ご覧の皆さま、こんにちは。
年金というフィールドで、相談業務、教育研修、制作(執筆・編集等)、調査研究という4領域で活動中、年金のポリバレント・井内(いのうち)です(※ポリバレントとは、サッカーで複数のポジションをこなせる選手として使われている言葉です。)。
65歳以降の老齢基礎年金、老齢厚生年金については、繰下げ受給制度があります。65歳から受け取らず、受け取りの開始を遅らせ、その代わり年金を増額させる制度です。
1月につき0.7%の増額が可能となっていますが、現行制度上は70歳まで5年間の繰下げにより42%(0.7%×60月)まで増額が可能で、2022年4月からは75歳(0.7%×120月)まで繰下げが可能になり、最大で84%増額させることも可能となります。
しかし、65歳時点で遺族年金を受けられる場合は、この繰下げをすることができません。
会社員、公務員だった夫を既に亡くしているような65歳未満の奥さんは要注意です。
夫を亡くし、65歳前から65歳に至るまで遺族厚生年金を受けていた人について、65歳以降年金の内訳が変わります。
65歳以降は老齢年金と遺族年金は併せて受給できますが、まず、自身の年金加入記録を元にした老齢基礎年金、老齢厚生年金を受給し、さらに本来の遺族厚生年金の額から老齢厚生年金相当額を差し引いた差額分としての遺族厚生年金を受給する、という扱いとなります。
この老齢基礎年金と老齢厚生年金が繰下げによって増額させられないということになります。
65歳前に遺族厚生年金の請求をする際、65歳からの老齢年金が繰下げができないことについて、窓口で説明があるかもしれませんし、説明がないかもしれません。
しかし、いずれにせよ、65歳から年金の内訳が変わること、老齢年金は繰下げができない年金として受給することになることはあらかじめ覚えておきたいところです。
65歳になる前からずっと
「65歳からの老齢年金は繰下げしたい、年金額を増やしたい・・・」
と考え続けていると、
実際に65歳を迎えた際に初めて繰下げできないことを知ることになります。
そうなると、65歳以降の家計の収支計画が大きく狂うこともあります。
そのため、早い時期から繰下げ以外の方法で年金やその他の収入を増やすことについて模索しておく必要があります。
もし65歳からの年金を増やすとすれば、老齢基礎年金が満額でない場合に、国民年金保険料を納付して増やす方法があります。
60歳前であれば国民年金に加入義務があり、60歳以降であれば任意加入となりますが、国民年金保険料(2020年度:月額16540円)を納めることで、老齢基礎年金が増えます。保険料1月分納付すれば、年額1628円程度の老齢基礎年金が増える計算です。
また、国民年金保険料と一緒に付加保険料(月額400円)を納めると、65歳からの付加年金(付加保険料1月納付につき年額200円の年金)が増えることにもなります。
一方、フルタイム勤務や一定日数・時間以上のパートで勤務し、厚生年金に加入した場合についてはどうでしょう。
厚生年金保険料を負担した結果、老齢厚生年金が増えると、その分65歳以降の、差額支給となる遺族厚生年金が減ることになりますので要注意です。
60歳以降の厚生年金加入の場合は老齢基礎年金は増やせず、増えるのは老齢厚生年金のみですので、保険料は負担したのに合計の年金額ではそのまま変わらず(遺族年金が非課税に対し、老齢年金は課税対象となるため、むしろ減る!?)という状態になります。
もちろん、厚生年金に加入するほどの一定の勤務時間・勤務日数であれば、給与収入という点では厚生年金未加入となるような短時間勤務より多くはなります。
こうした違いがありますが、該当しそうな方は、両者をよく比較の上で働き方を考え、65歳以降に備えてみてはいかがでしょうか。
【これまでの実績】——————-●年金相談は3500件以上経験、●教育研修は地方自治体職員向け、年金事務担当者向け、社会人1年生向けなど、●執筆は通算200本以上!『週刊社会保障』の「スキルアップ年金相談」(法研様)、「東洋経済オンライン」(東洋経済新報社様)、「ファイナンシャル・フィールド」(ブレイクメディア様)、月刊『企業年金』の「知って得!公的年金&マネープラン」(企業年金連合会様)。●調査研究活動は研究論文「老齢年金の繰下げ受給の在り方-遺族厚生年金の受給権がある場合-」(日本年金学会編『日本年金学会誌第39号』)など。
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