末期がんの父を自宅で看病しています。有給休暇も使い果たし、これからが不安です。

ご相談者様データ

(年齢)32歳 高橋加奈子様

(職業)会社員

(家族構成)父 60歳 病気療養中

      母 59歳 パート

相談しようと思ったきっかけ

末期がんの父を自宅で看病しています。現在病状は安定していますが、医師からはそれほど長くはないかも知れないので、家族で穏やかに過ごしてくださいと言われ、父もそれを望んでいます。ただ母にも持病があり、体力的にも精神的にも大変なので、私が家事全般を担いつつ、父や母の面倒を見ている状態です。

最近は有給休暇も使い果たしてしまい、会社も欠勤扱いとなるため、満足に給与をいただくこともできなくなっています。もともと内向的な性格でもあり、なんとなく仕事を続ける気力も失せてきて、このまま仕事も辞めてしようかとも思っています。とはいえ、収入が途絶えてしまうと生活が困窮してしまうのは目に見えているので、どうしたものかと悩んでいます。

母はすっかり気落ちしてしまい、父が亡くなった後の生活が不安だと言っています。父が存命なのに、亡くなった後の事を考えるのもどうなのかと思いますが、それでも今後の生活の見通しが立たないことへの恐怖は拭えません。

正直今の状況をどうしたら良いのか分らず途方に暮れています。病院では生活の困りごとへの対応してはくれないので、なにかアドバイスをいただけたりしますでしょうか?

ご相談の内容

高橋様 この度はFP相談にお申し込みいただきましてありがとうございました。

お父様の病気、お母様の心労、お一人で抱えるのはさぞ重かったと思います。お気持ちお察しいたします。本当によく頑張っていらっしゃいますね。

いくつか高橋様が利用できる国の制度がありますから、ぜひ利用できるものは利用して、ご自身の心身をいたわってあげてください。高橋様に時間的、経済的な余裕が生まれると、きっとご家族全体のプラスになると思います。

これからのことも目を向けてご自身の人生設計の参考にしていただければうれしいです。

介護保険の利用申請をする

お父様の状況をお伺いしますと、介護保険の利用が可能なのではないかと思います。

介護保険は40歳以上になると加入しますが、介護保険の利用には年齢により要件があります。

まず65歳以上を第一号被保険者を呼び、原因を問わず介護が必要になった場合に介護保険が利用できます。自宅にヘルパーさんがやってきて身の回りの世話をしてくれたり、お医者様が自宅に来て様子を診てくれたりする高齢者の方に対する介護サービスを思い出していただけるとイメージがわくと思います。

一方40歳以上、65歳未満の方は第二号被保険者と呼び、こちらは16種類の特定の疾病が原因で介護が必要になった場合のみ利用が可能です。

この16種類の特定の疾病の中に、がん患者で回復が難しいと医師が判断した場合が対象となっているので、まず介護保険利用ができるのかどうかから確認されたらいかがでしょうか?

もし利用が可能となれば、訪問介護、訪問入浴などのサービスや、福祉用具を借りたりすることができます。収入により1割から3割の自己負担が発生しますが、それでも専門家の手を借りられるということは大きなメリットになるでしょう。

介護保険を利用するためには、「介護認定」を受ける必要があります。これは市町村への申請ですが、お父様の場合はまず病院の相談窓口を通して申請するのがスムーズでしょう。万が一病院に担当してくれる窓口がない場合は、地域包括支援センターあるいは役所に直接聞いてみて下さい。

介護認定を申請すると審査が行われます。これは調査員が自宅に来てお父様の様子を確認して等級を決定するためのプロセスです。この等級によって、どの程度のサービスが受けられるのかが決まります。

通常等級の決定通知が出るまでに1ヶ月以上かかると言われていますが、がん患者の場合、迅速に在宅介護サービスが利用できるように特例が適用されることもあるそうですから、しっかり状況を伝えてできるだけ早くにサービスが受けられるようにして下さい。

介護休業給付金を請求する

高橋様は、お父様の看病のために有給休暇を使い果たして今は欠勤扱いとのことですが、雇用保険の介護休業給付を受けられるかも知れません。こちらは高橋様のお勤めの会社に相談をします。

介護休業給付金というのは、雇用保険の被保険者で一定の条件を満たす方が、職場復帰を前提として家族を介護するために休業を取得した際に支給される給付金です。高橋様は長く今の会社にお勤めですから充分要件は満たすでしょう。

給付金は、賃金の約67%です。会社から賃金の支払がないことが前提ですが、お父様の介護のため現在欠勤となっているという状況を考えると、給付金を請求するべきだと考えます。

ただし、給付金が受けられる期間が無限ではなく93日が限度です。複数回に分けて受けることもできます。

会社によっては、家族を介護する社員を支援するための福利厚生制度を準備しているところもありますから聞いてみると良いでしょう。

いっそのこと会社も辞めてしまおうかと思わず、ぜひ続けるためになにをしたら良いのかを考えてみて下さい。介護休業給付金は会社を通じて請求します。給付金は雇用保険から支払われますから会社としても、この請求がなにか不利益になることはありません。簡単なペーパーワークのみですから、遠慮せずに聞いてみて下さい。

また上司との相談して、介護との両立のためにリモートワークができないか、あるいはお仕事の分担の変更が可能なのかどうかなど相談してみるのも良いと思います。長く働いた職場です、きっと力になってくれるのではないでしょうか?

お父様の傷病手当金を請求する

お父様の闘病生活は、慌ただしいものだったようですね。がんが見つかってすぐに緊急手術、その後長期入院と、お父様ご自身も全く準備ができないまま会社を去ることになり、さぞ心残りであったでしょう。

伺うと、会社から退職金とお見舞い金が出たとのことですが、傷病手当金の請求はされていないようですね。

傷病手当金とは、病気やけがで働けなくなった場合に、健康保険より給与の約3分の2が補償される仕組みです。最長1年半までの給付があります。

受給のためにはいくつか要件がありますが、お父様は長年お勤めでしたし、病気のため出社することもかなわず会社を辞めることになったので、受給する要件は満たしているのではと思います。

お父様は今高橋様の扶養とされていますが、傷病手当金の請求はお父様が以前働いていた時に加入していた健康保険保険者です。伺うと協会けんぽであったとのことですから、請求先としてまずは問い合わせをしてみて下さい。傷病手当金は退職後でも要件を満たせば請求が可能です。

必要な書類としては、医師の意見書と勤め先から勤務状況や給与の支払状況を確認する書類が必要となります。退職後に以前勤めていた会社に連絡するのは申し訳ないと思われるかも知れませんが、こちらも手当金の支払は健康保険からなので、会社がお金を出すわけではありません。それほど負担のない事務処理のみですから遠慮は不要です。時効は2年ですから早めに手続きをしましょう。

前述の介護休業給付金も傷病手当金も非課税なので、入ってくるお金から税金や社会保険料は引かれません。申請が通り給付が受けられたら、ご家族の大切な時間を有意義に過ごすために使って下さい。

生命保険を確認する

お父様は医療保険やがん保険には入っていなかったので、病気になってから経済的に大変だったとおっしゃっていましたが、生命保険には加入されていますね。死亡時に1000万円の保障が受けられます。

死亡保険金は、亡くなった後の遺族の暮らしを支えるための大切なお金ではありますが、余命6ヶ月などと診断を受けた場合は全額あるいは一部を「リビングニーズ」として受け取ることができます。このお金は非課税ですので、お父様の闘病環境を少しでも改善するために使ったり、家族の想い出作りに使うこともできます。

亡くなってから受け取る場合は、相続財産ですが、法定相続人がお母様と高橋様のお二人ですから、生命保険の非課税枠の利用範囲内です。従って、リビングニーズとして受け取っても死亡保険金として受け取っても税金上は差がありません。

請求する際は保険会社に連絡をします。

年金事務所で遺族年金を確認する

長年会社員として頑張ってこられたお父様ですから、万が一の時には遺されたお母様に対し遺族厚生年金が支給されます。またお母様が65歳になるまでは、遺族厚生年金に上乗せで「中高齢寡婦加算」が支給されます。

お母様が65歳になると、ご自身の老齢厚生年金とお父様の遺族厚生年金との調整になりますが、今回ご両親のねんきん定期便を拝見する限り、遺族厚生年金の額の方が大きいので、金額はそのままで一部老齢厚生年金を受け取る形になるでしょう。

今回は、制度の概要と手元にあるねんきん定期便を利用した金額をお示ししましたが、具体的な金額は年金事務所に出向いて聞いた方が良いでしょう。ご本人が年金事務所に行けない場合、家族の方が代理で話しを聞くことは可能です。委任状が必要な場合もあるかも知れませんし、看病で大変な中時間を有効に使うためにも、事前に電話予約をされるとスムーズです。

お父様が亡くなった後のお母様の生活は、遺族年金をベースに考えます。遺族年金だけで生活するのは不十分となれば、お母様の就労収入、これまでの貯蓄などと生活に必要な支出とのバランスを考えます。住居はどうするのかなど包括的に考える必要があるので、まずは情報を整理したうえで考えていきましょう。

遺族年金の金額は、亡くなってから正式な金額が決定されますが、これからの生活設計ということを考えるとある程度情報を整理しておいた方が良いでしょう。お母様はまだ59歳と若いのですから、今後の家計の見通しをたてておくことはとても重要です。お父様もお母様の家計の見通しが立てば、安心されると思います。

お父様と語らう時間を作る

闘病中のお父様との会話は、いろいろと気を遣うことも多いと思います。万が一のことを話すなんてとんでもないと思われるかも知れませんが、もしかしたらお父様ご自身も伝えておきたいことかも知れませんので、少し意識して様子をみていただくと良いかと思います。

例えば、これからの時間をどう過ごしたいのか?どこか行きたいところ、やってみたいことがあるのかどうか。または会いたい人はいるのかどうか?

いよいよの時は、延命治療を望むのかどうか?

お葬式はどうしたいのか、誰に来てもらったらうれしいのか、どんな雰囲気の中で見送られたいのか。

お金の状況も整理しておきたいところです。通帳は、すべて確認できているでしょうか?ネット銀行やネット証券の口座があるのであれば、ID、パスワードも含め一覧にしておきたいところです。

保険の契約書も再度確認しておきましょう。せっかく保険に入っていても、請求を忘れていたという話も少なくありません。

他にもお父様名義で口座振替となっている公共料金やサブスクなど、把握しておきたいですね。

法定相続人はお母様と高橋様のお二人です。法定相続分でいえば、お父様の財産をお二人で半分ずつ受け取ることになりますが、もしかしたらお父様はまずお母様へと思われているかも知れません。あるいはどこかの団体への寄付というお気持ちがあるかも知れません。

このようなお話を切り出すのは勇気がいることかも知れませんが、お父様のお気持ちを大切に精一杯見送りたいという想いはお伝えする方が良いでしょう。

一度に全てを聞く必要はありません。ぽつり、ぽつりで良いので、お父様の想いを聞いてみて下さい

ご相談を終えて

高橋様談

この度は、相談にのってくださり本当にありがとうございました。ファイナンシャルプランナーからのアドバイスがこれほど有益だとは、正直想像以上でありがたかったです。

介護保険、介護休業給付金、傷病手当金の情報は、初めて聞くお話でした。私の勉強不足ではありますが、これまで誰も教えてくれなかったので、もっと前に知っていたらと残念に思うと共に、頑張って申請してみようと思っています。

会社に頼むのは・・・と尻込みしていたところ、「権利ですから、遠慮は不要ですよ」と背中を押していただきました。無知なうえに変にとりつくろうとするのは、ダメですね。

他にも生命保険の活用とか遺族年金のこととか教えてもらったので、しっかり動いてみようと思います。目の前が真っ暗でしたが、明るい道筋が見えてきました。

父との語らいについては、まったくその通りと思う反面、心の準備ができていないというか、まだ勇気が持てずにいます。でもできることをひとつひとつ進めていくうちに、きっかけが創れると思うので、聞いてみたいと思います。

おっしゃるとおり、父の想いを知らずに見送ったら後悔が残りそうです。父のためにできることは全てやったと思って見送るためにも、今日のアドバイスを糧に頑張ります。

この記事を書いた人
山中 伸枝

山中伸枝(やまなかのぶえ)FP相談ねっと 代表

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