小川 洋平

円安はこのまま続く・・・?②

こんにちは(^^)

経営者の理想を実現させる資産形成のプロ、ファイナンシャルプランナーの小川です。

さて、今回は先回に続き「円安はこのまま続く・・・?」というテーマでお伝えします。

前回は円安になろうが円高になろうが資産は国際分散投資を行うことでどちらに転んでも守りながら増やすことができることをお伝えしました↓

今回は、為替がどのような要因で変動するのか、またそもそもなぜ為替は現在のように変動しているかについて、為替相場というものが始まった歴史から解説していきます。

1.為替相場が変動するようになってから約50年?

現在では為替は常に変動していますが、このような制度を「変動相場制」と呼ばれています。

それまでは為替は「固定相場制」が採用されており、固定相場制の名の通り現在のようにその時々によって円高ドル安、円安ドル高等と為替の変動はしなかったのです。

これは第二次世界大戦後にアメリカが世界の覇権を握り、日本円は1ドル=360円という相場が決められていました。

このとき、「金本位制」という、紙幣は一定量の金と同等の価値を持ち、紙幣「兌換紙幣」と呼ばれ、決められた量の金と交換できるという制度だったのです。

つまり、その国の通貨の価値は金に裏付けられていたのです。

しかし、1971年当時のアメリカは大きな貿易赤字の問題を抱えていました。貿易赤字とは、アメリカが海外に対して購入する金額の方が、販売する金額よりも大きくなってしまったということ、つまりはアメリカから多額のお金が流出していたことが問題となっていました。

これはベトナム戦争による影響もありますし、フランスの国策として対米輸出に対し事実上の補助金、関税のような働きになる仕組み(これが現在の消費税の始まり)をつくり、対米輸出を有利にしていたことが理由として挙げられます。

貿易赤字が続く問題点は、アメリカから多額のお金が流出してしまい、アメリカが貧しくなってしまうということがありますが、金本位制における問題点としては「金の保有量によって通貨を発行できる上限が決まる」、つまりは貿易赤字が続くと自国のお金を自分の国で発行できる通貨の量が少なくなってしまうわけです。

それを重く受け止めた当時のアメリカのニクソン大統領は固定相場制、金本位制を停止し、現在の変動相場制、管理通貨制度へと変更したのでした。

2.変動相場制において通貨価値は何で決まるのか?

さて、固定相場制、金本位制の時代はその国の通貨の価値は金に裏付けられて固定されていたわけですが、その裏付けを失ったのが1971年のニクソンショックです。

これによってそれまでの「お金」に対する常識も全く変わるようになってしまったのでした。

通貨はその国の中央銀行が無制限に発行できる

日本においては日本銀行が、アメリカにおいてはFRBが、ヨーロッパ(ユーロ加盟国)についてはECBが、それぞれその国の通貨を発行しています。

そして、国の通貨はその国が自由に発行することができるのです。

しかし、無制限に通貨を発行してはその国のお金の価値に対する信用が低下し、行き過ぎると紙幣が紙くずのような状態になってしまい、お金の信用が失墜したことにより物価が高くなってしまう悪性のインフレを招いてしまいます。

ですので、それを管理するのが中央銀行の重要な役割の一つです。

①通貨の供給量

中央銀行がその国の通貨をどの程度供給したかによって、為替に影響を与えます。

原則として、通貨の供給量を増やせばその国の通貨の価値は小さくなり易くなり、通貨の供給量を減らすことで通貨の価値は高くなり易くなります。

ただし、通貨の供給による為替相場は一国の金融政策によって変わるのではなく、米ドルや他国との通貨供給量に対する相対的な供給量が影響します。

アベノミクス以降日本では大胆な量的緩和が続けられてきていますが、各国ではリーマンショック後から同等のペースでの量的緩和が進められてきたために日本においては量的緩和によって著しい円安とはならなかったのです。

②国の成熟度

通貨価値はその国の信用の度合いによって大きく変わります。

日本やアメリカのような先進国は、政治も社会システムも安定し、国として成熟しているために信用が高くなっていますが、新興国においては急激な経済の成長が期待できる反面、国のシステムや政治経済がまだまだ不安定なことが多く、通貨価値は安くなりがちです。

ですので、「高金利」を謳って金融機関の店頭で「ブラジルレアル債」や「南アランド(南アフリカ)」の定期預金が販売されていることもありましたが、高金利はそれだけまだまだ政治経済が未熟で通貨価値の下落も大きく、金利は高くても日本円や米ドル等の先進国の通貨に換算したときに大きく値下がりしてしまうということがありました。

先進国同士の為替の変動においてはあまり大きな影響はないかもしれませんが、影響を及ぼす要因の一つです。

③経常収支

経常収支とは、 貿易収支+所得収支(第一次、第二次)+サービス収支+経常移転収支

これらの合計を言います。

貿易収支は前述の通り外国から買った金額と売った金額との収支です。

所得収支とは、外国に対する投資や貸付により得られた利子、配当と、外国から日本に対する投資や貸付によって支払った利子、配当の差額を言います。

日本においてはこの所得収支は大幅な黒字であり、昨今では貿易収支が小さくなった代わりに所得収支が大幅な黒字幅を維持しており、過去40年もの間経常収支黒字を維持しています。

世界経済のネタ帳より

原油や輸入品の物価高が叫ばれている現在においても、経常収支は黒字を維持しているのがわかりますね。

④金利差

現在の円安ドル高の主な要因として、日米の金利差があります。

現在のアメリカ国債10年ものの金利は3%近くの水準となっていますが、日本においては同じ10年もので大体0.2%程度です。

2.8%も金利が差が開いていますので、仮に為替相場に変動が無かった場合にはアメリカ国債の方が大きくお金が増えることがわかりますね?

ですので、このように金利差が開いた場合には金利が高い国債や通貨に人気が集まるものです。

ただし、アメリカの国債や通貨に人気が集中すると、ドルの価格が上がること、国債の金利も低下始めることからその金利差は縮りはじめ、ドル高も徐々に落ち着いてくることも予想されます。

など、長期的にはこのような要因で変動します。

短期的には

⑤経済政策、政権交代など

国のトップが交代した場合や、経済政策についての大きな方針の転換が行われることがしばしばあります。

このような場合、国内経済の活性化のために公共投資を積極的に行う等の方針を示した場合には国内経済が上向き、それにより株価が上昇し易いことから外国からの投資を呼び込むこともあります。

⑥戦争、内紛

現在のロシア、ウクライナの問題が起きている際のように、戦争や内紛によって為替が変動することがあります。

この場合、基本的には株式など大きく価格が変動するリスク資産への投資が消極的になり、安全資産である国債などに人気が集まることが多くなっています。

リーマンショックや欧州債務危機の際には日本円、日本国債にお金が集中する状態でしたが、現在においてはその逆の方向になっているようです。

日米の金利差によって元々円安気味だったところに、更にロシア・ウクライナの問題によって日本はロシアからの天然ガスの輸入をストップし、日本のエネルギー安全保障の弱体化、及び天然ガスの輸入ストップによって原油にエネルギー資源をシフトせざるを得ない状況となり、原油高となっている状況で原油の輸入を増やさなければならない状況から日本の貿易収支、経常収支へのマイナスを想定して円安が加速したのかもしれませんね。

3.現在の日本はどの程度の円安?

現在は1ドル140円に迫る為替相場となっていますが、過去30年程度の平均値は1ドル=110.84円となっています。

それに対し、通常起き得る為替の変動(標準偏差1の範囲)としては13.86%の範囲で、95円~126円程度の相場の変動です。

ですので、現在の相場は平均値から大きく円安に振れていると言えます。

この水準は1998年のアジア通貨危機以来の水準ですので、過去に実際に経験している相場ではあります。

4.今後円安はまだ進むの・・・?

さて、今後円安はまだまだ加速するのではないかという不安の声もありますが、結論を申し上げれば「わからない」となります。

為替の動向を読むのは競馬の予想と同じで、どう転ぶかは専門家でも間違えることが多々あります。

ただし、過去30年の相場を見ると標準偏差1の範囲を外れて標準偏差2の範囲にギリギリ納まっている現状ですので、今後も同様の為替の動きが続くと想定されるとしたならば円安もそろそろ落ち着くとも考えられます。

ただし、ロシア、ウクライナの問題が影響し日本にとって望ましくない状態になれば更なる円安の進行も考えられまし、反対にここで問題がひと段落して収束の方向に向かえば為替はまた元の水準に戻る可能性もあります。

また、経常収支を基準に考えると過去赤字続きの米国の経常収支に対し、大幅な黒字が続いてきた日本の方が長期的には通貨高に向かっていくとも考えられます。

今回の日本の円安を受けて、「国力の低下」を不安視される声もありますが、国力と言う面では「経常収支」が示すように日本の外国からの稼ぎは世界一の水準となっていますので、国力の低下によるものではないと言えるでしょう。

ただし、世界各国が利上げに踏み切る中で日本だけが利上げできずに量的緩和を継続する方針を示しているのは日本だけがコロナ禍から経済が回復せず経済成長が停滞したままであることと、20年以上もの間デフレが続いていることから量的緩和を終了できないという事情があります。

本来、早期に景気対策を行い経済を上向かせることができれば世界各国に合わせ利上げを行うこともできたのでしょうが、それができない状況は確かに「国力の低下」とも言えるのかもしれませんね。

(どちらかと言えば経済政策の失敗と言えるでしょうが)

結論として為替がどうなるのかはわかりませんが、上記のような要因によって為替は変動しますので、目の前の変動で短絡的に捉え、安易に判断はしないようにしましょう。

円安にも円高にもどちらに転んでも大丈夫なように、先回のコラムの内容の通り国際分散投資を行っておくことが重要です。

また、今回の円安を受けて「まだまだ円安が進みます」と不安を煽り外貨建て商品販売をされている金融サービス提供者の方もいらっしゃるようですのでご注意下さい。

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