向藤原 寛

新興国のリープフロッグ(Leapfrog)をどう捉えるか

こんにちは確定拠出年金相談ねっと認定FPの向藤原です。

 

 

新興国のリープフロッグ(Leapfrog)をどう捉えるか

 

中国の現状

 

日本社会では考えにくいことですが、中国では国と民間企業が情報を共有し国民の信用情報を収集、分析していてデジタル化された情報をスコア化、スコアの高い人は例えばビザが取りやすい(中国はビザが取りにくい国と言われています)、通常は前払いしなければ受診できない病院での支払いが後払いに出来る。といった状況が生まれています。

 

日本のように固定電話回線のはりめぐらされた環境はなく、一気に携帯が普及しスマホ社会となったことで、現金決済からスマホを通じた電子決済化が急速に進んでいます。代表的なものが「アリペイ」で、付随機能として「芝麻(ゴマ)信用」という冒頭の信用情報管理システムがあり、信用度合いが高い人ほど登録したがる傾向が生まれています。結果的に「信用不安」という経済活動を妨げていた要因が急速に転換し、電子決済での急速な取引拡大につながっています。

 

中国のインターネット通販最大手のアリババが今年11月11日行った「 独身の日(シングルデー)」では、一日の記録として過去最高となる1682億人民元(約253億ドル/約2.87兆円)の総取引額を記録しました。昨年は約2兆円だったこと、日本の最大手である楽天の年間の国内総流通総額が約3兆円であることを考えると爆発的な伸びと言えるのではないでしょうか。

 

 

新興国のリープフロッグ(Leapfrog)とは

 

リープフロッグ(Leapfrogという言葉を新興国の経済成長にあてはめると、先進国と比べインフラという面で大きく遅れている状態から、通常の段階的な進化を踏むことなく、途中の段階をすべて飛び越して一気に最先端の技術に到達してしまうことを意味しています。例えば日本で新しいことを取り入れようとすると様々な規制が邪魔をし、ライドシェアビジネスのようになかなか進まないビジネスが中国、インドでは急速に拡大できるといった状況にあります。

 

 

インドの状況

 

話の中心はインドに移ります。インド政府が2016年11月9日にブラックマネー対策のために高額紙幣を廃止したことは記憶に新しいところですが、もう一つ大きな変化があります。生体認証の個人識別番号制度「アドハー」が導入され、強制ではないとされながらも人口約13億人中、既に11億人が登録し個人カードの発行を受けているそうです。

 

インドのIT大手インフォシスの共同創業者で、インド固有識別番号庁(UIDAI)の初代総裁としてアドハー導入を推し進めたナンダン・ニレカニ氏は「身分証明書を持っていない貧困層など社会生活に参加できる人を増やしたかった、そして不正受給などが絶えない中、強力な個人識別制度を確立する必要があった」と語ったとニューズウィーク紙が伝えています。

 

新たに銀行口座を開設できるようになるなど、高額紙幣が廃止され新紙幣に切り替えることと合わせて、国営保険会社への保険料支払いをオンライン支払に割引制度を導入するなど、政府が資金決済のデジタル化を強力に推し進め、「Paytm」などの電子マネー決済が急速に広まり、スマホをかざして食べ物や医薬品などの生活必需品を買うなどの消費者が増えています。

 

今年、政府主導でQRコードや指紋、光彩などの生体認証による決済が導入されています。ID番号が銀行口座にひもづけられ、政府はIDだけで補助金や年金を国民の口座に直接振り込めるようになりました。4月には現金もクレジットカードもスマホも要らない「アーダールペイ」が始まり、消費者、販売者ともにIDと銀行口座をひもづけていれば、消費者は番号と指紋認証だけで支払いができるようになっています。

 

 

第4次産業革命

 

新興国においてリープフロッグ(Leapfrog)と呼ぶべき現象が劇的な経済成長につながる可能性を感じさせることに合わせ、先進国を含む世界に大きな波が訪れています。「第4次産業革命」といわれ始めている、AI、ロボティクスの流れです。あらゆる事象がデジタルに置き換えられることにより、大量のいわゆるビッグデータを保有するアマゾン、フェイスブック、アルファベット(グーグル)を中心に強い会社がさらに巨大化しつつあります。

 

日本企業もロボティクスの分野、部材提供などに強みはありますが、革新性という面でなかなか力が発揮出来ていないように感じます。一部の国際的に活躍できる会社に強みを感じる部分はあります。また、日本の企業が業績見通しを上方修正し、日経平均が23,000円でもPER水準などに割高感はなくなり、さらに水準訂正できる余地はあると考えています。しかし、情報の根幹を握っているアメリカ、そしてリープフロッグ(Leapfrog)と考えている新興国の成長を捉えずに資産形成は成り立たないと考えています。

 

既存の産業の中でうまくスクラップ&ビルドを継続し、省力化に対応していく力がどれだけ先進国、そして日本にあるのかよく考えていく必要があります。投資の世界でもフィンテックが現実のものとなりつつある今、銀行や証券会社のシステムは今後劇的に変化し、今まで考えもつかなかったサービスが低コストで実現していくことになり、舵取りを誤れば一流と考えられていた企業ですら存続できなくなることを考えておく必要があるのではないでしょうか。

 

 資産形成にどう取り込む?

 

 

運用の考え方は人それぞれですが、国際分散投資(株式)を実現させるファンドの配分比率が時価総額ベースになっていることには少し疑問を感じています。例えば、アメリカ51%、ヨーロッパ22%、日本8%、新興国10%程度でしょうか。アメリカ、ヨーロッパのグローバル企業、日本の一部グローバル企業などに新興国の成長を取り込める企業は確かに存在するのですが、もしかしたらGDPベースで考え配分をした方がどこかの段階で資産形成に役立つようになっていくのではないかと考えています。アメリカ25%、ヨーロッパ22%、日本6%、中国15%、インド3%程度でしょうか。アメリカへの比率はこれでは低く感じますが、例えば高成長を続けるインドなどは3%でも少ないのではないかと感じています。

 

確定拠出年金のファンドの中にも新興国株式に投資できるファンドはたくさんあります。これからアメリカを始め先進国が利上げを継続していくことにより、新興国から資金流出し株価の値下がりに直面することは考えておく必要がありますが、長期で投資を考える確定拠出年金、つみたてNISAなどにおいてはポートフォリオに組み込むことも考えるべきではないかと思います。

 

 

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