自動移換ギリギリでもiDeCoをスタートさせる裏技

この記事は2025年3月の情報を元に更新しています。

ご相談者様

【年齢】40歳

【職業】広告会社勤務の会社員

【性別】女性

相談しようと思ったきっかけ

6ヵ月前に転職しました。前の会社では、企業型確定拠出年金に加入していたのですが、退職後、何の手続きもしていません。どのように手続きすればよいのか、調べていたところ、前田さんのブログにたどりつきました。ブログには前田さんの経験談なども書かれていて参考になったので、今回、相談をお願いしました。

相談内容

今の会社には、確定拠出年金の制度はありません。前の会社を退職して6ヵ月以内に確定拠出年金のお金をiDeCoに移さないといけないと聞きましたが、もう6ヵ月経過してしまいました。至急iDeCoに移さないといけないと思うのですが、どうすればよいでしょうか?

ご相談でお話しした内容

ご相談者のおっしゃる通り、転職後、6ヵ月以内に資産をiDeCoに移換する手続きを行わなければ、その資産は、国民年金基金連合会に自動移換されます。移換期限は6ヵ月以内と説明されるのが一般的ですが、厳密には、「企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6ヵ月以内」です。

ご相談者の場合、退職日が2019年10月31日なので、資格を喪失した日は2019年11月1日です。その翌月(2019年12月)から起算して6ヵ月以内なので、2020年5月末までに手続きをしないといけません。相談当日は、2020年4月20日だったので、あと1ヵ月です。

自動移換されたとしても、その資産はご相談者のものには変わりありませんが、自動移換される時や自動移換されている間は手数料がかかってしまいます。運用もできませんし、通算加入期間にも含まれません。

60歳から老齢給付金を受取るには、確定拠出年金の加入期間が通算して10年以上必要ですが、10年に満たない場合は、受取年齢が61歳以降にずれます。そのため、自動移換されると年金の受け取りが遅くなってしまう可能性があるのです。デメリットしかありませんから、自動移換される前に移換の手続きを行っておくことが大切です。

企業型確定拠出年金からiDeCoに移換する書類は

 ご相談者には、事前にiDeCoの資料請求をしていただきました。企業型からiDeCoに資産を移換するにあたっては、まずは資料を取り寄せるところからはじめます。ご相談者が取り寄せた書類には、下記の4種類の書類が同封されていました。

①確認書
iDeCoの制度やルールについて理解し同意しましたという確認書類

②個人型年金加入申出書
iDeCoの申込書

③事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書
iDeCoの加入資格があることを勤め先が証明する書類

④個人別管理資産移換依頼書
企業型からiDeCoへ資産を移換させる書類

ここで、ご相談者は③の書類について、会社の印鑑が必要ということを知り、「ちょっと間に合わないかもしれません」とおっしゃいました。なぜなら、新型コロナウイルスの影響で仕事は在宅ワークになり、出社するのは不定期になった上、本社は地方にあり、押印依頼をして戻ってくるまで1〜2週間かかるからというのです。

移換手続き期限はあと1ヵ月ですから、今の状況だと手続き期限に間に合わず、自動移換されてしまう可能性があります。そこで、会社の押印を待たずに処理をすすめることにしました。

そもそも、同封されている書類は、2つの手続に分けられます。

 ①確認書(共通)

②個人型年金加入申出書
③事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書
④個人別管理資産移換依頼書

②と③は、iDeCoの申込書、つまり、毎月積み立てをする場合に必要な書類です。④は資産をiDeCoに移換するために必要な書類です。

このうち、6ヵ月以内に手続きを行わないといけない書類は④です。②と③は積み立てをしたい人が送付する書類なので、必ずしも今回返送しないといけないわけではありません。資産のみ移換し、iDeCoの積み立てを行わないのであれば、①と④の書類を返送すればよいのです。

そこで、②と③については、準備が出来次第返送することにします。なお、資産のみ移換して積み立てを行わない人のことを「運用指図者」と言います。運用指図者になったとしても、毎月手数料はかかりますし、老後の生活を考えるとiDeCoで積み立てを行わないという選択肢はありません。②と③も忘れずに手続きしておきましょう。

移換金の運用について

次に、移換金が運用されるまでの流れについてです。

個人別資産移換依頼書を返送

1〜2ヶ月後

「個人型年金運用指図確認通知書」が届く
「口座開設のお知らせ」/「インターネットパスワード設定のお知らせ」が届く

ウェブサイトからログインし、運用商品を指定する

書類返送後2〜3ヵ月後

資産が移換され運用スタート

運営管理機関によっては、個人別管理資産移換依頼書の返送時に移換する資産をどの投資信託で運用するかを指定できる移換時配分指定書を提出できるところもありますが、ご相談者が資料請求した運営管理機関では、その書類はありませんでした。従って運用商品選びについては、IDとパスワードが届いたあと、自分の口座にログインして別途行う必要があります。ログインできれば、資産が移される前でも商品を選ぶことができます。

今回は、IDとパスワードのはがきが届いたらすぐに運用商品を設定できるよう、ご相談者と一緒に商品を選んでおきました。

また、会社の押印が戻ってきたらすぐに書類を返送できるよう、個人型年金加入申出書についても書類を完成させました。また、どの投資信託で積み立てを行うか指定する配分指定書が添付されていたので、それも完成させました。

相談したからこそ前に進めました

相談後、ご相談者からは、このようなご感想をいただきました。

返送された書類を別々に送付することで自動移換を避けられることを知れたのは、相談したからこそ分かったことです。運用商品も何を選んでよいか全然分からなかったのに、納得できる商品に決めることができました。

自分で手続をするより、何百倍も早く手続きを済ませることができ、前田さんに相談して本当に良かったです。返送期限ギリギリだったにもかかわらず、丁寧に対応していただき、ありがとうございました。

自動移換は、自分の資産を無駄に減らすと言っても過言でありません。しかし、多くの人の資産が自動移換されたまま放置されています。今回、ご相談者は、自動移換を避けるため勇気を出して相談に来られたわけですから、その行動力はすばらしいと思います。これから、一緒に老後のための資産形成をしましょう。今後も困った時はお手伝いさせていただきます。

2024年12月より、会社員がiDeCoに加入する際(移換も同様)にかならず必要だった事業主証明書が廃止になりました。これにより、会社員のiDeCo加入が非常にスムーズになりました。加入または移換を検討されている方にとっても利便性が大きく改善されました。iDeCoは税制優遇を受けながら資産形成ができる「権利」でもあります。くれぐれも自らその権利を放棄されることがないようにしましょう。(FP相談ねっと代表山中伸枝追記)

この記事を書いた人
前田 菜緒

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