ご相談者様 DATA
【年齢】 38歳
【職業】 会社員
【性別】 女性
【家族構成】 配偶者、子供1名
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
最近、iDeCoの記事をよく見かけます。税金の優遇を受けながら老後の資金を増やせるということで、関心を持ちました。初心者が投資信託を選んでも大丈夫なのかが気になります。
ご相談内容
ご相談者Mさんは、企業年金の無い会社に勤めておられます。老後資金を増やすためには、できれば投資信託で運用してみたい。けれども投資の経験が全くなく、損をしてしまいそうで不安だということで、ご相談に来られました。
ご相談でお話しした内容
投資信託の選び方は?
はじめて確定拠出年金に取り組む方のための
失敗しない投資信託の選び方について、お話します。
「iDeCo」とは「個人型確定拠出年金」の愛称です。「確定拠出年金」には「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と「企業型確定拠出年金」が含まれます。
元本確保型商品と元本変動型商品
確定拠出年金では、運用商品を自由に選ぶことができます。
投資経験のない方には、これがかえってハードルになるようですね。
確定拠出年金をなかなか始められないというご相談を、よくお受けします。
確定拠出年金の運用商品は、元本が確保されているかどうかによって
・元本確保型商品としての定期預金と保険商品、
・元本が確保されていない商品(元本変動型商品)としての主に投資信託
に分かれます。
Mさんが不安に感じておられるのは、この元本変動商品としての投資信託に拠出をすることで損を出してしまわないか、ということかと思われます。
いきなり元本変動型商品を選ぶのが不安な場合は、元本確保型の定期預金や保険商品を選ぶのもいいでしょう。
運用益については(角度を変えれば)、
所得税率最低5%と住民税率10%の、合わせて15%の節税分を運用益と考えることもできます。
慣れてきた頃に、元本確保型から投資信託に変更してもいいですね。
運用商品は掛け金の額にかかわらずいくつでも選べます。それぞれの商品の配分を指定して行うのですが、加入後に何度でも変更することができます。
ただ、気を付けてほしいことがあります。
配分変更と言って翌月分の配分を指定しなおす(配分変更)のみの場合は、すでに買い付けした残高に変更はないので大丈夫なのですが・・・
既に買い付けをした商品を売った資金で違う商品を購入する場合には、注意が必要です。これをスイッチングと言います。
満期日前にスイッチングをすると、定期預金の場合は中途解約利率の適用になります。
保険商品の場合には解約控除額というペナルティがかかり、元本割れになることもあります。
投資信託とは?
次に、気になる投資信託の説明をします。
投資信託では、たくさんの人から集めたお金をひとつにまとめて、運用のプロ(ファンドマネージャー)が株式や債券などに投資します。
そして得た利益を、投資した人に、投資割合に応じて配分していきます。
投資信託には、株式や債券を直接買うのと比べて、以下のような大きなメリットがあります。
1:小口で投資ができる
基準価額が1万円になっています。
2:手軽に分散投資できる
個人で行うことが難しい分散投資が、投資信託の場合には一本の購入で可能となり、リスクを減らせる。
3:資産運用をプロにお任せできる
4:個人では投資しにくい投資対象に投資できる
その上で、
確定拠出年金で選択できる投資信託は、金融機関の窓口で販売されているものとは異なり、原則として販売手数料がかかりません。
運用管理費用(信託報酬)についても、割安に設定されているものが多く、売却時の信託財産留保額もいらない投資信託が多いのです。
こうしたコストの分だけ、確実に確定拠出年金が有利になります。
リスクとは?
では、リスクとは何なのでしょうか?
通常、「リスク」は「危険」という意味ですが、投資信託でいう「リスク」は「不確実性」という意味です。
一般的に、「リスク」は「標準偏差」という指標を用います。数値が大きければ大きいほど、「リスクが高い」ことを示します。
投資信託には、投資先の株や債券等の「価格変動リスク」や「為替変動リスク」、「金利変動リスク」、投資先企業の「債務支払不能リスク」などがあります。
リスクは投資信託の購入方法によって分散し、小さくすることができます。時間分散、資産分散、通貨分散などがあります。
投資信託では、リスクの大きい資産ほど、期待できる収益(リターン)が高い傾向があります。
せっかく投資信託を始めるのですから、高いリターンを期待したいところですね。
けれども、確定拠出年金を始める目的は、安定した老後の資産を築くことです。
確定拠出年金では、時間を味方につけることができるので(時間分散)、投機的な高いリターンを狙う必要はありません。
ここでは、リスクを分散しながら、確実に目的の資産を築いていく拠出の仕方を、ご紹介していきます。
投資信託を選ぶポイント
- 投資対象で分ける(資産分散)
リスクを抑えるためには、いろいろな資産に分散して投資することが大切です。
この資産配分を決めることを、「ポートフォリオを組む」と言います。
ポートフォリオを組む時に参考になるサイトのひとつが
モーニングスターの「かんたんファンド検索」
http://www.morningstar.co.jp/です。
Mさんは会社員(企業年金はない)なので、最高限度額の23,000円で22年間、 1,000万円を目標に積み立てるということで試算してみました。
すると、国内株式10%、先進国株式30%、新興国株式10%、先進国債権30%、
新興国債権20%という結果が出ました。
この5種類は、投資信託の投資対象によって分類されています。
各運営管理機関の運用商品を、この5つのグループに分けます。
この時に役に立つサイトを2つ紹介します。
モーニングスターのiDeCo(個人型確定拠出年金ガイド)
https://www.morningstar.co.jp/ideco/
特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会のiDeCoナビ(個人型確定拠出年金ナビ)
http://www.dcnenkin.jp/
これらのサイトでは、各運営管理機関のiDeCo取扱商品や手数料の比較が手軽にできます。
これらで予めいくつかに絞ってから、各金融機関から商品説明書を取り寄せてもいいでしょう。
・運用方針で分ける
運用方針には、インデックス(パッシブ)型とアクティブ型があります。
インデックス型は、ベンチマークに連動する運用成果をめざし、アクティブ型は、ベンチマークを上回る運用成果を上げることを目標とします。
ベンチマークとは、投資信託を運用するにあたりその目安とする指標のことです。
たとえば日本の株式に投資をする投資信託の場合、ベンチマークはTOPIXまたは日経225になります。
基本的にインデックス型はアクティブ型よりもリスクが低く、その分リターンも低くなります。
投資が初めての場合は、無難なインデックス型を選んでいきましょう。
・信託報酬を比べる
投資対象もインデックス型であることも同じでも、信託報酬にはかなりの開きがあります。なるべく信託報酬の低いものを選びましょう。
・過去のリスクとリターンをチェックする
モーニングスターのiDeCoのサイトで、おおまかなものは見ることができます。
運営管理機関から取り寄せた商品説明書は様式が様々ですが、
過去のファンド収益率とベンチマーク収益率との差異まで、明示してくれているものもあります。これはとても親切ですね。
・ファンドを組み合わせる
投資対象ごとに1本ずつ商品を選んだら、それを組み合わせていきましょう。
先ほどのMさんのポートフォリオに当てはめると、
国内株式2,300円、先進国株式6,900円、新興国株式2,300円、
先進国債権6,900円、新興国債権4,600円となりますね。
実際の商品の配分指定は、金額ではなく割合で行います。
出口で損をしないために
転職時や60歳以降に老齢給付を受ける前に、必ず準備しておいてほしいことがあります。
これらの場合には全ての運用商品が売却されますが、売却のタイミングは加入者が指定できません。
株式などの値動きの激しいものは不利になる恐れがあるので、売却して国内の債券か定期預金などの、値動きの少ない商品にスイッチングしておきます。
MMFという、こういう場合に使い勝手のいい商品が準備されている運営管理機関もあります。
低リスクで投資信託を始めるコツを知ったMさん、iDeCoのサイトがお気に入りです。いくつか商品説明書も取り寄せるみたいですよ。
ご自身でポートフォリオが組めた段階で、ご連絡をいただくことになりました。
そうです!まず第一歩を踏み出しましょう!!