iDeCoの掛金は給与天引きが強制ではありません

FP相談ねっと代表 山中伸枝 追記(2021/3/1)

ここ数年確定拠出年金周りは劇的な変化を遂げています。

企業からすると選択肢は企業型確定拠出年金を導入するか?しないか?の二択だったものが、iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)が登場し、制度運営に費用がまったくかからない従業員への資金援助ができるようになりました。退職金とは異なり、全従業員を対象とせず「iDeCo加入者のみ」としながら、会社が掛金を全額損金として拠出することが可能です。

また企業型確定拠出年金を導入している会社の従業員さんにも、2022年より会社の掛金の他あるいはマッチングの他にiDeCoを併用できるというオプションが登場します(現行、これをするには会社の規約変更が必要でした)。

またNISA(少額投資非課税制度)も含めると、資産形成の幅が非常に広がっています。残すは「時間を有効に使うことだけ」ですので、ぜひFPサポートを受けながら資産形成をスタートしましょう。

FP相談ねっとでは個人の方も法人の方も、ご相談に応じることができます。

こんにちは確定拠出年金相談ねっと代表の山中伸枝です。

来年1月よりいよいよ個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象者が拡大します。これまでは自営業者と企業年金のない会社にお勤めの会社員のみ加入できたものが、専業主婦や公務員、企業年金のある会社にお勤めの会社員も加入することができるようになります。

自営業者と専業主婦は、加入窓口となる運営管理機関からもらった書類をすべてご自身で記入し提出すれば加入手続きが完結します。

しかし公務員、会社員の場合は「事業所登録申請書 兼 第二号加入者にかかる事業主の証明書」という書類に会社から印鑑をもらって提出しなければなりません。

この書類、会社にもっていくのもちょっと手間ですが、この書類を受け取った会社にとってもちょっと面倒です。なぜなら、始めてこのような書を見たという事業主さんも多く、何をどうしたらよいか迷ってしまうからです。

この書類の書き方について、オフィシャルなご案内はこちらです。

国民年金基金連合会 【新着】平成29年1月から使用する手引き・個人型年金規約を掲載しました。

書き方見本も掲載されているので、ぜひご覧いただきたいと思うのですが、私のところには人事の担当者などから、「ぶっちゃけこの書類どう書いたらいいの?」というお問い合わせも多いので、ちょっとシェアしようと思います。

事業所で迷うのが、「掛金を給与天引きにするか、加入者本人の口座振替にするか」の部分です。

書類を見ると、給与天引きにしないことを選ぶには理由を書かなければならず、なにやら給与天引きにしなくちゃいけないような雰囲気です。

しかし、これ給与天引きにしなければならないという義務はありません。また給与天引きしない理由が「社内の体制が整っていないから」という理由だけでその他なにか理由が問われることもありません。

例えば給与天引きをする人的余裕がない、これは十分給与天引きをする社内の体制が整っていないに該当します。これであれば、給与天引きを選ぶ必要がありません。

給与天引きをするとやはり若干会社の手間が増えます。国民年金基金連合会への登録と、毎月の天引きはもちろん、毎月の掛け金分税金が変わるわけですから、その分給与の源泉徴収を調整しなければならなくなります。その分年末調整は不要になるのですが、どうせ毎年行わなければならない年末調整、iDeCoを個人の口座振替にして年末調整の際に「小規模企業共済等掛金控除」のハガキが一枚増えたところでそれほどの負担にはならないでしょう。

掛金の額は年に1回変更が可能ですから、社員がいつ変更を申し出てくるか分かりません。それに対応する会社側も間違いがあってはいけないので神経を使います。退職といった際も天引きに間違いないようしっかり管理しなければなりません。

また毎月の掛金の引き去りは26日となります。ここでは、国民年金基金連合会が一括で掛金を引き去りをします。その後加入者それぞれの運営管理機関に国民年金基金連合会から資金が移動されるような形となります。

その他、給与天引きをするをいろいろ連絡義務等も生じてしまいますので(詳しくは前述のリンクの手引きをチェック)一般的には給与天引きを選びたくないというのが事業所の正直がお気持ちでしょう。

もしこれらのステップが、そうだねちょっとうちでは無理かなというのであれば、「社内体制が整っていない」に該当しますので、加入者本人の口座振替を選び年末調整での税金手続きにご対応ください。

さらに言うと、会社が本人の口座振替を選んだとして、加入者本人(従業員さん)がなにか不利益を被ることはありません。むしろ複数の人間が介在することによる間違いが防げるので、良いのではないかと思えるくらいです。

ただ、もし社内に複数のiDeCo加入者がいらっしゃるのであれば、企業型確定拠出年金を会社として導入されることをおススメします。それも加入希望者のみが財形貯蓄のようにできる「選択制」の導入です。

企業型とすると、それまでiDeCoで各人が負担していた手数料を会社が負担してあげられるので福利厚生として従業員さんのメリットになります。また、従業員さんは同じ掛金であったとしても、iDeCoは所得税、住民税のメリットだけでしたが、企業型となるとさらに社会保険料の負担も軽減されるので、その分か処分所得が増え同じ金額を貯蓄しても今手元にお金が多く残り有利なのです。

これら企業型の毎月のコストは1事業所10,000円程度(事業規模によります)とそれほど高いものではありませんし、企業型でコントロールすることで、会社の手続きもコントロールが可能です。また企業型確定拠出年金は「企業年金」ですから、優秀者社員を採用する際にプラスに働くでしょう。

なにより企業型であれば掛金の上限が引き上げられます。現状企業年金のない会社にお勤めの会社員は掛金23,000円が上限ですが、企業型であれば55,000円まで引き上げられます。また企業年金(厚生年金基金または確定給付企業年金)との併用であれば、iDeCoは12,000円ですが企業型は22,500円まで非課税で貯蓄できる額を増やすことができます。

公務員のうち、私学共済だけは企業型導入が認められており、その場合iDeCoで12,000円が上限だったものが25,500円に引き上げとなります。

※私学共済以外の公務員さんには企業型確定拠出年金は導入が認められておりません。また公務員さんの事業所登録は少し経路が複雑なようです。こちらのコラムで情報はっしんをしております。公務員がiDeCoを始める時の職場への手続きについて

確定拠出年金は従業員のみなさんの資産形成にはとても重要な制度です。ぜひ会社として取り組んでいかれると良いと思います。

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