遺言の書き間違い-実際にあった事例

A社創業者のB氏の息子Cさんと、A社の社長を務めているDさんが弁護士事務所に相談に来ました。

D社長: 先日、当社の創業者で、私の伯父である会長Bが亡くなったのですが、会長が残した遺言に書き間違があり、困ったことになっています。

息子C: 母は既に亡くなっていて、私は一人っ子ですから、父Bの相続人は私だけです。私は医師になったのでA社は継がず、いとこのDがA社を継いで、社長を務めています。

D社長: 当社の発行済み株式は1万株で、私が500株、会長が9500株を保有していました。会長は生前に、『株は全てお前に渡す。私にもしもの事があっても大丈夫なように遺言も書いてある。』と言っていました。

息子C: 私も、父から、父が死んだら、父が持っているA社の株は全て社長Dに引き継ぐ、と聞いています。

D社長: ところが、会長が残した遺言には、『A社の株式950株はDに遺贈する。』と書いてあるのです。9500株と書くべきところを950株と書き間違えているのです。

息子C: この遺言によれば、父の遺産であるA社の株9500株のうち、Dが遺贈を受けた950株を除く8550株は私が相続することになってしまいます。私は、配当もなく、換価もできないA社の株は欲しくありませんし、相続税を払うのも迷惑です。生前の父の意向に沿って全てDに渡したいのです。遺言を書き換えるとか、話し合いでDに引き継ぐということはできないのでしょうか。

弁護士: Bさんは既に亡くなっているので遺言を書き換えることはできません。DさんはBさんの相続人ではないので、CさんとDさんの話し合い(遺産分割協議)で株をDさんに相続させることもできません。Cさんが相続した株式8550株をDさんに贈与すると、多額の贈与税が課税されてしまいます。

C、D: 困りましたね。

弁護士: Bさんは、生前に、『私が死んだら、私の持っている株式はDにやる。』と言っていたのですよね。 C、D: それは間違いありません。

弁護士: それならば、Bさんの生前に、BさんとDさんの間で、Bさんが保有しているA社の全株式を、Bさんが死亡したときに贈与するという死因贈与契約が結ばれていたと言えるのではないでしょうか。

D社長: 私と会長は、贈与をしたという契約書を作っていませんが…。

弁護士: 死因贈与契約は、口頭で成立する諾成契約ですから、書面が取り交わされていなくても支障はありません。受贈者であるDさんと唯一の相続人であるCさんの間で争いがないのですから、A社の株式は死因贈与に基づいて全てDさんに引き継ぐことができそうです。

C、D: それではそのように進めたいと思います。

解決のポイント

今回はたまたまBさんの意向に沿って解決ができたのでよかったですが、遺言を書いた人が亡くなった後に遺言の書き間違いが見つかったらどうしようもありません。
また、相続税がどれくらいかかるかを考えないと、受贈者に大きな負担を負わせることにもなりかねません。
遺言を書くときはあらかじめ専門家に相談することをおすすめします。

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