【FP対談企画第15弾】元金融マンのぶっちゃけトーク
投資が身近になってきましたが、金融機関に相談に行くと、なんかうまく丸めこまれて失敗しそう・・・なんて思っている方も多いのでは?今回は、元金融マンに集まってもらい、「ホントのところ」をぶっちゃけてもらいました。
※当コンテンツは各FPの個人的な感想です。あくまで参考として楽しんで読んで頂けますと幸いです。
【Youtube】FPが本音で語る!【第15弾】元金融マンのぶっちゃけトーク
参加者
山中 伸枝
(やまなか のぶえ)
山中 伸枝のiDeCo(イデコ)ポートフォリオ
青山 創星
(あおやま そうせい)
青山 創星のiDeCo(イデコ)ポートフォリオ
木田 美智子
(きだ みちこ)
木田 美智子のiDeCo(イデコ)ポートフォリオ
野原 亮
(のはら りょう)
野原 亮のiDeCo(イデコ)ポートフォリオ
- 今回はですね、「元金融マンのぶっちゃけ話」ということで、始めていきたいのですけれども、前職どういう金融機関に勤めていたのかということを先に言ってもらいたいと思います。まずは青山さんから先に。
- はい。青山創星です。私は日本の銀行ですね。
- 日本の銀行。
- 円の市場では非常に大きなマーケットのシェアを占めているような銀行なんですけれども、そこに勤めていました。
- 何年いました?
- 37年ぐらいになりますかね。保険の金融機関代理店にも2、3年いたんですけれども。そんな感じですね。
- 例えば、どういうお仕事をなさっていたとか、おっしゃってもらっていいですか。
- 銀行の中で銀行自体の資産を運用するというところが一番長くて、十数年間いました。そしてその後、投資信託とか個人年金保険とかの金融商品を販売したりする部門にもいました。
- 個人のお客様に?
- そうですね。金融マーケットと個人向けと両方ですが、どちらかというと金融マーケットに関係するところに長くいました。
- はい。わかりました。木田さんは?
- 私は郵便局で勤めておりました。目黒区内にある郵便局で12年。昔の言い方でいうと、特定局という小さな郵便局で、5名局でしたけれども。そこで勤めながら、ちょっと大学に通ったりしていて、それから横浜に転勤になり、横浜では25年勤務しましたので、合わせて37年、郵便局でお世話になっておりました。
- そうすると、公務員ということです?
- そうなんです。職業というと、私が知っているときには、公務員か学校の先生ぐらいしかよくわからなくて、なのでどちらかになろうと思っていたんですけれども、公務員なら、自分で働きながら、学校に行ったりとかできるなあと思って、親に苦労かけたくないと思って、高校卒業と同時に公務員になりました。
- 民営化になって会社員になったわけですね。
- そうなんです。なので、公務員でも、地方公務員や国家公務員があったんですけれども、一番間違いなくて安定しているのが国家公務員だろうと思って国家公務員を選んだんですけれども、なぜか民営化ということがおきてしまいまして、ちょっと人生、私の進む道が予想とは変わってしまいました。
- そうですよね。後半は国家公務員から会社員になったっていうことですよね。
- そうです。
- なるほど。わかりました。ありがとうございます。野原さんは?
- 僕は証券会社に6年いて、その間は個人営業ですね。その後に4年間株式ディーラーっていうのをやっていました。
- 株式ディーラーというのは?
- 会社から1億とかポジジョンを与えられて、それを自分の裁量で、自分の判断ですね、売ったり買ったりして収益を上げて会社に貢献するという仕事です。
- なるほど。私自身は金融業界に勤めた経験がゼロなんですね。なので、外側から見る金融機関というイメージしかないのですけれども、中側から見ると金融機関ってどうなんだろう。昨今、いろんな情報公開とかが求められて、金融機関こういうところが良くないんじゃないかとか、いいところはどうだとかっていうような発表があるなかで、今日はかつての金融マンが、今、いわゆる独立系と言われる商品販売をしないFPになって、何がきっかけで独立系になって、また何か違うものを目指しているのかっていうことを聞きたいなと思っています。例えば、木田さんは公務員から会社員になったんですけれども、女性の働き方からすると、公務員の方のほうが当時は、働き方の環境はよかったんじゃないですか?
- それは本当に感じます。東京は男性のほうが多かったような気がするんですけれども、まず地方から出てきて働く方がすごく多かったのと、横浜に転勤しましたら、男性よりも女性のほうが多いんですね。役職に関しましても、どんどん上がってくださいって言われて。
- ほー。そうですか。
- 女性だからって、排除されることは全くなく、どんどんやってくださいって言って くださる感じでしたので。
- 入社は昭和何年なんですか?
- 昭和51年です。
- 51年。そうすると、男女雇用均等法の前ですものね。それでも、公務員さんっていうのは、女性の働き方にしてはすごくオープンで?
- そうですね。
- 働きやすい環境?
- はい。その頃は、特定局は局長さんがお父さんで、家族みたいな感じで、お客様と接していましたし、国家公務員の研修が最初にあるんですね。その時に研修所に行って教えていただくのが、「皆さんは国民全体に奉仕する仕事をするんです」って教わるんです。
- さすが、公務員。
- お客様の幸せだけを考えて、私たちはどうやったらお客様が便利になってるとか、いい商品と向き合えてるんだろうということを考えて、話ができたんですね。それをずっと続けてきたから、郵便局は割と年齢の高いお客様が多いと思うんですけれども、そういう方に、ずっと、お客様の信頼を積み上げてきたんじゃないかなと思います。
- なるほどね。では、特定局というものをもうちょっと教えてもらいたいんですけれども。どういうものなんですか。特定局とは。
- 特定局というのは、郵便、貯金、保険、すべて商品を売っているものなんです。大きな郵便局(普通局)といいますと、貯金は貯金だけ、保険は保険だけというように分かれてしまいますから、トータルの提案というのが、なかなかしづらいですよね。だけど、特定局はお客様が、郵便に来たお客様であっても、貯金のことを聞かれたらお答えできるし、貯金を預けに来られたお客様に対して、保険を、「お客様にとっては、今は保険のほうがあっているんじゃんないですか」っていう話もできるし、トータルで話ができていたので、自然とお客様への相談の対応をしていたような気がします。
- そうすると、局長がお父さんで、家族みたいな形で、お客様にもしっかり対応しましょうねっていう時代を過ごされてきたっていうことですよね。民間になってなにか変わったのかは、後で聞きますね。
青山さんは、外側から見ると、金融機関ってどうなのっていう批判的な部分があるんですけれども、内部にいて、一生懸命お仕事されていたんだろうって思うんですけれども、そのときの思いとか、会社の雰囲気とか、実際どういうものだったんですか。
- 私の場合、さっき申し上げましたように、金融のマーケットに結構長くいたんですね。そこにいて、資産の運用を自分でやって、その後投資信託とか販売の部分もやっていました。だから投資信託ってどうやって運用されているかとか、どれくらいそれで儲かるものなのかとか、すべてわかっているわけですね。そのうえで、お客様にそれを売るときに、本当にこんなに手数料もらっていいのかとか、これをそのお客様にお勧めしていいのかとか、それがすべてわかってしまうんですよね。多分、一般の人から見ると、銀行員って、そんなにみんな色がついていなくて、金融のプロで資産の運用だって強そうだってみえると思うんです。でも実際はそんなことはなくて、資産の運用とかについてちゃんと知っている人ってほんの少ししかいない。私は、たまたまそういう部門にいたのでわかっているんですけれども。「投資信託買いたい」ってお客様が窓口に行って説明を受けると、質問を何してもなんかものすごいプロフェッショナルに見える人がちゃんと答えてくれるんで、「安心だなあ。これは自分のためにちゃんとやってくれているんだなあ」って思う方が多いんじゃないかと思うんですが、実はそうではなくて、こちら側(銀行側)にいる人って、ほとんど素人なんですよ。
- 正直、当たり外れが相当ありますね。
- そうなんです。
- たまたま、青山さんのように、本当にプロの方に当たればいいけれども、そうじゃなければ、ほとんどが素人同然?
- そうなんです。ただ、ちゃんと答えられるのはなぜかというと、すごい研修をするからなんです。徹底的に研修をするんです。
- なるほどね。こうきたらこう言わなきゃいけないよみたいな話をしているということですね。
- Q&Aを。私はそれを教える立場にあったんですね。販売員にそれを教育する立場にあったんで。私の販売員は完璧でした。(笑)パンフレットに書いてあったことについて何を聞かれても完ぺきに答えられるようにしていたので。お客様から見たら、「ああ、すごいなあ」って思うはずです。
- でもってことですよね。言われたことしか答えられないよってことですね。
- 売っている自分たちの中には投資していない人が結構多いんですよ。なぜかというと、倫理規定っていうのがあるんですよ。その中で金融機関の職員は、リスクをとるようなことはしてはいけないってなっているんです。
- でも、お客様には「ある程度リスクをとりましょうね」っていうわけですね。ものすごい乖離がありますよね。青山さんがお勤めだった時代は、いつからいつですか。昭和?
- 昭和54年に入りまして、最後に辞めたのが2015年ですね。
- そうすると、投資信託も正直ゴミ箱のようだったと内部の方に形容されることがあるんですけれども、そういう時代も見ていらっしゃったということですね。結構その時代もいらっしゃった感じですかね。
- そうですね。販売しているときは、そういう毎月分配型全盛のような感じで。
- 毎月分配はまた後でお話を聞きたいんですけれども、野原さんはどうですか。証券ってどう? 中身は?
- 僕が入ったのは2001年の小泉さんのときなんで。
- 割といい感じに上がってきたときですね。
- そうですね。ちょうど。ただその後りそなショックまで、同時テロもありましたし、良くない時代だったんですよね。ただ、ラッキーだったのは、先輩方で、途中入社組で、旧メリルリンチの人たちが、わっときたんです。当時、外資系というのは、僕ら株屋からしたら、未知の領域なんですよ。その人たちが入ってきたことで、今でいう長期国際分散投資みたいな世界がその時にもうあったんですよ。それが今思えば、すごいよかったなって思います。
- そうですよね。私も一番最初に長期積立分散投資に出会ったのは外資ですものね。外資の考え方を見て、日本にないのかなって調べたんですが、日本には全然ないんだってショックを受けたことを覚えています。ということは当時の野原さんからすると、証券の中にいる人にとっては、長期積立分散投資っていうのは、本当に知らないこと? 初めて聞くことですか?
- まさにそうで、当時は中国バブルで、コモディティとか、原油とかああいうのがすごかったんですけど、今はさっき出てきた毎月分配型を、方法としてはよくないですけど、再投資していた営業マンってまわりに僕ぐらいなんですよ。お客様は分配金が出たら、手元にもらっちゃうじゃないですか、普通は。それを買ってもらっていたんですよ。意味ないんですけどね。
- 意味ないですよね。複利にならないものね。それじゃあ。
- 意味ないんですけど、一応、そういう形で抵抗はしていたんです。
- なるほどね。どれくらいの金額? いわば株でしょ。基本的には?株の売買の営業ですよね。
- 基本、株と、後、投資信託と、債券とか仕組み債とか、そういったものです。
- 結構、いろいろなものがあるんですね。
- もう、いろいろ。ヘッジファンドも全部やりましたし。
- 電話で「今日これが上がりそうなんで、一本いきましょうか」みたいな話だったんですか。
- そうですね。株はそんな感じです。後は募集するものに関しては、基本的には外に出て、お客様と直接会って、話しましたね。
- 例えば、株式投資とかって、外に出て、営業かけて、売れるものなんですか。
- あ、売れますね。結局、翌日の注文で、「いくらでもいいよ」っていう寄付注文とか成行注文とかいうんですが、ああいう注文をもらうのって、すごく楽になるわけなんですよ。だから外に出て、明日の注文を受注して、翌日注文を出すという流れです。
- 例えば、特に株なんか、短期で売買となったときに、今日注文を受けても、明日買って、いつ利益が出るかなんてわからないものじゃないですか。それでも、やっぱり売れるんだ?
- そうですね。元々そういうお客様って方もいますし、こっちが「こういうものですよ」って教えていく場合もありますし、やり方次第ですね。
- でも、損したときは、どういうふうに言うんですか。
- 「すみません」(笑)
- 「すみません」。なるほどね。
- 誠心誠意謝ります。
- 謝る?
- 謝ります。
- なるほど。そうなんですね。ちょっとまた、いろいろ教えてほしいんですけれども。場があたたまってくると、もうちょっと口がなめらかになると思うんで。
木田さん、さっき民営化になってから、違いとかありますか。売るものとか変わってきたでしょ。郵便局って。
- 私が、最初のスタートの(昭和)50年代の頃は、定額貯金という、すごい金利のいい商品がありました。平成2年が最後のいいところだったんですけれども、8.648%の利回りの商品がありましたから、みんなほとんど中心をそこにもっていく感じで。お客様にはリスクがないし、貯金して貯まることはお客様にとってすごくいいことなので、お客様には、勧められてのデメリットって、全くなかったんですね。2005年から投資信託がスタートしたんですね。
それで、最初、私は担当者になりたかったので、それは限られた局でしか取り扱いがなく、最初は全体の中の1局とか。地域によっては3局とか。60局以上ある中で、1~3局。それぐらいしかなかったんです。小さいところではできなかったんですね。それになるために、貯金担当営業インストラクターという役職に立候補して、スタートしたんですけれども、スタートの頃は、まだ民営化されていない頃なんですけれども、そのときには、お客様のリスクをしっかり絶対にこの内容を話しなさいということと、30%ルールというのがありました。、お客様の財産の30%を超えて勧めてはいけないというようなルールがあって。
※営業インストラクターは連絡会単位で、貯金担当、保険担当各1~2名います。貯金担当の営業インストラクターは連絡会内の各郵便局の販売指導を行います。キャンペーン企画を立てたり、投資信託販売や年金相談会のサポートを行っていました。
- そうですよね。考えていけばね。
- お客様にお話をしたら、「やりたい」っていうお客様がありまして、財産を書かれているんですけれども、「これを全部やる」と言ったお客様がいらっしゃったんですね。
局長さんと必死にお止めました。30%におさえていただいて。後で本当によかったなと思うのが、リーマンショックとかがあって、そのときにちょっと落ちたりしたときです。そういうときに限られた範囲でできたなって思ったところです。もし全財産を預けていたらショックも大きかったことでしょう。
投資信託販売スタートのときは、他社さんは手数料の高い商品を売るとお聞きしますが、売るときに手数料のことを誰も一切考えていなくて、お客様が損しない商品はどれだろうというか、お客様が初めての方が多いので、そういう方に販売は怖いんですよ。自分自身にそんなに経験がなくて、自分も投資に対して怖さを持っているので、お客様にリスクをとってもらい手数料のため商品を購入してもらうとかは誰も思っていませんでした。なので、一番売れたのが野村世界6資産分散投信分配コースっていう分配金がたくさん出る、バランスファンドで、すごいリスクをおさえられているんですね。結果的にはそれがすごくよくて、お客様に喜ばれたと思うんです。
ただ、今、民営化になって、販売している社員さんにどんどん知識がついてきましたから、それと求められている金額の目標額があるので、積立NISAとかもありますけれども、まとめてたくさんドーンと預けてもらってほしいなっていう。
- 変わってきているんですね。
- そんなふうに考えて販売している方も結構いらっしゃるようなので、その辺は分散投資、長期投資、長期分散積立っていうのをこれからやっていただけたらいいなって思います。
- 民営化になってくると、利益というものをどうしても追求しなくてはいけなくなっちゃうから、その中では売上目標とか、結構厳しくなってきた?
- 厳しくなっているみたいですね。
- 当時は、例えば、郵便局で学資保険とか当たり前だったし、利益が決まっているから、お勧めして、誰にも怒られないものだったと思うんですけれども、大きな変化ですよね。じゃあ、勤めている方たちにも意識的な変化もあった感じですか。昔、郵便局に勤めていた局員の方たちとは、今はだいぶ違う?
- 今、販売方法が変わってきているので、違う気がしますね。
- お客様も長年のお付き合いで、郵便局だから安心っていうような刷り込みって、どうしてもあると思うんだけれども、国家公務員の郵便局の時代とは、いわゆるお父さんが局長でという時代とは違うってことは、お客様も知らなきゃいけないですよね。もう一金融機関として、ちゃんと付き合っていくというスタンスがいるでしょうね。きっと。
- 昔から長く働いている方は、そういうお客様重視の視点をしっかり持っていると思うのですけれども、若い方は目標重視っていう点を結構厳しく言われて、そちらに向かっていらっしゃる方もいる気がするので。
- 確かにね。組織にいればね。それはしょうがないところもあるんでしょうね。民営化というところで、多分、局内、変わっているんだろうなあっていうのは、すごく興味があったので、お聞きしたんですけれども。
青山さん、銀行で毎月分配型がメチャクチャ売れて、金融庁がメチャクチャたたいて、もう駄目だよっていったのはあるわけですけれども、売り方のロジックって、相当研究されていたんじゃないかなって思うんですけど、あれだけ売るのに。
- そうですね。別にロジックで売るとか、そうではなくて、まず、商品のラインアップとして、これは各銀行によって異なると思うんですけど、私の勤めていたところでは、毎月分配型の投資信託が必ずあって、それからTOPIX連動型のようなものがあったり、後は、オーストラリアの債券とかで運用するなど、結構金利が高い、その代わり、外貨のリスクがあるといったもの。
そういった何種類かのラインアップがあって、その中からしか銀行員って、売れないんですよね。さっき、ちょっと銀行員にとって、不名誉っぽいことばかり言ったかもしれないですけど、実は銀行員って、真面目な人が多いんですね。真面目な人でお客様のためにどうしたらいいかって考えながら売っている人が大半なんですよ。そうなんだけれども自分のところが扱っている商品しか売れないので、本当はそのお客様にとってはあっちの金融機関のあれがいいっていうふうに自分が思っていても、それを勧めてしまうわけにはいかないという事情があるんです。
- なるほどね。
- そういう点はあるんですよ。ですから、その中から選んで売っていく。そして、その毎月分配型ということに関しては、私が売るときは、毎月分配型はお勧めしていなかったんですね。私自身としては。
- けど、銀行としては、結構お勧めしていたんでしょ?
- そうです。なんだけれども、お客様のほうからは、逆に、どうしても欲しいっていう方も多いんですよ。それが実態だったんです。なぜかっていうと、高齢化が進んできていて、それなりの資産を持って運用している人っていうのは、年金をもらいながら運用して、それを取り崩しながら運用していく。そういうことをしたいっていう人が結構いるんですね。そういう人にとっては、毎月分配型って、それなりに価値があるっていうか、利用の方法としては価値があるやり方ともいえるんですよね。
- 確かに、どっちみち取り崩していくんだから、いいじゃないかっていうのはわかるんだけれども、それも基準価額が上がってこその話であって、結局、普通分配か、特別分配かって話の中で、特別分配で、自分の身を削って出しているわけじゃないですか。でも、普通と特別って言われたら、普通の人は、特別のほうがいいなって思っちゃうわけでしょ。なんかお客様にニードがあるから、商品つくりますとか、おっしゃるのはわかるけれども、お客様ご自身がそれしか知らなかったら、そうなっちゃうよね。
- そうですね。それはやっぱりよく説明してあげて、きちんと理解してもらったうえで、判断してもらわないといけない。その説明が足りないっていうのは、多分あるのは、確かだと思います。それでも、いくら説明しても「私はそれでやる」っていう人も中にはいるんですよ。そういう人にとっては、今、ネット証券の一部では、取り崩しながらやるっていう方法がとれますよね。設定の仕方によって。そうすれば、ちゃんと利益が積み上がっていないのに、タコ足食って分配しているような投資信託の毎月分配型をやるのではなくて、しっかりと貯めて増やしてくれてる投資信託に投資したうえで、定期的に取り崩していく。そのほうが絶対にいいんですよね。
- そうですよね。選択肢がないというのは、お客様にとっては不幸だし、行員にとっても不幸ですよね。私もこの10年ぐらいの間に結構、銀行の行員さん向けとか、証券マン向けとか、保険営業マン向けのいわゆるプロ向けのセミナーってかなりやっているんですけれども、一番感じるのは、人はいい。ものすごくいい。誰も世間がいうように、騙そうと思って、悪い商品を売っているわけではない。それはすごくわかるんですけれども、外を知らないから、それだけがいいと思っちゃうってところが、やっぱりまずいなってすごく思うんですよね。真面目なだけに、言われたことを一生懸命やってしまう。結局それが選択肢がない中で、やっちゃうのがねえ。厳しいなあと。
- 幅広い視野を持ってというようなところまで、教育ができない、できていないんだと思います。
- 正直、銀行からしても投資の分野って、新しい話ですからね。
- そうですね。
- というところで、証券マンなんですけれども、私がこの十四、五年、独立して、いろんな証券会社とも付き合うんですけれども、証券マンがやっぱり、ぶっちゃけ、長期積立分散投資から一番遠いよね?
- そうですね。
- 頭にないよね。今でも。
- 結局、個人営業のメインのお客様って、ある程度の年齢がいった方ですから、きっとそういう部分はあると思いますね。
- そうだよね。やっぱり、買ってもらって、売ってもらって、その繰り返しをして、手数料をとっていくっていうのが、証券会社のビジネスモデルだから、それは必ず出ちゃいますよね。
- ただ、今は直近の状況はわからないですけれども、多分、「株で手数料をあげる」、「回転売買」って言っちゃいけないのかもしれないですけど。
- まあ、ぶっちゃけだから、いいんじゃない。
- あげるっていうのと、「投資信託で残高を積み上げる」っていうのと思考回路を分けているはずなんですね。そういうふうにしていたんで、多分、一般的にもそういうふうになっていると思うんですよ。9時から15時までの相場がやっている間は株、それ以外、昼休みと夕方以降は、投資信託で。多分、全然違うと思うんですよ。
- 正直、株式の売買だったら、お客様が損しても儲かるもんね。証券会社が。
- そうです。
- 損しても儲かるビジネスモデルと、投資信託みたいに、お客様の残高が積み上がって信託報酬。要は、お客様が儲かったら、こっちも儲かるよっていうビジネスモデルと相反するところが一緒になっているのが証券会社だと思うと、すごい違いますよね。
- 証券会社の営業マンからしたら、早く損切りしたほうがいいってわかったうえで、提案しているっていうのはあるんですね。それを中途半端にかじっちゃうと、損したくないから、売らせることはできないっていう人が、やっぱりいっぱいいたわけですよ。証券マン以外の人がですね。それはそれで、危険なことで。そういう損失に慣れてもらうっていうのは、すごい大切なことなんですよね。
例えば、何か想定外のことが起こったときに、「想定していなかったでしょ」では、すまないわけですよね。だから、損失のリスク許容度を上げてもらうっていうのは、幸か不幸か、いいか悪いかは別にして、証券会社のお客様は結構、耐性があると思うんですよね。
- 個別株をやっている方たちは、確かに耐性はありますよね。株式、いわば生株のお客様と投資信託のように割安も割高もそもそもないものを一緒にして売っているっていうのも、またこれも難しいんじゃないのかなってすごく思うんですよね。だって、株を売るのと、投資信託を売るのでは、ロジックというか、考え方が違うし。
野原さんが、証券マン時代に、これは嫌だったなあ、これは絶対にお客様に悪いことしたなっていう後悔あります? 敢えて懺悔するとすれば。
- 一番印象にあるのは、月末で自分の手数料の数字が見えていて、後、数万円でクリアするっていうとき、ありますよね。そこです、やっぱり。そこで、無理やり電話して、投資信託にしても、株式の売買にしても、そういうの、やっぱりきついですよね。ノルマというか、自分の数字とお客様を天秤にかけちゃうっていうのがねぇ。
- やっぱ、それはあった?
- ありましたね。
- なるほどね。そうすると、お客様の顔を見ながら、誰に泣き落としに行こうかなって考えるわけ?
- そうですね。
- なるほどね。木田さんは、何かありました? 郵便局時代に、これは良心の呵責に耐えられないみたいな。
- そういうことはなくて、商品に自信を持っていましたし。
- 結果、違った結果になったってありませんでしたか。
- 平成2年の頃にですね。お客様に終身保険とか、そういったものをお勧めしたときに、終身年金がその頃ありましたので、そのときにそのお客様がおっしゃったのは、「自分は定期預金の金利で賄えるだけの資産を築いているから、老後はそれで大丈夫なんだ」とおっしゃっていてるお客様がいらっしゃって、その方は、そのときの1年定期は4%だったんですね。だから、100万円ずつ毎月預けておけば、毎月4万円ずつ利子が入ってきて、それで老後資金に充てられるから、自分は大丈夫だとおっしゃったお客様がいらっしゃったんですよ。そのときに反論というか、自分の中では、ああ、そういう考え方の人もいらっしゃるんだなと思っていたんですけれども、その後、金利がどんどん下がってしまいまして。
- そうですよね。4万円なんかもう見込めないですからね。100万円が0.01%だったら、老後は全然無理ということですよね。
- あのときの保険の予定利回りは、5.75%ありました。そのときに終身年金を一括払いで満額入られたご夫婦の方がいらっしゃったんですよ。その方はすごいですよね。3%複利で増えていく終身年金。すごいですよ。それに入った方と、一年定期で金利を自分の年金にプラスしていくとお答えになった方の今の違いっていうのがものすごいなって思って。そのアドバイスする立場としては、そういうこともお客様に伝えられるようになっていたら、その方も一年定期やめていたのかなって。
- それ、ありますよね。今しか見ないで、アドバイスするのと、将来まで考えてアドバイスするのって、絶対違うと思うんですよね。現場にいるとそういうのがなかなか。やっぱり数字もあるだろうから、今いまの手元の商品の中で、どうやって当て込んでいくかっていうのが、なっちゃうんだろうなあ。そう思いますね。
どうですか。青山さん。もし、懺悔するとすれば。あのとき、あんなことしちゃったなっていうの、ありませんか?
- 私が、本来60歳、あるいは65歳まで勤めあげることができるんですけれども、それよりも数年早く辞めたんですね。その辞めたきっかけというのは、いままで売っていた商品というのが、本当にお客様のためになっているのだろうかということと、お客様自身がそういうものについて、知識があまりにもなさすぎて、銀行員のいうことを聞くと、はっと後光がさしているような感じで、信じ込んでしまうと。そういう状態はこのまま銀行にいたら、大変なことになっちゃうんじゃないかと思ってですね。早めに辞めて、逆の立場に立って、私がいままで金融マーケットにいたんで、その知識を皆さんに知ってもらったらいいなと思ったのがきっかけなんですね。例えばですね。さっき言った高金利のオーストラリアなんかの債券に投資するものって、すごい為替のリスクがあるんですね。
- 流動性もだいぶ違いますよね。
- そうなんです。それをちゃんと理解できないで、金利が高いということだけで買ってしまう人。どんなに私が説明しても、やっぱりわからないってなっちゃう人も中にはいるんですね。そういうときは「TOPIX連動型を半分ぐらい入れておきましょう」って言ったんですけれども、結局駄目で、オーストラリア債券のそれだけにしちゃって。でも、結果としては円安になってよかったんですけれども。でも、それってどうなんだろうっていう思いが募っていったんですよね。
- フリーになって、いかがですか。かなり自由にやりたいことをやれていますか。
- そうですね。何も背負っているものがないので。もう本当に自由にやれて。どんどん私の知識を出して、みんなに賢くなってもらおうということで、もう楽しくてしょうがないです。今は。
- そろそろまとめの時間なんですけれども、一方で、看板がないフリーの人間を一般の方がどこまで信頼できるのかっていうのは、また違う観点で考えていかなくてはいけなくって、私たちがやりたいことをやっている。要は、金融機関にいたときにできなかったことをやりたいから、今フリーになっているって、皆さんだと思うんですけれども、それは一方で、自分たちに看板がないだけに、お客様に信頼を勝ち得なければいけないというところもあると思って、野原さんは、自分自身、課題も含めて、いわゆるフリーで、商品販売をしないファイナンシャルプランナーとして、どういうことをやっていきたいとかありますか。
- 昔からやりたかったことを今やっているので、特にはないっていえばないんですけれども。やはり守ってくれているものがないですから。
- 会社というね。
- そうです。何かあったときに全部自分がかぶらなければいけないですね。それがあるので、自分が思っている以上にちゃんとやるっていうことで、お客様を自分が守る必要があるっていうのは、やっぱり感じますね。
- 後は、利益のポイントが、ガラッと違うじゃないですか。さっき言った数字合わせ、月末に自分の数字が上がっていないときっていうのは、自己本位の数字合わせで、お客様の利益じゃなくて。フリーになってくると、自分の利益はそれこそさっきの株なのか、投信なのかなんだけれども、フリーの私たちになったら、私たちの利益って、お客様の利益の分配だから、お客様が利益が上がらないと、利益が上がらないじゃない。そういう視点の違いって結構あるんじゃないですか。
- いままでは、特定のお客様に最終的には頼っていたんですよ。
- 数字をもらうために?
- ええ。今はそうではなくて、数を増やすってことですから、逆にすごい気持ちが楽になって、自然に、いっぱい人がいれば、それだけこっちのチャンスも増えるわけで、何も無理して営業する必要はないってことで、すごい楽にはなりましたね。
- 証券のときの利益率って、すごかったでしょ?
- すごいですね。こんなにもらっていいのってぐらい。
- どのくらいもらうの?
- 普通に20代で、1000万円届くぐらいまでいく人もいたぐらいですから。
- それって、やっぱりお客様の売買でしょ。
- そうですね。
- それって、お客様の利益じゃないところが、またちょっと苦しいところですよね。
- そうなんですよね。
- お客様が、利益が出たその分け前としての1000万円だったら、すごく嬉しいけれども、お客様が損しても1000万円、得しても1000万円というところは、ちょっとね。
- そうですね。
- 思いますよね。そういう意味では、本当にお客様のためを思って、言える立場になったフリーっていうのは、仕事はやりやすくなりました?
- やりやすいですね。やっぱり。積み上がっていく感覚っていうのが、すごい大事だと思うんです。ビジネスは全然違うと思うんで。ビジネスと貯蓄は違うっていうのを、普通にできるようになったのは、大きいですよね。
- ということは、お客様と喜びを分かち合うようなイメージが、今のビジネスモデルになっていると。
- はい。
- なるほどね。
木田さんはどうですか。フリーになってみて。後ろ盾ってね。郵便局ってすごいでしょ?
- そうですね。本当に信用力で、外歩いていて、ポスティングとか、キャンペーンとかなんかしていても、「ご苦労さま」っていつも言われたり、本当にありがたかったんですね。長い間、お客様にもお世話になりまして、すごく感謝の気持ちでいっぱいなんですよ。いままで自分が経験したり、学んだことで、役に立てることがあったら、私なんかでよければ、相談していただけたら、ちょっと嬉しいなって思って、独立しています。
それから、投資信託を販売し始めたときに、大きな普通局に応援に行かされたときがあったんですよ。「ちょっと成績が伸びていないから、行ってください」みたいな感じで。ロビーでお客様とお話をしたときに、郵便局に来られるお客様本当に安全志向の方が多くてですね。「投資信託」のお話をすると、「そんなもの、私はしませんから」みたいな、そういった誤解をされている方もいっぱいいらっしゃるんですよね。社員もそうなんです。
販売をしている人は教育を受けて、わかってくるんですけれども、それまで貯金と保険しかやってこなかった社員は、ほとんど投資に対して、あまり。「そんなリスクがある商品を私はしません」っていうような社員であってもそういう方が多かったり、せっかく社員で、投資信託販売担当になっても、「そんなの私は売りたくない」って一切、話さない方もいるんですね。投資信託って、これからの老後とか、これから生活を豊かにするのに、とても役に立つ商品だと思っているんです。けれども、それが最初に入るところが、なんか怖いとか、他の人が聞いた情報なんかで、怖がって入らない人がたくさんいらっしゃって、そういう人に最初のステップを乗り越えるお手伝いがしたいなっていうふうに思っています。
今はそういう方を中心に。積立NISAとか、確定拠出年金を最初のステップとして、入っていただけたらいいなと思って、今はやっております。
- 私はやっぱり、何がプロかって考えたときに、お客様と目線が一緒だったら、プロじゃないと思うんですよ。お客様よりも数歩先を見て、そこを体感しているからこそのプロだと思うんですよね。そうすると、金融機関の古い人たちって、いまでも金利が昔のような8%とかの時代を引きずっている、亡霊をそのまま見ている人たちが、金融の中にいると、お客様のアドバイスを絶対に間違えるなと思っていて。さっき、青山さんが高齢の方がいらっしゃるって、金融機関って今いまお金がある人を見ちゃうから仕方がないのかも知れないのだけれども、実は資産形成って、ポイントが違いますよね。
多分、今フリーになって、目線が違ったと思うんですけど、青山さん、今、どこを目指していらっしゃるんですか。フリーとして。
- そうですね。特に年代を区切ってお客様にしているわけではないのですけれども、セミナーなんかをやると、結構、若い人からお年を召した方まで、幅広い方が参加していただいています。現状。但し、いろんな人がいて、すぐに儲けたいっていう人も結構いるんですよね。すぐに利益を上げるにはどうしたらいいかとか。何を買ったらいいかとか、そういう質問はよくきますよね。それと、逆に安全にやりたいという人もいて。両極端なんですね。両極端の方々もいて、それぞれの人たちに適したアドバイスをやらないといけないなっていうのをすごく感じてました。
それぞれに合わせた投資の方法ってありますよね。国際分散投資がいいのか、あるいはアクティブ投資信託がいいのか、アクティブに自分自身で運用するというのがいいのか、そういったこと、いろんなことに答えられるように、常に自分自身をブラッシュアップしていかなければいけないなっていうのを、ものすごく感じるようになっています。
- そうですよね。今日は、元金融マンということで、いろいろと言いにくいことも言っていただけたんじゃないかなって思うのですけれども、私たちの立場、いわゆるフリーのファイナンシャルプランナー。後ろに金融機関がないFPというものを、まだまだ知っていただいていないので、先ほどの信用ってところもそうだし、私たち自身が持っている覚悟っていうのも、アピールしながらね。ぜひ、お客様に寄り添っていければいいのかなと思うところで、そろそろ。とりあえず第一弾は終わりにして、また、もっと言いたいことがあったら、第二弾、第三弾ってことで考えていきたいと思いますので、とりあえず今回はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。お疲れ様です。
- ありがとうございました。
対談動画
今回の対談に参加された皆さん
山中 伸枝
(やまなか のぶえ)
山中 伸枝のiDeCo(イデコ)ポートフォリオ
青山 創星
(あおやま そうせい)
青山 創星のiDeCo(イデコ)ポートフォリオ
木田 美智子
(きだ みちこ)
木田 美智子のiDeCo(イデコ)ポートフォリオ
野原 亮
(のはら りょう)
野原 亮のiDeCo(イデコ)ポートフォリオ