ご覧の皆様、こんにちは。社会保険労務士、FPの井内(いのうち)です。
本日1月19日に厚生労働省より2024年度の年金額などが発表されました。2024年度の年金額は2023年度より2.7%プラスとなっていますが、発表された内容の一部について今回取り上げます。
※今回の情報は、厚労省の2024年1月19日報道発表をもとにした情報で、正式な年金額等の改定については、政府・内閣より政令(国民年金法による改定率の改定等に関する政令)が公布されて確定となります。
2024年度の老齢基礎年金
満額の老齢基礎年金について、
2023年度は、
新規裁定者(1956年4月2日以降生まれ)は795,000円
既裁定者(1956年4月1日以前生まれ)は792,600円
でした。
これに対して、2024年度は、
A.新規裁定者(1957年4月2日以降生まれ)は816,000円
B.1956年4月2日~1957年4月1日生まれの既裁定者は816,000円
C.1956年4月1日以前生まれの既裁定者は813,700円
となります。
その計算根拠として年金額改定の際に用いる率については、
物価変動率が+3.2%(1.032)
名目手取賃金変動率(※1)が+3.1%(1.031)
マクロ経済スライドの調整率は-0.4%(0.996)です。
※1 名目手取賃金変動率は、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率×前年の物価変動率×可処分所得割合変化率(0.0%)で算出。実質賃金変動率(2年度前から4年度前の平均)は-0.1%、物価変動率は3.2%。
今回、物価変動率が名目手取賃金変動率よりも高くなっています。
そのため、新規裁定者も既裁定者も名目手取賃金変動率+3.1%(1.031)を基準に改定され、マクロ経済スライドの調整率-0.4%(0.996)で調整された結果、+2.7%(1.027)の改定になります。
老齢基礎年金は法定額が780,900円。これに改定率を掛けて、100円未満を四捨五入(50円未満切り捨て・50円以上100円未満を切り上げ)によって当該年度の老齢基礎年金の額が決まります。
先述の2023年度については、
新規裁定者(1956年4月2日以降生まれ)は780,900円×1.018=794,956.2円で795,000円
既裁定者(1956年4月1日以前生まれ)は780,900円×1.015=792,613.5円で792,600円
と計算されていました。
2023年度のそれぞれの改定率に2024年度の改定率1.027を掛けると2024年度の額が計算されますが、
2024年度の新規裁定者(A)と既裁定者のうち2024年度に68歳になる1956年4月2日~1957年4月1日生まれの人(B)の改定率は1.018×1.027=1.045486となり、四捨五入の結果、1.045になります。
その結果、AとBの人は
780,900円×1.045=816,040.5円 四捨五入の結果、816,000円となります。
C(2024年度に68歳になる人を除いた、1956年4月1日以前生まれ)の人は1.015×1.027=1.042405となり、四捨五入で1.042になります。
その結果、780,900円×1.042=813,697.8円、四捨五入の結果、813,700円となります。
在職老齢年金制度の支給停止調整額
在職老齢年金制度の基準額である、支給停止調整額(※2)も毎年度改定されています。
※2 年金の基本月額(報酬比例部分)と総報酬月額相当額(標準報酬月額+直近1年の標準賞与額÷12)の合計で支給停止調整額を超えると、超えた分の2分の1が支給停止となります。
2024年度の支給停止調整額は50万円となります。
その法定額は48万円で、これに2005年度を基準に名目賃金変動率(※3)を掛け、その累積で当該年度の基準額を算出します。
※3 名目賃金変動率は物価変動率×実質賃金変動率で算出
48万円×1.003(2005年度)×0.996(2006年度)×1.002(2007年度)×0.998(2008年度)×1.011(2009年度)×0.976(2010年度)×0.980(2011年度)×0.986(2012年度)×0.996(2013年度)×1.005(2014年度)×1.025(2015年度)×1.000(2016年度)×0.991(2017年度)×0.998(2018年度)×1.008(2019年度)×1.004(2020年度)×0.999(2021年度)×0.996(2022年度)×1.028(2023年度)×1.031(2024年度)
=495,140.04…..これを、1万円未満の端数を四捨五入して50万円になります。
2024年度・2025年度国民年金保険料
2024年度の国民年金保険料は既に昨年公表され、月額16,980円となっています。
毎年度の月額の国民年金保険料は法定額17,000円(※4)に保険料改定率を掛けて算出します。
※4 2019年度以降の額。
そして、今回公表された2025年度の国民年金保険料は17,510円となり、2024年度より上がることになりました。
2024年度は法定額17,000円×保険料改定率0.999=16,983円で、10円未満四捨五入の結果、16,980円で計算されていますが、当該年度の保険料改定率は「前年度の保険料改定率×名目賃金変動率」で算出されます。
2025年度の保険料改定率は、前年度保険料改定率0.999×名目賃金変動率1.031=1.029969で、四捨五入で1.030です。
17,000円×1.030=17,510円となります。
2023年度の保険料16,520円と比べると、2年で1,000円近くも上がることになります。
以上、今回は速報でこちらの情報をお届けいたします。
これ以外の年金額等についてはまた改めて掲載いたします。
※2024.1.20記載内容を一部修正しました。
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【FP相談ねっと・井内義典 これまでの実績】
●FP個別相談、金融機関の相談会等含め年金相談は合計5000件以上経験。
●教育研修は地方自治体職員向け、年金事務担当者向け、社会保険労務士向け、FP向け、社会人1年生向けなど。㈱服部年金企画講師。
●執筆は通算450本以上!『週刊社会保障』の「スキルアップ年金相談」「年金相談のトビラ」(法研様)、月刊『企業年金』の「知って得!公的年金&マネープラン」(企業年金連合会様)、「東洋経済オンライン」(東洋経済新報社様)、「MONEY PLUS」(マネーフォワード様)、「Finasee(フィナシー)」(想研様)、「現代ビジネス」(講談社様)、「THE GOLD ONLINE」(幻冬舎ゴールドオンライン様)、「あなたのお金と暮らしのそばに。ハマシェルジュ」(横浜銀行様)、「よるかぶラボ」(ジャパンネクスト証券様)、「ファイナンシャルフィールド」(ブレイクメディア様)。その他、FUSOSHA MOOK「定年前後に得するお金の手続き」(扶桑社様)共同監修。「1級DCプランナー合格対策問題集」(経営企画出版・共著)
●調査研究活動は研究論文「老齢年金の繰下げ受給の在り方-遺族厚生年金の受給権がある場合-」(日本年金学会編『日本年金学会誌第39号』)など。日本年金学会会員。
●取材協力先として『SPA!』(扶桑社様)、『女性自身』(光文社様)、『プレジデント』(プレジデント社様)、『日本経済新聞』(日本経済新聞社様)、『読売新聞』(読売新聞東京本社様)。