竹内 美土璃

遺言のすすめ―相続をめぐる争いを避けるために―

遺言のすすめ

相続をめぐる争いが増えています。
司法統計でも家庭裁判所へ持ち込まれる相続に関連する相談件数や新たに申し立てられる調停の件数が右肩上がりに増加していることが報告されています。

いったん相続をめぐる争いが起きると相続人の感情的対立に発展し、親族関係が断絶状態になることも少なくありません。
相続をめぐる争いを避ける最も有効な手段は遺言を残すことです。

遺言のメリット

本人の意思が示せる

遺言によって本人が遺産をどのように分けて欲しいかを示すことができます。
亡くなった本人の考えを示すことで相続人が納得することが期待できます。

また、遺言があれば、原則として遺言のとおりに遺産が分けられます
特定の相続人にたくさん遺産をあげたり、少なくしたり、相続人以外に遺産をあげたりすることも可能です。

遺産分割協議をしなくて済む

遺産をめぐる争いの多くは、遺産分割協議をする中で起きます。
相続人同士で誰がどの遺産をどれだけ相続するかを話し合う中で不公平感が生まれ、感情的対立に発展してしまうのです。

相続人の中に、行方不明の方や認知症などで判断能力を失ってしまった方がいる場合には、遺産分割協議を行うこと自体が難しくなります。

遺言によって遺産分割協議をせずに済ませることができますので、このような問題を避けることができます。

遺言を残すときに注意すること

遺言は法律で定められた形式を満たさないと無効になってしまいます。
また内容が曖昧だったり不明確だったりすると遺言にもとづいて相続手続ができなくなってしまいます。
せっかく残した遺言が無効になったり無意味になったりしないように注意する必要があります。

遺言を無くしたり隠されたりしないように分かりやすい場所に保管しておくことも大切です。

遺言の内容は独りよがりにならず、残された人たちが納得できる内容にすることも大切です。
同居し、介護してくれた相続人の相続分を少なくしたり、相続人が相続財産である不動産から退去しなければならないような遺言を残したりすると、相続人が納得することはできないでしょう。

兄弟姉妹以外の相続人には遺言でも侵害できない「遺留分」という権利があります。
せっかく遺言を残したのにかえって遺留分の争いが起きないように注意する必要があります。

一言アドバイス

遺言が無効になったり、無意味になったり、かえって争いを惹き起こす内容になったりしないように、専門家に相談したうえで遺言を作成することをお勧めします。

関連記事

遺言を残すべき場合とは? 遺言の有無で分かれる明暗
遺言の有無で何が違うか 遺言がないと相続人が法定相続分を基準に遺産をどのように分けるか話し合って決める必要がありますが、遺言があれば被相続人(亡くなる方)が自分の遺産を誰にどのように残すのか決めることができ、相続人が話し合いをする必要がなくなります。 遺言を残すべき場合 相続人以外に遺産を残したい 相続人以外の人や団体に遺産……
特別寄与料とは-相続人以外でも請求が認められるケース-
はじめに 平成30年(2018年)に相続法が大改正されました。今回は、この改正によって新たに設けられた「特別寄与料」についてご紹介します。 特別寄与料とは 長男の妻など相続人以外の者が、被相続人の生前に、被相続人のために無償で献身的に介護などを行い、看護料の支払いを免れるなど相続財産の維持増加に特別の貢献をした場合であっても、今回……
笑顔相続サロン®名古屋「経営者にとっての笑顔相続会議」
名古屋駅前のウインクあいちにて、株式会社さくら総合オフィスの笑顔相続サロン®︎名古屋主催のセミナー「経営者にとっての笑顔相続会議」が開催されます。 今回は、基調講演として相続業界で有名な一橋香織氏にご登壇いただき、経営者が後継者に伝えておかなければならないことについてお話しいただきます。弊所弁護士の竹内裕詞も法律家の視点からお話しいたします。貴重な機……
遺留分制度の改正-事業承継・相続対策における影響とは
はじめに 2018年7月に相続法が改正されました。約40年ぶりの大きな改正です。配偶者居住権、自筆証書遺言の要件緩和、自筆証書遺言の保管制度、相続人以外の貢献の考慮が注目されましたが、遺留分のルールが大きく変わったことはあまり紹介されていません。しかし、遺留分制度の改正は事業承継・相続対策に大きな影響がありますので、今回ご紹介します。 ……