ご相談者様 DATA
【年齢】 35歳
【職業】 会社員
【性別】 女性
【家族構成】 配偶者
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
結婚5年目でやっと子供を授かりました。夫は40歳です。二人とも若くないので、やっと授かった子供を大事に育てようと考えています。両方の親は遠方に住んでおり、育児の援助は見込めないこと、会社に産休・育休制度はあるものの、前例があまりなく言い出しにくいこともあり、出産を機に退職も考えています。いつも保険でお世話になっているFPの寺田さんに相談しました。
ご相談内容
現在の会社には企業年金の制度は何もなかったので、以前マネーセミナーで知った個人型確定拠出年金を始めています。退職すると子育てが落ち着くまで収入がなくなり資金繰りが不安です。出産を機に会社を辞めた場合、iDeCoをやめることはできますか?
ご相談でお話しした内容
iDeCoは原則60歳まで辞めることができません
平成29年1月から、基本的に20歳以上60歳未満のすべての方が加入できる制度に改定されました。今まで加入できなかった会社員の妻、公務員の方なども対象となっています。離職や転職をしても持ち運びができ、どなたでも60歳まで積立を辞めないで済む仕組みになっています。そのため、原則60歳まで辞めることができません。
例外として次の要件をすべて満たした場合は脱退でき、一時金を受け取ることができます。
国民年金保険料免除者の方や海外居住の方など加入資格がない方で、
①確定拠出年金の障害給付金の受給権者でないこと
②通算拠出機関が1か月以上3年以下または個人別管理資産額が25万円以下であること
③最後に企業型または個人型の確定拠出年金の加入者資格を喪失した日から2年以内であること
④企業型確定拠出年金の加入者資格喪失時に脱退一時金を受け取っていないこと
ご相談者は厚生年金保険にご加入中ですので該当しません。従って脱退一時金を受け取ることができません。もし、会社を辞めても、会社員の妻になり、上限23000円/月の限度額の範囲内で個人型で掛金を拠出し続けることになります。あるいは、掛金を拠出しない運用指図者となります。
会社を辞めない時のメリットは
出産は女性にとって、大事なイベント。ゆったりとその時を迎えたいですね。でも、せっかくキャリアを積んだ会社を辞めてこのときを迎えるということが、最善の選択でしょうか?出産・育児には、国の強い援助があります。制度をおさらいしてみましょう。
出産手当金
被保険者が出産のために会社を休み、給与の支払いを受けなかった時に支給されるのが出産手当金です。支給される期間は出産日以前42日、出産の翌日以降56日目までの期間です。出産日が予定日より遅れた場合、始まる日は予定日から数えますが、終わる日は出産日から数えるので、遅れた方がちょっぴりお得です。
ご相談者のここ一年の標準報酬月額は約20万円。
20万円÷30日×2/3=4,444円(一日当たりの支給額)
ちょうど予定日に産まれたとすると、
4,444円×(42日+56日)=435,512円 を受け取ることができます。
この間の社会保険料は免除となり、ご自身も会社も支払う必要がありません。しかも、支払いは免除になりますが、将来の年金額の計算上、免除分は納付されたものみなされ、年金額が減額されることもありません。厚生年金加入者の大きなメリットです。
育児休業給付金
この給付金を受ける大前提は雇用保険加入です。自営業や専業主婦の方、また、妊娠中に退職する場合も対象外です。育児休業給付金にもいくつか受給要件があります。
①育児休業する前の2年間のうち、1か月に11日以上働いた月が12か月以上ある
②休業中に給与の80%以上を受け取っていない
③休業している日数が対象期間中、毎月20日以上ある
などを満たしていれば、ママだけでなくパパも育児休業給付金をもらうことができます。(パパが後から育児休業給付を開始する場合子供が1歳2か月になる前まで、最大1年まで支給)
ご相談者の休業前の6か月平均月給は約20万円。最初の180日分は
20万円×67%=134,000円/月
その後の休業は50%になります。パパの支給はパパの給与をもとに計算です。
出産手当金と同じく、育児休業中の社会保険料は免除。支払いは免除になりますが、将来の年金額の計算上、免除分は納付されたものみなされ、年金額が減額されることもありません。そして、出産一時金42万円の支給ももちろんあります。この支給は、国保の方も受け取れますね。
比べてみると
出産前に退職した場合 出産一時金 42万円
産休を使い予定日に出産、産休終了後育休を6ヶ月使って職場復帰した場合 出産一時金 42万円 出産手当金 43万5千円 育児休業給付金 80万4千円 合計約166万円
この差は大きいです。
しかもこれら給付金は「非課税」で受け取りますから、ひょっとすると普段の「手取り」年収と同じ位になります。その他、出産育児でおやすみしている期間は、社会保険料も免除になったりして有利な条件で過ごすことができます。
出産・育児に関わる国の制度をおさらいしていかがだったでしょう?次世代育成の支援策として子育て世代に力を入れていることがわかります。出産後6ヶ月お休みをいただいた場合と出産前に退職した場合では受け取れる給付額の違いは歴然です。それだけでなく、退職により厚生年金から外れ、会社員の夫の扶養になると、将来の年金額にも大きな差が出てきます。雇用している会社だって、ご相談者のキャリアを失うのは大きな損失でしょう。今まで前例がなくても、会社やご家族とよく相談し産休・育休を上手に活用しながら出産を迎えられてはいかがでしょうか?
iDeCoを続ける
冒頭でお話しした通り、iDeCoを辞めることは原則できません。現在毎月2万円かけているとのお話しでしたが、掛金を続けることが難しいようでしたら、掛金の変更をしましょう。毎年4月から翌3月までの間、1回のみ変更ができます。最低金額は5,000円です。
掛金の引落しを停止することもできます。運用指図者(掛金を積み立てず、試算の運用のみを行う方)へ変更の手続きをすると可能です。但し、運用のみを行う場合でも口座管理手数料64円や、運営管理機関(金融機関)の手数料は毎月かかってしまいます。
iDeCoは将来の自分への仕送りです。無理がないようでしたら5,000円以上掛金を掛け続け、資金を増やしながら運用することをおすすめします。
今回のご相談はiDeCoのご相談でしたが、国の制度を改めて確認したことで、会社を辞めないことに方向転換しました。これから会社と相談してみるとのお話でした。iDeCoを続けることにはまだ若干の不安がありますが、将来を考えると必要なことです。子供のことも含めて、ライフプランの見直しをしたいとのご意向で、次回ご相談をうけることになりました。