マッチング拠出をすると確定申告が必要ですか?

ご相談者様DATA

【年齢】 38歳

【職業】 会社員

【性別】 女性

【家族構成】 母親と二人暮らし

相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)

会社で企業型確定拠出年金に加入しています。それで、運用の仕方を知りたいと思って、4月の終わり頃の林さんのセミナー(ポートフォリオの組み方)に参加しました。その時にチラシを貰ったことを思い出し、相談しようと思ったのです。

セミナーを聞いてなんとなく運用してみようかと思ったのですが、母が「投資は危ない。定期預金にしておきなさい」と言うので、まだそのまま定期預金で積立しています。

会社にはマッチング拠出というのですか、自分の給料からいくらか掛け金を出せるという制度があるのですが、昨年までは母が入院したりと何やら物入りで何もやってません。

でも、今年は昇給のお話があって、その分でもマッチング拠出をしたいと思います。
その場合、確定申告?ですか、それをやらなければならないってことありませんか?

友達に聞いても、「マッチング?って何それ。聞いたことがない。私も会社が出してくれるのは5,000円しかないから、自分で出せるって聞いて20,000円掛けているけれど、確定申告したことがないよ」と言われました。

なんか面倒なことになるのではと心配です。

確定申告の必要はありません。

結論から申しますと、マッチング拠出をしても確定申告や年末調整の必要はありません。

と言うのは、マッチング拠出分は所得税の課税対象とならないため、それについての税金を払う必要がないからです。

年末調整というのは、年末に1年間の所得税を算出して、毎月源泉徴収した所得税合計との差額を還付したり、徴収したりします。これは、各自提出した資料を基に会社が手続きしてくれます。

確定申告は、自分で所得税を確定して申告・納税します。個人事業主だけでなく、会社員でも年末調整で扱う以外の申告(医療費控除や寄付金控除など)があれば手続きします。

iDeCoで、年末調整や確定申告をすることでお金が貰えると言われているのは、iDeCoの掛金が全額所得控除のため、その分の納め過ぎた所得税を返して貰うということです。

もう少し詳しく見ていきます。

マッチング拠出とは、会社からの掛け金に自分の給与からの掛金を追加で出す制度です。

マッチング拠出が出来る規約になっている会社に限ります。

マッチング拠出をしたいと会社に伝えると、会社が書類を用意してくれます。書類に必要事項を記入して提出すると会社の方で手続きしてくれます。手続きが完了すると、会社の方で給与から天引きして、会社の掛金と一緒に自分の確定拠出年金個人口座に拠出して貰えます。資産配分はもとのままで資産を買い付けます。

税金の面から見ますと、会社からの拠出分は福利厚生費とされ給与とされないので、社会保険料も所得税・住民税の課税もされません。

一方、マッチングの個人拠出分につきましては一旦給与となった分から拠出します。

源泉所得税は給与そのものにかかるのではなく、給与から先ず社会保険料を引いた残りの金額に対して税額を決定します。マッチング拠出をする場合は、さらに拠出金額をひいて、その残りの金額に対して源泉課税します。つまり、マッチング拠出の分は課税されてないのです。

ですから、マッチング拠出の分については個人負担であっても、年末調整や確定申告で税金を取り戻す必要がないのです。(会社によっては、毎月の給与で税金を清算するのではなく年末調整で清算する会社もあるようですが、その場合でも会社で掛金の把握をしていますので、あえて加入者がなにか手続きをする必要はなしとしています。念のためこの部分は会社にもお尋ねください)

iDeCoでは殆どの場合、一旦給与を受け取ってから自分の口座から振り替えで拠出しますから、納めすぎた税金を取り戻すために年末調整や確定申告が必要です。その場合は、生命保険料控除の証明書と同じようなハガキで「小規模企業共済等掛金控除」の証明書が自宅に届きますからこれを会社に提出して年末調整で税金の還付をしてもらいます。

もし、会社から掛金を給与天引きで確定拠出年金の口座へ直接振り込んで貰う場合は、月々の給与の支払い時に税の手続きが終了されているので、年末調整や確定申告の必要はないのです。

マッチング拠出が出来る金額は、会社拠出の分と合わせた上限が55,000円まで、かつ、会社の拠出分を超えない金額です。(確定給付企業年金などがある場合、上限が27,500円まででかつ会社の拠出分を超えない金額となります。これは会社により異なります。)

相談者様の場合、会社拠出分が15,000円とのことなので、55,000円の上限にあと40,000円分の枠がありますが、会社の拠出分が15,000円のため、相談者様がマッチング出来るのは15,000円までとなります。

つまり、確定拠出年金の口座に拠出出来るのが合計で30,000円が上限になります。

今後、会社拠出の金額が上がっていったら、その分マッチング拠出出来る分が上がります。

例えば来年度の会社拠出額が20,000円になれば、マッチング拠出出来る上限が20,000円です。

その場合は、合計で40,000円が上限になります。

マッチング拠出の分は、会社拠出の金額に合算して商品を購入するので、マッチング拠出の分で、会社拠出の分と区別して商品を購入することは出来ません。

資産配分は会社拠出と同じで、商品を買い付ける金額がマッチングの分多くなるだけです。

マッチング拠出の掛け金は年に1回変更出来ますし、停止することも出来ます。

お母様の容体が快方に向かわれたとのことですが、相談者様はまだお若いのでこの先いろいろ生活に変化が生じてきます。

変化に応じて、お金の使い方を考えなければならないことも出てくるでしょう。
と言うのは、ご存じの通り、確定拠出年金は60歳まで(規約により65歳までのことも)は引き出せません。(ただし、障害を負ったり、死亡したときは例外です。)

状態に応じてマッチング拠出の分の掛金の変更をすると良いですね。

マッチング拠出と選択制の違い

お友達が「会社は5,000円しか出してくれないから自分で20,000円を確定拠出年金へ積み立てている」というのは、同じ企業型でも、「選択制」の企業型確定拠出年金を導入されているのだと思います。ですから、マッチングという言葉をご存じなかったのでしょう。

選択制は、それぞれ従業員が自分の給与分から幾らを確定拠出年金に拠出するか決めて、掛金を拠出します。それに加え、会社が掛金を拠出してくれる場合もあります。

その掛金、会社拠出分も従業員が拠出する分の合計は全額、会社の「福利厚生費」となり、給与とされません。自分が拠出した後の実際の給与に対してのみ社会保険料・源泉所得税が掛けられるので、確定申告することで税金を取り戻す作業はしなくてもいいのです。

マッチング拠出は、会社の拠出分との合計が55,000円まで、かつ、上限が会社拠出分を超えられないのですが、選択制の場合、会社の拠出分との合計が55,000円までなら幾ら掛けても良いのです。

iDeCo(個人型の確定拠出年金)は、企業型でマッチング拠出が出来る場合は併用出来ません。
(令和3年3月追記:令和4年10月より、マッチング拠出かiDeCo加入の選択を、加入者ごとに出来る様になります。)

生活に余裕が出て来て老後資金をもっと貯めたいと思われたときでも、マッチング拠出の場合は55,000円にまだ余裕があっても、会社の掛金の上限を超えて掛けることは出来ません。

企業型でもiDeCo併用が出来るところもありますが、マッチング拠出が導入されている場合はiDeCoには加入出来ません。

(以下、令和3年3月追記)
令和4年10月より、マッチング拠出が導入されている企業でも、マッチング拠出かiDeCo加入かを、加入者ごとに選択が出来る様になります。

また、現行、企業型加入者がiDeCo併用をする場合は、iDeCo(月額2.0万円以内)の加入を認める労使合意に基づいた規約の定めがあり、事業主掛金の上限を月額5.5万円から3.5万円に引き下げた企業に限られていますが、令和4年10月より、規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、全体の拠出限度額から事業主掛金を差し引いた残り枠の範囲内で、iDeCo(月額2.0万円以内)に加入できるようなります。
(追記ここまで)

NISAや2018年から始まる「つみたてNISA」も考えられたらいかがでしょう。

つみたてNISAは年間2018年から37年(令和3年3月追記:令和2年税制改正により口座開設可能期間は2042年まで延長)までの制度で、最長20年間、年間40万までを毎月コツコツ積み立てていきます。掛金全額所得控除にはなりませんが、運用益は非課税です。

掛金が所得控除出来るのと言えば個人年金保険もありますが、どれだけ掛けても、控除の上限4万です。解約しなければ元本割れはありませんが、利率が低いままです。

ご相談者様は、企業型の商品選択を、お母様に勧められて定期預金にされていると言うことですが、元本を割る危険はありませんが殖えません。お母様の時代は金利が良かったので定期預金で良いと思われるのがご尤もですが。

せっかくセミナーでポートフォリオの組み方を学ばれたのですから、今度はリスクの取り方からもう一度知識を付けられて、少額からでいいので投資信託の運用を始められてはいかがでしょうか。

先ほどお話をしたNISAには、もうひとつ、年間投資額を120万円で非課税期間を5年とした一般NISAもあります。こちらであれば、株式への投資も可能です。(令和3年3月追記:令和2年税制改正より2024年から5年間は新NISA(年間20万円分のつみたて、102万円分は従来同様で、合計で年間投資額122万円までを5年間非課税で運用出来る制度になります。)

株主に配当や優待を出す企業もあります。
いつも利用するデパートやスーパーマーケット、コーヒーショップ、レストラン、薬局等の株式を調べてみて下さい。配当金だけでなく、お買い物券やキャッシュバックなどの優待を出しているところがあります。同じ買い物をするなら、お得に買いたいですね。自社の製品の詰め合わせを優待にしているところもあります。いつも使う◯◯が優待にあったら、わざわざ買わずにすみますね。
NISA口座で購入した株なら、売買益・配当金共に非課税。優待の商品は貰えるおまけが付くと嬉しいですね。

株式投資はその企業の応援をすることです。
株式投資は怖いとよく言われますが、現物で持っているだけなら上場廃止(株の価値がなくなること)以上のリスクはありません。証券会社で買える上場企業は、絶対にとは言えませんがそんなに簡単には倒産しません。
企業の成長と共に株価が上がり、配当金のお礼も増えてくるのです。
企業に投資をすることで、企業が元気になり、私たちの生活もちょっとお得で豊かになります。

まず、お母様とそれぞれお気に入りのお店の株を一つずつ(最小単位で)持ってみてはいかがでしょうか。
怖いからと何も知らないのままでいるのではなく、小さくチャレンジしてみましょう。きっと、投資の世界が広がります。

この記事を書いた人
林 智慮

今のことしか考えられない現役世代の方!「今も」ゆとりができる「年金作り」、始めませんか。

関連記事

つみたてNISAとiDeCoはどう違いますか?
ご相談者様 DATA 【年齢】 45歳 【職業】 メーカー勤務(サラリーマン) 【性別】 男性 【家族構成】 A様(ご相談者様)、配偶者(専業主婦)、子供1人(中学生1人) 相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋) 前回、自分のiDeCo相談で伺った時、竹内さんにとても分かりやすく教えていただいたので、引き続き相談に来ました。今日は、2018……
経営者の退職金として保険の提案も受けていますが、どちらがいいですか?
ご相談者様 DATA 【年齢】40才 【職業】歯科医院経営(先生と役員(妻)のみ、国民年金の第2号被保険者) 【性別】男 【家族構成】配偶者 相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋) 保険会社から自分の退職金準備のために保険の活用を薦められています。 そんな時に青山先生のYoutubeで動画をみて、確定拠出年金についても知りたいと思いました……
私と夫、iDeCo(イデコ)は両方でする方がいいですか?
2020/3/9更新 ご相談者DATA   【年齢】 40代前半 【職業】 専業主婦(パートを求職中) 【性別】 女性 【家族構成】配偶者・子供2人   相談しようと思ったきっかけ   次男が中学生になり、塾などの教育費が今まで以上にかかる上、家計の見直しの必要性を感じる一方で空いた時間にパートで働いて老後の……
新婚です。子どもはまだいないのですが、保険は入った方がいいですか?国からの保障ってありますか?
ご相談者DATA ・大川様(仮名) 34歳(会社員)・奥さん     26歳(専業主婦になる予定) 相談しようと思ったきっかけ つい最近、結婚しました。ようやく落ち着いてきたので、保険について見直しを考えています。 独身時代にそれぞれ入っていた保険は、共済やネットで加入したものなど、どちらかと言えば「お手軽な」ものだけです。 ……

相談事例をフリーワード検索で探す