70代の母が保険に入りまくっているようで心配です。高齢者にも保険が必要なのでしょうか?

この記事を書いた人
山中 伸枝

山中伸枝(やまなかのぶえ)FP相談ねっと 代表

ご相談者様データ

(お名前)浜田 美鈴様  (仮名)40代

(職業)会社員

(家族構成)夫と子ども

母親70代(別居) 母親とは仲が良く、子育てにも協力してもらった。最近は、子どもが部活で忙しい週末を利用して母の様子をよく見に行っている

相談しようと思ったきっかけ

70代の母が、次々と保険に入っているようで心配です。

私はお金の勉強が好きで、保険は国の保障を確認したうえで、本当に必要な分だけ、できるだけ保険料を抑えて加入するものだと考えています。

ところが母は、テレビで「誰でも入れる」と宣伝している保険に資料請求をしたり、友達と保険のセミナーに出かけたりしています。資料請求をするとプレゼントがもらえる、セミナーではお菓子が出て楽しかった、などと話してくれますが、肝心の保険の内容はよく理解しているのか分かりません。

高齢になってから保険にたくさん入る必要があるのでしょうか。母が無駄な保険料を払い続けているのではないかと気になっています。

まずは、お母さまが保険に入りたい理由を聞いてみましょう

お金について勉強している娘さんからすると、保険は公的保障で足りない部分を補うもの。必要な保障を見極め、保険料をできるだけ抑えることが合理的だと感じるのは自然なことです。

一方、お母さまは少し違う思いで保険を考えているのかもしれません。

例えば、親しい友人が病気で倒れたことをきっかけに、自分もいつ病気になるか分からないと不安を感じている可能性があります。

また、もし自分が入院することになれば、娘が仕事を休んで病院に来てくれたり、家のことを後回しにして世話をしてくれたりするのではないか。そんな娘への申し訳なさから、少しでも給付金が受け取れる保険に入っておきたいと思っているのかもしれません。

高齢になると、病気やけがが自分の身にも起こり得ることとして、以前より身近に感じられるようになります。保険の資料を取り寄せたり、セミナーに出かけたりすることが、お母さまにとって不安を和らげる時間になっている可能性もあります。

まずは「そんな保険は必要ない」と否定するのではなく、「どうしてその保険に入りたいと思ったの?」と聞いてみてはいかがでしょうか。

娘さんには無駄に見える保険でも、お母さまにとっては、病気になったときの経済的な備えであると同時に、娘に迷惑をかけたくないという思いを支えるものなのかもしれません。

高齢者に保険は必要ないのでしょうか

では、実際に高齢者に保険は必要ないのでしょうか。

年齢を重ねると、がんをはじめとする病気や、転倒による骨折などのリスクは高まります。長寿社会となり、高齢になってからも積極的に治療を受け、できるだけ自分らしい生活を続けたいと考える方は少なくありません。

一般的な病気では入院期間が短く済むこともありますが、大腿骨の骨折などでは、手術後のリハビリに時間がかかることもあります。

もちろん、公的医療保険には自己負担を軽減する仕組みがあります。高額療養費制度では、保険適用の医療費について、年齢や所得に応じた自己負担限度額が設けられています。

ただし、医療費のすべてが公的保障で賄われるわけではありません。入院中の食事代や差額ベッド代、通院にかかる交通費など、制度の対象外となる費用もあります。また、治療が長引けば、医療費以外の支出も気になるでしょう。

年金生活を送る高齢者にとっては、毎月の収入が限られるなかで、予定外の出費が生じること自体が不安につながります。年金は入院したからといって原則として減額されるものではありませんが、日常生活にかかるお金は引き続き必要です。

こうした状況を考えると、保険は必要ないと一概に決めつけることはできません。医療費を貯蓄で十分に賄える方もいれば、手元のお金を減らすことに強い不安を感じ、保険で備えたいと考える方もいるでしょう。

大切なのは、病気になったときにどのような費用が発生するのか、そして、その費用をどうやって賄いたいのかを考えることです。

保険に入ること自体を否定せず、内容を一緒に確認する

お母さまが保険に入りたい理由が分かったら、次は、実際にどのような保険に加入しているのかを確認してみましょう。

保険証券や契約内容のお知らせなどを見せてもらい、保障内容、保険料、保障が続く期間、給付金を受け取るための条件などを整理します。複数の保険に加入している場合、保障内容が重複していることもあります。

特に高齢になってから加入する保険は、年齢に応じて保険料が高くなっていたり、保障内容に一定の条件が設けられていたりすることがあります。「誰でも入れる」という宣伝だけで判断せず、実際にどのようなときに給付金を受け取れるのか、保険料を何歳まで払い続けるのかなどを確認することが重要です。

また、加入している保険会社や代理店に、娘さんが同席して説明を聞くことも一つの方法です。お母さまの同意を得たうえで、娘さんの存在を担当者に伝え、連絡先や相談できる範囲を確認しておくとよいでしょう。今後、契約内容について問い合わせたり、手続きについて相談したりする際にも、担当者の顔や名前を知っていることは安心につながります。

同時に、心配されていたお母さまが詐欺に遭うのではないかという点についても、大事な決断の際には、娘さんが必ずそばにいてくれる、相談にのってくれるという事実は、お母さまに大きな安心を与えることにもなりますし、悪意を持った人を遠ざける抑止力にもなるでしょう。

ただし、家族だからといって、本人の同意なく契約内容を開示してもらえるわけではありません。お母さま自身が納得して相談できる環境をつくることが大切です。

そのうえで、今後必要になりそうな医療費や介護にかかる費用を、年金や預貯金でどこまで賄えるのかを考えてみましょう。預貯金で対応できる範囲と、保険で備えたい範囲が分かれば、今の保険を続けるべきか、新たな加入が必要なのかも判断しやすくなります。

大切なのは、保険を否定することではなく、判断する知恵

お金の知識がある娘さんからすると、保険は合理的に選び、必要最低限にするものかもしれません。しかし、お母さまにとっては、病気になったときの経済的な安心や、娘に負担をかけたくないという気持ちを支えるものなのかもしれません。

保険は、必ずしも無駄なものではありません。一方で、不安を感じるたびに保険に加入していては、限られた年金収入から保険料が出ていき、日々の暮らしに使えるお金が減ってしまう可能性もあります。

だからこそ、加入するかどうかを決める前に、何が不安なのか、その不安に対して本当に必要な保障は何なのかを考えることが大切です。

親のお金と暮らしを守るために必要なのは、子どもが正しいと思う答えを押しつけることではありません。親の思いに耳を傾け、利用できる制度や家計の状況を一緒に確認し、本人が納得して選べるように支えることです。

保険に入ることが正解の場合もあれば、貯蓄で備えることが合っている場合もあります。重要なのは、保険を無駄と決めつけることではなく、自分に必要なものを見極める知恵を持つことなのではないでしょうか。

親のお金と暮らしを考えるFP研究会より

高齢者をターゲットとした詐欺事件のニュースを見ると、やりきれない気持ちになります。今回のご相談者さまも、金融機関の相次ぐ不祥事を受け、警戒心を強められていたという点は、とても自然なことでしょう。

しかし、ご自身のお金をどう使うのか、万が一にどう備えるのかにまで、疑心暗鬼で必要な行動がとれなくなるのは本末転倒です。

だからこそ、信頼できるお金のプロにご相談いただきたいなと感じます。

今回の例であれば、現在加入されている保険の中には過剰な保障と思われる部分、反対に不足なのではと思われる部分もありました。また保険料も競争力がないものであったり、今解約して別の目的に資金を使う方が適切ではと思うところもありました。

個別に相談を重ねることで納得感のあるお金の使い方が可能になる場合もたくさんあります。

ぜひ「FPへの相談」を暮らしの一部に入れていただければと思います。

執筆:親のお金と暮らしを考えるFP研究会 代表 山中伸枝
事例提供:FP相談ねっと 寺田紀代子

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山中 伸枝

山中伸枝(やまなかのぶえ)FP相談ねっと 代表

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