知的障害の兄弟との相続に遺言書が必要なワケ

この記事を書いた人
三原 由紀

「定年後の不安を解決!」 プレ定年専門FPが50代のテーマに特化。 新たなステージへ向けて全力でサポート!

ご相談者様

高橋和美さん(仮名) 

【年齢】 54歳

【職業】 主婦

【性別】 女性

【家族構成】 夫(会社員、56歳)、息子(25歳)、義母(89歳)、義弟(52歳)

相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)

私の夫の弟である義弟は重度の知的障害者です。現在89歳の義母と2人で暮らしています。最近になり義母・夫・私で話をして、義母の万が一に備えて相続対策が必要ではないかということになりました。

地元のツテを頼り、色々な専門家に相談すると後見制度や家族信託を勧められましたが、どれもピンとこなくて、もっと横断的に相談できないかと悩んでいたところ、三原FPのことが頭に浮かんだのです。

それというのも、以前地元で開催された三原FPのマネーランチ会に参加し、そこでの印象がとても良く、信頼できる方だと思っていました。そのランチ会には50代の参加者が多かったこともあり、親の相続の話で盛り上がりました。その時に三原さんご自身が相続診断士という専門家であることも分かったので、横断的にアドバイスをもらえそうだと思い、今回相談することにしました。

ご相談内容

  • 重度知的障害の兄弟がいる場合の親の相続対策について
  • 特に、義母が居住している区分所有マンションに相続が発生した場合、売却して義弟の生活費に充てたい場合どうするのがいいのか
  • 我が家のベストプランを知りたい

ご相談でお話しした内容

高橋和美さま

お義母さまの相続についてのご相談ありがとうございます。

お仕事で多忙なご主人に代わり、ご自分で色々と調べられて、またご家族からも頼りにされているご様子、とても素晴らしいですね。ぜひ高橋家のベストプランの答えが出せるようサポートさせていただきますね。

ご相談いただきました内容ですが、お義母様の年齢(現在89歳)から考えても、相続対策は確かに必要です

まずは相続関係図を確認しておきましょう。

お義父様はすでにお亡くなりとのですから、お義母様の財産を相続人である和美様のご主人、長男・一朗様と次男・光男様の2人で分けることになります。お義母様の資産額は相続税がかからないため相続税の申告は必要ありません。ただし、どのように分けてどれだけ相続するかについては、「法定相続」か「分割協議による相続」のどちらかで決めることになります。

※相続税がかからないとは?※

相続税を計算するには、正味の遺産額が基礎控除以下の場合、相続税はかかりません。基礎控除額は法定相続人の数により異なりますが、以下の計算式で算出します。

基礎控除額(3,000万円)+600万円×法定相続人の数

高橋家の場合、法定相続人は兄弟2人なので基礎控除額は4,200万円、お義母様の財産は基礎控除額より少ないため、財産を相続しても税金はかかりません。

意思判断能力がない相続人がいる場合どうなる?

問題なのは、次男・光男様に意思能力がないことです。本人の判断で意思表示できない場合には、その人の相続財産を守るために裁判所での手続き・審査を通して選定された成年後見人などがつくことになります。認知症の場合も同様で、成年後見人が必要です。

なお、仮に障害があったとしても意思判断能力に問題がなければ話し合うことができるので問題はありません。

厄介なのは、お義母様と光男様が現在暮らしている自宅の扱いについてです。例えば、お義母様が遺言を遺さずにお亡くなりになると、光男様には成年後見人がつき、不動産の処分ができなくなる可能性があります。成年後見人はあくまでも光男様本人の財産を守る立場であり、不動産の処分をすることが光男様のメリットにならないと判断を下す場合もあり得るからです。一方で、光男様が自立して一人暮らしをするのは難しく、自宅で暮らし続ける選択肢はありません。つまり、仮に自宅を処分して光男様のために使いたいと思っても売却できない困った事態が起きかねないのです。

一番大事なことはお義母様がどのように考えてどうしたいか?ということです。お義母様の財産ですから、尊重すべきなのはお義母様のお気持ちだと考えます。  

自宅を処分したお金を障害のある次男のために使うには?

前回のご相談後、お義母様の気持ちをご確認いただきありがとうございました。

お義母様の気持ちは、自宅資産をご長男・一朗様に託して次男・光男様の生活費に充てて欲しいということでしたね。また、万が一お義母様が光男様の面倒を見られなくなった後のことも想定して、行政の福祉課で相談されているとは素晴らしいお義母様ですね。

お義母様のように、万が一の場合を想定して色々と対策をしている場合は問題ありませんが、ご参考までにお伝えしておきます。家族の状況や関係性によって、課題はそれぞれ異なります。課題については、以下のように大まかに分けて相談をしながら対策を考えておくとよいでしょう。

  • 相続、遺言…税金は税理士、遺言は弁護士など専門窓口は異なリます。どこに相談すればいいかわからない場合には、相続診断士など相続全般の専門家に依頼、各専門家につないでもらう方法もあります。
  • 親なき後の住まい…行政の福祉課などに相談しましょう
  • 成年後見制度…信頼できる親族がいない時には、地域の社会福祉協議会などに相談しましょう

話を戻すと、お義母様はご自宅を長男・一郎様に相続してもらい、適宜売却するなり長男に任せて次男・光男様を金銭的にサポートしてほしいということですね。

ここの部分が実は重要なポイントです。

家族の関係によっては、長男に財産を託したらお金を使い込んでしまい、次男のために有効にお金を使ってもらえないのではないか、と不安を抱く場合も当然ながら考えられます。その場合には、信託や後見など制度を利用することを選択肢として検討することをお勧めします。

しかしながら高橋家の場合には、お義母様が長男・一朗様に全幅の信頼を寄せられていらっしゃるとのことですから、敢えて信託や後見などの制度を入れる必要はないかと思います。お義母様の希望を叶えるには遺言書を作成されるのがいいでしょう。

遺言書の作成方法

遺言書には3つの種類がありますが、今回はその中から「公正証書遺言」をおススメします。公正証書遺言の作成には費用がかかるのですが、内容不備による無効の可能性がほぼ無く、改ざんのおそれや検認の手間がありません。ご高齢のお義母様の手間も考えるとベストの選択かと思いオススメしました。

公正証書遺言は公証役場で作成することになります。遺言書の作成にあたっては、提携弁護士をご紹介することもお伝えしました。もちろん、内容をお義母様や和美様たちがお義母様をサポートしながら公証役場に相談してご自分たちで作成することもできます。弁護士に依頼するメリットは、作成を代行してもらうことで確実であること、内容に不満があれば対処法のアドバイスをもらえる、遺言書が原因でトラブルに発展した場合に解決を依頼できるので安心、などが挙げられます。

遺言書をどうするか、お義母様と和美様ご夫婦で話し合われました。遺言書の作成は今まで経験がなく、不安もあることから今回は弁護士に依頼して作成したいとのことでした。お義母様が89歳とご高齢で、今般のコロナウィルス感染拡大の不安もあることからZOOMを使いオンラインでの面談をしていただきました。面談の内容を元に、弁護士の方で遺言書の原案を作成、私の方では※付言※作成のお手伝いをしました。

※付言とは?※
法的効力はないものの、遺言の本文(遺言事項)とあわせて、自由に書き連ねることができる文章のことです。今回の場合は、お義母様から長男・一朗様に伝えておきたい“母の想い”と言ったところでしょうか。想いを伝える文章を作成してください、とお願いしてもなかなか文章にするのも難しいものですから、和美様を通してお義母様のお気持ちを伺いながら提案させていただきました。

後日、公証役場に赴き、公正証書遺言書の作成をしてきました。当日は弁護士・お義母様・和美様と一緒に私は公正証書遺言の証人として立ち会わせいただきました。ご相談をいただいてから足掛け2ヶ月かかりましたが、無事に遺言書を作ることができてお義母様も安堵されたと和美様より報告をいただきました。

相続は家族ごとに課題・対策が異なり、正解は一つではありません。今回、高橋家の皆様から相談をいただき感じたことは、家族関係が良好であればスムーズに対策を行うことができるという事です。高橋家の皆様のご多幸を心よりお祈りしております。

ちなみに、お仕事で忙しい一朗様(和美様の夫)は、会社の企業型DCの運用について今度相談したいそうだと和美様より連絡をいただいております。次回はご夫婦そろっていらっしゃるとのこと、末長いお付き合いをさせていただけるようお役に立ちたいと思っています。

【相談を終えて】

我が家は資産家でもないので「相続なんか関係ない」と思っていました。まさか我が家に遺言書を作成する必要があったとは驚きでした。でも、遺言書の作成をできて本当に良かったです。このまま義母が逝ってしまったら、どうなっていたのかと考えると恐ろしいですね。分かっていないということは、怖いことだなと感じるとともに、今回相談できたことに心から感謝いたします。

また今回のご相談を通じ、私たち夫婦の「これから」の生活についても、きちんと考えていくべきだと感じました。義母も、義弟の生活資金を一番に心配していたように、お金というものは、生きていく上で本当に大事なものだと改めて思いました。三原FPには、今後も私たち夫婦の老後の相談をお願いしたいと思いますので引き続きよろしくお願いいたします。

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三原 由紀

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