FP相談ねっと 代表 山中伸枝 2021/3/2追記
外国人の脱退一時金については2021年4月より緩和されます。
例えば本国に帰国される際、確定拠出年金への通算加入期間が5年以下であれば、脱退一時金を認めるとなります。該当される方は運営管理機関にお問合せ下さい。特に企業型に加入している方は、会社退職まえに、企業型の運営管理機関に手続きについてお尋ねになる方が良いと思います。
こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 代表の山中伸枝です。
2017年個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入資格者が拡大されたことは大きなメリットなのですが、一方で脱退一時金の請求できる可能性がほぼ0となりました。本人がiDeCoに加入することを希望したあとでの脱退不可というのはまぁ理解できるものの、企業型の場合は少し様子が異なります。
通常企業型確定拠出年金を導入している企業の場合、確定拠出年金に関する説明を十分時間をとって社員に伝えなければなりませんが、現実はとても短い時間に形式的に案内するにとどまることが多いようです。社員に知識があれば、それでも良いかもしれませんが理解しないまま加入「させられている」社員も実際は多いのです。
特に問題になるのが外国人従業員です。
確定拠出年金の老齢給付受給権を有する前に本国に帰国するような場合であっても原則脱退一時金が認められません(残高15,000円以下、障害年金を受け取っているなど以外)。その場合個人型(iDeCo)に資産を移し、運用指図者として老齢給付が受けられるまで運用を継続します。
まずiDeCoの運用管理機関を通じて、移換の手続きをします。
企業型確定拠出年金からの資産移換、運用指図者として手続きをします。この場合年金の被保険者区分は問われません。実際本国に帰国されるので日本の年金に加入する義務はありませんから、国民年金の加入者ではないですから被保険者区分もありません。
運用は60歳まで継続します。新しい掛金を拠出することができませんから、ここは月々の管理手数料がかからない運営管理機関を選びたいもの。ちなみに原則運営管理機関はコールセンターなどでの日本語以外の言語サービスは提供していません。運用指図者が利用するウェブサイトであれば、SBI証券は英語で操作が可能です。
運用指図者とは、今ある残高で資産運用だけをします。また60歳以降、老齢給付の請求資格を得たあとの手続きも、原則ウェブサイトを通じてまたはコールセンターを通じて行うことを想定すると、一部であっても英語表記されている方が便利ではないかと思います。
老齢給付である確定拠出年金の資産は、海外送金も可能です。通常の海外送金手数料はかかりますし、日数もかかると言われていますが、海外送金しますというのが運営管理機関(実際には、信託銀行から送金)からの返事です。
実際に海外居住者がどのくらいいらっしゃって、海外送金を受けているのか分かりませんが、税金の取扱いは以下のようです。
海外送金をする:日本では課税されず、送金先の海外で課税される。
日本で納税管理者をたてて日本でお金を受け取る:通常の確定拠出年金の受け取り方(一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金控除)を利用できる。
実際には、帰国された国との租税協定にのっとって税金が処理されるとのことなので、細かいところは個別に確認といったところでしょう。
ちなみに公的年金は日本を離れる場合一部受取ができます。
またお国によっては日本と社会保障協定が結ばれているケースもありますので、帰国前に確認してください。
個人的には、せめて帰国される方には、脱退を認めてあげるべきではないかと考えますし(少しばかりのペナルティはありだと思う)
外国人を雇用する企業においては、企業型DCへの加入を本人が選べる「選択制」での制度設計を望みます。多様性をもっと認める社会であるべきと思います。