ご相談者様
【年齢】 53歳
【職業】 会社員
【性別】 男性
【家族構成】 配偶者、子供2名
相談しようと思ったきっかけ
末子の就職が決まり教育費もひと段落し、これからは老後のお金を貯めなければと思っていました。銀行で積み立てしても金利がつかないのでいい方法はないかと探していたところ、ニュース番組で確定拠出年金(CD)を知り、いい制度のようだが誰も周りにやっている人がいないので、どうなんだろうと思ったので相談しました。(勤務先は制度導入していない)
ご相談内容
金融機関のネットなどでみると60歳までしか加入できないと書いてありました。短い期間でもやるメリットはありますか?
ご相談でお話した内容
周りに確定拠出年金の話をしても誰も知りません。どうしてですか?
ご相談者様もテレビでお知りになるまで知らなかったように、いい制度ですが広く伝わっていないのが現状です。16年前の2001年度から始まった制度です。個人型(iDeCoイデコ)の普及は昨年まで加入できる人が限られていたこともあり、まだまだです。また今まで金融機関のアピールもあまりなかった為、いい制度ですが身近に加入されている方がいないのでしょう。
53歳ですが今から始めてメリットはありますか?
確かにできるだけ長い期間加入する方がいいのは当然ですが、50代から始めてもメリットはあります。
確定拠出年金(DC)の最大の魅力は何と言っても所得税控除も含めた税制優遇
そして国の制度でありながら、国民年金とは違い自分で掛け金を運用できるところです。
おっしゃる通り銀行や郵便局で積立貯金をしても金利はつかないのも同然です。短い期間でも運用次第では預貯金より殖やすことができます。また運用に抵抗のある方なら、運用もしなくても税金の戻りだけでも殖えます。
また人間は感情の動物です。老後資金にと毎月貯めていても、いざ何かあった時手をつけてしまうことがありますが、DCは途中で使うことはできません。60歳まで引き出せないのです。
ではメリットを詳しくお話しいたします。
メリット
税制メリット
税金面では大きな3つの優遇があります。
1.掛け金は全額所得控除、住民税控除
2.運用益は非課税
3.受給時は税制優遇
1.掛け金は全額所得控除、住民税控除
ご相談者様の場合、加入できるのは個人型確定拠出年金(iDeCo)になります。iDeCoは自分の得た収入の中から掛け金を払います。そして掛け金は全額所得控除され、会社員なら年末調整で税金が戻ってきます。
実際どのくらい税金が戻るか実際に出してみましょう。
例えば、ご相談者が課税所得が500万の方なら所得税率は20%です。
ここで注意しなければならないことがあります。
確定拠出年金には掛金に限度額があり、好きなだけ積み立てることはできません。
掛金
ご相談者様の場合、iDeCo(イデコ)の掛金の上限(※1)は23,000円(企業型のない会社員の場合)です。
家計に余裕がでてきたのであれば満額加入して、年間27.6万円全額所得控除、住民税控除の恩恵を受けましょう。
毎月23,000円iDeCoで積み立てると
年間の掛金×(所得税率+住民税率10%)=積立時のメリット金額
27.6万円(2.3万×12)×30%(20%+10%)=8万2800円になります。
掛金の金額が多く、年収が高い人ほど税制メリットは大きいです。一般的に50代の方のほうが若い方よりも年収が高いので、上限いっぱい積み立てることで、短い期間でも税制メリット効果大です。
銀行に年間27.6万円預けても税金は1円も戻ってこないうえ、ついたわずかな利息から20.315%の反対に税金がひかれます。
また老後のためにと入っている個人年金保険ありませんか?毎月の掛け金をいくら多く払っていても、年間の所得控除額は4万円、住民税2.8万円しかありません。iDeCoの場合、年間27.6万円全額所得控除、住民税控除ですから、27.6万円÷(4+2.8万円)=4.06
個人年金保険と比べて4倍もの所得控除があるのです。
そう考えると既に53歳になられていますが、7年間加入で57万9600円の減税、IDeCoにかかる費用を差し引ても短い期間加入されてもプラスになるのではないでしょうか。
※iDeCoナビというサイトの「控除額を確認してみよう」で簡単に税控除額を出すことができますので利用してみてください。
また、今までお子様(19歳以上23歳未満)がいらしたので特定扶養親族控除(63万)が受けられていましたが今後はなくなります。すると課税所得が上がります。上がる分iDeCoで取り戻しましょう。
2.運用益は非課税
普通は株や投資信託で運用する場合、運用益に対して20.315%の税金がかかりますが、確定拠出年金(DC)の場合運用益が出ても課税されません。運用益がまるまる手に入ります。
3.受給時は税制優遇
受け取り時も税金の優遇措置があります。
- 全額一時金で受け取る(退職所得控除)
- 年金方式で受け取る(公的年金控除)
- 一部を一時金で受け取り、残りを年金方式で受け取る(運営管理機関によっては併用ができないところがあります。ちなみにご相談者が検討中であったSBI証券はできません。ただし今回はiDeCoの金額がそこまで大きな額にならないので、それほど問題にはなりません。このあたりのメリット・デメリットは後日改めてお話することにしました)
この3つの受け取り方が選べ、場合によっては税金を全く払わず受け取れます。
このようにiDeCoは国民年金と違って受け取り方を指定できるのもメリットです。
60歳で受け取ってもいいし、直ぐに必要でなければ70歳まで据え置け、一括でも分割受け取りでもOK!
ここでちょっと注意です!
ただし加入期間が10年に満たない時は下記の通り、60歳で受け取れず受け取りが65歳まで伸びます。ご相談者様の場合62歳以降(※4)になります。
据え置き期間※460歳時点で加入期間が10年に満たない場合は、支給年齢引き延ばしで据え置かれます。
相談者の場合、受け取りは62歳以降となります。
60歳時点での加入期間 | 受給可能年齢 |
10年以上 | 60歳 |
8年以上~10年未満 | 61歳 |
6年以上~8年未満 | 62歳 |
4年以上~6年未満 | 63歳 |
2年以上~4年未満 | 64歳 |
1カ月以上~2年未満 | 65歳 |
53歳からでも税金のメリット大きいですね!
退職金はございますか?
ありますが、はっきりした金額はわかりません。
50代でiDeCoの積み立て期間が短く積み立てた年金資産が少なくても、課税の対象になる場合があります。お勤めの会社に退職金がある方は退職金額や受け取り方、受け取る時期よっては課税され、税金や健康保険料が高くなるのでご注意ください。
退職金の額を把握なさっていないようでしたら、今からご自分の退職金がいくらなのかきちんと知っておくことをおすすめします。なぜなら税金のことだけの問題ではないからです。
退職金も含めてのご自身の資産全体をみての老後資金作りを考える必要があるからです。退職金と今ある資産で、理想とする老後の生活をするのに足りなければ、今からきちんと足りない金額を作っていかなければなりません。
足りない金額がただ貯蓄するだけでは、老後までの期間(年金受給開始年齢65歳から老後)12年間で作れないのであれば、貯蓄だけでなく投資、運用も考えましょう。
その点iDeCo(イデコ)はただ積み立てるだけでなく、積立金を税制優遇を受けながら運用することができるいい制度なのです。
でも投資ってやったことありませんし、難しそうだし、減ることもありますよね。
そう思われるのも無理はありません。私たち日本人は学校でお金の話、ましてや投資、運用など学んできていませんし、親からも教わっていませんから、今まで全く投資経験がない方にはハードルが高いかもしれませんが、、、
自分で掛け金を運用
50代の方は投資や運用と聞くと減ったり、危険というイメージを持たれている方が多いようですが、これからの時代、預金でお金を殖やすことが難しいので、投資でお金を殖やすことが必然となってきます。そのためにも投資を学ぶ必要あります。
50代の方にとってその入り口としてiDeCoは最適です。
60代になって退職金でまとまったお金が入ってきたりすると、なにも投資経験がないのに金融機関に勧められるがまま投資を始め失敗した、ということにならないためにも今から税制優遇を受けながら運用を学びましょう。
年金と名前の付くもの、国民年金、個人年金保険も将来の年金の為に毎月支払う掛け金を払うのは同じですが、自分で運用することはできません。iDeCoなら自分で掛け金を運用することができるのもメリットの一つなんです。
またiDeCoで運用される場合、投資信託の運用の際にかかる信託報酬(手数料)が低い商品が多いのも魅力です。
積み立てる運用商品には元本確保型のものと、そうでない投資信託があります。投資信託の商品を選ぶと殖やすことができる反面、運用次第ではおっしゃるように減ることもあります。
大きな損失にならないようなうんようをするためにも
50代は、若い方に比べ運用期間が短くなるので商品は初めからしっかり選びましょう。
ご相談者の場合積立期間7年と70歳までの据え置きできる期間10年で運用期間が17年ありますから長期投資をするに足る十分な時間はあります。投資信託を選んだときは受け取る時期が重要になりますので、運用期間が長い方がいいでしょう。
運用期間を長く持つためにも早く加入されることをお勧めします。
iDeCoの運用に関するご相談も受け付けておりますので、ご利用ください。
定年は何歳ですか?
65歳です。
65歳まで働けるのであれば、62歳受け取りでも生活に支障はありませんね!お話ししたように加入期間が10年に満たないご相談者様のiDeCoの受け取り開始は62歳以降(※4)です。これはデメリットのように思われがちですが、メリットなんです。
60歳まで引き出せない
お子様がお二人とも成人されて、就職なさって次は結婚、孫ができるなどこれからも数々の場面で少しまとまったお金が必要になってくることでしょう。
そんな時コツコツと老後資金として貯めていたお金がすぐに引き出せる状態にあると、つい手をつけてしまうかもしれません。後からその分埋め合わせればいいと思い、穴埋めできないまま老後をむかえる。なんてことにならないのが、iDeCoです。
なんたって60歳まで絶対に引き出せないからです。これはデメリットに感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、私はメリットだと思います。人間は感情の動物なので規制がないとすぐに感情に流された行動をとってしまう、老後資金を使ってしまうわけですね!
53歳からでも、手をつけられないので60歳までの7年間満額貯めて193万2000円は貯められます。そして57万9600円(税効果)まで貯めると約250万円老後資金ができます。早く始めましょう。
お話しを聞くと私の歳、50代から始めてもメリットたくさんありますね。そして50代なら早く始めないといけないんですね。
はいそうです。iDeCoの加入はご相談者の場合、ご自身で運営管理機関(金融機関)を選び資料請求して書類を会社に提出し記入してもらい送り返すというような手続きが必要です。今年に入りiDeCoの資料請求される人や加入されるひとが増えていいます。
主なところでSBI証券や楽天証券などがありますが、2017年1月現在、楽天証券は資料請求して届くまで2~3週間かかっています。
次回は手続きについて、しっかりご説明させていただきますから、2,3社資料請求をされてお持ちください。具体的な運用商品の選び方についてもお話させていただきます。
まとめ
50代から始めてもメリットはありますか?ということでメリットあります。
何と言っても短い期間でも大きい税メリット
その他
- 年金の受け取り方を選べる
- 自分で掛け金を運用できる
- 信託報酬が安い商品が多い
- 60歳まで引き出せない
数々メリットのあるいい制度ですが、加入したとしても掛け金に限度額があるため、250万の老後資金しか作れません。iDeCoだけでは老後資金には足りないでしょう。
何歳まで働くのか、どのような老後生活をおくりたいのか、ライフプランを考え、現在の家計、退職金や公的年金などの将来の収入、資産状況などを含め次回より具体的に老後資金に幾ら必要かをみていきましょう。