“とりあえずオルカン”で本当に大丈夫か――40歳・資産2,000万円の会社員が見落としている3つの偏り

この記事を書いた人
青山 創星

会社と個人ダブル節税効果の国の制度確定拠出年金導入を銀行での運用経験をもとにフルサポート!!!

ご相談者様 DATA

【年齢】40歳

【職業】外資系IT企業マーケティング部門マネージャー(年収900万円)

【性別】女性

【家族構成】夫42歳(弁護士・年収1,200万円)、長男8歳

相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)

投資を始めて5年になります。NISAもiDeCoも、全部eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)に入れてきました。
周りの友人も同僚も「とりあえずオルカン」という人ばかりで、それが正解なんだと信じてきました。でも最近、オルカンの中身を詳しく調べてみたら、米国株の比率が60%以上もあると知って驚いたんです。「全世界」と言いながら、実態は米国偏重じゃないかと疑問を持ち始めました。

為替リスクのことも気になります。円安のおかげでリターンが良く見えているだけじゃないかって。GPIFは債券にも25%ずつ振っていると聞きましたし、年金のプロがそうしているのには理由があるはずです。
資産が2,000万円まで育ったからこそ、このまま1本でいいのか不安になりました。子どもの教育費もこれから本格的にかかってきますし、守りも考えるべき時期なのかなと思って、専門家のご意見を聞きたくてご相談しました。

ご相談内容

【ご相談でお話しした内容】

目次

「みんながオルカン」という安心感の正体

ご相談者様のお話を伺って、まず最初にお伝えしたいことがあります。
「オルカンを選んできたこと自体は、間違ってはいない」ということです。

eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)は、日本の投資信託の中でも極めて優れた商品です。低コストで世界中の株式に分散投資ができ、つみたてNISAやiDeCoの対象としても適した選択肢の一つです。

ただ、ご相談者様が感じていらっしゃる「このままでいいのか」という疑問は、とても健全なものだと思います。
「みんなが買っている」という安心感は確かに強力ですが、投資において多数派であることが、あなたにとっての正解である保証はどこにもありません。

特に、ご相談者様のように資産が2,000万円まで成長し、お子様の教育費というはっきりとした使途が見えてきた段階では、「なんとなく続ける」から「自分で考えて選ぶ」へとステージを上げるべき時期に来ていると言えます。

オルカンの中身を解剖する――米国比率63%が意味すること

ご相談者様が気づかれたとおり、全世界株式のベンチマークであるMSCI ACWI Indexの国別構成を見ると、米国が約63%を占めています。

国・地域構成比率
米国約63%
日本約5%
英国約3.4%
カナダ約3.2%
中国約2.9%
その他約22%

「全世界」と名乗りながら、実態は6割以上が米国――ご相談者様が「米国偏重じゃないか」と感じられたのは、まさにその通りなのです。
これは各国の株式市場の規模(時価総額)に応じて配分が決まる「時価総額加重平均型」の特徴ですが、時価総額ウェイトは永遠ではないという歴史を知っておく必要があります。

1989年末、バブル絶頂期の日本株は、世界の株式時価総額の約42%を占めていました。当時、「世界株インデックス」を買っていた人は、実質的に4割超が日本株だったのです。それが現在は約5%です。
「全世界に分散しているつもりでも、実は1つの国に大きく依存している」という構造を理解しておくことが大切です。

3つの偏りを理解する

オルカンには、大きく分けて3つの「偏り」があります。これらは欠点ではなく特徴ですが、ライフステージに合っているかの判断材料になります。

資産クラスの偏り:株式100%という選択

オルカンは「全世界の株式」に投資する商品です。つまり、100%株式であり、債券などは一切含まれていません。
長期的なリターンを最大化するには合理的ですが、その代償として価格変動(ボラティリティ)も大きくなります。

例えば、リーマンショック時の最大ドローダウン(下落幅)は約57%に達しました。2,000万円の資産であれば、約860万円にまで目減りする計算です。
10年後に確実に必要なお金を株式100%で運用することには、相応のリスクがあることを認識しておく必要があります。

為替の偏り:円安効果の落とし穴

オルカンは為替ヘッジなしの商品です。
2024年の好調なリターンのうち、かなりの部分が円安による「上乗せ効果」でした。しかし、これは逆回転する可能性、つまり円高局面では外国株式の価格が変わらなくても円建て資産が目減りすることを意味します。

ご相談者様の資産は円で貯め、円で使う予定です。外貨建て資産が増えれば増えるほど、為替変動の影響を大きく受けるという点は意識しておくべきでしょう。

地域の偏り:マグニフィセント7への集中

米国株式の中でも、一部の大型ハイテク株に大きく偏っています。
「マグニフィセント7」と呼ばれる7社だけで、インデックス全体の約18%を占めています(2024年末時点)。

「全世界約3,000銘柄に分散投資」と言いながら、たった7社で全体の約2割を占めているのです。これらの巨大企業に何らかの問題が起きれば、インデックス全体が連鎖的に下落するリスクがあります。

GPIFの「4分割」から学ぶバランスの考え方

ここで、私たちの公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針を見てみましょう。

資産クラス構成比率
国内株式25%
外国株式25%
国内債券25%
外国債券25%

GPIFがなぜ株式100%にしないのか。それは、年金という「将来確実に支払わなければならないお金」を運用しているからです。
大きな下落が起きたときに「回復を待てない」という制約があるため、リターンを多少犠牲にしても、安定性を重視しているのです。ご相談者様のお子様の大学費用も、この考え方に通じるものがあります。

2,000万円のポートフォリオ・リバランス提案

ここまでの内容を踏まえ、成長性と安定性のバランスを取ったポートフォリオ案をご提案しました。

資産クラス配分役割
全世界株式60%成長エンジン(オルカン)
国内債券20%価格変動のクッション役
先進国債券10%円高リスクを抑えて利回り確保
国内REIT10%株式・債券と異なる値動きで分散

この配分にすることで、最悪の年の損失幅をオルカン100%の場合に比べてかなり圧縮することができます。教育費のように明確な使途がある場合、「大きく増やす」ことよりも「大きく減らさない」ことの優先度が高くなります。

「コア+サテライト」で知的好奇心も満たす

知的好奇心をお持ちの方には、「コア+サテライト」という運用方法もおすすめです。

  • コア(中核):80%
    オルカンや債券など、長期で淡々と積み立てる「守り」の部分
  • サテライト(衛星):20%
    個別株投資、アクティブ型ファンド、金など、少し高めのリスクを取りながら投資する「攻め」の部分

「全部オルカン」から卒業しても、一気に全部「個別株」に行く必要はありません。コアで土台を固めながら、サテライトで「市場を学ぶ」という楽しみを取り入れることができます。

「正解」は1つではない――あなたの正解を見つけるプロセス

資産運用に「唯一の正解」はありません。正解は、あなたの年齢、収入、家族構成、リスク許容度、そして「お金に対する価値観」によって変わります。

大切なのは、「なぜその配分なのか」を自分で説明できることです。「みんながオルカンだから」ではなく、自分のライフプランを考えた結果として選ぶ。その思考プロセスこそが、市場が大きく下落したときでも投資を続けられる最大の武器になります。

ご相談を終えて

ご相談者様からの感想

今日のご相談で、自分が「オルカン」という商品は知っていても、その中身を本当には理解していなかったことに気づきました。米国比率や円安効果の恩恵など、言われてみれば納得の内容ばかりでした。
世界最大の年金基金であるGPIFが、将来のお金のために安定性を重視しているという話は非常に腑に落ちました。
これからは自分でポートフォリオを考えて調整していく。その「自分で考える」プロセスが大事なんだとわかりました。サテライトで個別株投資の方法を学びながら株式投資にも挑戦してみようと思います。投資が「作業」じゃなくて「学び」になりそうでワクワクしています。

FPからのコメント

5年間コツコツと積み立て、2,000万円まで資産を育てられたことは素晴らしい成果です。その土台があるからこそ、「次のステージ」を考える余裕が生まれたのだと思います。
ライフプランは変化するものです。お子様の進路やご夫婦のキャリアなど、状況が変われば最適なポートフォリオも変わります。定期的に「今の自分たちに合っているか」を確認する習慣を持つことをおすすめします。
「自分で選んだ」投資は、市場の嵐の中でも持ち続けられる強さを持ちます。これからも賢く、楽しく資産形成を進めていってください。

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青山 創星

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