竹内 美土璃

認知した子の存在を隠し通し、子どもたちが相続でもめない方法はありますか?

家族円満のために、婚外子の存在を家族に知られたくないという方がいらっしゃるかもしれません。
そんな方法はあるのか、また、そういった場合何がベストなのでしょうか?

認知した子は家族に隠せるのか?

認知した婚外子の存在を家族に隠すことができるか? 結論から言えば、答えはNOです。
下記の戸籍サンプルの【4】をご覧ください。
戸籍には、本人の名前の下に、「父」「母」の記載がされます。
父親が子どもを認知した場合、子どもの戸籍の父欄には認知した父親の名前が記載されます。
また、身分事項欄には父親が本人を認知した旨が記載されます。

【出所】名古屋市;戸籍ってどんなことが載っているの?

では父親の戸籍にはどのような記載がなされるでしょうか?
子どもの母親が、「丸の内松子」で生まれてくる子どもが「丸の内竹子」の場合で考えてみましょう。
父親の身分事項欄には、「平成30年3月〇日 △△市××番地 丸の内松子同籍竹子を認知届出」というような記載がされます。
認知をしても、「竹子」は父親の戸籍には入らず、「丸の内松子」の戸籍に「竹子」が記載されたままとなります。父親の戸籍には、認知したことだけが、戸籍の身分事項欄に記載されることになります。

よく、「『転籍』という方法を使うと、現在の戸籍から認知された子である竹子を消すことができる。」と言われることがあります。
どういうことかというと、本籍地を移して新しい戸籍が作られるときに、「子を認知した」という事項は新しい戸籍に移記されないので、竹子を認知したという事項が新戸籍では消えてしまうということです。これは「転籍」だけでなく、戸籍の書式変更など役所の都合で戸籍を作り直す場合(改製)も同じです。

夫の新戸籍には、妻や子どもなど戸籍を同じくする家族の名前しか載ってこないということになります。
なお、「認知した」という事項と異なり、「認知された」という事項は新しい戸籍に移記されますので、「竹子」が新戸籍に移っても、戸籍の身分事項欄には父親に認知された事実は記載されます。また「竹子」の新戸籍の父欄にも認知した父親の氏名が記載されます。

しかし、転籍前の戸籍も保存されますので、「竹子を認知した。」と記載された戸籍は残っています。 最新の戸籍に「竹子を認知した。」との記載が無くても、元の戸籍(除籍、改製原戸籍)を取り寄せれば「竹子」の存在が分かってしまいます。

「相続手続き」の時には、出生から死亡までの戸籍を取り寄せ、相続人の調査をします。 出生から死亡までの戸籍が揃わなければ、相続手続きをすることができません。今は 内緒にしていても、少なくとも相続手続きの時には認知していたことが家族に分かってしまいますので、隠し通すことは難しいですね。

争族を回避するベストな方法は何ですか?

家族に説明していない婚外子がいる場合には、「争族」を回避するのはなかなか難しいと思います。
気持ちの問題ですからなかなかすんなりとはいかないでしょう。

現在の戸籍には認知した事実が記載されていなくても、遅くとも相続の時には家族に知られてしまうことが分かりました。
なので、たとえ生前は隠せても、ご自分の死後にはわかってしまい、結局もめてしまうことになります。

では、争いを最小限に抑える方法はあるのでしょうか?
それは、きちんと「遺言」を書いておくことです。
「遺言」をきちんと書いておいて、誰がどのような財産を受け取るか、明確にしておけば、妻、妻との間の子と認知した子が遺産分割協議をする必要は無くなります。
また、遺留分を侵害しない限り、妻や子ども達の実情に合わせて、遺言で相続人に与える財産を増減することができます。

「遺言」を書いておいてもきっとその内容に納得できない相続人もいるでしょう。あなたが生前に説明をしていなければ、事態を冷静に理解するのも難しいことと思います。
そのような状態で相続人全員で円満に遺産分割協議をすることはほとんど期待できません。
「遺言」があれば遺産分割協議をせずに相続を進めることができます。
「遺言」があるのとないのでは大きく違ってきます。

変わってしまった法定相続分

平成25年の民法改正に伴い、婚外子の法定相続分が変わりました。
つまり、改正前は実子の1/2しか受け取ることができなかった婚外子の相続分が、実子と同等の相続分になったということです。
婚外子がいる場合、妻や実子にとって、相続に対する影響がより大きくなったということになります。
詳細は、法務省のサイトをご確認ください。

【相続関係図】

まとめ

認知した婚外子の存在を家族に隠し通すことはできません。
明らかになったときの混乱を考えれば、生前にきちんと説明しておくべきでしょう。
少しでも争族を避けるために、相続人がどの財産を相続するのか、あらかじめ決めておくことが望ましいと言えます。
そのために、面倒だと思わずに「遺言」という形を取り、家族への責任を果たしてあげる。それが、家族に最後にしてあげることができるプレゼントとなるのではないでしょうか。

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