こんにちは(^^)
経営者の資産を最大化し、お金と時間のゆとりを創る資産形成のプロ、ファイナンシャルプランナーの小川です。
先日、個人事業主のコンサル業の方の法人成りのシミュレーション、そして税金、社会保険料をできるだけ節約できるプランを考えてみた結果、その効果はなんと100万円以上・・・
そんな事例をご紹介します。
1.前提条件
Kさん 45歳男性 経営コンサル(個人事業主)
妻 40歳 お子さん 4歳、2歳、0歳
売上高 3,000万円
所得 900万円(青色専従者給与として妻、母に100万円ずつ支払った後)
相談に至った経緯
ビジネスコミュニティで知り合い、小川と雑談してる中で法人成りのメリットを知りシミュレーションを依頼。
シミュレーションの結果、なかなか面白い結果になりましたよ(^^)
100万円以上の削減効果が期待できます。
それはすごい!
どうやったらそうなるんですか・・・?
ただ法人成りするのではなく、色々とKさんの現状に合わせて仕組みを作ってみました。
まず、個人事業主の現在、税金と社会保険料がどんな基準で計算されているかを見てみましょう。
2.個人事業主に掛かる税金の計算
個人事業主に掛かる税金は
①所得税
②住民税
③個人事業税
この3つがあります。
それぞれどうやって計算するかを見ていきましょう。
確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁 (nta.go.jp)
まず、①緑色の枠の部分が収入です。会社員ならばお給料の金額、個人事業主の場合は売上が入ります。
そして、売上から経費を引いて、青色申告控除を差し引いた所得が②水色の部分です。
今回は他の所得は無しという前提で計算しますね。
そして、②水色の部分から③の赤色の部分「所得控除」を差し引いて、④の課税される所得を計算します。
④に税率を乗じたものが所得税となります。
住民税に関しては、所得控除の金額が所得税の計算とは少し違うのですが、同様に計算して、課税される所得に約10%の税率を乗じて計算します。
税金ってこうやって計算されるんですね・・・
じっくり確定申告書見たことなかったんですが、説明を受けながら項目を見てみるとわかりやすいですね。
そうですね、この確定申告書の見方と税金の計算の仕方がわかると、どうしたら税金を安くなるのかがわかるんです。
さて、ではKさんの税金を計算してみましょうか。
Kさんの所得は900万円で、所得控除額345万円を差し引くと、課税される所得は555万円となります。
この金額がKさんの税金の計算対象となります。
なるほど・・・
課税される所得が555万円だと、どうやって税金計算すればいいですか?
課税される所得は、国税庁のHPからチェックできます。
No.2260 所得税の税率|国税庁 (nta.go.jp)
Kさんの場合、3,300,000円~6,949,000の範囲に入りますので、所得税率は20%です。
なので、課税される所得555万円に20%を乗じて、427,000円の控除額を差し引いて所得税が計算されるんです。
つまり・・・
555万円 × 20%= 111万円
111万円 ー 42.7万円 = 68.3万円
ということですね?
はい、そうです(^^)
次に、住民税なのですが、基本的に違いとしては所得控除の金額で、基礎控除という誰でも引いてもらえる項目が所得税が48万円なのに対し43万円、あとは生命保険料控除が少し違います。
わかりやすくするために所得税の課税所得よりも10万円多い、565万円で計算してみましょう。
ってことは・・・
565万円 × 10% =56.5万円
ってことですね?
はい、そうです。
そして、続いて個人事業税の計算です。
個人事業税の計算は②水色の部分の所得が基準になります。
290万円の控除額がありますので、所得から290万円を差し引いた金額に業種ごとに設定された税率を乗じて計算します。
ただし、ここで気をつけなければならないのは、水色の部分の所得は「青色申告特別控除」を差し引いた後の金額なのですが、個人事業税の計算はこの青色申告特別控除を差し引くことができないんです。
そうなんですね!
ってことは・・・
900万円に65万円を足して、965万円が所得ってことですね・・・
965万円から290万円を引いて、その5%だから・・・
33.75万円
はい、バッチリですね!
ってことで
①所得税 68.3万円
②住民税 56.5万円
③個人事業税 33.75万円
①+②+③=158.55万円
という計算になります。
税金で160万円くらい払ってる計算になるんですね・・・
大きいな・・・
そうですね。
でも、この他に社会保険料があるんですよ。
個人事業税 | 税金の種類 | 東京都主税局 (tokyo.lg.jp)
3.個人事業主の社会保険料の計算は・・・?
個人事業主が支払い社会保険料は・・・
①国民年金保険料
②国民健康保険料
③介護保険料(②と一緒に徴収)
があります。
①はお一人あたり毎月大体16,500円で、年間で約20万円になります。
Kさんの場合は、奥様の分とお二人分負担されてるので40万円です。
そして、ちょっと計算がややこしいのが②、③についてですね。
そうなんですね・・・
国保もやたら高い金額払ってるような気がします・・・
これだけ所得が高いとそうなるでしょうね(^^;)
国保の計算は各市町村によって異なるのですが、基本的には
①所得割+②均等割+③平等割
この3つの要素で計算されます。
①の所得割は、所得に一定の料率を乗じて計算します。
基本的に確定申告書の②の水色の部分が高くなるとこの所得割の部分も高くなります。
そこから基礎控除として43万円を差し引いた金額に、10%~13%程度の料率を掛けて計算されます。
ここでも所得が登場するんですね・・・
税金いっぱい払うだけじゃなくて国保まで・・・
そうですね・・・
そして、均等割は加入者一人あたりに掛かってくる金額です。
1年間で大体3万円~4万円程度ですね。
Kさんの場合、ご家族で5人分の均等割額を負担することになり、大体17~18万円程度になります。
そして、平等割は1世帯に掛かってくることになります。
Kさんが1世帯で払う保険料をシミュレーションしてみるとこのようになります。
うわっ・・・
こんなに高いんですね・・・
ってことは、国民年金と合計すると142万円??
はい、そういうことになります。
そして、税金と合算してみると大体260万円程度を税金、社会保険料で支払っていることになります。
どうりで年収そこそこ高そうに見えるのに、そんなにお金残らないわけだ・・・
では、今度は法人成りした場合にどうなるのかを見てみましょう。
4.法人成りの税金は・・・?
法人を設立することとは、1人の人を法的に作り出すことだと思ってください。
なので、今はKさんはKさんの事業として個人事業を営んでいますが、そこに株式会社Iという人が新しく登場したようなものなのです。
そして、Kさんはその株式会社Iの代表者として雇われている立場だとお考え下さい。
実際にはKさんが株主として決定権を持っているので雇われているというのは違いますけどね・・・
なるほど・・・
よく効くメリットで
・信用がアップ
・節税
といったものがあるんですが、どういう仕組みで節税になるんでしょう??
まず、収入の種類が変わってくるんです。
これまで、Kさんの売り上げは個人の収入としてカウントされていて(①緑色の部分)、そこから経費を引いたものが所得(②青色の部分)としてカウントされていました。
しかし、法人を設立した場合は売り上げは法人の売上になり、経費も法人で使ったものになります。
そして、法人からKさんに支払う役員報酬も、法人にとっては経費になるんです。
なるほど、個人事業のままだと法人から個人の経費を引いたものにそのまま税金が課税されてたけど、私の報酬が会社の経費になり、課税される対象を分散させることができるわけですね。
そういうことです。
だから、法人の利益は法人税(法人所得税、住民税、法人事業税等)が課税されます。
計算が複雑なのですが、ざっくり年間の利益が800万円までならば約25%、800万円を超えた分に対して約33%が課税される計算になります。
なので、これまでのKさんの所得に課税されていたものが所得税、住民税合計で30%、そして事業税が更に課税されてたわけですが、それが利益の25%程度で済むようになります。
なるほど、それは良いですね。
それだけでもメリットが大きいですね。
そうですね。
そして、更にKさんの役員報酬には「給与所得控除」という項目があり、これを役員報酬から差し引くことができます。
そんなのもあるんですね・・・
じゃあ、役員報酬が500万円だとしたら、役員報酬の金額に20%を乗じて、440,000円を足した金額を給与から控除できるってことですか・・・?
はい、そうなります。
だから、144万円を役員報酬から差し引くことができ、Kさんの所得は500万円‐144万円を差し引いて356万円になるんです。
そこから控除項目を差し引くと、Kさんの場合所得税率は10%になると計算されます。
給与所得控除を受けることができるだけでなく、これまでは所得税と住民税を合わせて30%課税されていたものが、20%程度しか課税されないということです。
なので、社会保険料が折半されたり、法人と個人でiDeCoの掛金の上限が異なることなど変化はあるのですが、仮に335万円の所得控除額で計算してみますと・・・
課税所得が210,000円になり、
所得税、住民税合計して41,500円となります。
そんなに・・・?
すごいですね・・・
社会保険料はどうなるんですか?
5.法人成り後の社会保険料は・・・?
社会保険料の仕組も個人と法人では違っていて、法人の場合には毎月の役員報酬月額によって決まります。
原則、4~6月の役員報酬月額の平均値が、下記の表のどこに当て嵌まっているかをみます。
ちょっと見にくいと思うんですが、年収500万円だったら、月割りすると約41.6万円になります(こんな端数にしないと思いますが・・・)
すると、395,000円~425,000円の範囲に当て嵌まりますので、標準報酬月額が410,000円になります。
社会保険料を計算する際には、この標準報酬月額の平均値によって計算されます。
つまり、Kさんの場合だと健康保険料が49,323円、厚生年金保険料が75,030円、合計で1,492,236円が社会保険料ということになります。
なお、奥様とお子さん達は状況から考えて扶養に追加することができますので不要です。
健康保険料は都道府県によって少し異なるのですが、厚生年金保険料は一緒ですね。
社会保険料は節約ではなく、逆に高くなってしまうんですね・・・
でも、節税の効果と差し引きしたらそれでもお得ですね!
そうですね。
ただ、社会保険料は個人と法人で折半して支払いますので、約75万円ずつを法人と個人で折半する計算になります。
そして、厚生年金に加入することで将来受け取れる厚生年金は年間で大体40万円程度アップしますし、もしケガや病気でお仕事を休まなければならないときも傷病手当金といって、役員報酬の2/3を受け取ることもできます。
役員の場合は役員報酬のルールから1日あたりいくらでもらうことは難しいですが、長期間働けなくなってしまった場合には助かりますね。
では、ここまでの税金、社会保険料のメリットをチェックしてみましょう。
個人事業主の状態 | 法人成り後 | |
個人税 | 約160万円 | 約4万円 |
法人税 | × | 約81万円 |
社会保険料 | 約142万円 | 約149万円 |
合計 | 約302万円 | 約234万円 |
年間70万円近くの節約・・・?
すごいですね・・・
しかも、それでいながら厚生年金が毎年40万円増えるなら、20年生きたら800万円だし、働けないときの給付もあるからお得ですね!
はい、まぁそれもあるんですが、法人成りが真価を発揮するのはここからなんですよ。
6.法人から経営者個人に非課税でお金を渡す方法
原則として、役員報酬を上げると社会保険料が増える、そして税金も増えることを覚えておいてください。
そして、こんな方法を使ってみます。
・企業型DC、もしくはiDeCoプラスの導入
・出張旅費規程を定める
・退職金制度の導入
こういった方法を使って法人から個人に非課税でお金を渡すことができます。
その代わり、役員報酬を引下げし、個人に掛かる税金と、社会保険料の削減を狙います。
仮に役員報酬を月額22万円まで下げた場合、社会保険料は年間約70万円まで下がります。
役員報酬の月額を毎月20万円下げると、社会保険料の削減効果は80万円程度にもなるのです。
そして、その代わりに、個人で支払っていたものをできるだけ法人の経費で支払えるようにするんです。
例えば、iDeCoの代わりに企業型確定拠出年金を導入することで、毎月55,000円を会社の経費で拠出することが可能です。
そして、車の賃料として、しっかり賃貸契約を結んで会社から経営者個人に賃料として毎月2万円程度しはらいます。
そして、Kさんは出張が多いので、出張旅費規程がとても有効です。
出張旅費規程は節税の手段としてはよく使われる方法ですが、遠出するにあたり外食をしたり身の回りの物を揃えたりするために、1日あたりの日当を支払う規程を作ります。
また、宿泊費も会社が手配するのではなく、宿泊費として妥当と思われる範囲の金額は会社が規程に基づいて支払い、経営者は宿泊費は自己負担する代わりに規程に基づいた金額を会社から受け取れることになります。
つまり、仮に1万円の宿泊費の規程を作って、実際に泊まったビジネスホテルが5000円だったとしても浮いた5,000円分は非課税の自分のものになるということです。
規程を作って日当や、宿泊費を支払うことで、経営者や従業員が出張に行った際にはその規程に基づき支払われた日当が非課税、社会保険料算定対象外となり、そして会社からの経費として支払うことができます。
※具体的にどの程度の日当、宿泊費を定めるのが妥当かは顧問税理士と必ず相談の上決めてください。
何ですか・・・、その美味しい話・・・
法人の経費になって、しかも私が受け取った日当は非課税になるんですか??
はい、そうなんです。
Kさん、よくお仕事で県外に行かれますよね?
クライアントさんへの訪問だったり、研修を受けに行ったり、異業種交流会への参加だったり・・・
業務のための出張ならば金額が妥当ならば原則として認められます。
1泊2日で言ってこられた場合、1日あたり8,000円の日当を支給していたならば、1回の出張で16,000円の日当になります。
なので、1か月に5回出張に行ってきたならば、8万円の出張旅費として非課税で受け取ることができるようになります。
デカい・・・
出張行くのが楽しくなりそうですね(笑)
そうですね。
そして、経営者に支給する退職金も、一定の金額までは非課税で渡すことができます。
また、退職金も全額損金として貯めておく方法がありますので、法人税の計算対象にもなりません。
なので、こういった方法を組み合わせてもらうと、役員報酬を20万円減らしても、実際の手取り額は今よりも増やすことができるんです。
法人設立すると色々便利なんですね・・・
ちなみに、小川さんが考えてる仕組みを作ると、どのくらいの節約効果になるんですか??
個人事業の状態 | 法人成り後 | |
個人税 | 約160万円 | 約5000円 |
法人税 | ✕ | 約58万円 |
社会保険料 | 約142万円 | 約80万円 |
合計 | 約302 | 約138.5万円 |
差額は約161.5万円です。
ただし、役員報酬を減らすことで厚生年金の受給額が半減して年間で大体20万円程度になります。
とはいえ、これだけの節約効果があるのですから、その分でNISAでの積立を増やしたり、法人でも積立投資しておくと良いでしょうね。
おおおっ~~~
こ、こんなに????
はい、法人成り+税金と社会保険料を減らす仕組みを作ることでこんなことが可能なんです。
法人設立には登録免許税が掛かったり、契約しているサービスや税理士さんへの報酬が法人プランになったり高くなるケースもあるんですが、それらを差し引いてもこの削減効果は大きいですよね。
他に、ふるさと納税を活用したり、クレジットカードで貯めたポイントやマイルを使うと、更にお得に手取りの収入を増やすことも可能です。
実際に何の項目をどのように設定するかはもう少し踏み込んで話をしてみる必要がありますが、いずれにしても大きなメリットが見込めますよね。
そして、Kさんの場合更にメリットがあるのが、奥様が5歳年下というところです。
妻が年下だと何かいいことあるんですか・・・?
はい、将来Kさんが65歳になり公的年金の受給を開始した際に、奥様がまだ公的年金を受給する年齢になっていない場合、厚生年金に20年以上加入された方には1年あたり約40万円の加給年金が給付されるんです。
厚生年金に加入してるとそんなメリットもあるんですか?!
そうですね(^^)
煩わしいこともありますけど、税金や社会保険料を節約できる仕組みを作ることができるのですから大きなメリットですよね。
私も、月の売り上げが10万円にも満たない頃に法人成りしています。
副業でやっていくのではなく、しっかり事業としてそこそこ収入を得て行きたいのならば初めから法人設立は検討して良いと思いますよ。
他に団体に所属していて、その団体で社会保険に加入しているならば個人事業のままでも良いと思いますしね。
いずれにしても、どの程度の効果があるのかをシミュレーションしてみるのが良いでしょう。
7.まとめ
ということで、法人を設立した際のメリットについて対話形式でお伝えしてきました。
「法人成りは年収〇万円以上になったら・・・」
などといった目安もありますが、厚生年金加入によるメリットや、社会保険料の削減、税金の削減メリット、そして法人から個人に非課税で支払うことができる手当や制度など、仕組みを作ることで大きな節税が可能です。
反対に、いくら収入が高くても法人成りしない方が良いケースというものも存在します。
一般的な通説ではなく、個々に当て嵌めたシミュレーションを行った上で考えてみると良いですね
そんな経営者様のために、税金、社会保険料適正化を無料でシミュレーション致します。
①お問合せフォームよりお申込みください
②損益計算書、貸借対照表、確定申告書(個人、法人共に)をPDFにてお送りください。
③面談の日時を決定
④面談しながら必要な情報をヒアリングさせていただき、入力の上シミュレーションの結果をご提示いたします。
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