こんにちは。相続と終活研究会の三藤桂子です。
年金から相続、終活までセカンドライフをトータルサポートする専門家です。
新年度を迎えたかと思えば、早いもので月半ば、少し前まで寒い中受験をされていたお子さん達も桜の開花と共に新たな学校に進学され、新生活をスタートされたことと思います。大学をはじめ、新年度は何かとお金のかかる時期でもあります。入学金、授業料、教科書代、通学定期代、遠方の学校なら下宿代、その他親御さんにとっては嬉しい反面、資金繰りに悩んでいる方も多いかと思います。
先日、75歳のお客様から以下のようなご相談を受けました。
暦年贈与とは?
暦年贈与とは毎年1月1日~12月31日までの暦年に贈与を受けた財産の金額の合計額に応じて贈与税がかかります。贈与を受けた金額が110万円の基礎控除額以下なら贈与税の申告は不要です。しかし110万円を超える部分に贈与税が課されます。
暦年贈与をする際には注意する点があります。
✔贈与を受ける相手が贈与の事実を知らない
✔贈与をする側が贈与財産を管理している
この場合には名義借りとみなされ贈与とは認められません。
さらに、相続開始前3年以内の相続人等への贈与分は相続財産に組み込まれて、相続税の対象になります。相続財産を減らしたい、もしくは法定相続人に贈与したいと考えているのであれば、元気なうちに、早いうちから節税対策として贈与しはじめるのがいいのかもしれません。
お孫さんは代襲相続人でなければ法定相続人ではありません。ですから贈与人が亡くなり相続が開始された場合でも、3年以内の贈与加算の対象にはなりません。ただし相続開始後に相続財産をお孫さんが受け取るとなるとお孫さんは2割加算の対象になるので注意が必要です。
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
30歳未満の孫など(直系卑属)に子ども一人につき1,500万円まで教育資金を贈与した場合に非課税になるという制度です(ただし、2019年4月1日以後、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には本措置の適用を受けることができません)。
<メリット>
✔一括贈与なのに非課税
✔万一贈与者が死亡しても、相続財産に加算されない。ただし、改正により2019年4月1日以後、受贈者が23歳未満である場合、学校等に在学、または教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合が該当します。
上記のいずれにも該当しない場合には、贈与者の死亡前3年以内に本措置の適用を受けたことがあるときは、相続開始時における残額が相続税の課税対象とされます。
<デメリット>
✔受贈者が30歳になった時までに使い切らなかった分に贈与税が課される(2019年7月1日以後に受贈者が30歳に達する場合学校等に在学または、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合、最長10年間延長)
✔払い戻しができない
✔金融機関と契約を結ばなければならない
✔領収書等を取っておいて提出しなければならない
✔他の用途に使った場合は贈与税がかかる
教育資金の一括贈与について、改正点がいくつかあるので特に注意が必要です。
併用することもできる!
実は「暦年贈与」と「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」は併用することができます。
以上のことを踏まえるとお孫さんに財産分与する場合生前贈与を行ったほうが節税のメリットが大きいようですね。
扶養義務者から生活費又は教育費に充てるための贈与は非課税
そもそも扶養義務者(父母や祖父母)から生活費又は教育費の贈与を受けた財産のうち「通常必要と認められるもの」については、贈与税の課税対象となりません。
「通常必要と認められるもの」とは、贈与を受けた者の需要と贈与をした者の資力その他の一切の事情を勘案して、社会通念上適当と認められる範囲の財産をいいます。
贈与税の課税対象とならない生活費又は教育費は、必要な都度、直接充てるために贈与を受けた財産であり、数年間分の生活費又は教育費を一括して贈与を受けた場合は贈与税の課税対象となります。(国税庁HPより)
まとめ
今回のご相談者の方には教育費に充てるための贈与について前段の3つの制度についてお伝えしました。今回は大学の授業料約1年分を援助したいということなので、「通常必要と認められる教育費」として贈与をしたいとのことでした。
さらにご相談者の方には、他のご兄弟にもお孫さんがいらっしゃるそうです。後に不平不満がないようにする伝え方についてご質問がありました。
まずはお孫さんの親である、お子さんと話し合っていただき、お孫さんの大学入学時に教育贈与をしたいという想いを伝えます。万一、他のご兄弟の中で、進学しないお孫さんがいらしたときには、別の形で援助を考えていることをお伝えします。
あまり深く考えずに特定のお子さんやお孫さんに援助をしたことで、後に兄弟姉妹間で溝ができてしまうなんてことも、珍しいことではありません。知らず知らずのうちに相続問題に発展しないためにも、「エンディングノート」や「遺言書作成」を活用することで解消できます。ぜひ実践してみてください。