海外赴任中でもNISAはできますか?

ご相談者様DATA

【年齢】40代前半

【職業】会社員

【性別】男性

【家族構成】配偶者、子供2人(7歳、5歳)

 

相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)

2年前に株主優待目的でNISA口座を開設し、株を購入しました。現在も株を保有しています。
ところが会社から来年度より2年間の海外赴任を命じられました。家族全員で海外移転するので、現在持っているNISA口座をどうすれば良いのかわかりません。
家族全員で株主優待を楽しんでいたので、妻と一緒に相談しに行きたいのですが、子供たちはまだ自分たちだけで留守番をできる年齢ではありません。
そんな時、妻がネットで「子連れ相談歓迎」のFPである前田さんを見つけました。前田さんなら子連れでも相談しやすいかもしれないと思い、相談しました。

 

ご相談内容

株主優待目的でテーマパークの株を2銘柄購入しました。1銘柄は含み益がありますが、1銘柄は含み損を抱えています。それでも、株主優待が目的なので、含み損はそれほど気にしていませんでした。20歳以上なら誰でもできると聞いて始めたNISAですが、海外赴任中は、この口座はどうなりますか。
また、帰国後の取り扱いについてはどうなるのか教えてください、との事でした。

 

ご相談でお話した内容

株主優待を家族全員で楽しんでいたご相談者様。海外在住となると、様々な制約があります。
そこで、まずNISA口座の開設条件や海外出国時までに行う手続きについて説明しました。

 

2年間の海外赴任。NISA口座はどうなる?

NISA口座を開設できるのは「口座開設の年の1月1日において満20歳以上の居住者等」です。「居住者等」とは日本に住んでいる人のことです。日本に住んで、税金を納めている人のための非課税制度という事ですね。出国により、居住者でなくなる場合は、NISAを続けることができません。残念ながら、NISA口座は廃止されることになります。

手続きとしては、出国の日の前日までにNISA口座を開設している金融機関に「出国届出書」を提出します。「出国届出書」は口座を開設している金融機関から取り寄せることができます。

ところで、NISA口座が廃止されるとなると口座内の資産は売却するしか方法はないのでしょうか。ご相談者様もこの点が気になっていたようでした。結論としては、一般口座で保有し続けることができます。

ここで、取引口座について、簡単な説明を加えると、取引口座は、大きく分けて一般口座と特定口座の2種類があります。その違いは、一般口座とは確定申告が必要な口座、特定口座とは納税手続きを簡易化できる口座です。

現在は特定口座が主流で、ご相談者様もNISA口座を開設するときに特定口座を開設した、との事でした。NISA口座内の資産は、納税手続きが簡単な特定口座に移管したいところではありますが、出国となると、特定口座も廃止されてしまいます。海外赴任中に利用できる口座は一般口座のみというわけです。NISA口座と特定口座の資産は、どちらも出国前に一般口座へ移管されることになります。

 

帰国後はどうなる?

帰国後は、NISA口座から一般口座に移管された資産をNISA口座に戻す事はできません。ただし出国までに一定の手続きをしておけば、特定口座であれば移す事はできます。
もともと特定口座にあった株式等は特定口座に戻すことができるという決まりがあるので、NISA口座から一般口座に移管する際、一旦、特定口座に移管し、その後に一般口座に移管するのです。

出国時の株式等の口座移管の流れ 帰国時の特定口座への戻し入れ
NISA口座→特定口座→一般口座
NISA口座 → 一般口座 不可

帰国後に取引を再開することを考えればこの手続きはしておいた方が良さそうです。証券会社に移管依頼書という書類を提出すればこの手続きは出来ます。

 

移管時の注意点

ただし、移管するにあたり、注意点があります。移管時は取得価格ではなく、時価で移管されます。すると、売却時の価格が移管時の価格より値上がりしていればその値上がり益に対して課税されることになります。

どういうことでしょうか。図を書いて説明させていただきました。

1、購入時より移管時に株価が上がった場合

①NISA口座で株を100万円で購入しました。

②課税口座へ移管時には、株価は120万円まで上昇しました。この場合、課税口座へ移管される際の取得価格は、120万円とみなされます。

ケース1

③売却時には140万円まで株価が上昇しました。
利益は、140万-120万=20万で、20万の利益とみなされ、20万円に対して約20%課税されます。

ケース2

③売却時には110万円まで株価が下落しました。
110万円-120万円=△10万円で、利益はありませんので、課税されません。

 

2、購入時より移管時に株価が下がった場合

①NISA口座で株を100万円で購入しました。

②課税口座へ移管時には、株価は80万円まで下落しました。この場合、課税口座へ移管される際の取得価格は、80万円とみなされます。

ケース1

③売却時には100万円まで株価が上昇しました。
利益は、100万−80万=20万で、20万の利益とみなされ、20万円に対して約20%課税されます。ですが、実際の購入価格は100万円なので、利益は出ていませんよね。それでも、移管時の価格が取得価格とみなされるため、20万円の利益が出たとみなされ課税されてしまうのです。

ケース2

③売却時には60万円まで株価が下落しました。
60万円−80万円=△20万円で、利益はありませんので、課税されません。

このように、移管する際は、実際の取得価格ではなく、移管時の時価を基準として損益が計算されるので、注意が必要です。

ご相談者様の場合、1銘柄は含み益があるますが、1銘柄は含み損があるとのことでした。もし移管するとなれば、含み損を抱えた銘柄は、取得金額よりも低い金額で移管されることになるので、この点は、大きなデメリットになりえることをご認識いただきました。

 

海外滞在中の株主優待と分配金

次に、株を保有し続けた場合の海外滞在中のお話についてです。

一般口座に移管されたとはいえ、株を持ち続けることには変わりありません。ですから、株主優待を受ける事はできます。しかしながら優待は海外発送されません。実家など別の住所を設定し、そちらに送付されることになります。ご相談者様の場合、テーマパークの優待券なので、実家に送付されたとしても、遊びに行く事はできませんね。

なお、配当金の受け取りについてもアドバイスを行いました。
配当金の受け取りについては証券会社など金融機関の取引口座に入るのが一般的です。この方法だと、税金が差し引かれた後の配当金が入金されます。しかし非居住者となる場合、税金を納める必要はありませんので、受け取り方法を「登録配当金受領口座方式」に変更した方が良いことも併せてアドバイスしました。この方式だと税金は差し引かれず自分の銀行口座に入金されることになります。

 

ご相談者様の結論

NISAは、日本で税金を納めていることを前提とした個人投資家のための税制優遇制度です。海外赴任で、税金を納めなくなるということであれば、NISAを利用することができません。

ご相談者様は、一旦すべての株を売却することに決めました。

それは以下のような理由からです。
1、書類の提出等手続きが面倒なこと。

2、株主優待を指定住所に送付されはするものの、利用することができないこと

3、帰国までに保有銘柄の株価が下落した場合、大きな含み損を抱えてしまうリスクがあること(海外からは日本の証券会社で保有している株の売買はできません)

これらの理由により一旦売却することにしました。帰国後に再度NISA口座を開設し、株式取引を楽しむことにするとの事でした。

2年の海外赴任が終了する頃は、お子さんの進学や教育資金のやりくりがいよいよ本格化してきます。生活も今とは変わるだろうから、その時改めて今後のライフプランについてご相談させてくださいとのご依頼も頂きました。お子様方の成長を楽しみにしながら、再会を楽しみにしたいです。

 

※NISA、つみたてNISAの出国時の取扱については、2019年税制が改正されます。詳しくは、こちらのブログ「NISA・つみたてNISA、海外赴任でも継続利用可能になります!」を参考にしてください。

 

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前田 菜緒
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