小川 洋平

【経済ニュース解説】NHKニュース5/10 ”国の借金”過去最大1270兆円 財政状況が一段と厳しく

こんにちは(^^)

「池上彰さんよりわかりやすい」を目指し、ポスト池上彰の座を虎視眈々と狙っている、ファイナンシャルプランナーの小川です。

経済記事第二弾、今回は5/10のNHKニュースにありました「日本の借金」についてです。

私が子供の頃からずっと言われてることなんですが、「日本大丈夫なん??」 「これからどんどん負担増えるのかな・・・」って心配されてる方も少なくはないのではないでしょうか。

今回はそんなテーマについて解説していきます。

記事全文

国債や借入金などを合わせた政府の債務、いわゆる“国の借金”は、ことし3月末の時点で1270兆円あまりと過去最大を更新し、財政状況は一段と厳しくなっています。

財務省によりますと、国債と借入金、それに政府短期証券をあわせた政府の債務、いわゆる“国の借金”はことし3月末の時点で1270兆4990億円と7年連続で過去最大を更新しました。

去年3月末と比べた1年間の増加額は29兆1916億円にのぼります。

背景には、医療や介護、年金などの社会保障費が膨らんだことに加え、新型コロナや物価高騰対策などとして、巨額の補正予算や予備費が計上されたことがあります。

内訳は
国債が1136兆3830億円、
短期的な資金繰りのために発行する政府短期証券が84兆4993億円、
借入金が49兆6167億円となっています。

今年度の当初予算では、35兆6230億円の国債の発行を計画しているほか、昨年度と同じ規模である5兆円を超える予備費を計上しています。

さらに、防衛費の抜本的な強化に向けて、増額分の財源として、税外収入や決算剰余金も充てていて、高齢化によって社会保障費も膨らみ続けるなか、財政状況は一段と厳しくなっています。

”国の借金” 過去最大1270兆円余 財政状況が一段と厳しく | NHK | 新型コロナ 経済影響

”国の借金”とは?

まず、言葉の意味を考えていきましょう。

ここで言う国の借金とは、正確には「日本政府の負債」の一部です。

こちらは日本政府の資産と負債を表した、貸借対照表です。

令和3年度「国の財務書類」の概要 : 財務省 (mof.go.jp)

財務省のデータがまだ令和4年度の分が更新されていなかったため、令和3年度末のものを用いて解説します。

赤枠の部分が今回「日本の借金」の金額としている部分です。

この合計が年度末において1,270兆円になったということになります。

ただ、要注意なのは「国の借金」と言っても私達国民が借金を背負っているのではなく、「日本政府」の負債の一部であることと意識しておきましょう、

「日本の借金の主役」日本国債

日本の借金の主となっている国債は、政府の赤字を補填したり、公共事業投資のために発行する債券のことです。

ここで債券の意味について解説しておきますと、債券とは「〇年後に〇円をお返しします。その間、毎年〇%の利息を支払います」という、借用書のようなものです。

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例えば、私達個人が買うことができるのは一般的にはこの3つです。

楽天証券

固定3年、固定5年、変動10年とありますが、これらは金利が固定か変動かと、満期までの年数のことです。

例えば、変動10年ですと、100万円国債を買ったら10年後に100万円が返ってきて、その間利息を受け取ることができるというものです。

そして、利息は変動ですので、その時の利率によって変わるということです。

これらは個人向け国債ですが、金融機関向けは原則として固定金利となっていて、最長で40年といったものまであります。

誰が国にお金を貸してるの??

さて、日本の借金と呼ばれているものですが、一体誰が日本政府にそんなに巨額のお金を貸しているのでしょうか?

その内訳はご覧の通りです。

breakdown.pdf (mof.go.jp)

現状、半数近くが日本銀行が保有しており、他が銀行、生命保険会社や損害保険会社、そして年金基金等になっています。

ということで、1270兆円を日本政府は子会社の様な存在の日本銀行、そして私達がお金を預けている銀行などから借りていることになります。

そして、これらの金融機関にお金を貸してるのは、一体誰でしょう?

答えは、私達国民です。

海外勢は15%にも満たないので、85%が国民から借りているということになるのです。

なので、「国の借金」の正体は、大部分が私達国民から借りているお金で、私達日本人が返してもらう権利を持っているわけですね。

国債残高が増えれば政府はお金を返さなければならず、そのお金は私達の税金からも支払われるので、「政府の借金の増加=私達の負担の増加」と考えられがちですが、実はその分返す相手は私達国民だったり、政府の子会社とも言える日銀なのです。

財政が厳しいわけではない

まずここで明確に言えることとして、「財政が厳しいわけではない」という点です。

私達は「借金は悪いもの」というように刷り込まれているので、借り入れが増えることに対してマイナスイメージを持つ方も多いでしょう。

しかし、企業経営においても同じことが言えるのですが、仮にずっと赤字が続いたとしても、借入額がどんどん増え続けたとしても、一体どうなったら企業は破綻という状態になるのでしょうか?

これは一般企業でも政府でも破綻する理由は同じです。

正解は、「お金が無くなって払えなくなったとき」です。

極端なことを申し上げますと、いくら借金が積み重なっても、例えば経営者が超大富豪で、お金を会社に貸し続けることができれば永遠に企業は存続することができます。

そして、政府の子会社とも言える日本銀行は通貨を発行することができ、そして銀行から国債を買い取っているので、理論上は永久に国債を買い取ることができます。(マイナス面についてはまた改めて解説致します)

ですので、国債の満期が来たら新たに国債を発行して返せば良く、理屈上は政府が資金調達が不可能になること、借りたお金を返せなくなってしまうということは考えられないのです。

このことは財務省が公表していることでもあり、先日退任された日銀の黒田元総裁が財務省の官僚時代に作成したものです。

外国格付け会社宛意見書要旨 : 財務省 (mof.go.jp)

財政が厳しいと言われていますが、どれだけ日本国債が安全なのかを解説していますね。

尚、この財務省のパブリックコメントについて、もう20年以上も前のものなので「そんな古いものアテになるんかい?」と疑問に思われた方もいらっしゃることでしょうが、ここで述べられている日本国債が安全な理由について何も変わってはいませんので、現状においても同じことが言えます。

財政が厳しいという表現は誤りであり、単に国債残高が増えた、要因は政府の収支がマイナスし赤字国債で補っているためであると表現すべきでしょう。

政府赤字が増えても外国から借金しているわけでなく、私達国民や政府の子会社の日銀からお金を借りているので、コロナ禍で給付金をたくさん出したりしても、私達の借金が増えて行っていると思い込む必要はありませんね。

何を考察することができるか?

「日本の借金」という言葉に、ついつい私達は「これ以上借金増やしちゃいけない」「ムダを減らさなきゃ」というように考えがちですが、本当の問題点は何でしょうか?

日本は「失われた30年」にもなろうとする経済の停滞、人口減少の局面にあります。

少なくとも財政が危機的状況ではないのですから、今注力すべきはこの大きな問題の解決と言えるでしょう。

そして、再び経済成長を始めれば法人の税収が増え、そして給与も増えるため個人の所得税や住民税、社会保険料の収入も増えることになり、結果的に税収が増える結果になるでしょう。反対に、リーマンショック時や景気低迷期には税収も激減し、また景気対策や失業者対策のために多額の政府支出が必要となります。国債残高が増加し、財政収支の赤字が続く背景には長引く日本の経済低迷があります。

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現在の日本が抱える大きな問題を解消し、経済成長により財政収支の問題も解決することが可能と考えることができますね。

ですので、私達がここで考えなければならないのは国債残高という、それ自体では特段これといった意味を持たない数値を気にするのではなく、それだけ国債残高が膨らんだ背景には何があるかを踏み込んで考え、解決策を私達自身がしっかり考えていく必要があると言えるでしょう。

また、よくこういった日本の借金問題は金融商品販売トークにも用いられます。

日本円だけで持たないというのは資産運用の基本中の基本なので大事なのですが、だからといって国際分散投資になっていない、手数料ばかりが高い商品を選んでしまわないように注意しましょう。

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