サトウのごはんのサトウ食品(株)”利益9割減”?!

「サトウのごはん」「サトウの切り餅」でおなじみのサトウ食品株式会社(証券コード2923)。

先日、ニュースで同社の2027年4月期第1四半期決算が大幅な減益になったという話題が流れていました。

ってことで、県内企業のそんなニュースですので、気になって決算短信を読んでみました。

発表された数字は次の通りです。

2027年4月期 第1四半期決算

2026年5月~7月/前年同期比

売上高:79.96億円/▲10.6%

営業利益:1.07億円/▲87.5%

純利益:1.01億円/▲90.5%

画像
サトウ差食品 第一四半期決算短信より引用


売上高は約1割減ですが、営業利益は約9割減となっています。

なかなかインパクトのある数字です(^^;)

さて、どうしてこうなったのか、そしてサトウ食品のIR情報についても観ていきましょう。

1.原因はパックご飯が売れなくなったこと?

サトウ食品の主力商品といえば、やはり「サトウのごはん」です。

近年は単身世帯の増加や時短ニーズなどを背景に、パックごはんの需要が拡大、最近では普段の食事として利用する人も増えています。

そして、ここ数年の米価高騰。

スーパーで販売されている精米の価格が上がり、パックごはんとの価格差が縮まったことも、需要を押し上げる一因となっていたのでした。

ところが、今回の売り上げの減少の要因として、精米価格が下落したことで、相対的にパックごはんの割高感が強まり、販売数量が下押しされたというのです。

さらに原材料費や物流費などのコスト上昇も利益を圧迫しています。


つまり、これまで需要を押し上げていた米価高騰という追い風が弱まる一方で、製造コストの負担は残っているという状況です。


実際、決算短信から売上原価率を計算してみると、

前年同期:約67.3%

今回:約72.3%

画像
サトウ差食品 第一四半期決算短信より引用

と、約5%悪化しています。

加えて、販管費は前年より約4,000万円ほど増加しています。

売上が減っているうえに、売上に対して原価の占める割合まで大きくなっているわけです。

ただし、原材料費や工場の人件費、光熱費などの詳細な内訳までは今回の決算短信から分からないため、どの費用がどれだけ利益を押し下げたのか、正確な分析まではできません。

さて、ここまでは決算短信を読めば分かる話です。

私が本当に気になったのは、この先なんですよね。

2.投資家目線でのサトウ食品

さて、では投資家としてはやはり気になる、サトウ食品のROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を計算、同業他社(同じ業態は見つけられなかったので、同じ食品会社系で)

まず、用語の解説です。

ROE=自己資本利益率

とは、会社が株主から集めたお金や、これまでに積み上げた利益(利益剰余金)を使って、どれだけ効率よく利益を生み出したかを表す数字です。

例えば、自己資本が100億円の会社が1年間で10億円の利益を出した場合、ROEは10%です。

数字が高いほど、自己資本を効率よく利益につなげていると考えられます。ただし、元々の資本金や、利益剰余金の累積が小さいとROEが高くなることもあるため、ROEだけで会社の良し悪しは判断できません。

ROIC=投下資本利益率

とは、会社が事業のために使っているお金で、どれだけ効率よく利益を生み出したかを表す数字です。

株主のお金だけでなく、銀行などから借りたお金も含めて考えます。例えば、事業に100億円を使い、税金を考慮した営業利益が5億円なら、ROICは5%です。

数字が高いほど、少ない資金で効率よく利益を生み出していると考えられます。工場や設備への投資が、十分な利益につながっているかを判断する際にも役立ちます。

と、用語の解説をしたところで、本題です。

サトウ食品のROE、ROICを、業績が好調だった前期、前々期の数字で、同じ食品会社と比較してみましょう。

全く同じ業態の会社を探せなかったのですが、今回は東洋水産(2875)と、同じ新潟の企業の亀田製菓(2220)の二社と比較してみたいと思います。

画像

と、このようになります。(ROICについては分母は投下資本=有利子負債+株主資本で計算)

亀田製菓の2026年3月期のROEについては企業買収に伴い、一時的な利益が含まれていますので特別利益の部分を除いて計算しています。

できるだけ近い業種を選んだつもりでしたが、東洋水産はROE、ROIC共にズバ抜けてますね。

東洋水産は有利子負債が少なく、自己資本比率も直近の期末で約84%と、非常に強固な財務基盤を持ちながら、非常に大きな利益を出しているのがわかります。

できるだけ近い業種選んだつもりでしたが、ちょっと選定ミスでしたでしょうかね・・・。

投資家目線で、しっかり資本を有効活用し利益を得られているのに特に注目されている2つの指標からは、同じ県内の亀田製菓よりも上手に資本を活用できているように読み取れます。

勿論、これだけで判断できるものではありませんので一概に比較することはできませんので、一つの参考指標としてご覧いただければと思います。

3.「で、これからどうするの??」

サトウ食品は、これまでパックごはん市場の成長を取り込み、長期的に業績を伸ばし、株価も伸ばしてきました。

しかし、投資家目線で気になることは・・・

「で、これからどーすんの??」

というところです。

私が気になったのは、同社のHPのどこを探しても、今後の経営方針をどうしていきたいかが見当たらなかったことです。

例えば、今回の減益を受けて株価も大きく下落しています。

画像
引用:https://jp.tradingview.com/symbols/TSE-2923/?timeframe=1M

9月11日のところ、株価が大きく下がっているのがわかりますね。減益のニュースが流れればまぁ当然株価は下がるわけです。

ただ、問題は、この数字を見て、経営陣がこれから何を目指し、どう考えていくかということです。

例えば、先ほどROEとROICの比較対象にした亀田製菓の場合は、このように今後の業績予測と、現在の課題は何か、今後どうしていきたいのか、中期経営計画書にて大変わかりやすく公表しています。

画像
画像
画像

引用:www.kamedaseika.co.jp/wp-content/uploads/2026/01/%E4%BA%80%E7%94%B0%E8%A3%BD%E8%8F%93%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97_%E4%B8%AD%E9%95%B7%E6%9C%9F%E6%88%90%E9%95%B7%E6%88%A6%E7%95%A52030Update.pdf


このように、現状を踏まえ、今後どうしていきたいのかが非常にわかりやすく、かつ定量的に示されています。

IR情報も、決算短信や経営計画書のみでなく、業績ハイライトやセグメント別の売上高や営業利益等も、別途でわかりやすくグラフで数字を読むこともでき、IRの見やすさは文句なしです。

こういったIRの見やすさは、東証も「資本コストや株価を意識した経営」を推進しています。

投資家の目線で、どちらが今後会社の成長を期待できるかと言えば、亀田製菓の方に軍配が上がるでしょう。

と、競合他社として、同じパックご飯の事業を行っている東洋水産や、県内には越後製菓、JTグループのテーブルマークといった企業もありますが、それらの競合他社と比較してどういった強みを、どう活かしてマーケティング戦略を考えているかなど。

例えば、サトウ食品には圧釜炊き製法という独自の製法があります。

画像
引用:https://www.satosyokuhin.co.jp/secret/rice/

最高級ブランドの魚沼産こしひかりの地元、生まれた頃から毎日食べていた私にとってはほとんどパックご飯を食べることがなく、どれが美味しいのかわからないのですが(笑)

こうした強みをこれまでどう活かし、今後はどう拡大していく方向なのか等知りたいところですね。

海外展開についても、過去には輸出拡大を目指す方針が示されていますが、しかし、国内と海外の売上構成や、今後海外をどの程度成長させていくのかという計画は、確認した資料からは読み取りにくい状況でした。

「ちょっと投資判断をするには情報不足」というのが感想です。

また、個人的に気になるのは、パックごはんの需要拡大に対応するため、聖籠ファクトリーに第二工場を約80億円掛けて投資し、年間約6,500万食の生産能力を追加するという情報もあり、内約27億円を補助金の交付が決定というニュースがありました。

2026年4月期の売上高が約518億円、営業利益が約33億円の会社ですから、決して小さな投資ではありません。

もちろん、成長する市場に対して生産能力を増強するという考え方は理解できますし、ただ増産に対応するだけでなく、新工場では生産効率の向上や作業負担の軽減、省エネなども目論んでの投資のようです。

でも、「需要が減少している状況で、さらに生産能力を増やして大丈夫なの?」と、率直に思うところです。

もちろん、今回の販売数量の減少が一時的なものなのか、今後も続くのかは分かりません。

長期的にはパックごはん市場が成長しているという背景もありますから、四半期の減益だけを理由に設備投資が失敗だったと判断するのは早計でしょう。

が、これについて経営陣がどう考えているのかはやはり気になっちゃいますので、こんな情報も欲しいところです。

4.中小企業の経営に置き換えると?

と、今回はサトウ食品の大幅減益のニュースを元に解説してきましたが、これ、中小企業経営者さんにとっては他人事じゃありません。

今回、サトウ食品のIRを読んで感じたことは、中小企業の経営計画にも当てはまります。

IRの資料というのは、主に投資家に対して自社の経営状態を解説し、長期保有してもらったり、新たに投資してもらう目的で公表しています。

リターンを重視する投資と、確実性を重視する融資では重視するポイントは違いますが、ポイントになるのは「相手が知りたいことを伝えられるか?」です。

例えば、銀行から設備投資資金を借りようとする場合。

「新しい機械を買いたいので、5,000万円貸してください」

と言ったとします。

銀行としては当然、

「その機械を導入すると、売上はいくら増えるんですか?」

「原価や人件費はどの程度下がるんですか?」

「利益はいくら増えるんですか?」

「どのくらい余力を持って返済できる見込みですか?」


というところを確認したいわけです。

ところが、そういったシミュレーションもなく

「新しい機械を入れれば、売上が増やせるんですよ!」

って、言われても、「う~ん・・・」って思ってしまうわけです。

ましてや、「直近の試算表お願いします」と頼んで、何日も後になってから「あ、これでいいですか?」って、試算表が3ヶ月、4か月も前のものが出てきてたら

「あ、数字読んで経営できてないですね・・・」

って思われちゃうわけです(^^;)

上場企業のように決算書を公開したりする必要はありませんが、金融機関に対して現状を踏まえて、今後の経営方針をしっかり説明し、何を目標としていくのか、数字の根拠を元に説明できることは最低限必要なことです。

と、社員に対しても、今の会社の状況と、今後どうしていくのかを数字でしっかり語っていけると、仕事に対しての当事者意識の醸成にも繋がることでしょう。

さて、サトウ食品の第二工場が今後どの程度の利益を生み出すのか、そして今回の減益からどのように業績を回復させていくのか、どう方針を打ち出していくのか、今後の決算を追いながら、引き続き検証していきたいと思います。

今の会社の状況をできるだけ詳細に見える化し、目指す姿とそのための戦略を示すことが重要。

今回はそんなことを考えさせられる地元企業のニュースでした。

ということで、「財務オタクFPが地元上場企業を勝手に分析してみた」シリーズ第2弾でした。

また気になる会社を見つけたら、勝手に分析してみたいと思います(笑)

最後までご覧いただきありがとうございました。

関連記事

ものづくりの町 新潟県燕市に本社を置く家電メーカー、株式会社ツインバード(証券コード 6897)。 新潟県民であれば、一度は名前を聞いたことがある会社ではないでしょうか。 そのツインバードは、2026年6月にジャパネットホールデ……

アーカイブ

サイト内検索