金積立金を活用して年金給付を行っています。
「年金制度が破綻する」とよく言われるのは、132兆円の年金積立金が、あと数十年でなくなってしまう恐れがあるということを言っているわけです。
しかし、現在は国の年金制度について長期的に給付と負担のバランスを取る仕組みが取られています。
これは5年に一度行われる財政検証というもので、一定の前提のもとにシミュレーションし、年金財政が健全か、人口や経済が見通し通りになっているかを検証して少しずつ修正が図られるというものです。
直近では平成26年に財政検証が発表されました。
今回はケースAからケースHまで8パターンのシミュレーション結果がありましたが、概ね50%以上の所得代替率が示されていました。
所得代替率というのは、現役世代の手取り収入に対する年金の給付水準の割合をいいます。
このように、国も財政検証などで定期的にチェックしていますし、50%を下回る場合は年金改正も含め検討していくとしているので、気がつけば「年金積立金が無くなっていた」、「年金制度が破綻する」ということはありえないと思います。
しかし、年金制度が破綻しないとしても、私たちの老後の生活が公的年金で十分に賄えるかどうかは別問題です。
今のままでは将来もらえる年金が先細りするのは間違いないでしょうから、不足する分は自助努力で準備していきましょう!
続いて確定拠出年金(iDeCo)の制度についてご説明します。
確定拠出年金(iDeCo)とは?
確定拠出年金も国の制度のひとつでが、これは公的年金の上乗せ部分を積み立てていく自分年金制度です。
公的年金と確定拠出年金の最大の違いは財布が別ということです。
国民年金や厚生年金は、現役世代から集めた保険料を一つの大きな財布に一旦入れて、そこから年金受給者に給付を行いますが、確定拠出年金は、加入者ごとの財布が作られ、そこに毎月毎月掛け金を入れていくことになります。
この財布は加入者個人の財布として明確に区分されることになりますので、絶対に無くなることはありません。
確定拠出年金は公的年金の賦課方式と違い積立方式となりますので、自分が積み立てたお金を60歳以降に年金として自分自身で受け取ることになります。
つまり自分が積み立ててきたお金が人の手に渡ることはありません。
税制優遇については拠出時、運用時、受取時の3つポイントがあります。
拠出した掛金は、全額所得控除の対象となるので、所得税、住民税が軽減されます。
掛金の運用については、公的年金と違い自分で行います。
そこで運用が上手くいき利益が出た場合、一般の証券口座では利益の20%を税金として国に納めなければいけませんが、確定拠出年金の口座では利益の全額が非課税になるなど優遇措置が取られています。
受給時の税金については、年金として受け取る場合は、公的年金等控除が適用され、一時金として受け取る場合は退職所得控除が適用されます。
このように税制面で大きな優遇があり非常に良い制度が2001年から開始されていましたが、現在までのところ、ほとんど普及していません。
これまでは国も金融機関も積極的にPRや普及活動をしていていませんでしたが、ここにきてようやく制度の普及・推進に本腰を入れ始めました。
国も財政状況を考えると、今までのように国民の老後の生活を公的年金だけでは支えきれなくなってきているので、自助努力をしてくださいと、その代わり税制面で優遇しますよとなってきています。
続いて、確定拠出年金(iDeCo)を始めた方が良いかについては、まずご自身の将来受け取る年金額がいくらなのかを知る必要があります。
自分が将来受け取る年金額を知る方法!
将来受け取る年金額は、毎年送られてくるねんきん定期便を使うことで、だれでも簡単に年金額を調べることが可能です。
今年度の国民年金部分にあたる老齢基礎年金(1階部分)の受給額は、40年間きっちりと保険料を納付した方で780,100円になります。
保険料を40年払って約78万円ですから、保険料1年払うたびに約2万円の年金を将来受け取れると考えると分かり易いかと思います。
厚生年金の老齢厚生年金(2階部分)の計算については、ねんきん定期便に記載されている標準報酬月額を用いて計算します。
現在の計算式はこのようになっています。
標準報酬月額×5.481×加入月数/1000
ケース1 25歳 年収420万 35年納付の場合
350,000×5.481×420ヶ月/1000
=805,707
35年間ずっと給与が変わらないとすると、老齢厚生年金部分の年金給付は805,707円になります。
これに、老齢基礎年金の約700,000円(2万×35年)を足した、1,505,707円が将来受け取れる年金額になります。
正確な年金額を知るには日本年金機構のねんきんネットなどをご活用ください。
将来受け取る年金額を調べたら、それで老後の生活費が賄えるのかを考えます。
総務省のモデルケースでは、高齢夫婦無職世帯の1ヶ月の支出は約28万円です。
一方、生命保険文化センターのゆとりある暮らし調査では月に約35万円です。
厚労省のモデル世帯で老後の年金額は月22万円弱となっていますので月に6万円弱、ゆとりある暮らしとの差は13万円程になります。
今後の収入次第で将来の年金額は変わります。
まずは老後の生活にいくら必要なのか、またどのような暮らしをしたいのか、ライフプランを考えたうえで、老後の資産形成が必要かどうか考えましょう!
上記相談者は、結婚されたばかりで、ライフプランについてあまり考えていなかったようです。相談後、二人のライフプランについて相談したいとお話があり継続してご相談に来られることになりました。ライフプランを夫婦で考えることで自分たちがどのような人生を歩みたいのか、目標が明確になったと大変満足しておられました。また子供ができたり、家を購入する場面で相談に来られることになりました。