小川 洋平

法人化のメリットは利益が出てから??

こんにちは!好きなことを仕事にしている小規模事業者様のお金のサポーター、ファイナンシャルプランナーの小川です。

先日私のクライアントの個人事業主様が法人を設立しました。

私が保険の営業をしている頃からお付き合いしているのですが、私と同じタイミングで法人を設立されました。

法人化といったら、事業が上手くいって節税のために税理士さんから・・・

というように考えがちなのですが、一般的には法人化を勧められるような所得ではないのです。

では、なぜ法人化する意味があるとお考えになったのか、そのメリットをご説明します。

個人事業主が法人化するメリットについては動画にてまとめておりますのでご覧ください。

社会保険に加入するメリット

今回のクライアントが法人化した理由の一つは厚生年金、健康保険に加入できるというメリットがありました。

動画の中でもご紹介しておりますが、よく法人化のデメリットとして「社会保険に入らなきゃいけない」と言われることがあるのですが、社会保険に「入らなきゃいけない」ではなく「入ることができる」とも言えます。

何を隠そう、私自身社会保険に入りたいがために法人化したのですから。

社会保険に加入することで厚生年金、健康保険に加入することができるのですが、これが大きなメリットになることもあります。

今回のクライアントがメリットに感じた点は下記の通りです。

・老後にもらえる年金を増やせる

・万が一のときの遺族年金を増やせる

・障害を負ったときの障害者年金を増やせる

・ケガや病気で仕事を休んだときの収入の補填を受けられる

・奥様を扶養に追加できる

など、このようなメリットがあります。

65歳以降に受給できる厚生年金はいくら増やせるのか?

今回のクライアントの場合、役員報酬はまず月額20万円で試算してみました。

クライアントの年齢は現在35歳ですので、仮に60歳まで25年間保険料を納付したとすると、厚生年金で上乗せされる金額はこのように計算します。

20万円(標準報酬月額)×5.481/1000×12か月×(60歳ー35歳=25年)加入月数

=328,860円

年間で約33万円老後に受け取れる厚生年金が上乗せされることになります。

老齢基礎年金が満額で約78万円ですので、合計で111万円程度受け取ることができるようになります。

対して、厚生年金保険料はこのように計算されます。

20万円(標準報酬月額)×0.183=36,600円/月額(法人、個人で折半で18,300円ずつ)

国民年金の保険料が月額で約16500円として、毎月の負担は2万円以上アップします。

「え?それってお得なの??厚生年金の保険料を国民年金の倍額払ってるのに、年金が増えるのは半分以下じゃん・・・」

と、このように思われた方も多いことでしょう。

でも、そこにはこんなメリットもあるのです。

奥様の保険料は不要!

厚生年金の被保険者、つまりクライアントは事業を手伝ってくれている奥様を扶養に追加し、第三号被保険者とすることができます。

つまり、奥様の国民年金保険料は納付する必要が無くなります

すると、お二人分の国民年金の保険料と比較し、たった4000円程度の差で将来の受給額を増やすことができるのです。

さらに、クライアント本人が65歳になられて公的年金を受け取れる年齢になると、奥様が65歳に達するまで「加給年金」を受け取れるようになります

今回のケースでは、夫婦の年齢差が5歳あるため、5年間加給年金を受け取れ、総額110万円程度になると計算されます。

つまり、65歳以降の老齢厚生年金が毎年約33万円アップ、そして加給年金で年間22万4900円×5年間将来の年金を増やすことが可能です

法人と個人合計で毎月たった4,000円の年金保険料の負担増でこれだけ老後の年金を増やすことができるのですから大きなメリットと言えますよね。

国の生命保険!遺族年金額の増額

そして、増額されるのは老齢厚生年金の部分のみではありません。

なって欲しくはありませんが、もし万が一クライアントがお亡くなりになった場合にも奥様や子供達には国の生命保険として「遺族年金」が支払われます。

このご家庭の場合ですと、お子さん達が全員18歳になるまで(高校を卒業するまで)は遺族厚生年金として年間約24.75万円遺族年金額が増え、お子さん達が全員18歳になった後(高校卒業後)には遺族厚生年金24.75万円+中高齢寡婦加算約58.5万円で約83.25万円が65歳になるまで受け取ることができます

そして、奥様が65歳になった後も夫の遺族厚生年金として24.75万円が一生涯受け取ることができるようになるわけです。

生命保険を追加で掛けたと考えてもとっても大きな効果があると言えますよね。

そして、国の生命保険でもある公的年金は遺族年金のみではありません。

ケガや病気で障害を負ってしまった場合も!

公的年金の機能は遺族年金のみでなく、障害を負ってしまった場合にも保障を受けることができます。

それが「障害者年金」です。

厚生年金に加入することで障害等級2級に該当することでこちらも老齢厚生年金と同額の年間約33万円の給付を増やすことができ、1級に該当するとその1.25倍

そして、国民年金部分の障害基礎年金では対象にならなかった3級の障害状態でも、年額58万6000円の給付を受けることができます。

このように、老後のみでなくケガや病気で障害を負ってしまった場合の給付を増やすこともできますので、事実上は生命保険に新たに加入したと同じことになります。

健康保険からは休業時の収入の補償が!

そして、個人事業主で国民健康保険に加入しているときにはケガや病気で休業した際には原則として補償はありませんが、健康保険になると「傷病手当金」が休業4日目から発生します。

ただし、法人の役員は定期同額給与の規定がありますので、休業時の役員報酬規程を新たに追加しておく必要があります。

もしも長期間お休みしなければならなくなっても傷病手当金を受け取ることができ、今回のクライアントの場合は一か月あたり15万円が給付されることになります。

あると無いでは大違いですよね。

更に、健康保険のメリットはこれまで国民健康保険料を月額約3万円支払っていたものが健康保険に変わることで法人、個人合算で2万円程度まで下がることになりますのでトータルで負担減となっているんですね。

総合的な判断が重要!

よく言われるメリットは税金面のことですが、このように社会保険に加入することで法人化のメリットが出てきます。

他にも、iDeCoの掛け金を法人で支払ったり、生命保険も法人契約にしたり、自宅を利用する場合は自宅の一室を法人で借りることで家賃として受け取るなど、法人のサイフと個人のサイフを使って社会保険料と税金をコントロールすることも可能です。

このようにメリットはありますが、これらのことがメリットにならない、デメリットの方が多い方もいらっしゃるのも事実です。

その他、法人となって社会的信用を得られることのメリットもありますしね。

それぞれのメリットデメリットを洗い出してみて検討してみることが大事です。

最後までご覧いただきありがとうございました。