ご相談者様データ
(年齢)47歳 山本恵美子様
(職業)パート勤務
(家族構成)夫 54歳 会社員
長男 17歳 高校生
長女 14歳 中学生
母 78歳 別居(滋賀県在住)
相談しようと思ったきっかけ
いつも購読している生活雑誌を見ていたら、ファイナンシャルプランナーさんの記事が目にとまりました。私と年齢的にはそう変わらないような方が親の介護に関する心配事についてアドバイスを求める内容でした。
最近は、老後の暮らしとか親の介護、相続や葬儀といった記事をたくさん読むようになりました。意識せずとも目にはいるんですね。雑誌でも特集とか結構やっています。
その記事を読んで、確かに様々な制度を知っておくことはとても大切なことだなという印象を持ちました。
私の場合、実母は遠方に住んでいているうえに、夫の両親との関係もあり実際に私が実母の介護がしてあげられるかというと、恐らく無理だと思います。
今はまだ元気で一人暮らしをしている母ですが、先日自転車で転び「私もボケたのかね~」と笑っていました。幸い捻挫で済んだものの、母には施設に入ってもらった方が、安心なのではないかと思ったり、でもそれは介護を丸投げするようで親不孝な行動なのではないかと思ったり、一人でモヤモヤしています。
母のためにしてあげるべきことを教えていただければと思い、今回の相談に至りました。
ご相談の内容
山本様 この度はFP相談にお申し込みいただきましてありがとうございました。
お一人で暮らす遠方のお母様の暮らし、心配ですね。早くにお父様も亡くされ、母一人子一人で暮らしてこられたとのことですから、お母様への思いは人一倍でしょう。
でもご主人のご両親の居住地に近いところに住んでいること、受験期のお子様を抱えていることを考えると、なかなかお母様のもとに行ってさしあげることができずジレンマを感じていらっしゃるのですね。
でも、もしかしたら必要以上にご自身を縛り付けてしまって、本当にするべきことから距離を置いてしまっているのかも知れません。
ご主人、お子様はもちろん大切です。ご主人のご両親ももちろん大切です。そしてお母様も、とても大切な存在です。特にお母様は78歳、これからの時間は少しずつお別れに近づく大切な時間です。ご自身の時間も整理しつつ、お母様との関係性で後悔が残らないよう、やってあげたいこと、やるべきことを考えていきましょう。
介護は一人で抱え込まない
現在お母様は介護保険を全く利用されていないとのことですが、年齢を考えると「要支援」くらいの認定は受けられるかも知れません。
介護保険は、被保険者が申請し、認定を受け、その状況に合わせたサービスを利用する仕組みです。介護にも認定区分があり、要支援1・2、要介護1・2・3・4・5と全部で7段階あります。なので、初期の段階から認定を受けることで「介護の専門家」と繋がることは、今後状態が悪化した時にスムーズにサービスが受けられることにも繋がるのでお勧めです。
まず、次回ご実家に帰られる際には、ぜひ「地域包括支援センター」に出向いてみて下さい。これは、地域の窓口で高齢期のよろず相談を担ってくれる頼りになる公の機関です。
相談に行くと、審査のための日程調整が入ります。その方の身体や精神の状態から、支援が必要なのか、介護が必要なのかといった判断を専門家が行うための訪問です。当日はできれば家族同席のもと審査を受けて下さい。お母様も知らない方が尋ねてこられたら緊張もするでしょうから、「これは地域の専門家と繋がるための最初の一歩である」ということをお伝えして下さい。
そして普段通りに受け答えするというのも重要です。たまに、張り切って普段以上の力を発揮してしまい、正しい判定が受けられなかったというお話も聞きます。ありのまま、生活に不便はないのか、不安はないのかお伝えしてみてください。
審査が終わると、認定が下されます。お母様の様子をうかがう限り、要支援1とか2ではないかと思います。認定を受けると、1ヶ月に利用できる費用が定められ、その予算の中でケアマネージャーがプログラムを組んで、ご本人はそれに従い介護サービスを利用します。恐らく状態を維持するために体操教室に行ったり、身体機能を維持するためのリハビリを受けたりすることができるようになると思います。
担当のケアマネージャーさんが決まると、継続して様子を見てもらえるというのもメリットです。体調の変化、身体的にもこれからできないことも増えてくるでしょうから、そういう心配事のひとつひとつに対応してくれる専門家につながっておくというのはとても心強いことです。
仮に介護の必要性が高まってくると、デイサービスを利用して入浴や食事のサービスを受けたり、訪問サービスを利用してヘルパーさんに買い物を頼んだり、家の掃除を頼んだりすることもできます。お医者さんが自宅に来てくれる訪問診療もあります。
今は、住み慣れた地域で暮らすことを前提として訪問介護のサービスも充実しています。お母様ご自身、ご自宅で過ごすことを希望されているのであれば施設入居をすぐに考えるのではなく、まずはご自宅で安全・安心で過ごすことができる環境作りを優先される方が良いでしょう。
そのうち、お母様も身体の自由が利かなくなったりすることもあるでしょう。一人で暮らすことが難しくなったら、やはり担当のケア
マネージャーさんと相談しながら、次にどうするのか考えていくことになります。
施設も複数比較検討
高齢者の施設といっても様々あります。
いわゆる有料老人ホームといわれるものであっても、お元気なうちから入居をする「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」は、まるでマンションそのもの。完全にプライバシーが守られている居住空間に見守りサービスがついているところが多いようです。見守りといっても、管理人が回って様子を見るといったものではなく、室内の動きをセンサーで感知し、異常があれば管理人が確認にくるといったサービスが多いようです。
サ高住に、お食事が提供される食堂があり、大浴場が利用できるといったサービスがある有料老人ホームもあります。クラブ活動のようなアクティビティも自由参加、外出も自由というところも多いようです。
介護度が少し高い方が入居する有料老人ホームでは、アクティビティも少しリハビリ色が強くなったり、お食事も刻み食などその方の状況に配慮して作られたり、お風呂も見守りあるいは介助があったりするホームもあります。介護の必要性が高まってくると、自由気ままに過ごすというより、ある程度のスケジュールに沿って生活をする感じになってきます。
お元気な方が多い高齢者施設の場合、人間関係のトラブルも起こりやすくなるようです。スタッフとの相性、入居者同士の相性など、共同生活が苦手という方には、厳しいところもあるかも知れません。
また有料老人ホームは、介護の必要性によっては、関連施設に転居を促されたりするところも多いようです。医療的なケアができなければ病院を探さなければならなくなったり、看取りまでしますという施設もあれば、看取りはしないというところもあります。細かいところになるかも知れませんが予め確認すべきポイントです。
費用も千差万別です。お値段が高ければ、質の高いサービスが受けられると期待されるかも知れませんが、実際は人手が確保できているのかどうかにかかっているようにも思います。豪華なお食事や設備の写真に惑わされずに、有資格のスタッフが何人くらいいるのか、夜間の運営はどうなっているのかなど、納得がいくまで確認しましょう。
要介護3以上になると特別養護老人ホームへ入居できるようになります。かなり介護度の高い方が多いので、食事や入浴など生活全般に介護が必要な場合が多く、スタッフの質が問われます。基本的には看取りまでというのが特別養護老人ホームの特徴です。
特別養護老人ホームの場合、収入によっては減免が受けられたりすることもあります。
重い認知症だと、少人数で共同生活を送るグループホームもあります。
いずれにしても、高齢者施設のサービスも千差万別です。お母様の特性、生活の様子を見ながら、より良い環境選びをされてください。
任意後見人制度の利用も
人生の後半では、いつかご自身の意思を伝えることが非常に困難になってしまう時期がきてしまいます。認知症もそうですし、様々な病気、ケガ、きっかけは様々ですが、一人でできることが少なくなってしまいます。
そのような状態に陥ってしまうと、例えば銀行からお金をおろせない、施設入居の契約ができない、家族でさえ代理で契約事を遂行できなくなります。
その場合「法定後見人」をたてて、すべての決定事項をお願いすることになります。法定後見人は家庭裁判所が任命する弁護士、司法書士、社会福祉士がなることが多いですから、全く知らない人にそれ以降の権限が移譲されてしまうことになります。
これはすべて意思表示ができなくなってしまった被後見人さんを守るための法的な手段なのですが、どうしてもこれまでの関係性が全くない専門職の方にお金も資産も管理されてしまうので少し窮屈に感じる方が多くなります。
そこで、事前の対策として重要なのが「任意後見人制度」です。
これは、ご家族が「いつか」に備え、様々な手続きを代行するという約束事を公正証書にしておく手続きです。この手続きをしておけば、万が一お母様の意思確認が難しくなった時に家庭裁判所へ「任意後見監督人」の選任を申し立てることで、契約が発効され山本様がすべての手続きを代行できる「法的な権限」を受けることができます。
後見人となると、お母様の預金の引き出しもできますし、施設の手続きや入院、手術などの際必要な手続きもスムーズに運ぶことができます。これからの事を考えると、「保険」として任意後見人の契約を結んでおくことはとても重要であると考えます。
思いは伝えよう
ご相談の冒頭に、お母様に施設入居を勧めるのは親不孝なのかという問いがありましたが、それは絶対違います。山本様がこんなにもお母様のことを考え心配しているのですから、親不孝なわけがありません。
しかし、遠方でなかなか会いにいけないという中、心配が空回りしてしまっているような気がします。
最も避けなければならないことは、お母様の様子を長い間知らないまま、本当に状態が悪くなってしまい切羽詰まって、施設に入れるしか選択肢がなくなることだと思います。
老いは少しずつ、でも確実に進んでいきます。またお別れをする日も近づいてきます。
だからこそ、お子さんも大きくなられたことですし、少し時間を作りお母様に会いに行く、電話をする、近所の専門家の方とコミュニケーションをとるということに力を入れてみてください。
今なら、できることがたくさんあります。お母様とお話をすることでお母様ご自身がどのようにこれからの時間を過ごしたいのか希望を聞くことができます。
これからの時間の中で少しでもお母様の希望をかなえ、穏やかな時間を過ごせるために、できることをするのが子どもの役目、親孝行だと考えます。
周りにはたくさんの「頼れる専門家」がいます。ぜひたくさんの方の力を借りながら、少しずつできることを始めてください。心配だけしている時間の方がずっともったいないでしょう。
ご相談を終えて
山本様談
まず、とても丁寧に対応してくださったことに感謝申し上げたいです。
母のことは心配ですが、切羽詰まった問題というわけでもなく、なんとなく心のモヤモヤしたところをせかすことなくしっかりとお話を聞いてくださり、ありがたかったです。
いずれ起こる介護の問題も、具体的にどこにどのような相談をすべきなのかを教えてもらって、安心できました。雑誌などで見聞きしていましたが、実際に自分事としてお話を聞き、また小さな疑問にもお答えいただいたので心が楽になりました。
また介護は一人で抱える問題ではなく、チームで取り組むべきことというお話は目からうろこが落ちる気持ちがしました。今度実家に帰る際には、母の主治医にあったり、地域包括支援センターに行ったりしてみようと思います。
子ども達は受験生ではありますが、それぞれ高校・大学の受験です。確かに親が家にいたからと行って何かできるわけでもありませんから、これからは母との時間も優先して取りたいと思います。自分で自分の心をブロックしていたんですね。お話を伺って、「できないこと」を自分で作り上げ、さらに自分を縛っていたような気もします。
地域のサポートも受けながら、母がやりたいことをやりたいようにできるように、私もサポートしていきます。やるべきことがわかり、心が軽くなりました。ありがとうございました。

