小川 洋平

「ホントにあった経営の怖い話」 深夜の繁盛店が倒産寸前!社長を震え上がらせた“あの一通”の正体とは

こんにちは(^^)

経営者のキャッシュを増やし資産を増やす小さな会社の社外CFO、ファイナンシャルプランナーの小川です。

突然ですが、あなたの会社では「労務管理」はどのようにされていますか?

人を雇うときには知らないままだと大変な情報がいっぱい、時には小さな会社でもいきなり数百万円ものお金を払わなければならなくなることも・・・。

今回は地方都市の小さなラーメン屋さんで起きた、ホントにあった怖い話をお伝えします。

売上激減に追い討ち・・・。元従業員から届いた200万円の請求。

地方都市の繁華街にある小さなラーメン屋さんを営む、高橋社長(52歳仮名)。スタッフ2名で切り盛りする深夜営業のラーメン店は、飲み帰りのサラリーマンや学生でいつも満席になる人気店でした。

しかし、そんな人気だった店も、2020年のコロナ禍で状況が一変したのでした。賑やかだった繁華街は閑散とし、売上はなんと前年比の50%減・・・。

もともと薄利で回していたお店でしたが、月々の支払いに追われ、ついには休業を選択したのでした。

この期間、高橋さんは雇用調整助成金を申請し、スタッフを休業扱いにして給与を支払っていましたが、これまでの給与を100%補償できるものではなく、生活が苦しくなったスタッフの一人の山口さん(34歳仮名)が退職することになったのでした。

退職を申し出た際、店主の高橋さんは売上が激減し今後どうしようかと悩んでいる際で、つい山口さんにもキツい物言いをしてしまい、ケンカ別れのようになってしまったのでした。

そしてその数日後に1通の内容証明が届いたのでした。

「未払い残業代 2,038,000円の支払いを求めます。」

送り主は、つい最近退職した山口さんの代理人の弁護士からでした。

高橋さんは驚き、激怒したのでした。

「給料ならちゃんと払ってたじゃないか!残業があればしっかりつけていたはずだ」

そう思い弁護士からの文書に記載された計算根拠を読み込みますが何を言ってるのか理解ができず、常連の地元の弁護士に相談することにしました。

なぜ200万円もの支払いが必要になったのか?

事情を聴いた弁護士からは払う必要があり、できるとしたら山口さんが納得する金額で妥協してもらうことだということでした。

労働基準法では、法定労働時間を週40時間・1日8時間と定めているます。それを超えた勤務には時間外手当として時給換算で25%増し、さらに午後10時〜午前5時の労働には深夜割増で更に1.25倍を支払う義務があります。

山口さんは在職中週6日勤務で深夜のシフトも多かったので、毎週1日分を残業していたことになります。いかに「週6日の固定給」という条件を出していたとしても、週40時間=1日8時間の5日分の勤務を超過して勤務していますので、超過した分には1.25倍の残業代が発生してきます。

そして、さらに10時を超えて勤務していることも多く、発生した残業代には1.25倍の超過勤務に加え、深夜割増で1.25倍が加わるため、最大で1.5倍の賃金にもなっていることになります。

そして、もう一つの問題は「休憩時間」でした。表向きは1日1時間の休憩を与えていたのですが、店が忙しいとあまり休憩を取れないことも多く、休めなかった時間も多いのです。

労働基準法では、6時間以上の労働に対して45分、8時間以上なら1時間の休憩が義務づけられていますが、休憩は「労働から完全に解放されていること」が条件であり、呼び出しに応じなければならない状況での休憩は、実質「労働」と見なされることが多いものです。

このように固定給をしっかり払い、超過した時間に対して通常の時間割増で賃金を支払っていたと思っていても、割増分の賃金を計算していなかったり、時間外の認識が誤っていることがあります。

このように労働時間や残業管理を曖昧にしている中小企業経営者は少なくなありません。しかし、それがいざ問題となったとき、経営を揺るがす「隠れ債務」として襲いかかってくきたのが今回の事例です。

未払い残業代は、時効が3年ある。もし複数の社員が同様の環境で働いていれば、数百万円から数千万円規模の請求が発生する可能性もあります。

「労務管理」の甘さは致命傷に繋がることも多い

2023年4月には、改正労働基準法により中小企業にも「月60時間超の残業には50%割増」の適用が開始されましたた。さらに、従業員50名以上の企業においてはアルバイトでも週20時間以上働けば雇用保険のみでなく厚生年金、健康保険険加入が義務化されているが、未対応の企業も多いものです。

仮に年単位で社会保険料の未納が発覚した場合、会社と従業員双方の保険料を遡って徴収され、経営が厳しい最中での突然の請求は資金繰りに大きな打撃を与えることになります。

また、就業規則が形骸化していたり、就業規則や労働条件通知書はあってもそれが労働基準法に違反するような内容の場合、当然労働基準法の方が優先されます。

そして、今回のように労働基準法に違反していることに気が付かないまま経営を続けていた場合、労働者側にとって圧倒的有利な状態で、しっかりとした根拠を元に提示された数字であれば原則として会社側は支払いを拒否することはできません。

なので、しっかり労働基準法と自社の営業形態とを擦り合わせしたルールづくりと労働基準監督署等への届け出を行い、このようなことにならない仕組を創ることが必要なのです。

ルールづくりでコストダウンも可能

そして、今回のケースでは特例として週40時間の労働時間から週44時間までにすることも可能だったと考えられます。

業種や規模によっては労働時間週40時間を、特例として44時間にすることもできます。

つまり、隔週ですが週6日働く週が2回あっても超過時間とはカウントせず働いてもらうこともできるわけです。

時給1500円換算になる社員を1日多く働かせると、1日あたり1.5万円の賃金が発生しますが、予め仕組を創っておけば月に2日分で3万円分の支払いを浮かせることができるということです。

また、繁忙期に関しては週6日だったり、1日8時間を超えて勤務し、閑散期では週4日の勤務、1日6時間などの労働時間を調整する「変形労働時間制」という制度を利用することもできます。

このようなルールを整備して運用していくことで人件費を抑制するだけでなく、今回のような未払い残業代を請求されるようなリスクを回避することもできます。

ついつい後回しにされてしまいがちな労務管理ですが、知らないと後から痛い想いをするだけでなく、致命傷になることもありますので小さな会社であっても甘く考えずにしっかり整備していきましょう

社会保険労務士に依頼し仕組みを創り顧問に就いてもらう

こういった雇用関係の法律は大変複雑で、知識が無い人が安易に考えて判断してしまうと大変危険です。

ですので、雇用に関する法律のプロ、社会保険労務士さんに依頼し、現在の営業形態や勤務の実態からどういう制度を利用するのが有利なのかを考えてもらい、仕組みを構築し、適正な労務管理を行っていくことが必要です。

上手に仕組みを使えば人件費の抑制を行うこともでき、しっかり法律に合った形に整備してもらうことで余計なコストを払わずに済み、リスクを回避することもできます。

また、助成金も多くの企業で利用できるものも多く、有効活用できるアドバイスを受けることもできます。

ですので、人を雇ったら規模を問わず社労士さんに相談してみましょう。

「誰を選べばいい?」という疑問をお持ちの方も多いかと思いますが、私にご相談いただけますとそういった親身に寄り添ってくれ、仕組みを整備してくれる社労士さんをご紹介することも可能ですので、もし気になった方はお声がけ下さいね。