金利が上がったのですが、繰上返済したほうがいいですか?

ご相談者データ

山本 健一様(仮名)

年齢:43歳
職業:会社員
家族構成:妻(41歳)、子ども2人(10歳・8歳)

世帯年収:約950万円
住宅ローン残高:約4,500万円
金利:変動金利型 年1.05%(団信金利含む)
金融資産額:約1,500万円

相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)

最近ニュースで住宅ローン金利が上がるという話をよく見ます。
変動金利で借りているので、このままで大丈夫なのか不安になりました。

手元にまとまった貯金があるので、
繰上返済をしたほうがいいのか相談したいと思いました。

ご相談内容

住宅ローンは4年前に借りました。
最近、金利が上がるというニュースを見て、このままでいいのか不安になっています。

現在の貯金から500万円ほど繰上返済につかってはどうかと思っています。
今のうちに返済したほうがいいのでしょうか。

ご相談でお話した内容

山本様、この度はFP相談にお申し込みいただき、ありがとうございました。

住宅ローンの金利が上がるというニュースを目にすると、「このままで大丈夫なのだろうか」と不安になる方は少なくありません。山本様も、ご家族の生活を守るためにどう判断すればよいのかを真剣に考えておられることが伝わってきました。

現在は住宅ローンの返済に加え、お子様の教育費や日々の生活費など、さまざまな支出が重なる時期でもあります。こうした状況の中で、「今のうちに繰上返済をしたほうがいいのではないか」と考えられるのは、とても自然なことだと思います。

ただ、住宅ローンは30年以上長く続く支出です。その間には、教育費の増加や働き方の変化、生活環境の変化など、さまざまな出来事が起こる可能性があります。

そのため今回は、住宅ローンの金利上昇だけを見るのではなく、家計全体の状況やこれから想定される支出も含めて整理しながら、山本様のご家庭にとって無理のない判断を一緒に考えていくことにしました。

それでは、今回のご相談の内容をもとに、住宅ローンの状況や今後の家計の見通しについて順番に整理していきたいと思います。

金利が上がると「繰上返済したほうがいい」と思いやすい

住宅ローンの金利が上がると、
「早く返してしまったほうがいいのでは」
と考える方は少なくありません。

確かに、繰上返済をすると元金が減るため、将来支払う利息を減らす効果があります。

しかし、住宅ローンの繰上返済は必ずしも急ぐ必要があるとは限りません。

繰上返済の一番のデメリット

繰上返済をすると住宅ローン残高が減るため、毎月返済額を減らせる可能性がありますが、
手元資金が減る
というデメリットがあります。

住宅ローンに入れたお金は住宅ローン残高を減らす方向に働きますが、一度返済に回したお金は基本的に手元には戻りません。

そのため、家計全体で見ると「自由に使えるお金(流動性)が減る」という点には注意が必要です。

一方、手元資金として残しておけば

  • 教育費
  • 急な出費
  • 生活の変化

などに対応することができます。

特に最近は物価も上がってきています。仮に住宅ローン金利が今後半年ごとに0.2%ずつ上がったとしても、年間では0.4%程度の上昇です。

一方、食料品などを含めた物価上昇率は、このところやや落ち着いてきたとはいえ高止まりしています。総務省の消費者物価指数によると、全国の総合指数は前年同月と比べて約1.5%上昇しています。

『2020年基準消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)1月分』https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

つまり、住宅ローン金利の変化だけでなく、
家計全体の支出がどのように変化しているか
にも目を向ける必要があります。

食費や日用品費など、それぞれ個別で支出額を比較すると住宅ローンの返済額よりも小さいかもしれませんが、合計した「生活費全体」で見ると住宅ローン返済よりも大きくなります。
日々の生活費が少しずつ上がっていくと、家計に与える影響は意外と大きくなります。

こうした状況では、住宅ローンを急いで減らすよりも、まずは
生活の安定を優先して手元資金を確保しておく
という考え方もあります。

金利が上がると返済額はどれくらい増える?

では実際に住宅ローンの金利が上がると、返済額はどれくらい変わるのでしょうか。

今回のケースで試算してみました。

  • 住宅ローン残高:4,500万円
  • 残り返済期間:約31年
  • 現在の金利:1.05%(団信金利含む)
  • 今後5年間半年ごとに0.2%ずつ適用金利が上昇
  • 125%ルール、5年ルール適用なし
期間経過年適用金利月額返済額利息分(半年)元金分(半年)期末残高
10.51.05%¥141,774¥236,250¥614,393¥44,385,607
211.25%¥145,917¥277,410¥598,095¥43,787,512
31.51.45%¥150,071¥317,459¥582,968¥43,204,544
421.65%¥154,232¥356,437¥568,956¥42,635,588
52.51.85%¥158,398¥394,379¥556,008¥42,079,580
632.05%¥162,565¥431,316¥544,074¥41,535,506
73.52.25%¥166,731¥467,274¥533,112¥41,002,394
842.45%¥170,893¥502,279¥523,081¥40,479,313
94.52.65%¥175,049¥536,351¥513,945¥39,965,368
1052.85%¥179,196¥569,506¥505,671¥39,459,697
115.53.05%¥183,332¥601,760¥498,231¥38,961,466

現在の月返済額は約141,000円です。もし今後5年間半年ごとに0.2%ずつ適用金利が上昇を続けた場合、半年ごとに月4,000円~5,000円程度増加
10年間で金利が1.05%から3.05%まで上昇した場合でも、月々の返済額は約14万1,000円から約18万3,000円へと、およそ4万円程度の増加という結果になりました。

もちろん金利がさらに上昇すれば影響は大きくなることが考えられますが、1年で月1万円増加していく、といった目安をもっておいていただくといいのではないでしょうか。

変動金利には返済額が急に増えないしくみもある

金利が上がれば、変動金利型住宅ローンの金利も上がる可能性がありますが、返済への影響は実際の金利上昇幅よりも小さくなる可能性があります。

変動金利の住宅ローンには、返済額が急に増えないようにするしくみが設けられている場合があるためです。

代表的なのが以下の2つです。

  • 5年ルール
  • 125%ルール

5年ルールとは、適用金利が上がっても毎月の返済額は5年間変わらないというしくみです。

また125%ルールとは、返済額が見直される場合でも、前回の返済額の125%までしか増えないというしくみです。

例えば現在の返済額が10万円であれば、見直し後の返済額は最大でも12万5,000円までとなります。

もちろんすべての住宅ローンにこのしくみがあるわけではありませんが、変動金利型の住宅ローンでは多くの金融機関で採用されています。

繰上返済よりも優先したい3つのこと

住宅ローンの金利が上がると、「早く繰上返済したほうがいいのでは」と不安になる方は少なくありません。しかし、繰上返済を考える前に確認しておきたいこともあります。
例えば次のような点です。

①生活費のバッファー資金を確保しているか

急な出費や収入の変化に対応できるよう、バッファーとなる生活予備費を手元に残しておくと、物価上昇の局面でも乗り切りやすくなります。なお、緊急生活資金も確保しておくことが大切です。

②教育費など近くある大きな支出を見通しているか

子どもの進学など、これからまとまったお金が必要になる場合は、繰上返済をする前に、資金が確保できるか、必ず確認するようにしましょう。
まだそういった資金の準備ができていない、といったケースでは繰上返済をするよりも資金を確保を優先します。

③住宅の修繕費のつみたてはできているか、住宅維持費の値上がりに対応できるか

住宅を所有していると、住宅ローン以外にもさまざまな費用がかかります。具体的には、戸建ての場合は外壁や屋根などの修繕費、マンションの場合は管理費や修繕積立金などがあります。共通するものとして、火災保険料や地震保険料もあります。

特に最近は建築費や人件費の上昇、自然災害の多発によって、こういった住宅のランニングコストも上がりやすい状況になっています。

将来の修繕費に備えた積立ができているか、住宅の維持費が上がった場合でも家計に余裕があるかを確認しておくことが大切です。

まとめ

住宅ローン金利が上がると、「早く繰上返済をしたほうがいいのでは」と不安になる方は多いものです。
しかし、繰上返済は必ずしも急ぐ必要があるとは限りません。

住宅ローンは長期間続く支出です。その間にはお子様の進路が変わったり、生活スタイルが変わる、働き方が変わるなど、さまざまな変化が起こる可能性があります。

今回のご相談でも、金利上昇だけを理由に繰上返済を行うのではなく、まずは家計全体の見通しを確認することをおすすめしました。

焦って判断するのではなく、将来の生活の変化も見据えながら検討していくことが大切です。

ご相談を終えて

山本様のお子様は現在10歳と8歳。これから中学・高校・大学と進学していく中で、教育費の負担が徐々に大きくなっていく時期に入ります。

住宅ローンは35年で借り入れており、完済予定は山本様が70代前半になる頃です。
ニュースなどで「住宅ローン金利上昇」という言葉を目にする機会が増えたことで、「このままで大丈夫なのか」と不安を感じるようになったとお話しくださいました。

今回のご相談では、住宅ローンの金利上昇による影響を試算するとともに、教育費や今後の生活費の見通しも含めて、家計全体の状況を整理しました。

その結果、現時点では急いで繰上返済を行うよりも、手元資金を確保しながら家計の安定を優先する方が安心できる状況ではないか、といったことがわかりました。

特に今後は、

・教育費のピークに備えた資金準備
・住宅の修繕費や維持費への備え
・物価上昇を踏まえた生活費の見直し
・住宅ローン返済をふまえた資産形成の見直し

といった点を、家計全体のバランスの中で整理していくことが大切です。

山本様からは「住宅ローンのことだけを考えていましたが、家計全体を整理していく必要があることがよく分かりました」とお話しいただきました。

今回のご相談をきっかけに、今後1年間、ライフプランニングと一緒に家計の状況を確認しながら伴走させていただくことになりました。
教育費の準備や資産形成の進め方なども含めて、定期的に状況を見直しながら無理のない家計運営を一緒に考えていく予定です。

住宅ローンは長く続く支出ですが、途中で家計の状況や働き方が変わることもあります。
住宅ローンの金利だけに目を向けるのではなく、家計全体の見通しを確認しながら判断していくことが大切だと改めて感じたご相談でした。

この記事を書いた人
内田 英子

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