三角 桂子

5月通勤途中でケガをした!補償ってどうなるの?

こんにちは。神奈川でFPと社会保険労務士の二刀流で活動している三藤です。

4月に新入社員として、人事異動等であらたな職場に通いはじめた方もいらっしゃるのではないでしょうか?慣れない通勤経路、満員電車で通勤途中にケガをすることがあるかもしれません。働き始めたばかりで、保険も入ってない場合、収入が途絶えてしまい、どうしよう・・・ということがないよう、補償について知っておくことも必要です。

労働者が仕事中に、または仕事場と住居との通勤途中でのケガなどについて、国が保険給付などを行い労働者を保護する制度があります。仕事中であれば業務災害、通勤途中であれば通勤災害であり、労働者の「負傷、疾病、障害、死亡」に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行います。これは「労働者災害補償保険法」によって補償されています。

労働者災害保険法とは?

使用者(事業主)と労働者との労働関係は対等であるといわれていますが、一般的に弱者になりやすい労働者は労働基準法により保護されています。労働基準法の中には労働者の業務上の災害について、使用者に災害補償の責任が課せられています。使用者には労働者を働かせるには安全に配慮する義務があるからです。

万が一災害が起きた時、使用者に補償能力がない場合は、労働者に補償が行われないケースが出てくることが考えられます。労働者が安心して働くことができるよう、使用者に労働者災害保険の加入を義務づけ、国が使用者に代わって保険給付を行う仕組みになっています。

つまり、使用者の災害補償を国が代わりにする保険のことを労働者災害保険(労災保険)といいます。労災保険は、原則、労働者を一人でも使用する事業は労災保険の強制適用事業所となります。労災保険は正規の労働者だけでなく、パートタイマーやアルバイトも含まれます。労災保険料については、使用者が全額負担します。

労災保険には業務災害と通勤災害がある

労災保険には業務災害と通勤災害があります。

業務災害とは労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡のことをいいます。業務災害の場合は、業務遂行性(事業主の支配下にある状態)および業務起因性(業務とケガ等の間に一定の因果関係がある)という2つの要件を満たす必要があります。

通勤災害とは労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡のことをいいます。通勤災害の場合は、通勤に通常伴う危険が具体化したことをいいます。

通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

1 住居と就業の場所との間の往復
2 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
3 上記1に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。(労働者災害保険法第7条より)

業務災害は、休業1日目から3日目の補償については労災保険からは給付されないため、事業主が労働基準法の平均賃金の6割を労働者に支払う責任があります。通勤災害は、休業1日目から3日目の補償について業務災害と同様に労災保険の給付はありませんが事業主が休業補償をする義務もありません。

こんなとき、通勤災害になる?

今回は通勤途中の災害について例をあげて考えてみましょう。

例1 Aさんはアパートの2階に住んでいます。仕事に出かけようとして玄関を出ました。ところが、階段を降りていたところ、踏み外して転倒。骨折しました。

➔集合住宅は玄関を出てからが通勤となり、通勤災害になります。

例2 Bさんは1戸建てに住んでいます。仕事に出かけようとして玄関をでました。ところが、家の敷地内でつまずき転倒。捻挫しました。

➔家の敷地内はまだ通勤がはじまっていないため、通勤災害にはなりません。

例3 通勤途中に同級生にばったり。久しぶりだったので、コーヒーを飲みながらおしゃべりをしてから帰宅していたところ、駅のホームで転倒。捻挫しました。

➔通勤を長時間中断しささいな行為ではないため、そのあとの経路については、通勤とされないため、通勤災害になりません。

例4 通勤途中に夕食の材料を買いに近くのスーパーへ。購入後、帰宅途中につまずき転倒。手首を骨折しました。

➔日用品の購入その他これに準ずる行為(買い物)中は通勤ではありませんが、購入後の経路は通勤となり通勤災害になります。

まとめ

通勤途中に逸脱、中断してしまっても、その逸脱、中断(※)が「ささいな行為」「やむを得ない事由により行うための最小限度のもの」であれば、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に戻った後は再び通勤となります。

(1)  日用品の購入その他これに準ずる行為
(2)  職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(3)  選挙権の行使その他これに準ずる行為
(4)  病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

(※)逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことをいいます。(東京労働局HPより)

4月に異動や転勤、新しい職場にという人もいる中、少し落ち着いたころにケガ、なんてこともあるかと思います。いつもならまっすぐ帰宅するところを、つい長時間の寄り道(逸脱、中断)したために通勤災害と認められないこともあります。

使用者も労働者も、「労働者災害保険法」について理解を深めておく必要があります。どんなときに適用されるのか一度確認してみるといいですね。

 

 

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