こんにちは(^^)
ファイナンシャルプランナーの小川です。
新NISAが始まって以降、投資に対する「資産形成といえばNISA」というくらい、すっかり制度が定着してきました。
実際、運用益が非課税になるNISAは、長期的な資産形成を考えるうえで非常に有利な制度で、私自身も活用していますし、将来の資産形成を考える上では検討すべき制度でしょう。
しかし、その反面、気になることは
「NISAをやった方がいい」
が先行し過ぎているように思います。
そして日本は長く続いた超低金利の時代から、「金利のある時代」へと変わりつつあります。
今回は、NISAブームの今だから考えてほしい内容についてお伝えしたいと思います。
1.未来は誰もわからない
改めてお伝えしますが、NISAという制度は「少額投資非課税制度」のことです。
読んで字のごとく、「少額の投資により得られた利益は非課税にしますよ」という制度です。
つまり、NISAを始めるということは、「投資」を始めるということだということをまず理解する必要があります。
「未来は誰もわからない」
「自己責任」
これが投資の原則です。
NISAを始める方の多くが買っている、S&P500やオルカン(全世界株)といったインデックスファンドも、分散投資され資産形成に適した商品とは言えますが、かといってよくわからないまま始めるのも危険です。
例えば、過去にはこんな相場がありました。

引用:myindex資産配分ツール
これは2007年7月~2009年2月までの各資産の下げ幅です。
人気のオルカン、米国株は軒並み60%の値下がりです。
これは直前まで1,000万円あった資産が、一時的に400万円に下がっているということになります。
一時的に下落しても、まだお金が必要になるタイミングでなければまた相場が元の水準に戻るのを待つこともできるでしょう。
しかし、問題なのは暴落中に資産を取り崩さなければならない状況です。
例えば、お子さんの進学資金の目的で積み立てしていた資産が、いざ進学というタイミングで暴落してしまったら、暴落しているタイミングで売却しますか?
老後資金をこれから取り崩して行こうというタイミングで暴落していたらどうでしょう?
場合によってはこのように下落している状態で資産を引き出さなければなりません。
多くの人がこういった上昇も下落もよくわからないまま始めてしまっているように感じています。
こういった点を考え、本当にNISAを活用すべきか、オルカンやS&P500といった流行りのものにそのまま積み立て投資するのではなく、”自分に合った資産の配分”を見つける必要があるのです。
2.インデックスファンド人気の理由
NISAを始める人に人気なのがS&P500(米国株)やオルカン(全世界株)といったインデックスファンドで、楽天証券やSBI証券といったネット系証券でも人気です。
実際、これまでの成長は目覚ましいものがありました。
インデックスファンドとは、日経平均株価やS&P500といった、株価指数に連動した値動きを目指すものです。成長企業を見定めて投資するのではなく、指標と同じ値動きになるように機械的に銘柄を選んで投資している投資信託です。
この30年の間の成長率は、日本株が約4.25倍(+325%)だったのに米国株は約29倍(+2800%)、全世界株ならば約17.9倍(+1690%)となっていたのです。

引用:myindex資産配分ツール
そして、下記の表は人気商品のeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の過去5年間のリターンです。

引用:楽天証券
さて、一方で、アクティブファンドと呼ばれる商品の中で、資産形成に適した長期投資目的の商品のパフォーマンスは下記の通りです
キャピタル

おおぶねグローバル

ひふみワールド+

いずれも楽天証券の商品ページより引用
同じ全世界株を対象とした投資信託でも、アクティブファンドと比べてもインデックスファンドの伸びが著しかったかがわかりますね。
ですので、よくFPの中でも
「アクティブはインデックスに勝てないい」
という意見もよく見かけますます。
コストの割高なアクティブファンドよりもリターンが高いとなれば、表面的にはそのように考えてしまうことも多いものです。
そして、アクティブファンドはファンドの運用方針と、実際にどのような運用をしているのかが目論見書や運用報告書をしっかり読み込まないと理解することが難しく、玉石混合で商品選びのハードルが高いという理由もあります。
そのため、やはり投資初心者の方が始めようとすると、投資スタンスがどの同じジャンルの商品であれば同じインデックスファンドの方が選びやすいのです。
しかし、そんなインデクスも、現在バブル状態で過剰に値上がりしているのではないかという指摘もあります。
3.S&P500(米国株)、オルカン(全世界株)はバブルなのか?
さて、ここで気をつけねばならないのが、S&P500やオルカン(全世界株)は過剰に値上がりし過ぎているのではないかという点で、多くの専門家も指摘していることです。
度々コラムに書いていることですが、米国のGDPは過去30年の間に4倍になっていますが、S&P500は10倍以上です。

世界経済のネタ帳 アメリカの名目GDP より引用

インデックスはその国の経済の規模を反映するように構成されています。インデックスがその経済規模を反映するものであるならば、概ねGDPと同程度の動きをするはずですが、30年間のGDPの成長に対し、2.5倍の伸びを見せているのが現状です。
つまり、本来の価値に対し2.5倍の価値になっているのではないかという指摘ですね。
これには下記のような理由があります。
①世界的なカネ余り(過剰流動性)
2008年のリーマンショック~2020年のコロナ禍への景気対策のため、アメリカを始め世界中で金融緩和+積極財政により民間が保有するお金の量(マネーストック)が増えてきたのでした。
そして、過剰に供給されたお金は実体経済のみでなく、株式市場にも供給されてきました。
②AI関連株の期待
AI関連需要の拡大を背景にした、半導体、巨大IT企業の値上がり。S&P500やオルカンは、時価総額の大きな企業ほど組入比率が高くなるため、巨大IT企業の株価上昇が指数全体を大きく押し上げ、エヌビディアやブロードコム等の値上がりに大きく引っ張られています。
③世界的にインデックスファンドへの資金が集まっているため
先ほどお伝えしたように、低コストでファンド選びのハードルが低いインデックスファンド人気は米国でも同様です。そうなると、インデックスファンドの構成銘柄に投資が集中し、株価が上がり易くなります。
など、このような理由があり、インデックスが過剰に値上がりしているという見解もあります。
実際、これにより本来企業価値の低いはずのインデックスファンドの構成銘柄の株価が引き上げられ、実際の企業価値と株価との乖離が生じている点が指摘されています。
仮にそれが正しい見方だとするならば、どこかで本来の価値に修正される大きな下げ相場がありうるということです。
その見方が正しいのか、そしてそれがいつ起きるかはわかりません。
ただし、2008年にリーマンショック、2020年にコロナショックが起きていることを踏まえると、数年のうちに起きても不思議ではないでしょう。
少なくとも「暴落は必ずある」ということを意識して資産の構成、投資商品を選定する必要があります。
4.大事なのは「何のために資産形成しているのか?」
ここで重要になってくるのは、「何のために資産形成を始めたの?」という点です。
例えば、まだ20代、30代の若者が、「老後のため」のお金を積み立てるのならば、仮に大暴落してもまだまだ先が長く、回復してくれる見込みもありますので、毎月1万円や2万円程度の少額を積立投資して世界経済の成長を取り込み、時間を味方にして大きく資産を増やすことを狙うのも良いでしょう。
しかし、「子供の進学まであと十数年」とか、「老後まであと数年」というような状況だと、仮に暴落してしまった場合にはせっかく準備していたお金を減らしてしまうことにもなってしまいます。
将来の資産形成において重要なことは「再現性」です。
大きなリターンを狙えばそれだけ「リスク=不確実性」が伴い、必要な時期にお金を使えなくなってしまうということも考えられるわけです。
なので、資金が必要になるまでの期間が短いほど、「確実性」を重視した資産形成、資産運用のプランニングが必要になってきます。
つまり、NISAで積立を始める前に、そもそも自分達は「いつまでに」「何のためのお金を積み立てたいのか?」を考え、それに見合った手段を考える必要があります。
「NISAがダメ」 「オルカン、S&P500がダメ」ということではありません。
目的に見合った手段として適切かどうなのかを考えた上で選びましょうということです。
5.今こそ見直すべき国債、生命保険商品
これまでの日本では国債の金利や政策金利が低い状態が続き、特にアベノミクスの中期~コロナ禍の間は長期国債が0%前後という異常事態になりました。
そのため、国債を買っていても、また国債を主体で運用する生命保険商品はほとんどリターンは期待できず、むしろ将来的にマイナスになっている商品も多かったのですが、ここ最近ではその状況が大きく変わってきています。
10年の長期国債は30年ぶりに2.7%を上回り、それに応じて国内の生命保険会社の貯蓄目的の保険商品もリターンが高くなってきています。
例えば、学資保険等も生命保険会社のプランによってはお子様が18歳になったときには120%を超えるような商品もあります。
現在の長期国債の金利は1997年頃以来の水準となっています。

NISAを用いて株式投資信託で積立投資していた場合のリターンの期待値に比べればリターンは低いと言えますが、リスクに消極的な人や、お子様の進学まであまり時間が無い場合にはハイリスクな株式投資信託ではなく、学資保険等の円建ての保険を中心に資産形成プランを検討する方が目的には合っていると言えるでしょう。
「物価上昇に負けないためにも、ある程度リスク資産を持ちましょう」
とよく言われることですが、短期~中期においては確実性を重視した方が良い場合もあります。
そもそも、物価上昇と言っても数年でどれほどお金の価値が失われるかを考えれば、数年の間での物価上昇はさほど意識する必要はありません。
特に、株式で大きな価格変動リスクを取らなければ、ほとんどリターンを得られなかった時代から、安定資産でも一定のリターンを期待できる時代へ変わりつつあるのです。
NISAブームに乗って安易にリスクを取るのではなく、リスクを理解し、インデックス投資を過信せず、目的に応じて何が自分にとって最適な手段なのかを改めて考えていただきたいと思います。
6.まとめ
ということで、今回はNISAブームに水を差すような内容をお伝えさせていただきました。
ここで伝えたいことは、「皆がやってるから」「流行っているから」という理由ではなく、複数ある選択肢の中で、「再現性」や「リスク」を考えつつ、自分に合った手段を選んでいただきたいということです。
もう10年以上前の話になりますが、当時まだ20代、保険屋さんだった私は資産形成の知識を伝えようとマネーセミナーを開催し、資産形成の知識を伝えていました。
しかし、当時はまだ今のように投資を活用した資産形成は一般的ではなく、話を聞いても実際にスタートする人は少数派でした。
その一要因としてはやはり「リスク」を気にしている人が多かったように思います。
リスクに関しては「お前のせいで減ったじゃないか!」なんてこと言われないようにかなり丁寧に伝えていたつもりでしたので。
当時はアベノミクスで超低金利な時代がスタートし、まさに学資保険等の円建ての保険商品や国債等ではなく、積立投資で将来の資産形成を積極的に行うべきというような時代でした。
そんな時代でもリスクや投資を始めることに心理的なブレーキがかかっていた人は多かったのです。
それから10年以上の年月が経ち、今ではNISAブームと言われるような時代が到来し、「よくわからないまま」「皆が始めているから」という理由で、自分で理解したのではなく「何となく」始めている人が多いことに違和感を覚えています。
たしかに、資産形成の知識自体は身に着けておいた方が良いですし、NISAはその上で活用すれば有利な制度ではありますが、NISAは資産形成の「目的」ではなく、あくまで手段のひとつです。
NISA、株式投資信託、国債、預貯金、保険などを組み合わせ、「何が一番いいのか」ではなく、「自分の人生にとって何が一番適しているのか」を基準に考えることが大事です。
NISAが当たり前になった今だからこそ、そんな資産形成の原点に一度立ち返ってみてはいかがでしょうか。