青山 創星

「『保険でお金を増やす』はリスクがいっぱい」を深掘りしてみる(2)

こんにちは、青山創星です。

老後2000万円不足問題を聞いてお金を増やさなければと思った方が、十分な理解をしないまま慌てて大きなリスクの金融商品に手を出してしまわないことを祈っています。

金融庁も販売体制や商品性に大きな疑問を投げかけている外貨建ての保険について、岩城みずほ氏の標題の著書に大きな触発を受けました。

著書を読ませていただき、まだ残った外貨建て保険についての疑問点の解明を試みています。

これは、その解明に関するメモの第2回目でです。

公開された少ない資料の中から秘密の解明を試みています。
そのため推測に基づく部分もあります。
誤り等お気づきの点がありましたら是非ご教示いただきたいと思います。
この記事が商品についての理解不足から不測のリスクを負ってしまう人を少しでも減らすことに役立てば幸いです。

今回は、一つ目の疑問点の解明です。

1.市場価格調整率(MVA)の意味と問題点

外貨建終身保険の定額部分のように、保険会社の運用対象が債券になっているものがあります。

債券で運用していると、債券の期限まで運用できれば預金と同じように投資元本が100%戻ってきます。
しかし、期間の途中で換金するとその時の金利情勢によっては元本額を下回ったり上回ったりします。

保険会社から見ると、この商品を持っているお客様が途中で解約した場合にリスクを負うことになります。
その保険会社のリスクをお客様に転嫁するための仕組みが市場価格調整率(MVA、Market Value Adjustment)と呼ばれるものです。

自分で米国債等に投資する場合も、期限まで持たずに途中で換金する場合は債券の価格変動リスクを負うことになります。
ですから、この仕組み自体があることは十分理解できます。

しかし、これから検討するいくつかの点で直接自分で米国債等に投資する場合に比べて不透明であったり、顧客側に過大な負担となっていないでしょうか。

解約返戻金額の計算方法

解約返戻金は以下の通り計算されます。

 

A:契約時の利率
B:解約時の利率
 α :タイムラグ・マージン
N:解約日から積立利率保証期間最終日までの残存月数

 

債券価格が下落(市中金利が上昇)する場合は、市場価格調整率(MVA)が大きくなる結果、解約返戻金が少なくなります。
債券価格が上昇(市中金利が下落)する場合は、市場価格調整率(MVA)が小さくなる結果、解約返戻金を多くなります。

上記のMVAの計算式は、解約時の利率(B)が契約時の利率(A)より高くなっているとプラス、その差が大きいほど大きなプラスの数字となります。
(逆に、解約時の利率(B)が契約時の利率(A)より低くなっているとマイナス、その差が大きいほど大きなマイナスの数字となります)

基準利率の定め方が不透明

金利変動によって損失が出たり利益が出たりするということを判断する基準となる利率(基準利率と呼びます)の定め方が不透明ではないでしょうか。

私の確認できた商品については、解約時の基準利率の設定にあたっては、残存期間ではなく保険期間に対応するものとなっています。
金利の期間構造(イールドカーブ)は、一般的には長期であるほど金利が高くなると言う関係があります。
(期間によっては、逆イールドになっている場合もあります。現状でも6か月から3年ほどまでは逆イールドとなっています)
残存期間ではなく保険期間に対応する金利を基準に基準金利を定めると、解約時の利率が高くなってMVAが大きくなる結果、解約返戻金が少なくなります。

また、指標金利を米国債などと定めて、それに基づいて決めているようですが、具体的にどのように決められているかが明示されているものを見つけることが出来ませんでした。

 

次回以降は、タイムラグ・マージンの設定、解約時の基準金利の設定について検討していきたいと思います。

 

 

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