NISAはいくらまでできますか?(自営業の「今後の商売の不安」についてご相談)

相談者DATE アズサさん

【年齢】50歳 

【職業】自営業(ブティック経営)

【性別】女性

【家族】夫(52歳) 長男(大学1年生)

 

相談しようと思ったきっかけ アンケート抜粋

我が家は街の商店街にあるいわゆるマダム向けの『ブティック』を営んでおります。義父の代からで、主人は二代目。主人は若い頃、国民年金に加入をしておらず、恐らく満期になっても全額支給がされないと思います。先日、商店街の婦人会があり、他の役員の方から「NISA」の話を聞きました。また来年にはつみたてNISAが始まるとか。今まで、両親が歳をとっても稼いでいたので、自分達もあまり心配していなかったのですが、この数年経営が厳しく、老後の不安は膨らむ一方です。息子も国立大学に入り、資金の余裕もできたので、自分たちの老後資金について考えることにしました。月に一度、東京に仕入れに行く際に新宿にはかならず立ち寄るので、寺門さんに相談しました。歳も近く、話しやすくて安心しました。

 

相談したい内容

田舎街なので、お付き合いのある信用金庫さんの定期預金と、万が一の備えで、両親の代からお世話になっている保険屋さんに頼って、老後資金などはあまり考えていませんでした。先日TVで「老後破綻」を取り上げている番組がありました。翌日商店街の婦人会に出席した時、たまたま同じ番組をみていた奥様と意気投合。歳もほぼ同年代の方です。地方の商店街は経営が厳しいお店が多いのですが、特にその方の本屋さんと、うちのブティックは、時代の波からも遅れて、予想以上の痛手となっております。もしかしたら、商売を止めなくてはならない可能性も無きにしも非ずかと。お陰さまで、息子が自宅から通える国立大学に合格してくれました。そちらに落ちたら、遠方の国立を受けると言っていたので、アパート代などの為に余分に貯めていました。その分浮いたまとまったお金があります。そちらを少しでもNISAやつみたてNISAに回して、老後資金にしていきたいと思います。他の方法でも最もお得な情報を教えてください。

 

コンサルティングでお話しした内容

わざわざお仕事で上京した際に、足をお運び頂いたアズサさん。熱心にメモをとり、しっかりお勉強をしてお帰りになりました。しかし、コンサルの最初では「NISA」と「つみたてNISA」の違いも曖昧でしたし、「預金」と「投資」の違いもあまりよくご理解されていませんでした。私もファイナンシャルプランナーになる前はチンプンカンプンでしたので、お気持ちは良くわかります。表面的な問題以外にも不安要素があったので、私からは老後の資産形成を手順からお話しをさせて頂き、お手持ちの資金の運用アドバイスをさせて頂きました。ちなみに浮いたお金は1,000万円。かなり大きな資金があります。

 

11:老後の収入と支出

 今回のアズサさんのご質問「NISAはいくらまでできますか?」というご質問には、簡単に答えを出すことはできます。

 

現行の「NISA」の1年間の限度枠は120万円です。最大限度枠は600万。つまり5年間となります。(注:現行の一般NISAは2023年までです)

 

しかし、その方が質問をされた心理を読み取ってさしあげないとプロとは言えませんね。アズサさんはとても大きな不安を抱えていらっしゃいました。それは、ご商売の状況です。

ご両親は既に他界されていましたが、昔の地方のブティックは、それはそれは儲かったそうです。ご主人様も裕福に育てられ、立派な家もあり、苗場に別荘もお持ちでした。借金は残っていないものの、本業の売上が大きく落ち込んでいるそうで、全盛期の40%位とか。当時はブティクと並行して、化粧品の販売もしていらっしゃったそうです。ナチュラル志向のアズサさんは、その化粧品は使いたくなく、お義母さまのお客さまは、他の方が引き継いでいる為、その売上は0となりました。

息子さんの進学資金は、ご両親が残してくれた定期預金があったのでそちらで対応。その他は大きなお金を使うこともなかったので、家族三人が暮らすのには困らない状態でした。しかし、この数年の売上の落ち込はかなり大きいようです。そもそも顧客の方が高齢化で、介護生活をされている方が多く、お客さまの絶対数が減りました。若い方はインターネットや近所のファッションモールで買い物をするので、ブティックに来る方はごくわずかですので、マイナス分をカバーできません。また、安い量販店もあり、価格や品揃えではかなわなくなったそうです。

ご主人は、若い頃裕福な生活をしていたので、あまり苦労を知らず、真剣身が足りないのではないかと嘆いていらっしゃいました。それに、なんと国民年民に加入したのは、結婚した30歳からとのことで、そちらもアズサさんの不安の種でした。その頃は、まだまだ売上もかなりあったので、まさかこんな状況になるとは思わなかったそうです。

確かに、国民年金のみと人と、厚生年金のみの人では受取れる年金額は大きく離れます。しかし自営業の強みは『定年がないこと』。あまりにも焦っていらっしゃったので、老後必要なお金と(出費)と老後入るお金(年金+事業収入)について、一緒に考えました。

 

2-1:ライフプランを立てて必要金額を算出する

 まずは、アズサさんの不安を解消することが優先かと判断し、これから一生に必要な経費を算出する事にしました。

 

A90歳までの設計

B95歳までの設計

上記を概算のライフプランで考えてみました。

それから、

  • 必要経費(生活費やお店の経費)をギリギリで設計した場合
  • 多少の余裕を持って算出した場合

 

上記の4パターンで考えました。

【結 果】

アズサさんのご家庭では、年金収入が少ないため、今のままでは将来、相当キツキツの生活をしなくてはならない事が判明しました。特に「店舗兼自宅」に大きな修繕費がかかった場合は、更に厳しいですし、売上も現状維持で計算しました。実はここが一番不安なところなのです。まずは、それは一度横においておいて、1,000万円の投資の先を考えることとします。

 

3-1:教育資金の余り 1,000万円の運用方法

 様々な角度からお話しを伺った結果、「大きな冒険はしたくないが、税制優遇は受けたく、投資の恩恵(利息)も受けたい」という結論になりました。

保険以外にはお店の運転資金の為の預金と、万が一のために使える位の預金しかありません。なので、こちらの1,000万円も「つみたてNISA」ではなく、現行の「通常NISA」で投資することにしました。

(「つみたてNISA」は年間40万円×20年間で800万円までの優遇です)

というのも、やはり自宅の修繕がかなり気になるそうで、そこを一度計画してみたいとのこと。しかし、5年位は問題なさそうなので、その期間に目一杯運用してみたいというお話しでした。

しかし、いくつかの問題点もあります。

 

▼一人当りの限度額は600万円まで。浮いた400万円はどうなる?

⇒ご主人様600万円、奥様400万円になるように設定することになりました。(ご主人から奥様へ生前贈与として毎年80万円移管。年間110万円以内なので非課税)

 

▼上記金額だと、ご主人は年間120万円、奥様80万円なので、それ以外のお金はどうしていたらいいのか?

⇒ここは安全策をとり、まずは初年度分のお金以外は定期預金に預けることにしました。しかし調べてみると、イオン銀行の普通預金が0.1%で定期預金よりお得。ご近所に大きな店舗があるので、そちらに新たな口座を開設することになりました。

 (状況により、変更をする確認も済み)

実はイオン銀行には、その他にも「棚からぼたもち」な、お得な制度があるのですが、ここではあえてお伝えしませんでした。(比較をするため)

 

4:一般NISAのコーディネイト

次にいざ、『一般NISA』を始めようとすると「どこの銀行にしようか?」と、悩むと思います。また『一般NISA』は、上場株式・公募株式投資信託・上場REIT・ETF・ETNから選択することができますが、何を選んでいいのか迷うこともあるでしょう。アズサさんとも、ひとつひとつ確認をしてみました。

 

▼投資内容はどうするか?

⇒一般NISAは株式投資などもありますが、比較的に運用が堅実な「投資信託を」選択されました。懸命だと思います。

 

▼どの金融機関でNISAを始めるのか?

⇒上記の預金をするイオン銀行には、お得なセットがあるのでイオン銀行で加入することになりました。

 

イオン銀行の投資信託

⇒投資信託は各社様々な商品の取り扱いがありますが、イオン銀行は人気ファンドをしっかりとおさえてあり、なかなか魅力的な金融機関です。

 

イオン銀行相談窓口

⇒スーパーマーケットが母体の銀行なので、365日開業しています。ネット系の銀行のデメリットは「相談がしづらい」ところですが、イオン銀行は電話サポートのクオリティも万全で、初心者の方には安心して頂けると思います。

 

棚からぼたもち『しっかり運用セットNEO』

⇒なんとアズサさんのためにあるような商品がイオン銀行に存在します。それは「投資信託」と「定期預金」をセットで申し込むと、定期預金の金利が最大で7%になるそうです。具体的には3つのコースがあるようですので、用途に合わせてご活用されるといいですね。

2018年1月31日まで(継続する場合があるそうです)

 

イオン銀行しっかり投資運用セットNEO

しっかり運用セットNEOとは、投資信託と定期預金をセットで申し込むと、

申込総額に占める投資信託の割合より、定期預金金利を適用します。

 セット30セット50セット70

定期預金

30%以下50%以下70%以下
投資信託30%以上~50%未満50%以上~70%未満70%以上~99%未満

定期預金金利

(3ヶ月)

年利3%

(税引き後2.390%)

年利5%

(税引き後3.984%)

年利7%

(税引き後5.577%)

※2018年1月31日まで(継続する場合あり)

 ▼投資信託の手数料

投資信託には3つ手数料があります。「販売手数料」「信託手数料」「信託財産手数料」です。できるだけ手数料が安いものを選ぶのが懸命ですが、高いものにもそれなりの理由があります。手数料は、投資信託(ファンド)ごとに決められています。

 

▼投資信託(ファンド)とは

アズサさんより「投資信託がそもそもわからない」という質問がありました。投資信託とは、投資家(ファンドを買う人)から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用のプロであるファンドマネージャーが決めた金融商品など(株式・債券・REITなど)に投資をし運用。その運用の成果(運用益)を投資家に還元する金融商品です。

 

▼販売手数料

無料~4%まで幅広くあります。同じ投資信託でも販売する金融機関により違う場合もあります。一般的に、インターネットで購入できる方が、窓口で購入するより安いといわれています。

 

 ▼信託報酬

投資信託(ファンド)を運用する際に必要な経費(含む、運用会社への報酬)などです。毎日日割り計算で少しづつ差し引かれます。0.2%~2%が目安となります。投資信託にはそれぞれの投資商品毎にタイプ(型)があります。そのタイプにより、ファンドマネージャーが利益を出すために研究や調査をするのですが、その頻度が高いものは信託報酬が高くなります。一方安いものは指標という目標が決まっています。例えば「日経平均225と連動」という商品であれば、ファンドマネージャーの作業も少なく、その分手数料もお安くなります。

 

▼信託財産留保額

投資信託を途中で解約したり、売却したりした際にかかる手数料です。この手数料はかかる場合とかからない場合があります。商品毎に確認することをオススメします。

 

▼イオン銀行 NISA手数料実質0円

支払った「購入時手数料」を全額、電子マネーWAONポイントで返してくれます。

 

▼手数料についてのアドバイス

手数料が高いもの = 運用益が高いもの、とは限りません。初心者の方は「信託報酬(手数料)」の安いものを選んで頂くのが懸命かと思います。もし、気にいった投資信託のファンドの信託報酬が高かった場合。運用益とのバランスを数カ月間、静観するのもオススメです。

 

▼NISAの購入の方法

多少手間がかかりますが、120万円の枠を一度に使わず「積立方式」で購入することをお勧めします。なかには「積立タイプ」になっているものもあります。理由は、投資信託(ファンド)は、株式のように日々価格が変動しています。なので、購入を分散することにより、価格が低い時はそれだけ多くの投資信託が購入できるのです。またその購入する日は、あまり考えず毎月同じ日に買うほうが良いです。例えば、月始めとか終わりとか、誕生日の日にするとか。価格予想は誰もできません。あまり日々の金額に振り回されるより、同じ日に購入する方が懸命かと思います。

 

▼余力がでたら

アズサさんの場合は「リフォームにいくらかかるか」というところが不透明でしたが、早い段階で見積もりをお願いしたのには理由があります。それは『自分年金』の検討のためです。アズサさんは独身時代に会社員をしていたので、厚生年金が若干ありますが、将来の生計を考えるとわずかなものです。またご主人も年金の加入期間が短いため、年金の支給額が少なくなっています。それを補うものが必要なので、下記の2つをどこかのタイミングで始めることにしました。(アズサさんは確定拠出年金を優先にします)

 

▼自分年金:確定拠出年金

税制優遇が大変魅力なのはなんと言っても確定拠出年金です。「掛金は全額所得控除」・「運用益が非課税」・「受取り時の控除」があります。ただし、途中解約ができないので、アズサさんの場合は「リフォーム見積後」としましたが、大きな支出予定がない方は、この制度は使った方がお得です。

 

 

▼自分年金:小規模共済

・国の機関、中小機構が運営する積立式の退職金制度です。加入対象者は小規模の経営者・役員・個人事業主など。掛金が全額所得控除できます。掛金は1,000円~70,000円まで。満期や満額はなく、退職・廃業時に受取り可能です。

・受取り時には「一括」「分割」「併用」が可能です。一括受取は退職所得の税制優遇が適用、分割受けとりの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットもあります。

・掛金の範囲内で事業資金の貸付制度が利用できます。

~注意~

6ヶ月以内に廃業または死亡により解約した場合は元本割しますが、7ヶ月以上であれば元本割れはしません。

掛金の運用益が還元されるのは加入後3年以上経過してからとなります。

任意解約の場合は20年(240ヶ月)の契約がないと元本割れします。

(廃業・死亡の場合は6ヶ月)

 

 

5:まとめ(加入と宿題)

無事に一般NISAの加入についてはまとまったのですが、アズサさんご夫妻にはいくつかの課題が残りました。

<課題①>自宅のリフォームはどうするのか

築30年近くなるご自宅のリフォーム問題です。今までに大きな修繕はしていないそうです。しかし、もし必要となると大きなお金も必要でしょう。銀行からの借り入れも視野にいれるとしても「今の経営状態で借金は抱えたくない」とおっしゃっていました。来年の春を目安に、一度業者に相談することにしました。いつ頃、どの位の規模でリフォームをかけるのか、検討するようです。余ったお金は自分年金にまわします。

<課題②>5年後一般NISAで運用した資金はどうするのか?

~解約しない場合~

・5年間の運用益E     ⇒非課税

・6年目からの運用益F   ⇒課税

5年間の運用益をE円とするとそちらは、例え10年後解約しても非課税となります。同じ商品でも利息にかかる税金が変わります。

 

~解約する場合~

その時点の状況で、「つみたてNISA」の資金にしてもいいですし、他の投資商品を検討してもいいと思います。もしかしたら、新しい税制優遇商品がでてくるかもしれませんね。その為にもこの5年間で、将来のライフデザインをしっかり行い、もっと制度の高いライフプランを立てましょう!ということになりました。

 

<課題③>事業所得はどうするのか?

アズサさんの最大の不安は「この先ブティクの経営で生計が保てるのか?」ということでした。アズサさんはファッションセンスも良く、賢いかたなので少し深い話をさせて頂きました。業種を変えるのか、他の業態も併用するのか、またはリフォームの際に、アパートを併設することも検討に入れることに。アズサさんのお住まいは、確かに都心から離れているものの、埼玉県下で駅前の商店街にある物件です。都心への通勤圏なので需要はあると思います。ここまで話がのぼると、簡単なはなしではないのですが、「ライフシフト」をするには良い年齢です。ご主人にも話をし、時間をかけて、調査研究をすることになりました。

NISAを始めるか否かで随分大きな話になってしまいましたが、ライフプランを組む事で、様々な問題を発見することができます。また、今まででは考えられなかった金融商品もまるでランチメニューにようにでてきています。アンテナを良く張って、将来の幸せを設計していってください。

 

6:お客さまの感想

自分が潜在的に不安に思っていたことを、寺門さんに指摘されて「はっ!!」としました。寺門さんも昔、ファッション業界にいらしたので、経営の厳しさを良くわかって下さり、話が盛り上がって楽しかった。また業態の変更にも色々なアイデアを頂き、驚きました。ひとまずは、投資デビューをし、これからはもう少し真剣に将来のお金について考えて行こうと思います。沢山宿題をもらいましたが、学生になったようで、嫌じゃなかったです(笑)

セミナーにも参加します!東京にも出てこれるので、ファッションのリサーチもっとして、本業もできるだけのこと頑張りたいと思います。

 

 

 

この記事を書いた人
寺門美和子

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