小さい会社ですが、企業型DCを導入する手順を教えてください。

この記事は2025年3月の情報を元に更新しています。

ご相談者様 DATA

【年齢】 40後半

【職業】 会社社長

【性別】 男性

【家族構成】 配偶者、子供2名

相談しようと思ったきっかけ

自分自身や社員の老後の資産形成に何かを考えたいとを思い、企業型DC(確定拠出年金)の導入を検討していますが導入するにあたって何をしていいのか全く分からないので、助成金などを扱っているFP社労士の竹内さんがDCにも明るいとの事でお話を聞いてみようと思いました。

ご相談内容

社員が7名の小さい会社のため、就業規則も作成しおらず、ご自身や社員の退職金や老後のことなど考える余裕もなくこれまで来ていたとのことですが、ここに来ていろいろなメディアや雑誌で確定拠出年金を目にするようになり、また周囲の会社でも検討している話も聞くようになりました。また、今年に入り2名の社員からも問い合わせを受けるようになり、今導入することを検討していますが、何をどうしたらいいのか全く分からないので導入する手順や必要な手続きについて教えて欲しいとご相談に訪れられました。

ご相談でお話しした内容

会社にとっての確定拠出年金のメリット

まず企業型確定拠出年金を会社に導入するメリットについてお話ししました。

確定拠出年金は、節税しながら老後資金を準備できる仕組みですが、節税できるのは加入者個人だけではありません。

会社にとって、

(1) 法人税・社会保険料の削減・圧縮

(2) 運用のリスクや追加拠出を負わない

(3) 社員の募集時に選ばれる会社になる

以上の3点のメリットを考えます。

まず、

(1)法人税・社会保険料の削減・圧縮

についてです。

確定拠出年金を導入して、毎月掛金を積み立てることで、会社は、この積立金を全額損金計上することができ、法人税の圧縮に繋がります。しかも、掛金の部分は給与のように社会保険料の算定の対象とならないので、社会保険料の負担も軽減されます。

次に、

(2)運用リスクや追加拠出を負わない

についてですが、

通常、退職一時金を準備するための退職給付引当金であれば、社員の退職日までお金を運用し所定の支給額を準備する責任を負うため、会社にとっては大きな負担となります。

しかし、確定拠出年金であれば、事業主が掛金として毎月社員に一定額を支払うことで全額損金として、計上できるので、会社にとっては財政上大きなメリットとなります。

また、確定拠出年金の掛金は、支払った瞬間に社員のお金となり、毎月の給与とは別口で社員名義の「確定拠出年金口座」に支払われ、その後は、社員が自ら運用の指図を行うため、会社が将来支払うべき退職金としてお金を管理・運用する責任からも、解放されるのです。

最後に、

(3)社員の募集時に選ばれる会社になる

についてです。

今、「働き方改革」が声高に叫ばれていますが、その方針の一つとして、昨年12月に同一労働同一賃金ガイドライン案が策定されました。

これを受けて、同一労働同一賃金の今後の方向性としては、

  • 正規・非正規社員両方の賃金決定ルール・基準の明確化
  • 職務や能力等と賃金など待遇水準との関係性の明確化
  • 能力開発機会の均等・均衡による一人ひとりの生産性向上

が求められてきます。

また、同時にどのような仕事についてどんな人生を送るのかについて、今後ますます考える社会・時代になっていきます。

そのような時代の中で、会社がどのような福利厚生制度を用意しているのかというのは、社員を募集する際の一つの基準になると考えます。

そこで、今話題の社員のことを考えた確定拠出年金を導入しているというのは、募集時に選ばれる、結果採用力が上がる会社になると考えています。

その他、メリットとデメリットをまとめてみましたのでご参照ください。

 

企業型確定拠出年金制度導入の流れ

それでは、今回ご相談いただいた企業型DC(確定拠出年金)制度導入の流れについて見ていきましょう。

制度導入の流れは大きく5つのステップで進めていきます。

Step1) 対象者の選定

    加入する対象者を選定します。

Step2) 掛金の設定

    社員に毎月拠出する金額を決定します。

Step3) 労使合意と規約の作成・申請

    労使合意を得て、主務大臣に申請し、社員に周知します。

Step4) 制度を運営する各機関と運用商品の選定

    「運営管理機関」と「資産管理機関」の選任、運用商品の選

    定を行います。

Step5) 導入時教育の実施

    社員のための基礎的な投資教育を実施します。

それでは、一つひとつ確認していきましょう。

Step1) 対象者の選定

正社員とパートタイマーなど非正規社員の労働条件が著しく異なる場合は加入条件を定めることで、非正規社員の方を加入対象者から除くとこができます。

また、「選択制」を導入する場合、加入するかどうかを本人に選択させることもできます。

まず、これらの加入条件を定めて、制度に加入できる対象者を決めます。

Step2) 掛金の設定

次に、社員に毎月拠出する金額を決定します。

まず、会社として社員に掛金を拠出するのか、拠出せずに従業員の給与から任意に掛金を拠出させる「選択制」とするのか、あるいは併用するのかを決めます。

続いて、会社が掛金を拠出するとした場合に、①定額、②定率、③定額と定率の組み合わせの中から算出方法を決めます。

  • 定額は、文字通り加入者全員に同額を拠出するもので、ルールとしては分かりやすいのですが、新入社員とベテラン社員など貢献度会いに関係なく同額を拠出することになるため、人事制度としては使いにくい場合が多く見られます。
  • 定率は、基本給や手当に〜%と一定率を掛けた額を掛金として拠出します。

その場合、給与規程等に定められたものを使用し、事業主による恣意性がないと認められるものを用いてください。

また、会社による掛金拠出のみとする場合は、マッチング拠出にするのか、iDeCoの加入を認めるか。

さらに、会社が掛金を拠出する場合に、3年未満で退職する社員に拠出した掛金を返金させる「事業主変換ルール」を設けるのか、設けずに変換を求めないのかを事前に決めます。

会社が掛金を拠出する場合、一旦決めるそれを支払い続けなければならないので、会社の財務状況を踏まえて、継続可能な拠出ルールを設定することがとても重要です。

Step3) 労使合意と規約の作成・申請

労使合意(厚生年金被保険者の過半数で組織する労働組合または過半数を代表する者の同意)に基づき、企業型年金規約を作成し、厚生労働大臣に申請し承認を受けます。

承認後に、社員にその内容を周知します。

Step4) 制度を運営する各機関と運用商品の選定

「運用関連業務」と「記録関連業務」を行う運営管理機関を選びます。

運用管理業務は、運用に関わる情報提供全般のことで、具体的な運用商品を選定し、加入者に提示します。加入者は、提供された情報を判断材料にして、企業が用意した専用口座の資金を運用します。

資産管理機関は、加入者の年金資産の管理や運用商品の売買、年金・一時金の支払い等を行います。

運営管理機関が決まれば、運用に必要な情報や規約、資産管理機関等ひととおり案内があるため、運用管理機関選びはとても重要になります。

Step5) 導入時教育の実施

加入者の皆さんに制度の概要や運用の流れ、投資の基礎知識や運用商品に関する情報提供を行います。

加入者への教育は、テキストやパンフレット、ビデオ鑑賞、e−ラーニング等の教材、そして研修会で実施することができますが、これらのツールを組み合わせて実施することによって、より効果的な教育を行うことができます。

また、運営管理機関等の外部機関やFPなどの外部講師が提供する教育サービスを利用することも効果的です。

あなたの会社の規模や加入者の特性に合ったツールや方法で効果的な教育を実施してください。

コンサルティングを使うメリット

ここまでご案内してきました確定拠出年金を導入する会社のメリットと導入の流れについてご相談者様に説明し、お伝えした内容についてはよくご理解いただけたようです。

ただ、どうも顔色があまり優れません。

「どうされましたか?」

と尋ねると

相談者様は

「お話の内容はとても丁寧に説明してもらってよく分かりました。

 ただどうしてもこれを導入して実施していく自信がないのです。」

とおっしゃられたのです。

確かに今年に入り、個人型のiDeCoは昨年と比べてかなり注目を浴び関連書籍も多く出版され話題になっています。一方、企業型の方はまだまだ注目が少なく話題になることもあまりありません。企業型に関する関連書籍も少なく、出ていても多くの書籍がかなり難しく書かれていて素人の方からすると飛びつきにくいといったところでしょう。

実際、運営管理機関には500人以上の会社でないと対応しないというところもあります。厚生年金加入事業所であれば事業規模を問わず制度導入を受ける金融機関も数社ありますが、相談者様の会社のような中小企業に対してはあまり情報発信をしていないので、出会う機会も少なくハードルが高いと感じるのもごもっともだと思います。

そのため、相談者様の会社のように中小企業の会社にとっては、確定拠出年金に明るいコンサルティング会社やFPなどに、導入の検討時点からが相談した方が効率が良いと考えます。

コンサルティング会社やFPであれば、業務を通じて、日頃から確定拠出年金について研究を重ね、金融機関よりも積極的に情報発信をしているので、今回のようのご相談者様のように、まずは身近で確定拠出年金に明るいFPなどに相談されることをお勧めいたします。

その場合に、次のことにご注意ください。

総合的な視点かつ未来志向の制度設計の相談ができるか

目先の節税や社会保険料削減ばかりに目がいっていないか、もちろんそれ自体メリットの一つではありますが、そもそも何のために導入するのか、そこをしっかり事業主が理解して、社員に周知しなくてはいけません。

そこをしっかりと説明して、事業主とともに考えることがコンサルタントとして重要なことと考えます。

また、制度設計だけでなく、運用商品についても提案ができ相談に乗れるかどうかも大きなポイントになるでしょう。

運用商品が魅力的であれば、制度を導入している会社として社員の募集時にアピールすることができれば、大きなメリットとなります。

投資教育の開催かつ加入者の相談対応ができるか

制度導入時の説明と同様に、社員に対して行う継続教育は法律からの求めも含めて、今後ますます重要になってきます。

確定拠出年金は、加入者自身が運用します。何のために運用するのか、退職金や老後の資金形成のための運用に他なりませんが、そのためには知識がなければ制度を十分に活用することはできません。

ただ制度を導入するのではなく、しっかりと運用・活用につなげてこそ、導入する意味があります。

そのためにも、投資教育を行い、必要に応じて、個別相談にも対応し、加入者の理解を深め、意識を高めていくことが重要です。

コンサルティング会社やコンサルタントには、導入研修はもとより、継続研修、そして個別相談等に対応出来る、知識と経験、資質が求められいきます。

まとめ

企業型DCの情報は少ないです。特に事業規模が小さい場合、金融機関もわざわざ説明をしてくれないですし、そもそも金融機関でさえ企業型DCのエキスパートは少ないのです。

上記の内容を相談者様に特に強調してお話した上で、私そして私が所属している「FP相談ねっと」のFPはこうした対応ができることをお伝えし、私の師である山中伸枝FPの著書「100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法」を贈呈したところ、とてもご安心していただき、今後もぜひ相談にのって欲しいと、次回の予約もいただきお帰りになられました。

2025年3月現在、従業員にファイナンシャルウェルビーイングを実現するために小さな会社でも企業型DC導入を検討されることが多くなりました。また300人以下の会社では、iDeCo+という選択肢もあり、こちらであれば企業が費用を負担することがなく福利厚生制度を拡充することが可能です。ぜひそれぞれの会社の適正を見ながら良い制度を導入していただきたいものです。(FP相談ねっと代表山中伸枝追記)

この記事を書いた人
竹内 誠一

あなたの夢を叶える人生の伴走者でありたい。年金行政職23年、社会保険とライフプランのスペシャリスト

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