小川 洋平

「お金が残らない・・・」そんな中小企業に共通することとは?

こんにちは、中小企業のキャッシュを増やし資産を増やす社外CFO、ファイナンシャルプランナーの小川です。

「利益出てるはずなのに、お金があんまり残らないんだよね…」

中小企業の経営者さんから、よくこんな声を聞きます。

「利益は黒字なんだけど、なんでうちこんなにお金ないの?」

「原価率が毎月ブレブレで読めない…」

実はこれ、原因は経理処理の問題かもしれません。

特に「在庫」や「仕掛品」の計上の仕方を間違えていると、売上や利益が実態とズレて見えてしまうんです。

今回は、小規模企業でよく見かける経理処理の実態と、それによって起こる問題、そして今日からできる対策まで、わかりやすくお伝えします。

小さな会社でありがちな経理処理の間違い

経理処理って、経費の場合にはついついお金支払ったタイミングや請求書をもらったときにそのすべてを経費処理すると思われていることも多いものです。

たとえば、飲食店の場合、食材やドリンクなど仕入れを行ったとき、請求された金額全てをその月の仕入れとして処理をしてしまう。

また、製造業の場合(WEB制作なども同じ)は、まだ納品してない製品に掛った外注費を、外注からの請求書を受けたその月経費にしている。

物販業で、商品を仕入れたタイミングで全額を経費として処理しているなど。

この状態でどんな問題が起きるかというと、「その月に売上が発生していないのに、原価だけは先に経費計上されている」という状況になってしまいます。

結果として、売上と原価のタイミングが一致せず、正しい利益も原価率も見えなくなってしまうんです。

こういった処理のズレは経営判断を行う上で大きな問題となります。

数字のズレは経営判断を誤る

こうした処理ミスを続けていると、次のような問題が発生します。

・原価率がズレてしまう

たとえば、上記の表のように、月商500万円の月に仕入れた金額が300万円、でもそのうちの125万円分は翌月の販売分になるような場合、実際の原価率は35%のはずが大きく数字がブレてしまいますね。

原価率のブレは売上目標を立てる上で非常に重要なもので、原価率が予定した数字より大きくなってしまっているような場合でもそれに気が付かず、「思ったよりも低く抑えられてる」と勘違いしてしまい、原価率のブレに気が付かないまま経営を続けてしまうことになります。

また、在庫が適正に把握できていないと、翌月、翌々月の仕入れでどの程度お金が出ていき、どの程度残すことができるかも読めません。

原価率の管理も、利益の管理も、資金繰りの管理も、全てを狂わせてしまう原因です。

「うちは税理士がちゃんとみてくれてるから大丈夫でしょ・・・」

こう勘違いされてる社長も多いものですが、確かに決算時には在庫や仕掛について誤りがあると支払うべき税金に差が出てきますので、在庫のチェックを行っていることが一般的です。

しかし、毎月の『試算表』と呼ばれる、決算期以前の途中経過を表す資料には実際のところ正確な数字が載っていないことも多いのです。

毎月在庫管理や、どの仕入れや外注費がいつの売上分になるのかを税理士さんが確認し、処理を行っている場合には良いのですが、税理士さんの仕事は「正しい申告を行うこと」ですので、月次の処理が違っていたとしても決算期にしっかり合わせてれば問題無いことで、いちいち毎月合わせていることの方が稀なのです。

そもそも、社長が数字の重要性を理解して、そこまでの処理を税理士さんに求めていなかったり、領収書や請求書などの資料一式の提出が遅れてしまっていたり、そもそも毎月末に棚卸を行い、在庫管理を適正に行っていないことも多いことでしょうから、その状況で税理士さんに正確な数字を出して欲しいと依頼しても無理な話なのです。

これにより起きる問題は、銀行に融資を申し込む際に、誤った試算表を提出してしまうことになります。

実態よりも利益が大きかったり、反対に少なかったり、どちらにしろ正確な数字が記載されていないのは問題ですし、売上高と原価率が大きくブレていると、数字を適正に把握できていない会社だと認識され銀行の評価としてはマイナス要因です。

正しい数字をチェックするためにすぐに実践できるポイント

「そんなめんどくさくてできない・・・」

と、感じる方もいるかもしれません。

でも、やるべきことは意外とシンプルです。

① 月末・期末には在庫をカウントしよう
まずは「棚卸」を毎月末に習慣化する。月1回でもいいので、在庫がどれだけあるか把握することで、売れてない原価を正しく調整できます。個数で把握できるものは個数で、個数で把握できないものに関しては仕入れた段階での重さと使用した分の重さを比較してみたり。

それら月末に確認してメモしておくことです。

② 外注費・仕掛品は「どの売上に対応するのか」を意識して経理に渡す
例えば、外注先から受け取った請求書に対し、どの仕事がその月に客先に納品するものなのかなどを明記しておけば、経理担当の方や税理士さんも「じゃあ、売上が立つ〇月の原価に計上しよう」と判断できます。

③ 損益計算書のみではなく、部門や商材ごとの売上や原価がわかる管理資料を作る
税理士さんが作ってくれる決算書だけでは、実務レベルの判断は難しいです。
できれば「売上・仕入・人件費・家賃・広告費」などを部門や商材ごとに月別で一覧にした“経営者用のダッシュボード”を作ってみてください。エクセルで作ったもので構いません。

そして、依頼している税理士事務所に「経営数値を見える化したい」と相談すれば、多くの事務所は協力してくれることでしょう。

経理業務は税金の申告用ではなく、会社のかじ取りを考える重要なもの

経営を飛行機の操縦に例えるなら、経営者はパイロット、試算表や決算書の数字は「計器」です。

飛行機のパイロットは、スピード、高度、方向、燃料残量などの情報を読み取って、飛行機の進路や傾きなどを調整しながら目的地に向かいます。

でも、もし計器が壊れていたら、重要な項目の数値が適正に把握できませんよね?

そんな飛行機、恐ろしくて乗りたくないという人も多いのではないでしょうか。

会社の数字を正しく認識したまま感覚で経営を行ってしまう、現金が尽きるタイミングや、赤字になる原因が見えなくなってしまいます。

そして「なんとなく」「たぶん大丈夫」と感覚に頼った判断になり、気づいたときには方向を大きく誤り取返しのつかないことに・・・。

そんな経営を行い、残念ながらもう手遅れな状態になってしまった会社や、金融機関からの融資も断られ目の前の資金繰りに悩み、消費者金融で18%近くの金利を払ってでも資金調達してきた社長を実際に私はたくさん見てきました。

大事なことは正しい経理処理を行い、経営者自身がその数字に興味を持ち、数字で経営を判断する習慣を持つことです。

小さなことの積み重ねが、大きなトラブルを未然に防いでくれます。

「うちは小さな会社だから」「税理士さんに任せてるから」ではなく、“自分自身が会社という飛行機を飛ばしている機長”であることを自覚し、ぜひ今から始めてみてください。

「うちの会社、どうなん?」

気になった方は私にご連絡ください。まずは無料でチェックし、今あなたがやるべきことを明確にします。商品、サービスごとの売上高や、それに掛かる原価も見える化し、何の商材をどの程度販売するか、具体的でより精度の高い、しっかり利益を残せる売上目標を設定し、しっかりお金が残る会社にすることができます。