こんにちは、ファイナンシャルプランナーの白井です。
お客様から「企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)ってどちらが得?何が違うの?」というご質問をよくいただきます。
そこで今日は、この企業型とiDeCo(イデコ)の特長・違いについて解説していきたいと思います。
そもそも確定拠出年金とは?
確定拠出年金は2001年に施行された「確定拠出年金法」を起源とします。
法制定の趣旨は「安定した給与収入がある現役時代から老後の資産形成の促進する」ことです。
国民年金、厚生年金だけでは将来的に不足するであろう、老後の生活資金。
それを現役時代から計画的に積立て、運用していくことで安定した老後生活を送れるように、という自助努力を促す制度です。
確定拠出年金には、企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)の2種類があります。
ここからは両者の基本的な違いを抑えていきましょう。
企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)の違い
①加入対象者
企業型 | iDeCo(イデコ) | |
加入対象者 | 60歳未満の厚生年金保険被保険者(役員・従業員) | 自営業者・・・60歳未満の国民年金第1号被保険者 会社員・・・60歳未満の国民年金第2号被保険者 公務員・・・60歳未満の国民年金第2号被保険者 専業主婦(夫)など・・・60歳未満の国民年金第3号被保険者 |
加入者数 | 約782万人 | 約238万人 |
企業型確定拠出年金に加入できるのは厚生年金に加入している被保険者であり、企業の年金規約(ルール)に定められている方となります。そのため、社会保険に加入していない短時間勤務のパート労働者等は加入対象外となります。
企業型確定拠出年金は従業員のための福利厚生制度に思われがちですが、役員も加入できるというのも大きなポイントです。
一方でiDeCo(イデコ)は年齢要件を満たせば誰でも加入することができます。従来、iDeCo(イデコ)に加入できるのは企業年金や企業型確定拠出年金を導入していない会社の会社員、そして自営業者だけでした。しかし、2017年1月の法改正により、企業年金等を導入している企業の会社員や公務員、専業主婦などの加入が可能となりました。
結果として、iDeCo(イデコ)の加入者数は2022年3月31日時点で約238万人と増加しています。
②加入期間の上限
企業型 | iDeCo(イデコ) | |
加入期間 | 70歳まで | 65歳まで |
企業型もiDeCo(イデコ)も加入期間の上限は原則60歳までとなっています。
しかし、企業型については年金規約(※)に定めることにより、最長70歳まで加入することができます。
また、iDeCo(イデコ)については
・60歳以降も社会保険に加入しながら働く会社員公務員
・自営業者・専業主婦(夫)などで、60歳以降に国民年金に任意加入する人
・海外居住者で国民年金被保険者
は65歳まで加入可能です。
※年金規約とは・・・企業が確定拠出年金を導入するためには、運営方法を規則として定め、地方厚生局の承認を得る必要があります。この規則を年金規約と言います。
③掛金の上限
企業型 | iDeCo(イデコ) | |
掛金の上限 | ■確定給付型の年金を実施していない場合:55,000円/月 ■確定給付型の年金を実施している場合:27,500円/月 | 1.自営業者等:68,000円/月 ※国民年金基金の加入者の限度額は、その掛金と合わせて68,000円 2.厚生年金保険の被保険者 ■確定給付型の年金及び企業型確定拠出年金に加入していない場合(公務員を除く) :23,000円/月 ■企業型確定拠出年金のみに加入している場合:20,000円/月 (企業型確定拠出年金の事業主掛金額との合計額が55,000円の範囲内) ■確定給付型の年金のみ、または確定給付型と企業型確定拠出年金の両方に加入している場合:12,000円/月 (企業型確定拠出年金の事業主掛金額との合計額が27,500円の範囲内) ■公務員:12,000円/月 3.専業主婦(夫)等:23,000円/月 |
掛金の取り扱い | 事業主掛金 全額非課税(福利厚生費として全額損金算入) 加入者掛金 全額所得控除 | 全額所得控除の対象 |
この掛金の上限は少し複雑です。
企業型のパターン1つをとっても、勤務している会社に企業年金が導入されているかどうかで、掛金の金額が大きく変わります。
企業型の掛金上限は最大で月額55,000円です。
一方でiDeCo(イデコ)の掛金上限は月額68,000円となります。これは個人事業主の場合ですが、企業にお勤めの方で、社会保険に加入している方は掛金については「いくら拠出したらいいでしょうか」というお問い合わせをいただくことが多いのですが、ご自身の現在の資産状況ポートフォリオ、ライフプランを考えながら、計画的に掛金を拠出することをご提案しています。
掛金の月額上限は、企業型、iDeCo(イデコ)でも複数のパターンがあります。上の表をよくご確認いただき、
ご自身がどこに属するのかをまずは確認しましょう。掛金については、企業型、iDeCo(イデコ)いずれも非課税で積立てができます。
④運用商品
企業型 | iDeCo(イデコ) | |
運用商品 | 会社が選定した運用商品から選択可能 | 個人が加入した金融機関が選定している運用商品から選択可能 |
将来的な受給額に影響を及ぼすため、運用商品の選択は、慎重に検討をしたいところです。
企業型の場合、会社が選定した運用商品から加入者が選択するため、投資にあまり慣れていない初心者にとってもそれほど迷うことなく、商品を選ぶことができる、というメリットがあります。商品を選択する際は、信託報酬や購入手数料をしっかりチェックするようにしてください。
iDeCo(イデコ)の場合は、数ある金融機関の中から自身が投資をしていきたい商品を取り扱っている企業を選択することができるため、個人としての選択の自由度が高いと言えるでしょう。見極めのポイントは取扱商品の幅広さだけでなく、信託報酬や購入手数料の設定率をしっかりチェックするといいでしょう。
⑤運営費用(口座管理料)
企業型 | iDeCo(イデコ) | |
運営費用 | 全額事業主負担 | 個人負担 |
確定拠出年金の制度を利用するためには、運営費用が発生します。
企業型の場合は、手数料は全額事業主負担となりますので、加入者が負担する手数料はありません。
(事業主は福利厚生費として費用計上することができます)
iDeCo(イデコ)の場合、運営費用は個人が全額負担することになります。コストの種類は
①加入時にかかる初期費用
②毎月のランニングコスト
③その他(資産移管時・受取時)となります。
比較サイトもありますので、運用商品を調べるだけでなく、運営費用についてもチェックするようにしましょう。
※参考 iDeCoナビ
まとめ
いかがでしたでしょうか。
企業型確定拠出年金はある程度、企業が制度設計も含めてある程度大枠のルールを決めており、そのルールに則って加入者自らが老後資産設計を行っていくイメージです。
一方でiDeCo(イデコ)は、金融機関を選択する時点から自分自身の意志が前提となってくるため、本人の裁量に大きく委ねられてている、
と考えることもできるでしょう。
勤務先に企業型確定拠出年金が導入されていなければ、まずはiDeCo(イデコ)に加入することを検討し、少しずつ老後の資産設計に取り組んでいくのがいいでしょう。