親がエンディングノートを書いてくれません、どうしたらいいでしょうか?

この記事を書いた人
山中 伸枝

山中伸枝(やまなかのぶえ)FP相談ねっと 代表

ご相談者様データ

(お名前)吉田和子さん(仮名)50代

(職業)会社員

(家族構成)両親別居 80代
      夫会社員
      大学生と高校生の娘2人

       

相談しようと思ったきっかけ

自分自身が参加したセミナーで、「エンディングノート」というものがあることを初めて知りました。

エンディングノートには、自分に何かあったときに家族に伝えておきたいことや、医療・介護に関する希望、財産や契約に関する情報などを整理しておくことができると知り、「これは親にも書いておいてもらったほうがいい」と思いました。

もし親が何も残さないまま亡くなったら、相続の手続きが煩雑で時間もかかり、素人にはとても負担だとセミナーでも説明があり不安になりました。またそれらの手続きを専門家に依頼すると、結構なお金がかかるとも聞き、うちにはそんな余裕はないと感じました。

このまま両親が亡くなったら、あとになって私が困ることになるかもしれない。そう考え、さっそくエンディングノートを購入して、年老いた両親に渡しました。

ところが、何度お願いしても、まったく書いてくれません。

「せっかく買ってきたのだから書いて」と言っても、「まだ元気だから」「そんなものは必要ない」と言われてしまいます。

親のためにも、そして自分が困らないためにも、今のうちに準備しておきたいのですが、どうしたらよいのでしょうか。

「エンディングノート」は書くことがゴールではない

ご相談者は、エンディングノートに必要な情報が整理されていれば、将来、親に何かあったときにも慌てずに済むと考えています。

確かに、エンディングノートは、本人の思いや大切な情報を家族に伝えるための有効な手段のひとつです。分かりやすいように項目が整理されているので、順に記入していくことで、いざというときに家族が必要な情報を確認しやすくなります。

ただし、エンディングノートは「書かなければならない書類」ではありません。

エンディングノートには、内容や形式に決まりがあるものでもなく、財産だけではなく、かかりつけ医や服薬、介護についての希望、緊急連絡先、葬儀やお墓、遺言書の保管場所など、本人が家族に伝えておきたいことを自由に整理するものです。

厚生労働省が自治体の終活登録事業を調査した資料でも、緊急連絡先やかかりつけ医、預貯金・保険、エンディングノートや遺言書の保管場所など、さまざまな情報が記入項目となっています。

とはいえ、いきなり手渡されて、誰もが調子よくかけるものでは決してありません。項目によっては、書くことが少し難しいもの、なじみが薄いため調べが必要なものもあり、なかなかご両親様が書き進められないというのも理解ができます。

また、ご参加されたセミナーでは、エンディングノートがないと相続でとても困ると言われたそうですが、ちょっと強調が過ぎていたかと思います。エンディングノートがないからダメだという訳ではまったくありませんから安心してください。

まずは、エンディングノートを書くことをゴールにするのではなく、ご両親様の現状把握と思いを形にする作業が、「ご両親様のこれからを支えるために」大切と思っていただく方が良いかと考えます。

エンディングノートを書くことから親を「知ること」へ発想の転換を

ご相談者が「親が亡くなったあと、自分が困らないようにしたい」と思うのは当然のことです。

しかし、その気持ちをそのまま親にぶつけてしまうと、親からすれば「まだ元気なのに、死ぬ準備をさせられている」と感じてしまうかもしれません。

「子どものために書いておいて」という言葉が、親にとっては負担になることもあります。

そこで、発想を少し変えてみましょう。

親のことを知りたいというメッセージ

最初に吉田様に取り組んでいただきたいのは、発想の転換です。エンディングノートはあくまでもツールです。大切なのは、親のことを知ることです。従って、エンディングを書いてもらわなくては、という発想から少し離れましょう。

たとえば、ご両親はすでに「救急医療情報キット」など利用していませんか?ご実家の冷蔵庫に置いてあれば、それをまずは確認してみましょう。

救急医療情報キットは、自治体などが高齢者や障害のある方などを対象に配布しているもので、かかりつけ医や持病、服薬、緊急連絡先などの情報を専用の容器などに入れて保管しておくものです。保管場所として冷蔵庫を指定している自治体もあります。まずは、ご両親の住む自治体でこうした制度があるか確認してみるとよいでしょう。

もしまだご覧になったことがなければ、見てみることから始めてみましょう。氏名、生年月日、血液型、緊急連絡先などの基本情報から医療に関する情報まで確認することができます。そしてそれを元に

「この病院がかかりつけ医なのね」

「今飲んでいる薬はこれね」

「この薬は何のために飲んでいるの?」

と話を広げていみましょう。

もし薬の内容がよく分からなければ、お薬手帳を見せてもらう。病院のことが分からなければ、受診に付き添ってみる。受診に同席し、親と一緒に医師の話を聞いてみることも大切ですし、薬局の方が親切に声をかけて下さるのも、高齢者の暮らしには欠かせない安心事項です。

また、御両親が近所の方と親しくしているのであれば、「いつも仲良くしている○○さんとは、どんなお付き合いなの?」と聞いてみるのもよいでしょう。

吉田様が子どもの頃からのおつきあいとは違った人間関係があるかも知れません。その方達にご挨拶しておくのも親の生活環境を知る手がかりにもなります。

こうして集めていくと、最初は「エンディングノートを書く」という一つの作業だったものが、「親が今、どんな暮らしをしていて、誰とつながり、どんな医療を受け、何を大切にしているのかを知る」という活動に変わっていきます。

そして、そこで分かったことを、必要に応じて子どもの側で整理しておくのです。

もちろん、親が自分からエンディングノートを書いてくれれば、それはとてもありがたいことです。でも、ノートのページがすべて埋まっていることが、必ずしも一番大切なことではありません。

大切なのは、親が何を考え、どのように暮らしているのかを、元気なうちに知っておくことです。

すでにある「医療情報」から話しを深める

緊急医療情報キットは、主に65歳以上の高齢者、ひとり暮らしの方、高齢者のみの世帯、および障害や持病があり支援が必要な方に配布されています。もし利用していなければ、自治体に制度があるか確認してみてもよいでしょう。

記入に不備があれば、記入を手伝ってあげてください。代筆してあげるのも、良いかと思います。

自治体から準備を促される医療情報の整備ができると、きっと次の話題にも進みやすくなるでしょう。

例えば、ご両親の医療費の自己負担割合はどのくらいでしょうか。後期高齢者医療制度では、所得等に応じて自己負担割合が1割・2割・3割に分かれています。マイナ保険証や資格確認書など、現在使っている医療保険の書類を確認し、どこに保管しているかも把握しておくと安心です。

医療費の負担の次は、介護が必要になった時はどうするか、そして費用の話がでたら財産状況の話に映るなど、きっとご両親との会話の中で必要な情報が少しずつ分かってくると思います、

そのようにして集めた情報をぜひまたファイナンシャルプランナーに教えて下さい。その情報と情報をつなぎ合わせながら、「次に何を確認しておけばよいか」「今何をすたらよいのか」といった次のステップを考えるお手伝いができます。

書類の整理から入ることも有効

ご両親様は、年金や税金の手続きなどは問題なく行えていますか?役所から届く様々なお知らせは適時対応し、必要に応じて書類を整理保管されているでしょうか?

保険証券はどうでしょうか?証券をひとつのファイルにまとめておくなど、意外に骨がおれそこまで手が回っていない方も多いものです。

年に1回でも、半年に1回でも良いので、書類の整理を申出てみるのも良いでしょう。高齢者には特別な給付があることもあります。もれなく手続きがされているのかをきっかけに、預金や年金についても、自然に確認するきっかけになるでしょう。

お墓参りは最近行かれましたか?菩提寺にご両親と共に伺うのは、親のこれからを考えるうえでも、貴重な機会になるでしょう。

ご両親はご自身のお墓をどう考えていらっしゃるのでしょうか?お参りに行かれたら、さりげなく話題を向けてみるのも良いでしょう。どのような葬儀を望むのか、だれに別れを告げたいのか、ゆっくりと会話する中でご両親のお気持ちを知ることになるでしょう。

親のお金と暮らしを考えるFP研究会より

エンディングノートという言葉もだいぶ広まってきて、関心を寄せる方も多くなっているようです。終活という言葉もだいぶ身近になりましたね。

自身の今後のことを考えることはとても重要です。これはどの年代にかかわらず大切なことです。

しかし、エンディングノートという形だけにこだわり、さらに子世代からせかされて取り組まなければならないというものではありません。

親の気持ちを置き去りにせず、親の暮らしに寄り添いながら、少しずつ必要な情報を集めていく。

その積み重ねが、親にとっても子どもにとっても、もしものときの安心につながるのではないでしょうか。

「お父さん、お母さんのことを、もっと知っておきたい」

そんな気持ちから始めてみてはいかがでしょうか。

エンディングノートを書いてもらうことを急ぐのではなく、親の話を聞き、一緒に病院へ行き、書類を整理し、親しくしている人を知る。

そうした一つひとつの積み重ねが、親のこれからの暮らしを支えることにつながります。

そして、集めた情報を整理し、どのような対策が必要なのかを考えるときには、FPがお役に立てることがあります。

親の気持ちを置き去りにせず、親の暮らしに寄り添いながら、一緒にこれからを考えていく。

それが、「親のお金と暮らしを考えるFP研究会」が大切にしていることです。

執筆:親のお金と暮らしを考えるFP研究会 代表 山中伸枝
事例提供:FP相談ねっと 山中伸枝FP

この記事を書いた人
山中 伸枝

山中伸枝(やまなかのぶえ)FP相談ねっと 代表

関連記事

ご相談者様データ (お名前)鈴木智子さん(仮名)59歳 (職業)専業主婦 (家族構成)夫 会社員       子ども2人はすでに成人 相談しようと思ったきっかけ 父が3年前に亡くなり、現在母は1人で暮らし……

ご相談者様データ (お名前)高橋 恵子さん(仮名)50歳 (職業)会社員 (家族構成)夫 会社員       高校生の息子 相談しようと思ったきっかけ 79歳の母について相談させてください。父はすでに亡く……

ご相談者様データ (お名前)加藤 進さん(仮名)62歳 (職業)会社員 (家族構成)妻 専業主婦       子ども2人(長男は社会人、長女は大学生) 相談しようと思ったきっかけ 90代の母が一人暮らしを……

ご相談者様データ (お名前)佐藤 健一さん(仮名)60代 (職業)会社員 (家族構成)母85歳      父は他界      相談者は一人っ子 相談しようと思ったきっかけ 85歳の母が高齢者施設で暮らしています……

相談事例をフリーワード検索で探す