五十嵐 義典

資格試験の受験にはお金がかかる!お金と時間を掛けるべきは「過去問」か、それとも「模試」か?

ご覧の皆様、こんにちは。

FP相談ねっと・井内(いのうち)です。

今後のキャリアアップや独立、転職のために、資格試験に挑戦する方も多くいらっしゃることでしょう。

資格には国家資格、民間の検定試験など、さまざまありますし、法律系、会計系、コンサルタント系、技術系など多岐にわたります。

FPでもある筆者は、これまで資格試験対策に10年以上従事してきましたが、資格試験対策とお金の関係について、「資格試験とお金のアドバイザー」としてコラムを記します。

資格受験にはお金がかかる

資格試験を受ける場合は当然、受験料や会場までの交通費、受験票に貼る証明写真代が発生しますが、それだけではなく、受験教材(テキスト・問題集)や資格学校の講座受講など学習のための費用もかかります。

しかも、1回で合格しないと、また次回の受験に。そうなると余計にお金と時間がかかってしまいます。

従って、お金と時間の制約があるなかで、どのような費用にお金、そして勉強時間を割くべきか迷うところもあります。

特に試験対策上、過去の出題問題いわゆる「過去問」か、本試験と同じ形式で、重要論点だけでなく予想問題も入れた「模試」、どちらが重要かは受験対策関係者でも分かれることがあるため、判断に迷うでしょう。

ではあります。

ただ、限られたお金と勉強時間で合格を勝ち取るには、特に本試験直前の時期になるとどちらに重点を置くかを決めなければならないケースもあります。

よりどちらを重視するべきかはその試験の傾向や特徴にもよります。

それぞれのメリットとデメリットを理解したうえで、重点を置くほうを決め、勉強を進めるとよろしいかと考えられます。

過去問のメリットとデメリット

過去問は実際に出題された問題です。

過去問演習をすることで、試験の傾向は掴めますし、演習を繰り返すことで重要論点や頻出論点の把握、整理には役立ちます。

ほとんどの受験生が合格に向けて過去問に取り組むことを考えると、過去問演習は必須のように考えられます。

過去問は「〇回繰り返せ」という言葉を受験勉強中に聞かされることもあり、最初は解答できなくても繰り返せば身につくことにもなり、合格のために必要な基礎力をつけられることになります。

過去問と同じような問題が繰り返し出題されている試験や試験の科目は過去問を何度も学習することには大きな意味があります。

たとえば、筆者も受験・合格した行政書士試験の科目で、行政法は五肢択一の問題だけでも19問出題され、出題数が他の科目より多いこともあって、同じような論点が繰り返し出題されています。

全体の合格点が180点(300点満点)という中、過去問で頻出のところは取りこぼせないことになりますので、重要論点として押さえようとするようにもなるでしょう。

しかし、逆に毎回それまで見たことのない論点ばかりが出題される試験や科目では、過去問での対策には限界があります。

新作問題には対処できない限界が存在すると言えますし、合格を確実にするためには過去問演習だけでは足りない側面もあります。

このような過去問でできることとできないことを知っておくことも大切です。

模試のメリットとデメリット

模試は試験と同じ時間や問題構成で本試験と同じ雰囲気で受験することができ、資格学校などが実施しています。

模試は本試験に近くなってきた時期に実施されますが、本試験のことがイメージできるようにもなり、模試で緊張感を味わうことで試験直前期のモチベーションの維持にも繋がります。

そして、過去問ではカバーできない予想問題への対策もある程度可能になることから、模試の受験は大きな意味を持ちます。

過去問が当てにならない試験や試験科目については意義が大きいものと言えます。

ただし、模試の受けすぎはよくありません。

模試は受験するだけでも体力を使います。試験時間が午前と午後に渡るものとなると尚更です。

模試は受けただけでなく、その復習が必要になりますが、復習には解答解説を読み、適宜講義テキストや解説講義で確認もするため、時間がかかるのもまた事実です。

普段通っている資格学校の模試以外に他の資格学校の模試まで受けるとなると、金銭的にも体力的にも負担が増えます。

身体は正直。本試験も近い時期に、疲れを残すと本試験当日に響くこともありますので注意が必要です。

また、模試には本試験に出題されにくい分野も問題として含まれています。

というのは、資格学校が用意する模試というのは1つの試験について複数回行われることがあり、それぞれで本試験に合わせた問題数が用意されます。

そのため、模試を作る側としては、その回数分の問題数で作成しなければなりませんが、出題されにくいところまでも問題に入ってくることに繋がってきます。

そして、その模試を実施する資格学校のテキスト等に基づいて問題が作られることが多いですが、

つまり、本試験と模試の間に問題作成での考え方にズレが生じていることにもなります。

資格学校は受験対策のプロではあるものの、その点も理解したうえで活用することが望ましいでしょう。模試の結果に一喜一憂するのが無意味であるのは言うまでもありません。

効率の良い学習で合格、資格でステップアップを

限られたお金と時間の中での受験勉強となりますが、効率の良い学習が大事です。

本試験直前期はあまり新しい問題には手を出しすぎず、これまで使った教材も繰り返して準備し、コンディションを整えることがよいでしょう。

その中で試験やその科目に応じて、過去問や模試もうまく活用することが合格への近道です。

その結果、本試験で実力を発揮して合格を勝ち取っていただき、そして、自身の夢や目標の実現に向けてスタートを切っていただければと思います。

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【「資格試験とお金のアドバイザー」井内義典・これまでの実績(資格試験関係)】

社会保険労務士試験、年金アドバイザー試験、1級DCプランナー試験の教材制作やFP継続教育研修講師に従事。

取材協力先としては『プレジデント』(プレジデント社様)2022.11.4号「年収が上がる!資格・検定 独立、再就職」64-67ページ「最大224万円もらえる!『おいしい給付金』もらい方と落とし穴」。

受験対策本の著書としては「1級DCプランナー合格対策問題集」(経営企画出版・共著)。

その他「東洋経済オンライン」(東洋経済新報社様)などで教育訓練給付金制度について執筆。