2020/2/14更新
ご相談者様 DATA
【年齢】 30代前半
【職業】 会社員
【性別】 男性
【家族構成】 配偶者、子供1名
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
確定拠出年金を導入している会社に転職しました。転職先の先輩が、会社にはマッチング拠出があるからやってみたらと教えてくれたのですが、その先輩も掛金を増やせるくらいしか知らないみたいです。
家族の手前、適当にやるのもどうかと思っていたところ、確定拠出年金相談ねっと(現FP相談ねっと)を知り、詳しい説明を聞きたいと思いました。
ご相談内容
お子さんも生まれ、家族のために少しずつお金のことを勉強していこうという気になられたご相談者さま。
ご夫婦の将来のためにも少しずつ貯蓄したいとのことで、確定拠出年金のマッチング拠出に興味をもたれ、書籍やWEB上ではいまいち良くわからなかったので、一度きちんとお話を聞きたかったとのことでした。
ご相談でお話しした内容
マッチング拠出とはなにか?
ひとことでいうと、「 会社が出してくれる確定拠出年金の掛け金に加えて、給与天引で自分のお金を積み増せる制度 」です。
上乗せするかどうかは、あくまで本人の希望ですが、老後資金を準備する制度としては、とても有利な制度です。
というのも、加入者掛金は、給与とみなされないため非課税になるからです。
ただし、上乗せできる金額には上限があります。
会社の掛け金と合計して、上限が月55,000円です。
※会社に厚生年金基金など他の企業年金があれば27,500円が上限となります。会社によりますので会社に確認してください。
かつ、マッチング拠出分の金額が、会社の掛け金を上回らない金額までとなります。
1、事業主掛金 + 従業員マッチング拠出金 ≦ 55,000円/月
※他の企業年金がある場合、事業主掛金 + 従業員マッチング拠出金 ≦ 27,500円/月
※大手企業は独自の企業年金を持っていて、半分の27,500円になるところが多いです。
2、事業主掛金 ≧ 従業員マッチング拠出金
つまり、会社が5,000円なら5,000円、10,000円なら10,000円が上限となります。
マッチング拠出の魅力
マッチング拠出として上乗せした掛け金については全額が「 所得控除 」の対象です。
つまり、企業型確定拠出年金なのに、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)と同様に、その分だけ所得税や住民税などの節税にもつながる有利な制度です。
仮に所得税10%、住民税10%を課税されている従業員が、月に20,000円のマッチング拠出をするとこうなります。
20,000円 × 12ヶ月 = 240,000円
240,000円 × 20%(所得税率10%+住民税率10%) = 48,000円
年間24万円の所得控除となり、48,000円の節税ができます。
※復興特別所得税は考慮しないものとする
実務的には、社会保険料、所得税、住民税を引いた「手取り」から掛金を拠出し、年末調整で「小規模企業共済等掛金控除」をすることにより所得税の還付を受け、それをもとに翌年の住民税も控除されることになります。※会社によっては、月々の給与の際の源泉徴収で税金処理をするところもあります。
やはりiDeCoと同様に60歳までに途中で引き出すことはできませんが、条件内であれば掛け金の金額変更や休止・再開、運用商品の変更などはもちろん可能ですから、従業員自身の経済状況や家庭事情によって、柔軟に運用できます。
なぜマッチング拠出ができた?
企業型確定拠出年金は、会社の退職金や企業年金がベースで、掛金負担できるのは会社だけでした。しかし税制上のメリットはとても大きいため、ここに個人が掛金を上乗せできるようにとの期待が高まっていました。
2012年1月の法改正によって、加入者も一定の範囲内で、事業主の掛け金に上乗せ拠出が出来る「マッチング拠出」が可能となりました。
さらに、企業型確定拠出年金の掛け金について、2014年10月に「他に企業年金がない会社は月55,000円まで、ある場合は月27,500円」へと掛け金の上限が引き上げられています。
これにより、2012年に導入されたマッチング拠出制度についても掛け金上限がアップし、税制上のメリットも拡大しています。
マッチング拠出とiDeCoは併用できない
今年2017年から企業型確定拠出年金にiDeCoを上乗せできるようになりましたが、これはマッチング拠出を行っていないことが条件となります。
マッチング拠出を行っておらず、個人型とどちらを導入するかは会社が検討して決定します。併用はできません。
いったん会社が決めてしまえば、従業員もその決まったほうしか利用できません。
どちらにしても、確定拠出年金に与えられた限度額を、従業員がなるべく上限まで活用できるように改善されたと思っていただいて良いでしょう。
※2020年をめどに、会社にマッチング拠出があっても、iDeCo併用を選べるような制度に変更される見込みです。参考:第10回社会保障審議会企業年金・個人年金部会資料
マッチング拠出とiDeCoの比較
前述のとおり、マッチング拠出を導入した企業の従業員は、iDeCoを利用できません。
しかし転職などにより、勤務先の導入環境が変わる可能性もあるかと思いますので、比較してみました。
企業型/マッチング拠出 | 企業型/iDeCo | |
運営管理機関の選定 | 企業 | 企業/従業員 |
運営管理手数料 | 会社負担 | 会社負担/個人負担 |
運用商品 | 企業型 | 企業型/個人型 |
信託報酬 | 会社負担 | 会社負担/個人負担 |
口座管理 | 企業型で一括管理 | 別々に管理 |
どちらがお得かという話は検証項目が多岐にわたり、ここでは比較しにくいためひとまず特徴だけでも押さえておいていただく程度で良いです。
マッチング拠出で気をつけたいこと
このように、マッチング拠出を活用できる環境にあるならば、基本的にはメリットしかないような制度となっていますし、早く始めれば始めるほど、現時点では各種の税制優遇枠も大きくなってきます。
しかし、確定拠出年金だけではなく家計全般をトータルにみていくと、マッチング拠出の掛け金にまわすよりも、住宅ローンの繰り上げ返済へあてたほうがベターというケースなども想定されます。
どんなにいい制度でも、それがご相談者様にとって優先順位の高いものなのかどうかはほんとにケース・バイ・ケースです。安易に行動せずにライフプランシミュレーションをしながら、掛金額を考えていきましょうという結論にいたりました。
知っているか知らないかの知識も大事、活用するか活用しないかの取捨選択も大事ということで、マッチング拠出の手続きが落ち着いたころに、再度ライフプランのご相談をされにこられました。