小川 洋平

資金繰りが大変なんですが、「変額保険」は途中解約したら勿体ない・・・?

こんにちは(^^)

経営者の理想を実現する資産形成のプロ、ファイナンシャルプランナーの小川です。

今回は過去の相談例で「変額保険」を契約しているが、途中解約したら勿体ないと言われている美容室経営のYさんのケースをご紹介します。

コロナ禍で経営のピンチを迎えた、美容室経営のYさんの例

コロナで成人式も無いし結婚式も少なくなって・・・

今はコロナ融資もあるからお金は何とかなるんですけど、預金がちょっとずつ減っていってるので心配です・・・。

まだ先が見えない状態だから、不安ですよね。

まずやっていただきたいのが、お店と家計の「お金の見える化」です。

毎月どれだけ売り上げがあって、何にいくらお金使って、結果いくらお金が増減しているかって、把握されてますか?

売上と大体の家賃や人件費はわかりますけど、実際の数字は見てないです・・・。

税理士さんに任せきりで・・・。

なるほど、じゃあそれを見える化しましょう。

会計ソフトを使うと簡単にできるので、やっていきましょう。


家計の方も、今は無料で使える家計管理アプリなどもあるのでお金の出入りを見える化するところからやってみましょう。

それから、今の貸借対照表の状況だと、やっぱり負債が大きくなっちゃってますね。


今はコロナ禍で融資も甘くなってるので良いのですが、コロナ禍が終わったら早急にナントカしないといけませんね。


あと、今貯蓄系の生命保険とか入ってませんか?

あ、はい、入ってます。

個人事業主は老後の年金が少ないからいっぱい掛けておかなきゃダメだってFPさんに言われて、運用の結果によって保障が変わる保険に・・・

あ、ひょっとして「変額保険」ですか?

そうです!

それに月6万円払ってて・・・

6万円ですか・・・

なかなかです(^^;)

ちなみにそれ、何て言って勧められたんですか?

外国の株で運用してて、すごい増えるって言われたんです。

あと、節税になるからって・・・

節税か・・・(^^;) たぶん、Yさんの今の現状だと節税にはならないと思うんですけどね~。

今どのくらい続けてますか?

ちょうど3年くらいですかね~

わかりました。

とりあえず、それ解約の方向で考えましょう。

私も、今お店の経営がこんななのに、保険料こんなに高いのってどうなんだろうって思ってました・・・。

FPさんに相談したこともあったんですけど、今やめると勿体ないからって止められて・・・

確かに、途中解約は基本的には損なので、貯蓄系の保険を契約される場合には原則として途中解約は極力しないことです。

というより、そもそも解約しなくていいように無理の無い金額を掛けることが一番なんですけどね。

今は手持ちの預金が減ってる状態で、それだけの保険料払ってることがまず問題です。

資金に余裕があれば続けるという選択肢もアリですが、今は資金繰りを改善することと手持ちの預金を増やして経営を正常化することが優先です。

それに、変額保険をここで解約してももっと良い方法はありますので、経営の状況みてまた始めればたぶん変額保険続けてるより将来いっぱいお金残せますね。

え?!

そうなんですね・・・・

変額保険って、あんまり良くないんですか??

商品自体は良いも悪いも無く、そのFPさんがしっかりYさんの現状に合わせて提案してくれたのならば決して悪いものではないと思いますよ。

でも、話聴いてるとちょっと違うなぁって思うので(^^;)


変額保険がどんなものなのか、解説していきますね。

変額保険(有期型)=保障+資産形成のセット商品

まず、変額保険は「保障」と「資産形成」の両方を同時に行うための保険商品なんです。

イメージとしてはこんな形です。

満期までの間にもし万が一があった場合の死亡保障を確保しながら、お金を運用しながら貯めていく商品です。

運用が好調だと予定していた満期金、保険金よりも増え、運用が不調だと予定していた満期金、保険金を下回る仕組みになっています。

この辺りは大丈夫ですよね?

はい、FPの人から聴いてます。

じゃあ、次に何%で運用したらどのくらいのお金が返ってくるかを見てみましょう。

※イメージ図、返戻率表はアクサ生命保険(株)ユニットリンクのパンフレットより引用しています。

各社の変額保険(有期型)に通じる一般的な仕組みを解説する目的であり、当該商品についての解説、批評ではありません。

注目して欲しいのは払い込み保険料と払戻金の部分です。

毎月2万円の保険料を30年間払い続けると総額で720万円支払うことになります。

そして、運用益が0%だと558万円に、3%で運用できると901万円、6%だと1,538万円が返ってくることになります。

また、途中解約した場合には運用実績が良くても払い込んだ保険料を下回っているのがわかりますね。

そうですね、0%ってことは、増えてもいなければ減ってもいないってことですよね?


なのに、162万円もマイナスなんですね・・・


私が今3年くらい掛けてるから、今解約したらあんまり返ってこないってことなんですよね・・・。

そうですね、その部分が「保険関係費」と言って、営業さんの手数料になったり保障のための経費に充てられたりしているんです。

変額保険はあくまで「保険」なので、保障の機能が必要な人のための商品なんです。

保障のためのコストが掛かっていて、私達が払う保険料の中からそのための費用が引かれていくんですよ。

このように、引かれるコストが大きいので、単純に貯蓄、資産形成だけを求めるのならば効率が悪いんですよ。

保険が持つ、投資信託には無い機能を目的とするのであればしっかり目的に合った選択肢として機能してくれます。


例えば、「契約者貸付」といった機能を使えば、老後のための資産形成を行っていて、途中でお子さんの進学資金だったり、何かお金が必要な用途がある場合に、積み立てた保険料の中から貸付を受けて資金を引き出したりできますね。


でもそうでなければ、仮に今解約すると確かに損はしてしまいますけど、しっかり利益確保できるようになり、お金に余裕を持てるようになったらもっと効率の良い方法で始めれば良いのです。

このグラフは変額保険で3%運用、6%運用した場合ではなく、毎月2万円をそのまま3%,6%で運用した場合のグラフです。

青い線が3%運用ですが、途中で解約しても元本を下回らずにいますし、最終的には約1160万円になります。

それから、6%運用の場合には約1960万円となりますので、変額保険と比較すると大きな差になっていることがわかりますね。

本当だ・・・

全然違うんですね。

まずこの差を理解していただきたいんです。

この差を理解した上で、単にどちらが効率が良いかではなく、保険の持つ機能を必要としているときに変額保険を選ぶと良いのです。

そして、今解約して損をしていても、将来的にこれだけ大きな差がつくのですから途中で解約しちゃってもそれ以上に増やせば良いわけです。

仮に今解約して、60万円くらい損が出ているとします。

でも、それ以上に将来の差が大きく開くことが考えられるので、早期に解約してもっと良い手段を選べばそれでいいのです。

勿体ないって言われてたから途中で解約しない方が良いと思ってましたけど、そんなことなかったんですね。

納得しました。

まぁ、確かに途中解約は勿体ないのですが、本当なら契約する前にそれを考えるべきだったんですよね(^^;)

保険は途中で解約するのは損、満期まで続けて価値がある。

だから途中で解約することができるだけ無いように、無理の無い金額にしておく必要があります。

と、今回は変額保険の見直しについてお伝えしてきました。

将来の資産形成のために、変額保険が勧められているケースもよく見かけるようになりました。

しかし、保険商品はあくまで「保険」です。

保険が持つ特有の「保障」という機能が保険を使う価値であり、大切なことです。

反面、その大切な機能のためのコストが掛かりますので、その「保障」の機能が不要な場合にはそれはムダなコストになってしまいます。

そして、途中解約した場合には今回のように大きなマイナスになってしまうことがあります。なので、しっかり目的に合った手段かどうかを考えた上で、余裕を持てる資金の範囲で契約する必要があります。

今回、Yさんのケースは契約時に資金の目的と、それに合った手段かどうか、そして余裕を持てるかどうか、しっかり検討した上で契約すべきでした。

特に保障の機能は必要としていなかったのに保険での資産形成を勧められている場合は、早期に見直しした方が良いかもしれませんね。